映画「崖っぷちの男」感想
映画「崖っぷちの男」観に行ってきました。
「アバター」「タイタンの戦い」「タイタンの逆襲」に出演しハリウッドスターの仲間入りを果たしたサム・ワーシントン主演のアクション・サスペンス作品。
アメリカ・ニューヨークにあるルーズヴェルト・ホテル。
ある日、ウォーカーなる男がそのホテルの21階にある「眺めの良い一室」にチェックインの手続きを行いました。
部屋までの案内を行ったルームサービスを遠ざけ、朝食を済ませた男は、開閉式の窓枠を越え、わずか30㎝の縁に立ち、そこから飛び降りる素振りを見せます。
下の路上を歩いていた通行人が男の存在に気づき、ただちに警察に通報。
周囲はたちまちのうちに野次馬と警察がごった返すこととなり、ニューヨークの街は騒然となります。
何故男はこのような公開投身自殺みたいな騒動を引き起こしたのか?
その原因は、事件から遡ること1ヶ月前にありました……。
ホテルにチェックインする際に名乗った「ウォーカー」という名前は実は偽名で、今作の主人公である彼の正体は、ニック・キャシディという名のニューヨーク市警の元警察官。
彼は、デイヴィット・イングライダーという実業家兼ダイヤモンド王から、時価4000万ドルにも上るダイヤモンドを盗んだ罪で逮捕され、懲役25年の実刑判決を受けて投獄されていたのでした。
しかし彼は、自身の罪が全くの濡れ衣であり、自分の無実を晴らすことを決意します。
おりしも、彼の父親フランク・キャシディの寿命がもう長くないとの連絡が刑務所にもたらされ、ニックはかつての警官時代の相棒だったマイク・アッカーマンの好意によって、監視付きながら葬儀の出席を許可されます。
そしてニックは父親の葬儀の席上、突如弟ジョーイ・キャシディと殴り合いの喧嘩をやらかしたかと思うと、制止に入った警官のひとりから拳銃を奪い、自身にかけられた手錠を外させて車を奪い、その場から逃走を始めたのです。
警察側も慌てて追っ手を差し向けるのですが、ニックの方が一枚上手だったようで、ニックは列車を利用して追跡者の手から逃れ行方を晦まします。
そして彼は、プレハブ?のアジトらしき場所で荷物をまとめ、ルーズヴェルト・ホテルへと向かったのでした……。
ニックの自殺と、それに伴う通行人の犠牲者が出ることを避けるために、ニューヨーク市警が周囲の道路を封鎖する中、ニューヨーク市警の交渉人ジャック・ドハーティがニックの自殺を思い止まらせるべく交渉に当たります。
ところがニックはそれに対し、リディア・マーサーという名の女性交渉人としか話すつもりはない、30分以内に彼女を呼んでこなければここから飛び降りると明言します。
リディアは1ヶ月前、ニューヨークにあるブルックリン橋から投身自殺をしようとする警官との交渉に当たったものの、説得に失敗して警官の生命を救うことができなかったことに深い傷を負っていました。
しかし、今更選択の余地のないニューヨーク市警は、眠りこけていたリディアを電話で叩き起こし、ただちにルーズヴェルト・ホテルの現場へ急行し交渉の任に当たるよう指示することになります。
新たな交渉人としての任を受けたリディアは、ニックを相手に丁々発止の駆け引きじみた交渉を開始することになるのですが……。
映画「崖っぷちの男」は、上映時間102分の最初から最後まで緊迫したシーンが続きます。
作中で展開される主人公達の言動全てに伏線や意味が含まれており、また最初は何も分からない主人公達の目的や意図が、ストーリーが進むにしたがって少しずつ解明されていく過程の描写はなかなかの面白さです。
実はニックは、自身の冤罪を晴らすために、デイヴィット・イングライダーから盗んだとされるダイヤモンドを必要としていました。
デイヴィット・イングライダーは「ニックからダイヤモンドを盗まれた」と主張しており、そのダイヤが見つからないことから、ダイヤの時価総額である4000万ドルの保険金を保険会社から受け取っていたのです。
しかし、そのダイヤがデイヴィット・イングライダーの元から見つかったとなれば、デイヴィット・イングライダーの主張は覆され、ニックにかけられた冤罪を晴らすことができるのです。
そして、デイヴィット・イングライダーが所持すると思われるダイヤモンドは、ルーズヴェルト・ホテルのちょうど向かいに位置するビルの中にありました。
そのためニックは、一方では投身自殺を装い衆人環視の目をルーズヴェルト・ホテルに向けさせる一方、弟のジョーイ・キャシディと弟の恋人であるアンジーの2人をビルに潜入させ、ダイヤを奪いその所在を明示することで自らの潔白を証明しようとしていたのでした。
この中で一番負担の重い役割を担っていたのは、やはり何といってもニックだったでしょうね。
何しろニックは、一方ではリディアをはじめとする警察達への対応に追われる一方、他方ではジョーイとアンジーのダイヤ奪取のサポートまで行わなければならなかったのですから。
これほどまでの難行を見事にこなしてのけるニックは、一介の警察官にしておくには惜しい人材であると言えます。
すくなくとも、CIAの特殊工作員の類くらいなら充分にやっていけるだけの手腕は確実にあるでしょうね。
個人的にサプライズだったのは、一連のサスペンス劇が実はルーズヴェルト・ホテルにニックが入った時から文字通り始まっていたことがラストに判明することですね。
ニックがホテルの21階の部屋に案内されていた時のルームサービスが何とニックの仲間のひとりであることが物語後半に判明します。
しかもその人物は、序盤で葬儀まで行われていたはずのニックの父親フランク・キャシディであることがラストで明らかにされるのです。
ということは、ニックが脱獄を果たすきっかけとなったあの葬儀の場面からして、実は最初から仕組まれていたことになるわけです。
ニックの無実を晴らすためとは言え、どれだけ遠大な計画を立てていたというのでしょうかね、キャシディ一家は。
サスペンス物が好きな方はもちろんのこと、アクションもある程度は盛り込まれていますので、そちらの方面が好みという方にもオススメできる一品です。