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カテゴリー「映画観賞関連」の検索結果は以下のとおりです。

映画「ストロベリーナイト」感想

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映画「ストロベリーナイト」観に行ってきました。
フジテレビ系列で放映された同名テレビドラマシリーズの劇場版。
竹内結子が演じるノンキャリア出世組の女刑事・姫川玲子、および「姫川班」と呼ばれる部下達の活躍を描いた刑事物です。
今作は姫川玲子シリーズのひとつ「インビジブルレイン」という小説が原作なのだとか。
ちなみに私は、過去のテレビドラマシリーズは全く未観賞で今作に臨んでいます。
その視点から見る限りでは、一応テレビドラマ版とは独立したストーリー展開となっていて事件の背景などについては問題なく理解できます。
しかし一方では、主人公である姫川玲子を取り巻く人間関係や過去のエピソードなどについてはほとんど何もフォローされておらず、そちらについては非常に分かりにくい構成でしたね。
作品の世界観や登場人物達について知りたいのであれば、過去のテレビドラマの事前復習は必須ではないかと思われます。

物語は、主人公である姫川玲子のモノローグと、事件の発端と思しき光景が混在する形で描写されていくところから始まり、直後に姫川玲子と菊田和男がバーで飲んでいる?シーンが映し出されます。
菊田和男は、姫川玲子が長年愛用していてすっかりくたびれてしまっている真っ赤なエルメスのバッグについて「買い替えないのか?」と尋ねるのですが、その場では明確な答えが出されることなく、2人は殺人事件発生の報に接することとなります。
殺害現場における被疑者は、何故か左目が切り裂かれている暴力団構成員の男。
ここ最近、全く同じ手口による殺人事件が、それも全く同じ暴力団の人間相手に発生していることから、警察では連続殺人事件と断定し、合同特別捜査本部が設置されます。
しかし、捜査本部設置初めての会議で事件のあらましを説明する段階から、姫川玲子は早々に異議申し立てを行い、暴力団等の組織犯罪を主に扱う組対四課の面々といがみ合うこととなります。
とても「互いに協力して捜査を行う」などという雰囲気ではなく、組対四課は捜査一課とは別個に捜査を行うことを上に提案する始末。
結果、組対四課の提案が採用され、警察の各課は「合同」の名に反し、「情報を共有すること」を条件としつつも全く連携の取りようがない捜査を行うこととなったのでした。

いきなり不穏な気配が漂いまくり、先行き不安な局面から始まった捜査でしたが、会議の終了後、誰もいなくなった会議室に一本の電話が鳴り響きます。
唯一その部屋にいた姫川令子が電話を取ると、コンピュータ音声を繋ぎ合わせたと思しき不審な声が「殺人事件の犯人は柳井健斗」などとしゃべったのでした。
電話は一方的に言葉を伝えた後、何も尋ねることなく一方的に切られてしまいます。
電話の内容をメモっていた姫川玲子は、体調不良だか何かで現在入院している自分の上司で係長の今泉春男の元を訪れ、電話の件を報告します。
ところが今泉春男は、「この件は一旦自分に預けておいてくれ」と不可解な言動を見せます。
さらに翌日、姫川玲子は橋爪俊介から「誰にも見られないよう早朝に公園に来い」命じられ、柳井健斗については一切触れるなと言われてしまいます。
当然のごとく不審を抱かざるをえなかった姫川玲子は、裏にヤバいものがあることを察し、命令に従わず単独での捜査を始めることとなるのですが……。

映画「ストロベリーナイト」最大の特徴は、物語のほぼ全編を通して雨のシーンばかり続くことですね。
物語全体でも数日の時間が経過しているはずなのですが、その大部分で雨または曇り空の天気が続いていました。
雲ひとつない晴れ上がった空が出てくるのは、物語のラストシーンのみです。
映画の原作および副題が「インビジブル『レイン』」なので、意図的に雨を意識した場面作りに精を出していたといったところでしょうか。
柳井健斗のアパートを姫川玲子がひとりで張り込みを行っていたシーンなどは、最低半日~1日程度の時間経過があるような感じだったにもかかわらず、その間ずっとクルマのワイパーを常時回していなければならないほどの雨が続いていたみたいですし。
アレだけ長時間にわたってそんな大雨が降り続いていたら、大雨洪水警報が発令して川が氾濫したり道路の浸水が発生したりで、交通網が大混乱に陥っていてもおかしくないのではないかと、ついついいらざる心配をしてしまったものでした(^^;;)。
もっとも、作中で描写されていない時間帯で、一時的に雨が止んだり小雨になったりしていた可能性はあるわけですし、高台などではそんな雨でも意外と普段とあまり変わらなかったりするものなのですが。

作中のストーリーを見てみると、主人公である姫川玲子の行動にはかなり不可解な要素が否めなかったですね。
彼女は「上司の命令に従順ではない反権力的・真実追及を第一とする思考をする女性」として描かれており、犯人追求に人一倍の情熱を燃やしています。
ここまでならばこの手の刑事物にはありがちな設定なのですが、作中における姫川玲子は、不審な電話で言われていた柳井健斗のことを調べる過程で、指定暴力団・竜崎組の若頭である牧田勲と接触するようになります。
最初は牧田勲が自身の身分を偽っていたこともあり「事件の参考人」程度の接し方だったのですが、竜崎組絡みの暴力沙汰に巻き込まれたことがきっかけとなって、姫川玲子は牧田勲の正体に気付くことになります。
そこまでは良かったのですが、彼女は牧田勲を犯人と見立てて素性を調べ真相を暴くべく迫った際、逆に自分の本質を相手に見抜かれた挙句、「お前が憎む相手を俺が殺してやろうか?」という相手からの申し出に対し「殺して」と同意の返答をしてしまうんですよね。
さらにその直後、2人は互いに抱擁しそのままカーセックスへとしけこむありさま。
あの時点における牧田勲は、姫川玲子にとってはどう控えめに見ても事件の重要参考人、場合によっては真犯人の可能性すら持ちえる存在であることを、彼女は当然のごとく知っていたはずなのに、それを承知でああいう展開になるというのが正直理解に苦しむところなんですよね。
暴力団関係者、それも事件の容疑者にもなりえる存在とそんな関係になることが、自分にとっても警察にとってもどれほどまでに致命的なスキャンダルたりえるのか、一般常識があれば誰でも普通に理解できそうなことでしかないではありませんか。
警察内部でも、姫川玲子と牧田勲の関係が噂され、姫川班の面々が公衆の面前で堂々と糾弾されていた描写すらあったのですし、部下の菊田和男などは、2人がカーセックスにしけこむ場面に居合わせてさえいました。
このシーンの後、姫川玲子は度重なる単独行動と命令違反が問題視され、事件の捜査から外れることとなってしまうのですが、警察内部でのスキャンダルな噂話の方が、実際にはもっと大きな問題だったのではないのかと。
菊田和男も、よくもまあ姫川玲子のカーセックス問題を追及しなかったものだと、逆の意味で感心せざるをえなかったですね(苦笑)。
牧田勲とカーセックスをやらかした時点で、彼女は犯罪捜査にある種の「私情」を持ち込んでいることになるわけですし、警察の人間として完全に失格であるとすら言えてしまうのではないのでしょうか?
物語後半で菊田和男から「あなたは警察として行動しているのですか?」と問いかけられたのに対する返答も、明らかに私情で動いていることを告白しているも同然のシロモノでしかなかったですし。
映画観賞後にWikipediaで調べてみたところ、姫川玲子には17歳の頃にレイプされた過去があるらしいのですが、だからと言ってそれが彼女の「私情」な言動の免罪符になるわけもないのですし、彼女は警察という職種にはあまり向いていない人間であると評さざるをえないですね。
いっそ、カーセックスで結ばれた牧田勲と共に、極道の世界で成り上がっていった方が、彼女の適性的に見てもはるかに良かったのではないのかと(苦笑)。

ミステリー系なストーリーとしては意外な真相で面白かった部分もあったのですが、姫川玲子のカーセックスの一件から、どうにも彼女の言動にはついていけないものがありましたね。
しかも結果的に見れば、彼女は結局自力では事件の真相に辿り着けておらず、真犯人の一種の「自爆」によって幕が下りたようなものでしたし。
この点から言っても、姫川玲子の「有能さ」よりも「常識外れの異常ぶり」の方がはるかに際立った作品であると言えますね。

映画「東京家族」感想

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映画「東京家族」観に行ってきました。
「男はつらいよ」シリーズなどで知られる、山田洋次監督が手掛けた81作目の映画作品となるファミリー・ドラマです。

2012年の5月。
東京の郊外にある診療所・平山医院を営んでいる平山家では、瀬戸内海にある島のひとつ・広島県の大崎上島からはるばる新幹線で上京してくる予定の一組の老夫婦を迎えるべく、準備が進められていました。
老夫婦の長男で家主の平山幸一に代わり、料理を用意したり、2人の子供達に文句を言われながらも老夫婦の宿泊部屋を確保したりと、奥さんである平山文子は大忙し。
久々に両親に会えるということで、同じく東京郊外で理髪店を営んでいる長女・平山滋子も平山医院を訪れ、迎えに行った次男・平山昌次と共に帰ってくるであろう老夫婦との再会を待ちわびていました。
ところが何か手違いがあったのか、平山昌次は迎えに行くべき駅を間違え、本来老夫婦が降車する予定の品川駅ではなく、東京駅で待機していることが判明。
駅の間違いを指摘された平山昌次は、すぐさまイタリア製のオンボロ車・フィアットを駆使して東京駅へと向かいます。
しかし、品川駅で平山昌次を待ち続けていた老夫婦の夫である平山周吉は、これ以上待たされることに我慢が出来ず、妻の平山とみこを連れてタクシーで平山医院へと向かうことになります。
結局、タクシー代に1万円以上もかけたらしい老夫婦は、2人だけで平山医院へ到着することになります。
自分達にとっては孫に当たる、長男の子供達と挨拶を交わす平山周吉&とみこの老夫婦。
そうこうしているうちに、結果的には何の目的を果たすこともできなかった平山昌次も平山医院に到着。
久しぶりに家族一同が揃った平山家では、ささやかな歓迎の夕食会が行われることになったのでした。

翌日。
老夫婦を泊めていた平山家の長男は、自分の子供と一緒に老夫婦を東京観光へ連れて行く計画を立てていました。
ところが今まさに出かけようとしたその時、かねてより平山医院へ掛かっていた患者の容態が悪化したとの連絡が入り、長男はそのまま往診へ行くことを決断します。
当然、東京観光は取り止めとなってしまいました。
予定が立ち消えとなってしまった平山とみこは、父親と一緒に出掛けることを期待していた次男の勇と一緒に公園へ散策に出かけることに。
まだ9歳でしかない勇はすっかり人生を諦めてしまっており、平山とみこはその様子に溜息をつきながらも父親を引き合いに出して諭し続けるのでした。
その後、老夫婦は今度は長女の平山滋子の家で世話になるのですが、こちらは常日頃から理髪店の仕事が忙しくて老夫婦にかまっている余裕がなく、また天候にも恵まれなかったことから、2人は狭い家でただ佇んでいるありさま。
平山滋子は苦慮の末、次男の平山昌次に両親を連れて東京観光へ連れて行くよう依頼します。
平山昌次は、とりあえず東京観光用の遊覧バスに2人を乗せはしたものの、自分はバスの中で居眠りをこいて過ごすというやる気の無さを披露していました。
元々平山昌次は、何かと自分に厳しく当たってくる父親に隔意を持っており、老夫婦の子供である3人の中では一番父親を歓迎していなかったのでした。
そんな中、仕事の都合から両親の面倒を見ることが難しい長女・平山滋子は、同じ境遇にあった長男・平山幸一と相談して、2人を東京都内の高級ホテルに宿泊させることを思いつきます。
かくして2人の老夫婦は、一泊10万円近くもするらしい高級ホテルに宿泊することとなるのですが……。

映画「東京家族」に登場する家族および登場人物達は皆、どこにでも普通にいるような存在ですね。
特殊技能を駆使するスパイやヒーローというわけではなく、辣腕をふるう政治家や悪党というわけでもありません。
ストーリー自体も、手に汗握るスリリングな展開があるというわけでもなく、一応大きな事件は起きるものの、全体的にはそれすらも含めて淡々とした展開が続いていきます。
PG-12&R-15系な描写は何もないにもかかわらず、内容的には議論の余地なく大人向けの作品以外の何物でもないですね。
今作のストーリーは、平山周吉と平山昌次を中心に回っており、実質的にはこの2人が主人公ということになるでしょうか。

今回個人的に注目していたのは、やはり何と言っても平山周吉の平山昌次を巡るやり取りですね。
長男と長女は、父親に対して敬意は払いつつもどこか一歩距離を置いていたような態度に終始していたのに対し、次男は結構本気で父親を毛嫌いしているところがありましたし。
まあ、作中でも明示されていたあの父親の頑固一徹な態度に幼少時から晒され続けていれば、そうなるのも当然ではあったかもしれませんが。
あの父親は、今で言うならば「毒を持つ親(毒親)」に近いものが、平山昌次にとってはあったわけですからね。
あの2人の関係は、ストーリー中盤までは母親の平山とみこが、終盤30分ほどは恋人である間宮紀子が間に入ることで何とか成立していたようなものでしたし。
平山周吉も、次男のことを全く愛していなかったわけではないのでしょうが、父親のあの性格と息子の反感具合から考えると、あの2人だけでは永遠に和解する日など決してくることはなかったでしょうね。
ただ、母親の葬儀後、父親の世話や話し相手を全て恋人に押し付けていた平山昌次の対応は、さすがに正直どうかと思わなくはなかったのですが(苦笑)。
平山昌次の主観的には当然の選択肢であったにしても、厄介事を押し付けられた間宮紀子にしてみれば、「何故私が全く赤の他人の世話などをしなければならないのか?」と疑問に思わない方が不思議な話なのですから。
間宮紀子も、よくもまあアレだけのことを後悔しつつもやってのけたものだと、第三者的に見てさえも考えずにいられなかったですからねぇ。
まあ、そのことを当の父親本人に堂々と言ってのけた辺りは、彼女も相当なまでの「正直者」ではあったでしょうけど。

今作は2011年3月11日に発生した東日本大震災およびその影響をある程度意識して製作されたと聞いていたのですが、作中でそれが反映されていたのはたった2箇所程度でしかなかったですね。
ひとつは、平山周吉の友人宅で、家政婦さん?らしき女性の母親が東日本大震災で発生した津波の犠牲になったというエピソード。
もうひとつは、平山昌次と間宮紀子の出会いが、東日本大震災のボランティア活動がきっかけであったということ。
震災話はもう少し前面に出てくるものとばかり考えていただけに、「たったこれだけ?」という印象を抱かずにはいられなかったですね。
まあ、この映画が最初に企画されたのは東日本大震災発生前で、震災発生をきっかけに撮影を延期したとのことだったので、震災エピソードを大量に挿入する余裕もあまりなかったのでしょうけど。

アクション映画やVFX作品のごとき派手な演出も、ミステリー的な頭脳戦も皆無な作品なので、観る人をかなり選びそうな作品ではあります。
どこか響く物語であることは確かなのですが……。

レオナルド・ディカプリオが俳優を長期休業?

レオナルド・ディカプリオが俳優業の長期休暇を取る方針とのことです。
2年間で3本もの映画に出演したために疲れ果てたというのが理由とのこと↓

http://www.cinematoday.jp/page/N0049521
>  [シネマトゥデイ映画ニュース] 強烈な映画の撮影が3作続いたレオナルド・ディカプリオは、俳優業に疲れ果ててしまったため、しばらくはハリウッドから遠ざかるつもりのようだ。
>
>  レオは映画『ジャンゴ 繋がれざる者』の前に、バズ・ラーマン監督の映画『華麗なるギャツビー』とマーティン・スコセッシ監督の映画『ザ・ウルフ・オブ・ウォールストリート(原題) / The Wolf of Wall Street』に出演。
「正直、くたくただよ。長い長い休暇を取ることにした。2年間で3本の映画を撮影したから疲れ果てたよ」とドイツのBild紙に語っている。
>
>  休暇中は環境保護に力を入れるつもりだという。「世界をもう少し改善させたいんだ。世界中を飛び回り、環境を良くすることに手を貸したい。僕の家の屋根はソーラーパネルで覆われている。車は電気自動車だ。普通の人は一日に50キロ以上は走らないだろ。それなら電気自動車で十分だ」とコメントしている。
>
>  レオのリラックス方法は、根っからのバカのような態度を取ることだという。「撮影現場では真剣に演技だけに集中する。だから友達と一緒に騒ぐときは、意味のないことを話し、根っからのバカのような振る舞いをして楽しむんだ。友達とバカ騒ぎするのは僕にとってのセラピーみたいなもの」と言っている。
>
>  しかし、忙しいスケジュールのせいで、そんな友達らと自宅で過ごすことができていないとのこと。「友達を家に呼ぶのは大好きなんだけど、1年半ほどまともに自宅に帰ってないから、最後に家で集まったのがいつかも覚えていない。自宅に帰るのが楽しみだよ」と語っている。(BANG Media International)

環境保護に手を貸すこと自体は結構なことなのですが、グリーンピースやシーシェパードなどには協力しないでもらいたいところですね(^^;;)。
アレ系の団体も、欧米ではそれなりの地盤や人気があるので、その危険性もなきにしもあらずですし。
もちろん、個人で真っ当な活動をする分には大いに推奨されて然るべきことではあるのですが。
しかしまあ、「長い長い休暇」って一体どのくらいの期間にわたるのでしょうかね?
普通に考えて、半年~1年くらいといったところなのでしょうか?
個人的には、できるだけ早く復帰して頂き、「インセプション」のような映画で活躍してもらいたいところなのですけどね。

最近のディカプリオはとにかく「裏稼業に手を染めた犯罪者ないしボス」的な役柄を担うことが多いのですが、出演自体を後悔しているという「タイタニック」の時と異なり、今は自分が目指していたものや、自分のイメージと合致する役柄などをきちんとこなせているのでしょうね。
日本では2013年3月1日に公開予定の映画「ジャンゴ 繋がれざる者」では、ディカプリオは初めて悪役を演じることになるらしいですし。
悪役が大物俳優の場合、元来メインであるはずの主人公を食ってしまうほどの存在感が出てしまう危険性もあったりするので、その辺はいささか心配なところではあります。
「ジャンゴ 繋がれざる者」はアメリカではかなりの成功を収めているとのことですから、出来自体は大丈夫だろうとは思うのですけどね。

映画「テッド」感想

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映画「テッド」観に行ってきました。
2000年公開映画「パーフェスト・ストーム」、および2008年公開映画「ハプニング」のマーク・ウォールバーグ主演のドタバタ異色コメディー作品。
作中では、麻薬の隠語である「ハッパ」を吸引したり、デリヘル嬢を招いてスカトロプレイをやらしたりするシーンの他、様々な下ネタが満載のため、今作は当然のごとくR-15指定されているのですが、その中では記録的ともいえる大ヒットを達成したのだとか。
アメリカ版におけるテディベアのテッド役の声役は、今作の監督であるセス・マクファーレン自らが担当したのだそうです。
作品の雰囲気的には、日本では2011年公開の映画「デュー・デート ~出産まであと5日!史上最悪のアメリカ横断~」に近いものがありますね。

1985年のアメリカ。
ボストン郊外に住んでいた当時8歳の少年ジョン・ベネットは、同年輩の少年達から仲間外れにされ、友人もおらず孤独な日々を送っていました。
その年のクリスマス、ジョンは両親からテディベアのぬいぐるみをプレゼントされます。
幼いジョンはぬいぐるみに「テディ」と名付け、「君と話が出来たら良いのに」と願いながら、ベッドで「テディ」を抱いて眠りにつきます。
すると、気まぐれな神がその願いを聞き入れでもしたのか、翌日の朝、眠りから覚めたジョンは、自立歩行して歩く「テディ」に挨拶をされます。
ジョンは仰天しながらも大いに喜び、互いに唯一無二の友達となることを誓い合います。
そしてジョンは、「テディ」のことを両親に報告・紹介します。
両親はジョン以上にヒステリックに驚きまくりますが、ジョンと「テディ」が仲睦まじく語り合っている様子を見て和やかな表情に変わっていくのでした。
その後、「テディ」は名前をさらに短縮して「テッド」と呼ばれるようになり、その物珍しさからマスコミに引っ張りだこにされ、一躍大人気となっていきます。
しかし、そんなテッドは少年ジョンのことを常に忘れることなく、テッドは雷を怖がるジョンに「雷兄弟」として一緒に添い寝するなど、ジョンとの間にひとかたならぬ友情と絆を結んでいくのでした。

それから27年後の2012年。
一時は一種の「セレブ」として人気を博したテッドも、今ではすっかり落ちぶれ果て、「ハッパ」を吸引しながら下ネタを乱発しまくる中年オヤジへと変貌を遂げていました。
ちなみに「ハッパ」吸引絡みでは逮捕歴もあるようで(苦笑)。
一方、35歳の中年になったジョンは、ボストン南部のアパートでそんなテッドと相変わらず一緒に暮らしつつ、レンタカー会社へ惰性で勤めに行く日々を送っていました。
そんなジョンではありましたが、彼は4年ほど前からバリバリのキャリアウーマンであるロリー・コリンズという女性と交際を続けており、そのまま結婚を前提とした付き合いをするかどうかで悩んでいました。
交際相手たるロリーもまた、自分よりもテッドを優先しているかのごときジョンに苛立ちを募らせており、彼女はジョンに対してテッドと別れるよう要望し始めるようになります。
そんな2人が交際を初めてからちょうど4年目を迎えた記念の日、何となく良い雰囲気になったデートを終えたジョンとロリーがジョンの家に入ると、そこでは留守番をしていたテッドが4人のデリヘル嬢を呼び、酒池肉林の乱痴気騒ぎをやらかしまくっていました。
しかもテッドとデリヘル嬢達はスカトロプレイでもやっていたらしく、部屋の中にはデリヘル嬢のひとりがひり出したらしいウンコが転がっている始末。
かねてからテッドの存在にイラついていたロリーはついに堪忍袋の緒が切れ、テッドを家から叩き出すようジョンに強く促すのでした。
その後、ジョンと共に水族館を訪れたテッドは、ロリーの要望に動かされたジョンから家を出ていくよう言われてしまうのでした。
テッドもロリーも大事だから2人とも別れたくないというジョンの意向を尊重し、テッドはジョンと別居することを承諾するのですが……。

映画「テッド」では、中年テディベアのテッドが繰り出しまくる下ネタ騒動ばかりでなく、昔の映画ネタや「本人役」として出演する俳優達の登場も大きな魅力のひとつです。
作中で特に扱いが大きかったのは、1980年代に公開された「フラッシュ・ゴードン」というアメリカ映画と、その映画で主演を担っていたサム・J・ジョーンズ(本人役)という俳優との出会いですね。
ジョンは明らかにサム・J・ジョーンズに憧れを抱いている様が伺えましたし、出会った後もノリノリに意気投合していましたからねぇ(苦笑)。
まあ、それが原因でロリーには三行半を突き付けられて破局の危機を迎える羽目になってしまうのですが(-_-;;)。
またその後には、グラミー賞受賞歴を持つ歌手のノラ・ジョーンズがこれまた本人役で登場し、テッドの説得でジョンに舞台を明け渡すというシーンが出てきます。
何でもテッドとノラ・ジョーンズは10年前からの知り合いで、疑似セックスまでヤりあった仲なのだそうで(笑)。
テッドは過去に多くのメディアに出演して人気を博していた過去があったので、そのツテから芸能界への人脈があったという事情もありはしたのでしょうが、テッドも色々な方面で顔が広いなぁ、とつくづく考えてしまったものでした。
他にも、携帯の着信音で「ナイトライダー」のオープニングテーマが流れたり、2011年公開の映画「グリーン・ランタン」がネタにされた上に同作で主演を担ったライアン・レイノルズがゲイ役で友情出演していたりと、往年のアメリカTVドラマや映画を知る人達にとっては思わずニヤリとするネタが満載でしたね。
そして何よりのサプライズネタとしては、ジョンとテッドがホテルで口ゲンカを繰り広げている中で、ジョンが「お前なんかより『くまモン』の方がマシだ」などと発言するシーンが挙げられます。
こんなところでまさか「くまモン」が出てくるとは夢にも思っていなかったので、さすがにここは私の方が仰天せざるをえなかったですね。
そりゃまあ確かに、テッドとくまモンには「クマ系のキャラクター」という共通項がありはするわけですが、くまモンって「テッド」がアメリカ公開された2012年時点では、まだ本格的に海外進出してはいないはずだったのではないのかと。
ハリウッド映画で「くまモン」が言及されたのって、実は今回が初めてなのではないですかねぇ(^^;;)。
まあここでは日本語翻訳の際に、元来映画にはなかった「くまモン」が挿入された可能性もあったりするのですが、やはり熊本県民としてはこれが一番のサプライズではありましたね。

ストーリー内容に目を向けてみると、今作におけるジョンとテッドは、映画「僕達急行 A列車で行こう」に登場した2人の鉄道オタクの友人関係を髣髴とさせるものがありましたね。
他人には到底理解しがたいマイナーな映画ネタでアレだけ盛り上がれる雰囲気というのは、まさに件の鉄道オタク達と同じく「同じ趣味を持つ者同士」にしか分からないものが多々ありましたし。
そして一方で、その2人の友情や趣味について全く理解を示さず、序盤から中盤にかけてただひたすらテッドの排除を主張していたロリーについては、正直「ジョンとはむしろ別れた方が良くないか?」という疑問すら抱かざるをえなかったくらいでした。
前述の「僕達急行 A列車で行こう」で、主人公の「鉄っちゃん」趣味に全く理解を示そうともせず、結局破局に至ってしまった女性達と全く同じ運命を、ロリーもまた辿りそうな気がしてなりませんでしたし。
そりゃまあ、「ハッパ」吸引やスカトロプレイに理解を示すのはさすがに無理があるにしても、映画絡みの趣味や憧れの俳優との邂逅について事情を察することくらいは、彼女の立場から言っても決して不可能なことではなかったはずでしょう。
にもかかわらず、パーティを抜け出したジョンに癇癪を爆発させ、問答無用とばかりに別離宣言を行ったロリーの言動は、「こりゃ一緒になるのは無理だろう」という感想を抱かずにはいられませんでした。
ロリーは元々ジョンと結婚して一緒になるつもりだったのでしょうし、将来伴侶となるべき相手の趣味は理解し許容できるくらいでないと、結婚後の生活が大いに危ぶまれることが容易に予想できるはずなのですが。
まあ彼女の場合、ジョンの趣味への無理解というよりは「ジョンが肩入れするテッドに対する反感や嫉妬」という側面が少なくなかったのかもしれませんが。
ロリーのテッドに対する反感というのも、個人的にはイマイチ理解し難いところがあるんですよね。
別にジョンはテッドを「性の対象として」「伴侶として」愛しているというわけではなく、またジョンのロリーに対する愛情にも嘘偽りがないことを、当のロリーだって全く理解できていないわけではなかったでしょうに。
相手に対し悪戯に完璧さを求める完全主義者的な要素でも影響していたりするのでしょうかね、これって。

コメディ映画が好きな方はもちろん、往年のアメリカTVドラマや映画が好きという方にも文句なしにオススメできる一品ですね。

映画「LOOPER/ルーパー」感想

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映画「LOOPER/ルーパー」観に行ってきました。
タイムトラベルが可能になった近未来の世界を描く、「ダイ・ハード」シリーズのブルース・ウィリス、および「インセプション」「ダークナイト・ライジング」のジョゼフ・ゴードン・レヴィットが、同一人物の主人公としてそれぞれ主演を担うSFアクション作品。
今作では女性が上半身スッポンポンで描写されている箇所や残虐シーンなどがあるため、PG-12指定されています。

時代は2044年。
この時代、アメリカ?の経済は破綻、一般的な国民生活も古い住居とクルマを使い続けるような水準にまで低下し、犯罪組織が我が世の春を謳歌するような社会となっていました。
そんな中、とある犯罪組織では、「ルーパー」と呼ばれる殺し屋を多数抱え込んでいました。
「ルーパー」は、今から30年後に実用化されたものの即座に非合法化されたタイムマシンを使い、30年後の世界の犯罪組織で邪魔となった人物を始末することを目的とする殺し屋のことを指します。
30年後の世界では追跡技術が飛躍的に進歩したため、人知れず人間を始末し死体を処理するということが不可能となっていました。
そのため、邪魔な人間は過去の世界へと送り込み、そこで死体を処理させるという、いわば「タイムマシンを使った産廃処理場」的なことをやらせているわけです。
抹殺対象となった人間には銀の延べ棒が身体にくくりつけられており、それが「ルーパー」および犯罪組織にとっての報酬となるのでした。
「ルーパー」の具体的な仕事内容は、指定された場所に突然現れた「顔を隠された抹殺対象」を、射程は15メートルと短いものの威力と殺傷性が高い「ラッパ銃」で即座に殺し、死体を処理するというもの。
しかし、「ルーパー」はその高額な報酬を代償に、さらなる闇のペナルティが課せられていました。
それは未来の犯罪組織が「ルーパー」との契約を終わらせる際、当の「ルーパー」自身が抹殺対象とされ、それまでのターゲットと同様に過去へ送り込まれて「過去の自分自身」に射殺されることになるというもの。
その処理に当たっては、他ならぬ「過去の自分自身」に未来の自分の抹殺任務が与えられる上、抹殺対象にくくりつけられる報酬には銀ではなく金の延べ棒が使われることになっていて、自分が殺されたということが否応なく分かるようになっています。
この未来からの契約解消および未来の自分の処刑を、「ルーパー」達は「ループが閉じる」と呼んでいます。
そして、今作の主人公ジョー・シモンズもまた、来る日も来る日も未来からの抹殺対象にラッパ銃を撃ち続ける「ルーパー」のひとりでした。

ある日、ジョーは自分の家に押しかけてきた同業者で親友のセス・リチャーズから「未来の自分を逃がしてしまった、匿って欲しい」と必死の形相で懇願されます。
「ルーパー」では未来の抹殺対象を殺すことに失敗すると、組織によって処刑されることになっており、そのことに対する恐怖からジョーに助けを求めてきたのでした。
セスは未来の自分から未来に関する説明を受けていました。
それによれば、未来では「レインメーカー」と呼ばれる犯罪組織の大物が、全ての「ルーパー」の「ループを閉じる」ことを決定したとのこと。
ジョーはとりあえず、自宅の床にある地下金庫にセスを匿い、追手からの追及を誤魔化そうとします。
しかし、犯罪組織のボスで未来の犯罪組織から送り込まれてきた人間でもあるエイブから脅しを受け、ジョーはエイブにセスを売ってしまうのでした。
一方、未来のセスは逃亡を続けていたのですが、突如自分の右腕に文字の傷が刻み込まれ、指定された場所へ15分以内に行くよう促されます。
目的地へと向かう最中、未来のセスからは身体の部位が次々と失われていき、目的地にたどり着いた頃には両手両足を失った状態となった挙句、犯罪組織の精鋭部隊・ガットマンの一員のひとりであるキッド・ブルーによって殺されてしまうのでした。
何でも、現在の人間に傷をつけると、その傷が未来の自分にもそのまま反映されるのだそうで、現在のセスはその身を一方的に切り刻まれたのでしょうね。
そして、そのセスを売り渡したジョーにも「ループが閉じられる」時が迫っていたのでした……。

映画「LOOPER/ルーパー」は、ブルース・ウィリスが主演という割にはアクションシーンが少なく、どうにもパッとしない感が否めないですね。
特に物語中盤はアクションシーン皆無で、登場人物達の暗い雰囲気なサイドストーリーが延々と展開されていますし。
未来の歴史を改変すべく行動している未来のジョーも、その内容はと言えば「年端もいかない少年を探し出して撃ち殺す」などという、「未来からの対抗馬なきターミネーター」的な後ろ暗いシロモノでしかなかったのですからねぇ(-_-;;)。
未来のジョーにしてみれば、自分の妻を殺す結果をもたらすことになったレインメーカーへの復讐と、妻が殺された事実を消すために必死ではあったのでしょうけど。
物語終盤で、囚われの身から逆襲して犯罪組織をひとりで壊滅させてしまった未来のジョーのチート級な無双ぶりは、それを演じていたブルース・ウィリスならではのアクションではありましたが、逆に言えば、作中で「映えた」アクションシーンはこれくらいしかないんですよね。
ブルース・ウィリス主演ということで派手なアクションシーンを期待する方は、今作は観賞しない方が無難かもしれません。
今作に限らず、アクションシーンがメインではないブルース・ウィリスの映画というのは、どうにもパッとしないイメージが拭えないところなんですよね。
2010年に日本で公開されたブルース・ウィリス主演の映画「サロゲート」なども、やはりラストの展開も全体的な出来も今ひとつでしたし。
一見斬新なSF的アイデアを作中に盛り込みつつ、実はアクションメインではないという点でも、今作は「サロゲート」と同じ共通項を持っていると言えます。
今年の映画でブルース・ウィリスのアクションシーンに期待がかけられるのは、日本では2013年2月公開予定の「ダイ・ハード/ラスト・デイ」ということになるのでしょうね、やっぱり。

今作のストーリーを追っていくと、もう序盤からして大幅に歴史が改変されていることがまる分かりですね。
その最初のものは、犯罪組織のボスであるエイブが、実は困窮していた過去のジョーに銃を与えて組織に従事させていたというエピソードです。
実はエイブは「ルーパー」達の動向を監視させるという目的から、唯一「抹殺対象」としてではない形で未来から送り込まれてきたという設定の人物です。
つまり、未来からやってきたエイブは、過去である2044年で何かをしただけでも、未来の歴史が色々と変わってしまうという要素を持つことになるわけです。
彼がジョーを見出して銃を与えることがなければ、そもそもエイブに助けられることがない「本来の歴史」におけるジョーはその時点で死んでいたか、全く違う道を歩むことになっていたでしょうし、当然、エイブおよび彼の犯罪組織が未来のジョーによって殺されるという結末もなかったはずなのです。
未来でタイムトラベルが法律で禁止された上、その方を破っている犯罪組織からしてタイムトラベルを「産廃処理場」「処刑場」的な使い方しかしていないのは、歴史改変がもたらす多大な影響が恐れられていることにあるのでしょうに、そのタブーを堂々と破って平然としているエイブは、なかなかの大物であると言わざるをえないところですね(苦笑)。
というか、そんなタブーを犯しているエイブ自身が、未来の犯罪組織から生命を狙われてもおかしくないのではないのかと(爆)。
また、幼少のレインメーカーを殺すために「本来死ぬはずのない」人間を大量に殺し回っている未来のジョーも、相当なまでに歴史を改変しているよなぁ、と。
そしてトドメは、そこまで動き回った未来のジョーの更なる凶行を止めるために、ラッパ銃で自殺してしまった現在のジョーの行動です。
あそこでジョーが死んだことで、あのラスト後の2074年の世界って、時系列的にはもうありえないほどにグチャグチャな世界になってしまっているのではないでしょうかねぇ(苦笑)。
現在のジョーが死んだことで、未来のジョーによってもたらされた諸々の事件・事象も全て消失することにもなりかねず、しかもそれは現在のジョーが死んだ事実にまで及んでしまっているわけなのですから。
原因と結果が複雑に絡まり過ぎていて、一体どうなっているのか理解を絶しているタイムパラドックスが現出しそうな話ではありますね。

アクションシーンはあまり大したものがなく、SF設定的にも結構なツッコミどころがあったりするので、それ系の期待をする方にはあまりオススメできない作品ということになるでしょうか。

映画「96時間/リベンジ」感想

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映画「96時間/リベンジ」観に行ってきました。
リュック・ベッソン製作&リーアム・ニーソン主演のアクション・スリラー映画「96時間」の続編作品です。
原題は「TAKEN 2」。
「96時間」の原題も「TAKEN」でしたから、まんま続編ということになるわけですね。
前作は劇場では未観賞だったのですが、この間レンタルDVDで事前に復習していたので、物語の設定や全体像などは問題なく把握することができました(^^)。
実際、今回の敵がブライアン一家に関わるに至る動機や経緯については、前作のエピソードを予め知っていることが前提となっているので、今作を観賞する際には前作の復習が必要不可欠だったりします。
もし前作を知らないで今作に臨んでいたら、わけが分からない展開で面白さ半減は否めなかったでしょうね。

前作「96時間」のキム誘拐事件から1年後。
アルバニアの山中では、数体の遺体を葬るための葬儀が密かに行われていました。
それらの遺体は、前作「96時間」で主人公ブライアン・ミルズが娘のキムを救出する際に犠牲となった、人身売買組織の構成員達でした。
特に人身売買組織のボスで息子でもあったマルコを殺害された父親のムラドは、息子を殺した仇への復讐(リベンジ)を誓い、その行方を追い始めるのでした。

同じ頃のアメリカ・ロサンゼルス。
今作でもやはり主人公のブライアン・ミルズは、いつものごとく大富豪スチュアートと再婚した妻レノーアともども別居中の娘のキムに会いに来ていました。
キムは1年前の事件で負った精神的ショックを克服しつつあり、またブライアンからクルマの運転を習い、運転免許を取得しようとしている最中にありました。
しかし、せっかく訪れた豪邸にキムの姿はなく、家にいたレノーアは「娘は彼氏のところにいる」とブライアンに告げるのでした。
彼氏のことをブライアンに黙っていた理由は、それを教えるとブライアンが彼氏の身辺調査を始めてしまうからとのこと。
実際、ブライアンは前作でも、キムが人身売買組織に誘拐された際、大富豪スチュアートの事業内容やトラブルなどを詳細に至るまで徹底的に調べ上げていたことを披露してもいたのですし。
しかもその後、ブライアンは携帯電話のGPSからキムの居場所を割り出し、彼氏の家に直接乗り込んでキムを激怒させてしまうのでした。
そんなある日、いつものごとくキムの運転を見るためにやってきた豪邸にやってきたブライアンは、レノーアの怒鳴り声が響き渡る中、豪邸の主であるスチュアートがクルマで出ていく光景を目撃することになります。
ブライアンがレノーアに事情を聞くと、どうも前作と今作との間の1年間でレノーアとスチュアートはすっかり不仲になってしまったそうで。
その仲直りのきっかけを作るべく、レノーアは家族で中国旅行をすることを計画していたのですが、スチュアートが仕事の都合か何かでその計画を全てキャンセルしてしまったため、スチュアートの仲がほぼ絶望的なものになってしまったとレノーアは悲嘆に暮れる羽目に。
そんな様子を見たブライアンは、ちょうど自分が近く仕事で行く予定のトルコ・イスタンブールへレノーアとキムを誘うことを思いつきます。
これを機会に、レノーアとキムとの関係が修復できるかもしれないという希望を抱いて。
ダメ元で2人を誘ってみたブライアンでしたが、トルコで要人護衛の仕事を終えたブライアンは、そこでレノーアとキムのサプライズな再会を果たすことになるのでした。
しかしこれが、イスタンブールを舞台にした一大騒動に発展することになるのです。

映画「96時間/リベンジ」は、前作同様に主人公ブライアン・ミルズの情け容赦ないアクションシーンが光っていますね。
敵に遭遇すると同時に即戦闘モード&殺しにかかるブライアンの冷酷非情ぶりは今作でも健在で、緊迫感と爽快感溢れるアクションシーンを存分に披露してくれます。
アクションシーン以外でも、頭から袋を被せられているにもかかわらず、聴覚や振動などから得られる情報を元に自分の居場所を漠然としたものでありながらも把握してのける特殊スキルなども開陳されていましたし。
前作でもそうでしたが、この辺りはさすが元CIA工作員という設定なだけのことはあります。
前作との大きな違いと言えば、前作の敵があくまでも偶発的にキムを拉致してブライアンを呼び込んでしまったのに対し、今作の敵は最初からブライアンとその関係者をターゲットにしている点ですね。
今作は映画のタイトルにもあるように「リベンジ」がテーマなのですから、当然の話ではあるのですが。
ただ、前作の敵がわけも分からず奇襲を食らって壊滅したのに比べれば、今作の敵は明確な目的があってブライアンに先制攻撃を敢行し、自分達がおかれた状況をきちんと理解している分、幾分かはマシな死に方をしていると言えるのではないでしょうか(苦笑)。
彼らは、敵がひとりで組織を壊滅させるほどの凄腕の持ち主であることを充分に承知の上で、それでも戦いを挑んできているわけなのですし。
単純な利益の観点から言えば、ブライアンなんて放置して人身売買にでも精を出していた方が彼ら自身のためでもあったはずなのですが。
息子の復讐のためとはいえ、ムラドの個人的な感情に付き合わされる羽目になった組織の人間にしてみれば、ブライアンとムラドの感情的な抗争に巻き込まれた被害者としての側面も多分にあったことでしょうね。

そういえば、今作のラスボスであるムラドは、ある意味ではブライアンと非常に似た者同士な人間ではありますね。
ムラドは実の息子に対する復讐のために、何の利益にもならないブライアン一家の一網打尽を画策していたのですし、あらゆる犠牲を払ってでも彼はブライアンに最悪の死を与えようと必死になっていました。
その点では、娘と妻のためには手段を選ばず、ありとあらゆる手段で障害物を排除しまくるブライアンと、根底の部分では同じものがあるのではないでしょうか?
ブライアン自身、前作で娘のキムと友人のアマンダを誘拐した人身売買組織に対し「娘を返さないならば、お前らを必ず探し出しこの手で殺す」と明言していたわけですし。
それと全く同じことを、ムラドは逆にブライアン自身に対して、しかもその過程で暴力に訴えたり人を殺したりすることも辞さない形で実行に移しているわけです。
個人的技能を駆使するブライアンと組織力に物を言わせるムラドでは、「目的のための手段を遂行するための道具」に違いはあるものの、我が身を犠牲にしてでも家族のことを何よりも大事に考えているという信条については全く同じものを持っているのです。
前作の事件に際しても、もしブライアンがキムを失ってしまっていたら、逆に彼こそがムラドに復讐の刃を向けていたかもしれないのです。
それから考えると、ムラドというのは「ブライアンのもうひとつのあるべき姿」だったのではないかと、今作におけるムラドの言動を見ているとつくづく感じずにはいられなかったですね。
そして、家族の復讐に邁進するムラドの言動に自分と全く同じものを見出さずにはいられなかったからこそ、ブライアンは物語のラストで、ムラドに情けをかけて助けるかのごとき言動を披露していたのではないでしょうか?
正直、アレだけ情け容赦のないアクションシーンで敵を屠りまくっていた中でのあの選択の提示は、正直ブライアンの性格的には「らしくない」ものがありましたからねぇ。
もちろん、そんな状況でもブライアンは全く油断することなんてなかったわけなのですが。
あるいはブライアンは、ムラドを最初から殺すことを前提に、彼が激発することを最初から期待していたか、油断して去るフリをしてムラドを殺すための算段を練っていたとかいった策でも弄していたのかもしれませんが。

前作を観賞している人であれば、今作も文句なしにオススメできる映画ですね。

第85回アカデミー賞のノミネート作品発表

第85回アカデミー賞のノミネート作品が発表されています。
本命と目される映画は、12部門にノミネートされたスティーヴン・スピルバーグ監督製作の映画「リンカーン」。
その他、「ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日」「世界にひとつのプレイブック」等が対抗馬とされているようです↓

http://www.cinematoday.jp/page/N0049265
>  [シネマトゥデイ映画ニュース] 現地時間10日、第85回アカデミー賞のノミネーションが発表され、スティーヴン・スピルバーグ監督の映画『リンカーン』が作品賞・監督賞を含む最多12部門でノミネートされた。
>
>  対抗馬と目されているのは、
作品賞・監督賞をはじめとする11部門にノミネートされたアン・リー監督の『ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日』。そして、主要6部門すべてにノミネートされたデヴィッド・O・ラッセル監督の『世界にひとつのプレイブック』だ。とりわけ主要6部門ノミネートは『世界にひとつのプレイブック』のみが達成している快挙であり、ノミネートこそ8部門にとどまっているものの、賞レースの中心となることは間違いない。
>
>  また、前哨戦ともいえるナショナル・ボード・オブ・レビュー賞で作品賞・監督賞を受賞した『ゼロ・ダーク・サーティ』は作品賞を含む5部門にノミネート。だが『ハート・ロッカー』で女性として初の監督賞を受賞した同作のキャスリン・ビグロー監督が今回、監督賞候補から外れてしまうという波乱も。そのほか、
前評判の高かった『アルゴ』は7部門、クエンティン・タランティーノ監督の『ジャンゴ 繋がれざる者』は5部門にノミネートされている。
>
>  上記に挙げた作品のほかにも『レ・ミゼラブル』、世界中の映画祭を席巻している『愛、アムール』などが作品賞にはノミネート。この混戦を一歩抜きん出るのはどの作品なのか。第85回アカデミー賞授賞式は現地時間2月26日、米ロサンゼルスのドルビー・シアターにて行われる。
>
> 第85回アカデミー賞ノミネート全リストは以下の通り。
>
> ■作品賞
> 『リンカーン』
> 『ゼロ・ダーク・サーティ』
> 『アルゴ』
> 『ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日』
> 『ジャンゴ 繋がれざる者』
> 『レ・ミゼラブル』
> 『世界にひとつのプレイブック』
> 『ハッシュパピー ~バスタブ島の少女~』
> 『愛、アムール』
>
> ■監督賞
> アン・リー 『ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日』
> スティーヴン・スピルバーグ 『リンカーン』
> デヴィッド・O・ラッセル 『世界にひとつのプレイブック』
> ベン・ザイトリン 『ハッシュパピー ~バスタブ島の少女~』
> ミヒャエル・ハネケ 『愛、アムール』
>
> ■主演男優賞
> ダニエル・デイ=ルイス 『リンカーン』
> ホアキン・フェニックス 『ザ・マスター』
> デンゼル・ワシントン 『フライト』
> ブラッドリー・クーパー 『世界にひとつのプレイブック』
> ヒュー・ジャックマン 『レ・ミゼラブル』
>
> ■主演女優賞
> ジェシカ・チャステイン 『ゼロ・ダーク・サーティ』
> ナオミ・ワッツ 『インポッシブル』
> ジェニファー・ローレンス 『世界にひとつのプレイブック』
> エマニュエル・リヴァ 『愛、アムール』
> クヮヴェンジャネ・ウォレス 『ハッシュパピー ~バスタブ島の少女~』
>
> ■助演男優賞
> アラン・アーキン 『アルゴ』
> フィリップ・シーモア・ホフマン 『ザ・マスター』
> トミー・リー・ジョーンズ 『リンカーン』
> クリストフ・ヴァルツ 『ジャンゴ 繋がれざる者』
> ロバート・デ・ニーロ 『世界にひとつのプレイブック』
>
> ■助演女優賞
> サリー・フィールド 『リンカーン』
> アン・ハサウェイ 『レ・ミゼラブル』
> ヘレン・ハント 『ザ・セッションズ(原題) / The Sessions』
> エイミー・アダムス 『ザ・マスター』
> ジャッキー・ウィーヴァー 『世界にひとつのプレイブック』
>
> ■外国語映画賞
> 『愛、アムール』(オーストリア)
> 『コン・ティキ(英題) / Kon-Tiki』(ノルウェー)
> 『ノー(英題) / No』(チリ)
> 『ロイヤル・アフェア 愛と欲望の王宮』(デンマーク)
> 『魔女と呼ばれた少女』(カナダ)
>
> ■脚本賞
> ミヒャエル・ハネケ 『愛、アムール』
> クエンティン・タランティーノ 『ジャンゴ 繋がれざる者』
> ジョン・ゲイティンズ 『フライト』
> ウェス・アンダーソン、ロマン・コッポラ 『ムーンライズ・キングダム』
> マーク・ボール 『ゼロ・ダーク・サーティ』
>
> ■脚色賞
> クリス・テリオ 『アルゴ』
> ルーシー・アリバー、ベン・ザイトリン 『ハッシュパピー ~バスタブ島の少女~』
> デヴィッド・マギー 『ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日』
> トニー・クシュナー 『リンカーン』
> デヴィッド・O・ラッセル 『世界にひとつのプレイブック』
>
> ■ドキュメンタリー長編賞
> 『壊された5つのカメラ』
> 『ザ・ゲートキーパーズ(原題) / The Gatekeepers』
> 『ハウ・トゥ・サバイブ・ア・プレイグ(原題) / How to Survive a Plague』
> 『シュガーマン 奇跡に愛された男』
> 『ザ・インビジブル・ウォー(原題) / The Invisible War』
>
> ■ドキュメンタリー短編賞
> 『イノセンテ(原題) / Inocente』
> 『キングス・ポイント(原題) / Kings Point』
> 『マンデイズ・アット・ラシーナ(原題) / Mondays at Racine』
> 『オープン・ハート(原題) / Open Heart』
> 『レデンプション(原題) / Redemption』
>
> ■短編実写賞
> 『アサッド(原題) / Asad』
> 『ブズカシ・ボーイズ(原題) / Buzkashi Boys』
> 『カーフュー(原題) / Curfew』
> 『デス・オブ・シャドウ(英題) / Death of a Shadow』
> 『ヘンリー(原題) / Henry』
>
> ■長編アニメ賞
> 『メリダとおそろしの森』
> 『フランケンウィニー』
> 『パラノーマン ブライス・ホローの謎』
> 『ザ・パイレーツ! バンド・オブ・ミスフィッツ(原題) / The Pirates! Band of Misfits』
> 『シュガー・ラッシュ』
>
> ■短編アニメ賞
> 『アダム・アンド・ドッグ(原題) / Adam and Dog』
> 『フレッシュ・グアカモーレ(原題) / Fresh Guacamole』
> 『ヘッド・オーバー・ヒールズ(原題) / Head over Heels』
> 『マギー・シンプソン・イン・“ザ・ロンゲスト・デイケア”(原題) / Maggie Simpson in “The Longest Daycare”』
> 『ペーパーマン(原題) / Paperman』
>
> ■視覚効果賞
> 『ホビット 思いがけない冒険』
> 『ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日』
> 『アベンジャーズ』
> 『プロメテウス』
> 『スノーホワイト』
>
> ■撮影賞
> シーマス・マッガーヴェイ 『アンナ・カレーニナ』
> ロバート・リチャードソン 『ジャンゴ 繋がれざる者』
> クラウディオ・ミランダ 『ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日』
> ヤヌス・カミンスキー 『リンカーン』
> ロジャー・ディーキンス 『007 スカイフォール』
>
> ■メイクアップ&ヘアスタイリング賞
> 『ヒッチコック』
> 『ホビット 思いがけない冒険』
> 『レ・ミゼラブル』
>
> ■歌曲賞
> 「ビフォア・マイ・タイム」 『チェイシング・アイス(原題) / Chasing Ice』
> 「エブリバディー・ニーズ・ア・ベスト・フレンド」 『テッド』
> 「パイズ・ララバイ」 『ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日』
> 「スカイフォール」 『007 スカイフォール』
> 「サドゥンリー」 『レ・ミゼラブル』
>
> ■作曲賞
> ダリオ・マリアネッリ 『アンナ・カレーニナ』
> アレクサンドル・デスプラ 『アルゴ』
> マイケル・ダナ 『ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日』
> ジョン・ウィリアムズ 『リンカーン』
> トーマス・ニューマン 『007 スカイフォール』
>
> ■編集賞
> 『アルゴ』
> 『ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日』
> 『世界にひとつのプレイブック』
> 『ゼロ・ダーク・サーティ』
> 『リンカーン』
>
> ■音響編集賞
> 『アルゴ』
> 『ジャンゴ 繋がれざる者』
> 『ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日』
> 『007 スカイフォール』
> 『ゼロ・ダーク・サーティ』
>
> ■音響賞(調整)
> 『アルゴ』
> 『レ・ミゼラブル』
> 『ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日』
> 『リンカーン』
> 『007 スカイフォール』
>
> ■衣装デザイン賞
> ジャクリーン・デュラン 『アンナ・カレーニナ』
> ジョアンナ・ジョンストン 『リンカーン』
> パコ・デルガド 『レ・ミゼラブル』
> 故・石岡瑛子さん 『白雪姫と鏡の女王』
> コリーン・アトウッド 『スノーホワイト』
>
> ■美術賞
> 『アンナ・カレーニナ』
> 『ホビット 思いがけない冒険』
> 『レ・ミゼラブル』
> 『ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日』
> 『リンカーン』
>
> (※日本語のリストを転載する際は編集部までご連絡ください)
> (編集部・福田麗)
>
> 「第85回アカデミー賞授賞式」は2月25日(月)午前9時よりWOWOWプライムにて生中継(夜9時よりリピート放送)

去年は「アーティスト」と「ヒューゴの不思議な発明」がその他大勢を押さえる形で一騎打ちを演じていた感が多々ありましたが、今年はラインナップを見る限りでは混戦模様の様相を呈しているみたいですね。
去年と比較してもノミネートされた作品数が多いですし。
個人的には、「アルゴ」の評価が高いというのが少々意外なところですね。
確かに「アルゴ」は、アクションシーン皆無でアレだけの緊迫感を演出してのけたという点は映画としてかなり高く評価できる部分があるのですが、しかしそれが「アカデミー賞好みの芸術」と呼べるものなのかというと、相当なまでの違和感を伴うものがあります。
「アカデミー賞好みの芸術」というと、どことなく「映像やグラフィックの美しさ」「絵画等に通じる前衛的な芸術性」などといったものをどうにも連想してしまうものですからねぇ(-_-;;)。
あるいは、「実話に基づいたノンフィクション」という部分が評価されでもしたのでしょうか?

しばしば芸術至上主義と評されることもあるアカデミー賞は、しかし何を基準に駄作認定をしているのか意味不明なゴールデンラズベリー賞ことラジー賞に比べれば、まだ基準らしきものが見える分マトモな賞であるとは言えます。
あちらは本当の駄作をあえて避けているようなフシが伺えますし、選考者の恣意性がメチャメチャに入り込んでいるような感が多々ありますからねぇ(-_-;;)。
まあアカデミー賞にしたところで、「入賞=名作」という図式が必ずしも成立するわけではないのですが。
第84回アカデミー賞で主演女優賞を獲得した「マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙」などは、確かに主演女優の力量は相当なものがあったにせよ、映画としては論外な出来だったわけで。
映画に限らず、エンタメ作品の評価というのは「それを観賞した人の数」だけ存在するものなのですから、その鑑定が難しい面は確かにあるのでしょうけどね。
今回のアカデミー賞各部門の栄冠は、果たしてどの作品に授けられることになるのでしょうか?

映画「ドラゴンゲート 空飛ぶ剣と幻の秘宝(3D版)」感想

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2013年新作映画観賞のトップを飾る作品は「ドラゴンゲート 空飛ぶ剣と幻の秘宝」。
明王朝時代の中国大陸を舞台とする、ツイ・ハーク監督製作によるジェット・リー主演の中国アクション映画です。
この作品は日本やアメリカとの合作では完全無欠の中国映画とのことなのですが、個人的に中国映画は今まで不思議と全く縁がなかったんですよね。
唯一中国的な要素が前面に出ていた作品で馴染み深かった映画「幽幻道士」シリーズも、実際は台湾の作品だったわけですし。
劇場で観賞した中国映画としては、2009年公開映画「レッドクリフ PartⅡ -未来への最終決戦-」以来になるでしょうか。
なお、今作はPG-12指定作品で、かつ熊本では3D版でしか上映されていないため、3D版での観賞となりました。

明王朝時代の中国大陸では、東廠(とうしょう)および西廠(せいしょう)と呼ばれる特務機関が専横を振るっていました。
東廠は朝廷内の役人達の動向を監視する機関であるのに対し、西廠は一般人を監視する機関とされ、共に他者から恐れられる存在となっていました。
今作の物語は、東廠の長官が五軍の都督府長を粛清しようとする場面から始まります。
東廠の長官が都督府長を処刑させようとしたまさにその時、突如巨大な丸太が壁を突き破り、兵達は大混乱に陥ります。
さらに、その混乱に乗じて3人の暗殺者達が東廠の長官や兵達に襲い掛かります。
東廠の長官はその老獪な外見に反して凄腕の剣技を披露する実力者ではあったのですが、奮戦むなしく、暗殺者のひとりで今作の主人公でもあるジャオにあえなく討ち取られてしまいます。
主を失ってしまった東廠は対策会議で事態の収集を図ろうとしますが、そこへ西廠の督主であるユーが訪れ、東廠の重鎮達を嘲笑います。
ユーは皇帝の正妻である貴妃とも関係を持つ宦官でもあり、貴妃の意に沿わぬ人物を片っ端から始末することで今の地位を築いてきた人物です。
そんなユーに東廠の面々は怒り狂うのですが、ユーは彼らの怒りを意に介することなく、その場を後にするのでした。

その直後、貴妃に呼び出されたユーは、後宮に仕えている女官4人が身籠ったことを貴妃に報告していました。
ユーはそのうち3人を葬ったのですが、残りのひとりの逃走を許していました。
彼は自分以外の女性が皇帝の子を孕むことを何よりも憎む貴妃の意を受け、残りひとりの女官スーを捕縛すべく、スーが逃亡したとされる谷へ大隊を派遣するのでした。
スーは谷を流れる川の渡し船で一般乗客を装い逃走を続けていましたが、ユーが放った大隊の検問であえなく御用となり、今まさにその首を刎ねられんとしていました。
西廠が放った大隊の存在に気づき、ひそかに追跡していたジャオを含めた3人の暗殺者達は、スーを助けるべく戦闘を開始しようとします。
しかし、彼らが姿を現すよりも前に、顔を隠した謎の人物が突如兵達に襲い掛かり、自身のことを「ジャオ」と名乗り、あっという間に彼らを制圧してスーを救出するのでした。
その人物の正体はリンという女性で、ジャオとは何らかの関係を伺わせるものがあったのですが……。
リンはスーを明王朝の手の届かない場所へ送るべく、明王朝の西北国境にある宿場へと向かうことになります。
その宿場の名は「龍門宿」。
ここが、今作における主戦場となるのです。

映画「ドラゴンゲート 空飛ぶ剣と幻の秘宝」は、冒頭のオープニングの時点で「ああ、中国映画だな」ということがよく分かるシロモノですね。
洋画ならばアルファベット、邦画ならば日本語が並べられるスタッフロールで、誰の目にも明らかな中国語が並んでいましたし、音楽もどことなく聞き慣れないものだったりしましたから。
洋画の「エクスペンダブルズ」シリーズにも出演していたジェット・リーが主演とのことだったので、てっきり「中国的な雰囲気を持つハリウッド映画」とばかり考えていたものだったのですが。
というか今回は、数年ぶりの中国映画ということもあり、ジェット・リー以外に知っている俳優さんが誰もいなかったりします(苦笑)。
中国映画ではそれなりに有名どころを集めているようなのですが、中国映画なんてめったに見ない私の視点では知らない人ばかりですし。
今作の場合、映画の冒頭数分の時点で「しまった、映画のチョイスを間違えた!」と考えてしまった人が意外に多いのではないかなぁ、とついつい考えてしまったものでしたね。

作中で繰り広げられるアクションシーンは、ハリウッドとはまた一味違った味を出しています。
やたらと暗器類を駆使したり、さしてダッシュもしていないのに舞空術でもやっているかのごとく高い跳躍力を見せつけたりと、科学考証的にはツッコミどころ満載なアクションが披露されています。
確かに演出的にはハリウッドよりもスピード感はありますし、それなりに「見れる」ものにはなっているのですが、ただ、やはりどこか「違う」感はどうにも否めないですね。
迫力に欠けている、というのとは少し違うのですが、どこか根本的な部分でハリウッドに遠く及ばない要素があるというか……。
銃撃シーンやカーチェイスが皆無なことではないと思うのですが、この辺りは何とも言えないところではありますね。
人間ドラマも、大味なハリウッドアクション映画と大同小異といったところでしかないですし。

個人的にこの作品で納得がいかなかったのは、物語終盤で「皇帝の子供を身籠った」として貴妃から追手が差し向けられていたはずの元後宮の女官スーの真の正体が判明したことですね。
実はあの女官スーは西廠の督主ユーの密偵で、最終的に彼女は主人公達を裏切ってユーと共に主人公と対峙するんですよね。
その際には「皇帝の子供を身籠った」という設定もどこかに消えてしまっていて、ピアノ線のような武器を駆使して主人公達を窮地に追い詰めていくのですが……。
しかし、そもそもユーをはじめとする西廠の面々達は、貴妃の命令に基づいてスーの身柄を確保することを最優先課題としていたのではないのでしょうか?
第一、作中でもスーは一度西廠が敷いた検問に引っかかってしまい、これみよがしに斬り殺される寸前までいっていたわけですし。
これが完全なフェイクだということになってしまうと、西廠は一体何のためにあんな大部隊を用意してはるばる龍門へ遠征までしていたのか、全く理解不能になってしまうのですが。
自分達に刃向ってくるジャオの始末を目的とするのであれば、そもそも龍門への遠征を敢行する必要それ自体がまるでなく、西廠のみならず明王朝の軍団そのものまで動員できる紫禁城周辺に罠でも仕掛けて待ち伏せていた方がはるかに効率が良いのですし。
「敵を騙すにはまず味方から」の論理を駆使していたにしても、ユーとスーを除く西廠の遠征軍が全滅した後に暴露されてもそれは宝の持ち腐れもいいところですし、払う必要のない犠牲が多すぎるとしか評しようがないでしょう。
スーが主人公達を裏切って大功を挙げるつもりだったのであれば、もっと効率良く主人公達を各個撃破できる局面が他にもたくさんあったのではないかと思えてならないところです。
特にジャオとリンについては、1対1で相対していた局面が作中でも複数個所にあったわけですし、彼女が裏切るまで誰も彼女のことを疑ってもいなかったわけなのですから、いくらでも裏のかきようはあったのではないのかと。
どう見ても後付で裏切りエピソードが追加されたとしか考えられないほどに、スーの裏切りは物語の辻褄が合わず必然性にも欠け、かつタイミングも最悪だったとしか言いようがありませんでした。
裏切りエピソードを描きたかったのであれば、もう少し物語の整合性や全体像というものに配慮して欲しかったところですね。

日本ではマイナーな部類に入る中国映画ということもあり、結構観る人を選びそうな作品です。
あの奇抜なアクションシーンが受けられるか否かで、今作の評価は個々人で大きく変わってきそうではありますね。

第33回ゴールデンラズベリー賞のノミネート作品発表

アメリカで最低の映画を選ぶ「ゴールデンラズベリー賞」ことラジー賞のノミネート作品が発表されたようです。
今のところ、「トワイライト・サーガ/ブレイキング・ドーン Part 2」が最低映画の最有力候補なのだそうで↓

http://www.cinematoday.jp/page/N0049184
>  [シネマトゥデイ映画ニュース] その年に公開された中で最低の映画を決める第33回ラジー賞のノミネーションが発表され、映画『トワイライト・サーガ/ブレイキング・ドーン Part 2』が全10部門で最多11ノミネートを記録した。
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>  『トワイライト』シリーズは、第3作『エクリプス/トワイライト・サーガ』が9部門、前作『トワイライト・サーガ/ブレイキング・ドーン Part 1』が8部門でノミネートされるなど、もはやラジー賞の常連。完結編が最多ノミネートを記録した今回、有終の美を飾ることができるのかどうか? 注目だ。
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>  また、昨年のラジー賞で全10部門を受賞したアダム・サンドラーの新作コメディー『ザッツ・マイ・ボーイ(原題) / That’s My Boy』も、7部門で計8ノミネート。また、
浅野忠信が出演したことでも話題になった『バトルシップ』は6部門7ノミネートを記録している。
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>  今年のラジー賞授賞式は、アカデミー賞授賞式の前日、現地時間2月23日に米ロサンゼルスにて行われる。
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> ノミネートは以下のとおり。
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> ■最低映画賞
> 『バトルシップ』
> 『ザ・ウーギーラブズ・イン・ビッグ・バルーン・アドベンチャー(原題) / The Oogieloves in Big Balloon Adventure』
> 『ザッツ・マイ・ボーイ(原題) / That’s My Boy』
> 『ジャックはしゃべれま1,000(せん)』
> 『トワイライト・サーガ/ブレイキング・ドーン Part 2』
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> ■最低監督賞
> タイラー・ペリー 『グッド・ディーズ(原題) / Good Deeds』『マデアズ・ウィットネス・プロテクション(原題) / Madea’s Witness Protection』
> ピーター・バーグ 『バトルシップ』
> ショーン・アンダース 『ザッツ・マイ・ボーイ(原題) / That’s My Boy』
> ビル・コンドン 『トワイライト・サーガ/ブレイキング・ドーン Part 2』
> ジョン・パッチ 『アトラス・シュラグド II (原題) / Atlas Shrugged Part II』
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> ■最低女優賞
> タイラー・ペリー 『マデアズ・ウィットネス・プロテクション(原題) / Madea’s Witness Protection』
> クリステン・スチュワート 『トワイライト・サーガ/ブレイキング・ドーン Part 2』『スノーホワイト』
> キャサリン・ハイグル 『ラブ&マネー』
> ミラ・ジョヴォヴィッチ 『バイオハザードV:リトリビューション』
> バーブラ・ストライサンド 『ザ・ギルト・トリップ(原題) / The Guilt Trip』
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> ■最低男優賞
> ニコラス・ケイジ 『ゴーストライダー2』
> エディ・マーフィー 『ジャックはしゃべれま1,000(せん)』
> ロバート・パティンソン 『トワイライト・サーガ/ブレイキング・ドーン Part 2』
> タイラー・ペリー 『バーニング・クロス』『グッド・ディーズ(原題) / Good Deeds』
> アダム・サンドラー 『ザッツ・マイ・ボーイ(原題) / That’s My Boy』
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> ■最低助演女優賞
> ジェシカ・ビール 『プレイング・フォー・キープス(原題) / Playing For Keeps』『トータル・リコール』
> ブルックリン・デッカー 『バトルシップ』『恋愛だけじゃダメかしら?』
> アシュリー・グリーン 『トワイライト・サーガ/ブレイキング・ドーン Part 2』
> ジェニファー・ロペス 『恋愛だけじゃダメかしら?』
> リアーナ 『バトルシップ』
>
> ■最低助演男優賞
> デヴィッド・ハッセルホフ 『ピラニア リターンズ』
> テイラー・ロートナー 『トワイライト・サーガ/ブレイキング・ドーン Part 2』
> リーアム・ニーソン 『バトルシップ』『タイタンの逆襲』
> ニック・スウォードソン 『ザッツ・マイ・ボーイ(原題) / That’s My Boy』
> ヴァニラ・アイス 『ザッツ・マイ・ボーイ(原題) / That’s My Boy』
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> ■最低スクリーンアンサンブル賞
> 『バトルシップ』
> 『ザ・ウーギーラブズ・イン・ビッグ・バルーン・アドベンチャー(原題) / The Oogieloves in Big Balloon Adventure』
> 『ザッツ・マイ・ボーイ(原題) / That’s My Boy』
> 『トワイライト・サーガ/ブレイキング・ドーン Part 2』
> 『マデアズ・ウィットネス・プロテクション(原題) / Madea’s Witness Protection』
>
> ■最低脚本賞
> 『アトラス・シュラグド II (原題) / Atlas Shrugged Part II』
> 『バトルシップ』
> 『ザッツ・マイ・ボーイ(原題) / That’s My Boy』
> 『ジャックはしゃべれま1,000(せん)』
> 『トワイライト・サーガ/ブレイキング・ドーン Part 2』
>
> ■最低リメイク、パクリ、続編映画賞
> 『ゴーストライダー2』
> 『ピラニア リターンズ』
> 『レッド・ドーン(原題) / Red Dawn』
> 『トワイライト・サーガ/ブレイキング・ドーン Part 2』
> 『マデアズ・ウィットネス・プロテクション(原題) / Madea’s Witness Protection』
>
> ■最低スクリーンカップル賞
> 『新・三バカ大将 ザ・ムービー』に出演した「ジャージー・ショア」キャストの内2名
> マッケンジー・フォイ&テイラー・ロートナー 『トワイライト・サーガ/ブレイキング・ドーン Part 2』
> クリステン・スチュワート&ロバート・パティンソン 『トワイライト・サーガ/ブレイキング・ドーン Part 2』
> タイラー・ペリー&その女装姿 『マデアズ・ウィットネス・プロテクション(原題) / Madea’s Witness Protection』
> アダム・サンドラー&アンディ・サムバーグ、レイトン・ミースター、もしくはスーザン・サランドン 『ザッツ・マイ・ボーイ(原題) / That’s My Boy』
>
> (※日本語のリストを転載する際は編集部までご連絡ください)
>
> (編集部・福田麗)

……アレ?
映画を観賞するどころか、映画の公開が発表された瞬間から個人的にノミネートを確実視していた「エクスペンダブルズ2」がどこにもありませんね。
前作「エクスペンダブルズ」は、2年前の第31回ゴールデンラズベリー賞で最低監督賞にノミネートされていたので、今回も当然のごとくどこかの部門にはノミネートされると踏んでいたのですが。
シルヴェスター・スタローンにとにかく隔意でもあるかのごとく、彼の出演作品に問答無用の駄作認定を叩きつける性癖を持つラジー賞であれば、「エクスペンダブルズ2」はむしろノミネートしない方が変だとすら考えていただけに、これは少々意外な展開ではありますね。
ラジー賞も一体どういう風の吹き回しなのやら。
それとも、最近は「トワイライト」シリーズに熱を入れている(らしい)ので、シルヴェスター・スタローンなど顧みる余裕はない、といったところなのでしょうか?

それにしても、相変わらず何を基準にノミネートしているのかよく分からないラインナップですね。
「トワイライト」シリーズの集中的な狙い撃ちといい、「バトルシップ」のノミネートといい、「本当の駄作」を選んでいる感じではまるでないですし。
ラジー賞の本当の選考基準というのは、「知名度が高く興行収益も高くはあるが、一方で熱狂的なファンがいるわけでもなく、叩けばそれなりの肯定的な反応が期待できる映画」といったものだったりするのでしょうか?
その割には、特定の俳優や作品を集中的に取り上げて駄作認定するというのも変な話ではあるのですが……。
豪華キャストを集めまくった「エクスペンダブルズ」シリーズとは別の意味で、ラジー賞もまた、一種の「お祭り企画」でしかないのでしょうけどね。

映画「だれもがクジラを愛してる。」感想(DVD観賞)

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映画「だれもがクジラを愛してる。」をレンタルDVDで観賞しました。
日本では2012年に劇場公開されたアメリカ映画で、トム・ローズの同名ノンフィクション小説を原作とする、1988年10月に実際に起こったアメリカ・アラスカ州のクジラ救出作戦を扱った作品です。
例によって熊本ではまるで公開されていなかった映画で、レンタルDVDでようやく観賞できるようになる始末でした(T_T)。
まあ今作では「あの」グリーンピースが善玉的な役柄で登場していますし、日本では受けが悪そうな作品ではあるのですけどね。

物語の舞台は1988年10月、アメリカの最北端に位置するアラスカ州の小都市バロー。
市外へと通じる陸路が存在しないこの街は、市内にある飛行場を発着する4機の飛行機によってかろうじて外界と繋がっている、まさに「陸の孤島」と呼ぶにふさわしい立地にありました。
今作の主人公にしてアラスカ州の州都アンカレッジにある地方テレビ局のリポーターであるアダム・カールソンは、この小都市バローで密着取材を行なっていました。
一通り取材を終え、近いうちにバローを発つことになっていたアダム・カールソンは、地元民から歓呼の声で祝福されます。
そんな中アダム・カールソンは、地元民でイヌピアック族の少年ネイサンに、かねてから約束していた従兄のスノーモービルの技の取材を行なって欲しいと懇願されます。
最初は忙しいことを理由に拒否していたアダム・カールソンでしたが、ネイサンの食いつきに根負けする形でしぶしぶ取材をすることになります。
やたらと興奮して大声で従兄に指示を出すネイサンに対し、どこか消極的な態度でテレビカメラを抱え撮影するアダム・カールソン。
しかしその最中、アダム・カールソンは一面銀景色の風景から、どこか波のような音がするのを感知するのでした。

同じ頃、アラスカ州の州都アンカレッジでは、アラスカ州の南にあるブリストル湾の石油採掘権の入札結果が発表されていました。
採掘権を獲得したのは、石油採掘会社のひとつであるアラスカ石油社長のJ・W・マグローで、彼は喜びと満足気な表情を露わにします。
ところが、それに冷や水を浴びせるがごとく、拡声器を持ったひとりの女性が、入札会場の責任者に対し、環境保護団体グリーンピースの入札額を公表するよう迫り始めます。
周囲が止めるのも聞かずに自己主張を繰り返しまくるこの女性レイチェル・クレイマーは、J・W・マグローの指示で入札会場からつまみ出されてしまうのでした。

さらに舞台は再びアダム・カールソンへ。
前述の奇妙な波のような音から、彼はネイサンとその従兄と共に、氷上に空いたひとつの穴を発見します。
その穴からは、3頭のコククジラが定期的に顔を出し、呼吸を繰り返していたのでした。
知らせを聞いて現場に駆け付けた、ネイサンの祖父でイヌピアック族の族長であるマリクともうひとりの男は、寒さで穴がふさがればクジラは呼吸ができなくなり命運は尽きると明言します。
しかし、これは良いスクープになると考えたアダム・カールソンは、アンカレッジのテレビ局にクジラの映像を送信。
上層部もその映像を気に入ったのか、アダム・カールソンの映像はニュースとして大々的に報じられることになったのでした。
これが、アメリカどころか当時のソ連をも巻き込む一大クジラ救出劇の始まりとなったのです。

映画「だれもがクジラを愛してる。」で個人的につい笑ってしまったのは、今作のヒロインであるレイチェル・クレイマーですね。
過激な環境保護(テロ)団体として世界にその名を轟かせているグリーンピースの一員にふさわしい【クレーマー】な言動の数々を、彼女は作中で何度も披露しています。
そして彼女は、他の登場人物達からも「クレーマー女史」「ミス・クレーマー」などと名指しで呼ばれているシーンがあったりするんですよね。
あれらのシーンを最初に見た時、アレは毒舌なマシンガントークを恐れられたことから名付けられた仇名か異名かとばかり思っていたので、本名だと知った時はさすがに驚愕せずにはいられませんでしたよ(笑)。
グリーンピースの手先という事実もさることながら、彼女は名前からして「クレイマー」、さらには周囲の人間に戦闘的なマシンガントークで挑みかかるという、まさに文字通りの【クレーマー】な言動に終始しているわけです。
これほどまでに「名は体を表す」を地で行く人生を送っている人も非常に珍しいのではないでしょうか(苦笑)。
原作はノンフィクション小説とはいうものの、実在の人物の名前をそのままなぞっているのかまではさすがに分からないのですが、もしこれが実在の人物名そのままなのであれば、「世の中には無意識の皮肉という概念が確かに存在するのだなぁ」というのが私の感想ですね(爆)。
まあ「クレーム」や「クレーマー」というのは実は「日本に帰化した和製英語」とのことで、その定義が「=苦情・不平不満を並べ立てる」となっているのは日本国内のみのようなのですが(ちなみに本来の意味は「損害賠償請求」とのこと)、それを考慮してもこの名前は「意図せざる皮肉」に満ちたものになっていると言わざるをえないですね。

映画のタイトルだけを見ると「グリーンピース万歳!」な作品であるかのごとき印象を受けるのですが、中身を見た限りでは色々な人達の立場を比較的淡々と描写するよう努力している様は伺えますね。
一番強い印象を受けたのは、クジラを助けようとするどの人間および組織も、100%の善意に基づいて動いたのではなく、それぞれの利害と打算のソロバンを弾いていたことがきちんと描写されていたことです。
アラスカ石油は環境保護をアピールしてグリーンピースその他世間一般からの批判をかわすという意図から協力を申し出ていますし、当時のレーガン大統領のブレーン達も選挙対策と人気取りの観点から軍にクジラ救出を命令させたりしています。
そもそも、クジラの窮地を最初に報じたアダム・カールソンにしてからが、その根底にあった動機はテレビリポーターとしての立身出世だったりするのですし。
そして、俗世の欲を動機としてこれらの面々が動くからこそ、ひたすらクジラの生命を救うという目的のためにのみ動く(ように見える)グリーンピースおよび組織を代表する「クレーマー女史」の言動があまりにも異常かつ狂信的にも見えてしまうんですよね。
「ミス・クレーマー」の言動には、ある種の異端審問のごとき宗教的原理主義の片鱗すら感じさせるものがありましたし。
まあ、そのグリーンピースにしたところで、その実態は人気取りと寄付金が目当てで、今回の騒動でも大いに儲かっていることを作中でも指摘されていたりするので、その点では企業や大統領と同じ穴の貉でしかないのですが(爆)。
それに対する「ミス・クレーマー」の反論も、「自分達は儲かっているわけじゃないわ、環境保護を無視した現政権の政策と闘うための資金よ」などという鼻持ちならない厚顔無恥なシロモノでしかありませんでしたし。
後年、旧東ドイツのソ連将校から核弾頭を購入しようとしたり、原発を実力行使で一時占拠したりした実績を持つグリーンピースの所業の数々を見ると、「クレーマー女史」の宗教的な言動にも鼻白んでしまおうというものです。
「ミス・クレーマー」のクジラを想う感情が本物だったとしても、あまりにも独善的かつ厚かましすぎる彼女にはほとんど感情移入などできなかったですね。
そりゃアダム・カールソンだって過去に彼女と別れもしようというものです(苦笑)。
彼の未来にとっては、物語中盤でバローにやってきて意気投合した女性リポーターのジル・ジェラード辺りと素直に恋仲にでもなっていた方が、本人のためにも良かったのではないかと思えてならなかったのですが。
個人的な好みという事情はあるにせよ、アダム・カールソンも一体何をトチ狂って「クレーマー女史」を選んだのか、あまりにも理解に苦しむものがありましたね。
あの性格では自分や(子作りしたならば)子供が苦労させられることになるって、過去の経験からも既に分かりきっていたでしょうに。

アクションシーン等の派手な描写は皆無ながらも、人間ドラマを描いた作品としては意外な面白さがあり、オススメの一品と言えます。

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