映画「ハングリー・ラビット」感想(DVD観賞)
映画「ハングリー・ラビット」をレンタルDVDで観賞しました。
日本では2012年6月に劇場公開されたアメリカ映画で、ニコラス・ケイジ主演のサスペンス・アクション作品です。
例によって例のごとく、熊本では一度として見かけたことすらない作品ですね(T_T)。
ニコラス・ケイジ主演作品は、熊本では軒並み避けられている傾向が多々ありますし(-_-;;)。
この映画の地域間格差、いい加減どうにかならないものなのかと。
物語の舞台はアメリカ・ルイジアナ州ニューオリンズ。
冒頭では、何者かがビデオカメラで録画撮影をしている中、撮影されている男が「空腹の兎が飛ぶ(ハングリー・ラビット・ジャンプ)」という謎の言葉の意味について尋ねられています。
男はとにかく怯えている様子で、一刻も早くその場を離れたがっていました。
男がしゃべった内容については物語後半で判明するのですが、それはさておき、話が終わったらしい男は周囲を警戒しながら、立体駐車場の屋上に停めていた自分の車に向かっていました。
そして男が車を発進させその場を離れようとしていたその時、突如大型のランドクルーザー?に側面からぶつけられます。
男は恐怖に震えながら逃げようとするのですが叶わず、車ごと屋上のフェンスに追い込まれ、ランドクルーザーに追突される形で屋上から死のダイブを強要されることになってしまいます。
男の車は下の車を巻き込む形で落下・大破させられ、当然のごとく男の生命もそこで尽きることとなるのでした。
舞台は変わり、カーニバル?のような祭りが繰り広げられているニューオリンズのラフィット・ホテルのバーで、今作の主人公であるウィル・ジェラードとその妻ローラ・ジェラードは、結婚記念日を祝い乾杯をしていました。
祭りで踊り明かしたり、親友に出会いのきっかけを話したりして、ローラと共に楽しんでいだウィルは、その日の夜、ローラにルビーのネックレスをプレゼントし、ローラを喜ばせます。
ウィルは地元の高校の教師、ローラは交響楽団の演奏家の職にあり、子供はいないながらも夫婦円満かつ幸せな生活を営んでいたのでした。
しかしそんな生活は、ある日ローラが銃を持った暴漢に襲われ乱暴を受けた上、ルビーのネックレスを奪われてしまったことから一変します。
妻が襲われたという知らせを聞いてすぐさま病院に駆けつけたウィルが見たものは、暴行を受け顔が腫れあがり、病室で寝かされている妻ローラの姿でした。
妻が襲われたことに当然のごとく深い悲しみと苛立ちを覚えるウィル。
しかし、そんなウィルの前に、ひとりの見知らぬ男が話しかけてきます。
サイモンと名乗るその男は、妻を襲った犯人のことを詳細に知っているようでした。
そして、犯人が捕まってもDNA鑑定や裁判で時間がかかる上、11ヶ月の服役程度で簡単に出所できてしまうということも。
その上でサイモンはウィルに対し、「自分達の組織で犯人を代わりに始末しよう」と提案してくるのでした。
金はいらないが、後日手伝ってもらうことがある、という条件を提示して。
最初は胡散臭く思い、サイモンの一度は断るウィルでしたが、直後に妻のことが脳裏に浮かんだウィルは考え直してサイモンを呼び止めます。
サイモンは謎めいた行動を取るようウィルに指示を出し、ウィルはその指示の通りの行動を行います。
果たして後日、ローラを襲った犯人は、別の男によって自宅を襲撃され、自殺を装って殺されてしまうのでした。
犯人を殺した男は、事を済ませると携帯で葬儀社に電話し、こう言うのでした。
「空腹の兎が飛ぶ(ハングリー・ラビット・ジャンプ)」と。
映画「ハングリー・ラビット」は、先が読めないサスペンス調な展開が良いですね。
個人的にはニコラス・ケイジが主演ということから、単純明快なアクションメインの作品とばかり考えていたのですが(苦笑)、これは良い意味で予想を裏切られました。
「空腹の兎が飛ぶ(ハングリー・ラビット・ジャンプ)」の意味とはどういうものなのか、サイモンの組織の実態とはどのようなものなのかなど、謎を追っていく展開が面白かったですし、ラストのオチもなかなかに底知れぬ恐ろしさを感じさせてくれるものではありました。
ああいう組織って、実態が分からないからこそ恐怖感が煽られるのであって、どれだけ巨大だろうが実態が把握できてしまえば大したことはなくなってしまうわけですが、ようやくサイモンの組織の実態が分かったかと思ったらあのラストだったわけなのですからねぇ。
この展開はかなり上手いと言えるものだったのではないかと。
また、「法に頼らない正義の組織」が暴走すると如何に恐ろしいものになるのか、というテーマも今作では内包されていて、サイモンはまさにその担い手と言えるものでした。
序盤でウィル相手に「法の無力さ」を披露していたサイモンは、主観的にはまさに「正義」を実現するつもりで、次第に組織の主旨とは異なる暴走を開始していったのでしょう。
作中のサイモンは、あくまでも「組織の邪魔になる人間」を消していっただけであって、私利私欲のために人を殺していたわけではないようでしたし。
もっとも、サイモンより上の組織の人間達も、組織の自己防衛にはそれなりの手練手管を駆使してはいるようなのですが。
警察やマスコミの上層部にまで食い込めてしまう辺り、組織の全貌ってどれくらいの規模&秘密を抱え込んでいるのでしょうかねぇ。
今作でニコラス・ケイジが演じる主人公ウィル・ジェラードは、一介の高校教師ということもあってか、それほど派手なアクションを演じて敵を爽快感溢れる倒し方で圧倒するわけではありません。
また敵との駆け引きも、観客が不安にならざるをえないような直截的かつ危なっかしい要素が多分に含まれるような稚拙なやり取りに終始していたりします。
サイモンの言いなりになることに反発を感じて半ば条件反射的に逆らったかと思えば、その後の制裁や急展開について予想外と言わんばかりな反応を示していたり、妻に組織のことを秘密にして却って猜疑心を買ってしまったりと、良くも悪くも「凡人」な言動ばかりが披露されています。
アクション映画であればまず間違いなく失格条項となるであろうこれらの描写は、しかし緊迫感溢れるサスペンスがメインである今作では却って作品の世界観に上手くマッチしていると言えるものではあります。
凡人を相手にしているからこそ、サイモンのような組織は成り立つわけですし。
その意味で今作は、アクションヒーローのような「非現実なフィクション作品」ではなく、「誰の上にも起こりえる一般人の思考・言動を元にした【現実的な】フィクション映画」と言えるのかもしれません。
ミステリー的な謎解きやサスペンスな展開が好みな方にはオススメの作品ですね。