銀英伝舞台版のストーリーを予想する
キャスティング発表という初期の段階から早くも物議を醸している銀英伝舞台版ですが、原作ファンとしては、舞台版のストーリーがどうなるのかについてもキャスティングと同じくらい気になるところ。
そこで今回は、公式サイトで公開されている情報を元に、舞台版のストーリーについて予想してみたいと思います。
まず、キャスティング発表の対象にフリードリヒ四世とオフレッサーが入っていることから、銀英伝3巻以降の話は全て消えます。
また一方で、今回の舞台が「銀河帝国編」とされ、ヤンをはじめとする同盟側のキャラクターがキャスティング発表の対象として挙げられていないことを考えると、ヤンとラインハルトの対決が今回の舞台で行われる可能性もないと考えて良いでしょう。
そうなると、アスターテ会戦やアムリッツァの戦いなどの銀英伝1巻をベースにしたストーリー展開という線もないということになります。
では、最有力候補は帝国の内戦であるリップシュタット戦役、ということになるのでしょうか?
しかし、実はこれにも難があります。
というのも、銀英伝舞台版公式サイトに掲載されている、総合監修・田原正利の公式コメントに、以下のような文章が存在するからです↓
http://www.gineiden.jp/teikoku/special/tahara-comment.html
<―――私が手掛けたアニメ版『銀河英雄伝説』は、原作を忠実になぞっている様に見えながら、構造として根本的に違う部分がある。それは原作小説が「後世の歴史家」の視点を入れて後の時代から振り返って描いているのに対し、基本的に時代をリアルタイムで描く形にしたことだ。だから原作で時系列を入れ替えて描いている部分を時系列どおりに並べ替えたりして、言わば「編年体(=クロニクル)」の描き方をした点だ。それに対し、
今回の舞台化は言わば「列伝」.........各主要キャラクターにスポットを当て、そのキャラクターを描くことで時代を描き出す。こういうスタイルなら、アニメ版とは違う舞台版ならではの表現ができるのではないか? ―――そう思うようになったのだ。
また、今回の舞台は良くあるアニメの舞台化ではない。
言うなれば従来の小説やアニメ版の限られたファンを対象にするのではなく、全く新しいファンを開拓し、『銀河英雄伝説』という作品世界をより広く知らしめる機会になる。その中で、原作とアニメ版を知悉する者として、それらと今回の舞台版が「精神面」に於いて乖離しないように「監修」する役割として参加するならば、決して舞台版が従来のファンの期待をも裏切らないものにできるだろう―――そう考えた。>
「列伝」の意味を調べてみると、「個々の人物(特に国に仕えた官僚)の一生や周辺の異民族の民俗を書き並べたもの」と定義されています。
ところが原作のリップシュタット戦役は銀河帝国の覇権を巡る旧体制と新体制の戦いであり、個人を綴った「列伝」というよりは、国や皇帝の事跡を記した「本記」に近い性格を持っています。
ここで「各主要キャラクターにスポットを当てる」という「列伝」的な要素を入れようとすると、話を新規かつ大幅に作りこまなければならなくなってしまうのです。
さらに、「全く新しいファンを開拓」し「『銀河英雄伝説』という作品世界をより広く知らしめる」という主旨から考えれば、銀英伝1巻を飛ばして唐突にリップシュタット戦役から始めるというのも不合理かつ不可解です。
しかも銀英伝舞台化は一作だけで終わるのではなく、今後もシリーズ化していく予定なわけで、それならなおのこと、話をあちこち飛ばしてダイジェスト的な舞台構成になどしてはマズイことになります。
舞台の全シリーズを観ることで物語の全体像が把握できる、みたいな構成にしなければ、「全く新しいファンを開拓」するなど夢のまた夢でしかないでしょう。
これらのことから考えると、銀英伝舞台版は正真正銘「列伝」のカテゴリに属するであろう、アンネローゼが皇帝の寵妃になるところから、ヤンとラインハルトが初対峙するアスターテ会戦直前までの銀英伝外伝の話を持ってくる可能性が高いのではないでしょうか。
今回の舞台が「銀河帝国編」で同盟側の登場人物が一切出てこないというのもこれなら頷けます。
そしてその銀英伝外伝の中で一番「舞台向き」なストーリーは、ラインハルトとキルヒアイスが初陣を飾った惑星カプチェランカの戦い。
何故これが一番「舞台向き」かというと、これが艦隊戦ではなく白兵戦がメインとなる戦いだからです。
これをベースに描いた場合、艦隊戦はメインではなくサブ的な位置付けになるため、銀英伝舞台版で特に懸念されている「艦隊戦はどう表現するのか?」という問題にも対処しやすくなります。
舞台進行のやり方によっては、艦橋における司令官や参謀達のやり取りだけで艦隊戦絡みのシーンを全て構成できる可能性も出てくるわけで、この舞台演出的な利点は無視できるものではないでしょう。
銀英伝舞台版は、第一部で帝国側の外伝メインの「列伝」を、第二部で同盟側のこれまた外伝メインの「列伝」を、そして第三部でようやく銀英伝本編のアスターテ会戦における初対峙&初対決およびその後のストーリーを描く、という構成になるのではないでしょうか。
今後のシリーズ構成面から考えても、今回の舞台におけるストーリーは外伝の話をメインに持ってくる、という線が妥当なように思えるのですが。