エントリー

カテゴリー「2011年」の検索結果は以下のとおりです。

映画「T.R.Y.(トライ)」の時代考証に反する反日感情

ファイル 331-1.jpg

日中韓の共同制作作品として2003年に劇場公開された映画「T.R.Y.(トライ)」。
20世紀初頭、正確には1911年の上海を舞台に、織田裕二が演じる伝説の日本人詐欺師が、当時の日本軍から武器を奪うべく頭脳戦を繰り広げるサスペンスアドベンチャー作品です。

映画「T.R.Y.(トライ)」に登場する中国・韓国系の主要登場人物達は、皆多かれ少なかれ日本に対し反感や恨みの感情を抱いている設定を持っています。
しかし、彼らが何故日本を恨んでいるのかについて作中では何らの裏設定なり解答なりが全く明示されておらず、また当時の国際情勢を鑑みても日本が恨まれる要素は存在しません。
「過去の侵略行為」を常日頃絶叫する中国・韓国およびそれに迎合して安易に謝罪する日本、という現代でよく見られる図式から「当時もそうだったのだろう」と安易に考えてでもいたのでしょうが、当の中国・韓国が「過去の侵略行為」とやらを絶叫するようになったのは戦後になってからのことです。
そもそも「侵略が悪い」という認識が大手を振ってまかり通るようになったのは第一次世界大戦終結以降の話ですし、当時の大韓帝国などは、ハーグ密使事件と伊藤博文暗殺という2つの事件の報復を恐れるあまり、「自分の国を日本の一部として併合してくれ」などと日本に対して嘆願すらしていたくらいなのですけどね。

また中国の場合、当時の中国を支配していた清王朝は漢民族の国ではありませんし、また義和団事件から日露戦争終結まではロシアに満州を占領された上に略奪・虐殺の限りを尽くされるなど、日本以外の国による侵略の脅威にも晒されていました。
それを救ったのは皮肉にも日露戦争による日本の勝利で、ロシアは極東での南下政策を断念することになったのですから、むしろ感謝すらされても良かったくらいなものです。
すくなくとも日本軍はロシア軍どころか清王朝軍よりもはるかに公正な軍であると列強からも当時の中国人達からも高く評価されていたのですから。
実際、義和団事件や日露戦争を経て「日本の明治維新に学べ!」と考えて日本に渡った中国の革命家も数多く、後に中華民国を建国し臨時大総統に就任した孫文も、東京で中国同盟会を結成したりしています。
そして何より、このような中国の革命家達に協力したり、資金面で支援したりした日本人も決して少なくはなかったのです。

中国で国を挙げての反日感情が蔓延するようになるのは辛亥革命後、1915年に行われた対華21ヶ条要求以降です。
しかし、それよりも前の1911年時点では、映画「T.R.Y.(トライ)」のような話は時代背景的に成り立たないのではないかと思えてなりません。
前述のように、日本は中国革命家達の根拠地でもあったわけですし、革命前にわざわざ日本を敵に回してアジトを放棄したり支援のツテを失ったりするなど、自殺行為以外の何物でもないでしょう。
それでもなおかつ、そういう時代背景を無視してでも日本軍をあくまでも敵にする、という発想に行き着いてしまう辺り、「さすが日中韓合作!」という雰囲気を感じずにはいられなかったですね(苦笑)。
「T.R.Y.(トライ)」という映画は、元々井上尚登という日本人作家による同名小説を原作としているのですが、そのような作品の共同合作という形態を中国・韓国が受け入れたのは「敵は日本軍」という図式が気に入ったから以外の何物でもないでしょうから。
現代におけるあの2国の世界最大級の反日感情から考えても、そう結論せざるをえないところです。

純粋なエンターテイメント作品としては、織田裕二演じる主人公と敵の頭脳戦やラストの大どんでん返しなど、当時の邦画としては確かに面白い部分も多々あります。
しかし一方で、1911年当時の時代考証・政治背景的にはツッコミどころが満載で違和感も多く感じずにはいられなかった、というのが映画「T.R.Y.(トライ)」に対する私の評価ですね。

映画「SP THE MOTION PICTURE 革命篇」感想

ファイル 301-1.jpg

映画「SP 革命篇」観に行ってきました。
フジテレビ系列で放送されたテレビドラマ「SP 警視庁警備部警護課第四係」の映画版「SP THE MOTION PICTURE」2部作の後編に当たります。
全く予備知識がなかった前作の観賞時とは異なり、今回はテレビドラマ版のエピソード0~4、映画版前編の「SP 野望篇」、そして「SP 革命前日」を全て網羅し、準備万端整えた上で映画観賞に臨むことと相成りました。
過去作を観賞した際の私の感想については以下を参照のこと↓

映画「SP THE MOTION PICTURE 野望篇」感想
テレビドラマ版「SP 警視庁警備部警護課第四係」エピソード1&2感想
テレビドラマ版「SP 警視庁警備部警護課第四係」エピソード3&4感想
テレビドラマ「SP 革命前日」感想

私が観に行った映画館では、初日で期待作ということもあり、スクリーンはほぼ満席状態でしたね。
ただ全国的に見れば、やはりこの作品も東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)の影響は避けられなかったところだったでしょうけど。

物語は、「SP 革命前日」でも登場していた、妙にがらんどうな印象があるワンルームから、尾形総一郎が出勤していくところから始まります。
机には、これまた「SP 革命前日」で執筆していた井上薫宛に書かれた封筒が置かれています。
尾形総一郎はそれを胸ポケットにしまい、自らの職場である警視庁警備部警護課第四係へと向かうことになります。
一方、警視庁警備部警護課第四係では、サブリーダー格の石田光男と山本隆文が「SP 革命前日」で過ごした休暇の内容について語り合っています。
そこへ笹本絵里が登場し、山本隆文と2人でドツキ漫才を展開している最中に、我らが主人公である井上薫が入ってくるという展開になります。
しかしそこで突然、井上薫の例の危機感知能力が発動し、本人に「何かが起こる」と予感させます。
そんな中、トリで警視庁警備部警護課第四係に姿を現し、部下の4人組に、内閣総理大臣・麻田雄三の不信任案が提出される国会へ赴く4人の議員達を護衛する任務を伝える尾形総一郎。
エピソード4の最後と「SP 野望篇」以降、尾形総一郎に不信感を抱くようになっている井上薫もまた、議員のひとりの護衛任務に従事しつつ、国会議事堂へと向かうことになります。

国会議事堂の衆議院棟で本会議が始まる中、外で待機するSP4人組に別室を「検索」するよう命じて自分達と切り離しつつ、残ったSPメンバーと偽装した工作員達で国会議事堂の制圧に乗り出す尾形総一郎。
事前に周到な準備を整えていた襲撃側に対し、襲撃自体全く想定していない上に武器の携帯すら許されていないためにほとんど無防備と言っても過言ではない警備員達。
当然、マトモな勝負になどなるはずもなく、瞬く間に警備員達は倒され、衆議院棟へ続く通路は次々と封鎖されていきます。
そして全ての封鎖が完了し、不信任決議案で揉めに揉めている衆議院棟の扉を開き、拳銃を携えて侵入する襲撃者達。
国会議員達を銃で脅しつつ、壇上に上がった尾形総一郎は銃声一発と共に高らかに宣言します。
「国民の諸君に告ぐ。 現在をもって国会議事堂、衆議院棟は我々の支配下にはいった」と。
これが「革命」の始まりになります。

前作の「SP 野望篇」と同様、「SP 革命篇」のストーリーもまた、これまでの全エピソード、特に「SP 革命前日」を予め観ておかないと分からない設定が多いですね。
公安部所属の田中一郎が登場早々重傷を負って入院している光景や、本来国会警備の予定がなかったはずのSP4人組が国会警備に従事していることに気づいて愕然とする梶山光彦の姿などは、「SP 革命前日」を観ていないと意味不明な話でしかありませんし。
映画版「海猿」シリーズなどが単体でも話が成り立つ仕様であることを考えると、全ての話を踏襲しておかないとストーリーどころか人間関係や世界観すら理解できない、というのは、観客にとってはややハードルが高いかもしれません。
まあ、製作者側もその辺りのことを自覚していたからこそ、映画公開1週間前というタイミングで、スペシャルアンコール特別編や「SP 革命前日」をテレビ放送していたのでしょうけどね。

前作「SP 野望篇」で盛大に振舞われたアクションシーンは今作でも健在でした。
「革命」が始まり、SP4人組を始末に向かったSP四係新人チームとの戦いが勃発して以降はアクションシーンの連続。
エピソード2の戦いを髣髴とさせるような「そこら辺のありきたりな道具を使って撹乱・奇襲を仕掛ける」的な描写もあります。
ただ、それだけの卓越した戦いができるのに、衆議院棟の扉を守っていたSP所属の門番2人を倒す際に何故か丸腰同然で正面から説得に当たるという手に出ていたのは不可解もいいところでしたが。
国会制圧という挙に出ていたメンバー達は当然それなりの覚悟で事に当たっていたわけですし、井上達の説得に応じる方が変なのですし、それまでと同じように奇襲をかけて倒した方が安全確実だったのではないでしょうか。
相手が拳銃を一発ぶっ放すだけで衆議院棟や他の階にいる仲間達に自分達の所在が知られ、人質どころか自分達の身の安全すら確保しえなくなる、という現状でのあの作戦は無謀極まりない行為としか言いようがありませんし。

尾形総一郎が意図した「革命」の実態は、マスコミに国会を生中継させ、議事録にも発言内容を完全に記録させた状態で、特定政治家の過去の汚職や犯罪行為を暴露し、罪を認めさせるというもの。
何か一昔前の左翼グループの間でさかんに行われていた「総括」を想起させるものがあるのですが、本質的には「復讐」が目的だった尾形総一郎にとっては唯一絶対の必殺な策だったのでしょうね。
国民の審判を恐れる民主主義国家の政治家にとっては、確かにこれ以上ないほどに恐ろしい効果的な「罰」になりますし。

内閣を構成する閣僚達に対する追及から始まった「革命」は順調に推移し、最後に本命である麻田雄三が壇上に立たされることになります。
ここで麻田雄三は、自身を先輩として慕っていたとある議員の「自殺」についての「お前が殺したんだ!」と糾弾されることになるのですが、その際に描写された回想シーンから、実は尾形総一郎と伊達國雄が実の兄弟らしい、という事実が発覚します。
「SP 革命前日」で、伊達國雄が尾形総一郎を信頼しているかのような謎の発言を披露していたのはこれが原因だったわけですね。
しかし、尾形総一郎は確かに伊達國雄を裏切りませんでしたが、伊達國雄は尾形総一郎を見事なまでに裏切りました。
しかも伊達國雄は他の襲撃メンバー達も取り込み、尾形総一郎に銃口を向けさせるという念の入れよう。
さらにそこへ、門番達を説得し扉の向こうで待機していたSP4人組が乱入。
仲間の襲撃メンバーが次々と倒され、内と外の両面から尾形総一郎が意図した「革命」は失敗に終わってしまいます。

自分達の脅威が消失したことを知った議員達が扉に向かって殺到していく中、麻田雄三はよせば良いのに護衛もなしに単独で地下通路に逃げる道を選択してしまいます。
他の議員達をある意味「盾」にして一緒に安全圏まで逃げていれば、身の安全は普通に保証されていたのに、わざわざそんなことをするから尾形総一郎が追撃を開始してくるんですよね(苦笑)。
ここから始まる麻田雄三を巡る追跡劇は、アクションシーンがあることを除けばエピソード4のそれを想起させるものがありましたね。
これが最終的には、予告編や「SP 革命前日」にもあった屋上での対峙に繋がるわけです。

映画「SP 革命篇」は「運命の最終章」「The Final Episode」と謳われているのですが、終盤の展開を見る限りでは未だ解明されていない謎が残されており、また別の黒幕的な存在も暗示されています。
尾形総一郎が井上薫宛に出した封筒も、結局内容の公開どころか封を切られることすらなく終わってしまっていますし。
どう見ても「続きがある」ような終わり方をしているのですが、果たして続編が作られることはあるのでしょうか?

映画「わさお」感想

ファイル 297-1.jpg

映画「わさお」観に行ってきました。
青森県西津軽郡にある鰺ヶ沢町(あじがさわまち)を舞台に、ネットで有名になった秋田犬長毛種のブサかわ犬・わさおの半生を描いたハートフルドラマ。
薬師丸ひろ子が22年ぶりに主演を演じ、また主人公である「わさお」を、代替犬を使うことなく本物のブサかわ犬である「きくやわさお」が自ら演じたということでも話題になった作品です。

物語は、過去に行われた鯵ヶ沢町のトライアスロン大会の際、両親と姉弟の4人家族が映し出されるところから始まります。
その中の末っ子の少年アキラは片手にシロという白い子犬を、片手に赤いボールを持ち、選手達の応援をしていました。
しかしその時、ふとした拍子に赤いボールが道路に転げ落ち、それを取ろうとシロが道路に飛び出してしまいます。
そこへ、お約束のように登場し、シロを跳ね飛ばさんと迫ってくる車。
事態に気づいた母親が道路に飛び出してシロを庇い、結果、シロの代わりに母親が交通事故に遭い半身不随となってしまいます。
そのことにショックを受けたアキラは子犬を飼う気を無くしてしまい、シロに対して半泣きになりながら「おまえなんかどっかに行っちゃえ!」という罵倒を投げつけ、子犬は東京の親戚にもらわれていってしまいます。
しかし、アキラのことが忘れられないシロは、親戚のオバサンが玄関先で配達人?の相手をしている隙を突いて空いていた窓から脱走し、鯵ヶ沢町までの長い旅に出ることになります。

月日は流れ、鯵ヶ沢町では畑が何者かに荒らされる被害が出ていました。
被害状況から見てクマか大きな野犬ではないかという疑惑が駆け巡り、住民が対処に追われる中、白いライオンのような犬が町のあちこちで目撃されるようになります。
鯵ヶ沢町の海辺でイカ焼き屋を経営し、元捨て犬だった4匹の犬を飼っていた薬師丸ひろ子演じる菊谷セツ子の前にも、この白いライオンのような犬が現れます。
もちろん、この犬の正体は、東京から鯵ヶ沢町までの長い旅を経て成長したシロだったりするのですが。
菊谷セツ子が初めてシロを見た際の感想は「ギリギリな犬」「わさわさしてる」。
菊谷セツ子はこれまで拾ってきた犬達と同じように「ギリギリな犬」と接し、当初は餌をやろうとしても拒否されていた「ギリギリな犬」も、ナギサという老犬が普通に食べる様子を目撃したからなのか、やがて餌を食べるようになります。
菊谷セツ子はこの「ギリギリな犬」に「わさお」という名前をつけ、なにかと世話をしていくことになるのですが……。

内容を見る限り、映画「わさお」はわさおファンを意識して製作された作品、というイメージがありますね。
作中で展開されるわさお関連のエピソードは、明らかにわさお関連のブログで取り上げられたネタを元に作られています。
たとえば、菊谷セツ子がわさおと初めて出会うシーンなのですが、これはわさおがブサかわ犬として全国的に有名になる発端となったブログ記事をベースにしていたりするんですよね↓

イカの町で出会ったモジャモジャ犬「わさお」 ― メレンゲが腐るほど恋したい
http://d.hatena.ne.jp/mereco/20080526/p1

両者が出会った場所からして、上記のブログ記事に掲載されているこの画像の風景そのものでしたし↓

ファイル 297-2.jpg

また、わさおとの初対面の際における菊谷セツ子の第一声もまた、件のブログ記事を執筆したブログ主であるメレ子さんの第一声「なんか犬としてもギリギリな感じの犬がいるー!」とほぼ同じものだったりします。
「わさお」という名前自体もこの時メレ子さんが仮に名付けたものですし。
実際のわさおは国道沿いで捨てられていたのを拾われたらしく、最初は「レオ」と名付けられていたようなのですが、飼い主である菊谷節子さんが「わさお」という名前を一発で気に入り、正式名称も2009年初頭に「わさお」へ改名したのだとか。
その辺りの経緯はこちらに載っています↓

レオがわさおになった理由(わけ) ― わさお通信:今日のしっぽ
http://www.toonippo.co.jp/blog/wasao/2009/01/24213145.html

さらに作中では、菊谷セツ子が元々飼っていた4匹の犬のうち、ナギサという老齢の犬が天寿を全うすることになるのですが、こちらも実際に菊谷商店でわさおと一緒に飼われていたチビという老犬のエピソードをベースにしたものです。
元ネタはこちら↓

チビ永眠 ― わさお通信:今日のしっぽ
http://www.toonippo.co.jp/blog/wasao/2010/05/02194623.html

ここでは、ナギサの死期が近いことを悟った菊谷夫妻がつきっきりで見守りつつも、夜も遅いこともあってついうたた寝してしまった間にナギサが逝ってしまうのですが、夜中にどこからともなく出てきたわさおがナギサの死を看取り、菊谷夫妻も朝になって残された毛からそのことを知る、というストーリーが展開されます。
ちょっと目を離してしまった間に老犬が逝ってしまい最期を看取りそこなう、というパターンは、実は私の実家でも似たようなことが過去にあったので、この辺りの話は個人的に他のシーンよりも飼い主に感情移入して観ていましたね。
この話の元ネタとなった老犬のチビは、昼過ぎ頃に永眠したということもあってか、飼い主とわさおにきちんと看取られての最期だったようですが。

作中に登場した動物達は、本犬役を演じた「きくやわさお」のみならず、菊谷商店で飼われていた4匹の犬や、菊谷商店の周囲にたむろしていた猫達も含めて、皆自由にのびのびしている感がありましたね。
飼い主が海岸で犬達の放し飼いにして好きに走らせたりする描写がありますし、菊谷商店に居つくようになって以降のわさおも基本は放し飼いです。
製作者達も、犬達の自然な様子を撮りたいという意図から、あえて訓練を受けていない犬を選んだとのことで、その辺りはさすが上手く表現できているのではないかと思いました。
ただ、主演という割には、思ったよりもわさおの出番が少なかったような印象は否めませんね。
特に物語中盤付近における鯵ヶ沢トライアスロン大会などでは、わさおはほとんどストーリーに絡むことがありませんでしたし、それ以外にも小さなエピソードを大量に詰め込み過ぎているような感もあります。
この辺りに「訓練された犬」ではなく本犬自身が出演、ということで生じる問題や限界などがありそうですね。

動物映画でありながら悲劇的な結末で終わらない、という点において、映画「わさお」は愛犬家にとってはある意味「安心して観れる作品」だったりします。
忠犬ハチ公や今年の6月公開予定の映画「星守る犬」などのように「飼い主・飼い犬のどちらか、もしくは双方共に死をもって終わる」的な悲劇的結末だと、確かに感動的ではあるかもしれませんが同時に悲しくもなってくるので、個人的にはあまり好きにはなれないんですよね。
悲劇で終わらない動物映画って最近少ないので、そういう観点から見ると、映画「わさお」は動物映画としては希少な部類の作品と言えるのかもしれません。

映画「太平洋の奇跡-フォックスと呼ばれた男-」感想

ファイル 272-1.jpg

映画「太平洋の奇跡-フォックスと呼ばれた男-」観に行ってきました。
大東亜戦争(太平洋戦争)で激戦が繰り広げられたサイパン島のタッポーチョ山で徹底抗戦を続け、民間人を守り通した大場栄大尉(通称フォックス)率いる47人の日本兵達の物語。
元アメリカ海兵隊のドン・ジョーンズがまとめた長編実録小説『タッポーチョ「敵ながら天晴」大場隊の勇戦512日』を原作とするノンフィクション作品です。

大東亜戦争(太平洋戦争)の最中にある1944年、6月に行われたマリアナ沖会戦で勝利し、事実上戦争の勝敗を決したアメリカ軍は、当時日本領だったサイパン島南部に上陸。
アメリカ軍は圧倒的な装備と兵力で島の日本軍を圧倒、追い詰められた日本軍は7月7日にバンザイ突撃を敢行、少なからぬアメリカ兵を道連れにして全滅することになります。
しかし、今作の主人公である大場栄大尉は、この突撃に参加しながらもかろうじて生き残り、さらに日本軍から離れて戦う堀内今朝松一等兵をはじめとするヤクザ物の集団に出会います。
生き残りを図るために互いに共同戦線を張り、アメリカ軍の索敵から身を隠しつつ安全な場所を求めて歩き回った末、一向は水がある一軒の廃屋に辿り着きます。
ヤクザ物達が水を求めて狂喜するのを尻目に、廃屋の中を調べる大場大尉。
するとそこには、両親を殺されカゴの中で放置されていた赤子の姿が。
赤子を連れて行くことは困難であるとヤクザ物達から言われた大場大尉は、アメリカ軍に保護してもらうべく、赤い布切れの目印を廃屋の玄関先に垂らしてその場を後にします。
その後大場大尉一向は、サイパン島中部にあるタッポーチョ山へと向かい、仲間達を集めつつ、アメリカ軍への抵抗を続けていくことになります。

一方、アメリカ軍ではバンザイ突撃後も日本軍の残党狩りが行われていました。
しかし、圧倒的優位の戦力差と勝勢に慢心しているためか、日本軍残党を舐めまくっているアメリカ軍。
日本に留学経験を持ち、日本語も堪能なハーマン・ルイス大尉が「彼らを侮ってはいけない」とたしなめるものの、大多数のアメリカ兵達は態度を改めようとしません。
そして案の定、大場大尉率いる部隊の山岳&ジャングルという地形を活かしたゲリラ戦により、少なからぬ死傷者を出してしまうアメリカ兵達。
一向に日本兵を捕まえられない現状に苛立ちを覚え始めたアメリカ軍は、何千人もの兵士を使った大規模な山狩りに打って出るのですが、それでもほとんど戦果は挙げられず犠牲は増えるばかり。
そんな中、徹底抗戦でアメリカ軍を翻弄する日本人指揮官を、アメリカ軍は畏敬の念を込めて「フォックス」と呼ぶようになります。
そしてハーマン・ルイス大尉は、サイパンのアメリカ軍収容所で保護している日本人の証言から、その「フォックス」が大場栄大尉であることを突き止めるのです。

映画「太平洋の奇跡-フォックスと呼ばれた男-」は、史実のサイパンの戦いで敗退していく日本軍がメインで描かれているため、ストーリーはお世辞にも明るいとは言えたものではないですね。
まあ、結末は「一兵残らず玉砕」ではなく、ちゃんと日本に帰還できる終わり方をしているので、その辺りは救いだったりするのですが。
サイパン島に駐留しているアメリカ軍は、民間人に対しても比較的寛大なスタンスで迎え入れていましたし、日本軍に対しても「フォックス」に好意的なハーマン・ルイス大尉が降伏交渉に臨んだりしています。
戦時中、最大の激戦地となったガダルカナル島では、日本軍は捕虜にされることすらなく徹底的に虐殺された事例が多々あったわけですし、それに比べればサイパン島はすくなくとも流血が少ないまとめ方ができたと言える方でしょう。
また、降伏交渉の際、大場大尉が「日本軍はアメリカ軍に降伏できないが、上官からの命令であればそれに従う」という形で事実上降伏を受け入れたシーンは結構印象に残りましたね。

日本軍を扱った戦争物としてはそこそこに良く出来ている方なのではないかと。

映画「白夜行」感想

ファイル 263-1.jpg

映画「白夜行」観に行ってきました。
東野圭吾原作のサスペンス小説映画版。
質屋の殺人事件から始まる、被害者の息子、容疑者の娘、そして18年もの歳月をかけ真相に迫る刑事の視点で綴られる心理描写ミステリー作品です。
ちなみに私は、原作未読のまま映画を観に行っています。

物語最初の舞台は1980年(昭和55年)、廃ビルで質屋の店主だった桐原洋介が、廃ビルで遊んでいた子供達に発見されることから始まります。
事件発覚後、まずは被害者の妻である桐原弥生子と、質屋の従業員である松浦勇が警察に事情聴取されます。
その際、両者の事情聴取に当たっていた刑事・笹垣潤三は、質屋の2階にいた被害者の息子である桐原亮司からの話を聞くことになります。
この時のアリバイ証言である「テレビを見ていた」に関する裏づけとして行われた「クイズダービーではらたいらが竹下景子に敗れた」という説明は、当時の時代を象徴していて何とも懐かしい気分にさせられましたね(苦笑)。
その後の警察の調査で、被害者は西本文代という女性の家に足繁く通っていたことが判明。
彼女とその愛人である寺崎忠夫が容疑者として浮上したため、笹垣潤三は相棒の古賀久志と共に西本文代の自宅を訪問します。
その際に留守だった西本文代に代わって応対したのが、西本文代の娘で当時小学生だった西本雪穂。
被疑者である西本文代を待つ間、ハードカバー本?の「風と共に去りぬ」を黙々と読んでいる西本雪穂に、笹垣潤三は強い印象を抱くことになります。
やがて帰宅した西本文代に、笹垣潤三は事情聴取を行っていくのですが、彼女には事件当時「公園でブランコをこいでいた」というアリバイが出てきます。
決定的な証拠も出ないまま捜査が難航する中、西本文代はガス中毒で、寺崎忠夫は交通事故でそれぞれ死亡してしまいます。
有力な容疑者が死亡してしまったことに加え、警察上層部のひとりの出世問題が切迫していたという事情が重なったことも相まって、結局事件はそのまま被疑者死亡ということで表面的には決着することになります。
しかし、笹垣潤三はこの決着に納得がいかず、自らの出世を棒に振ってまで独自に調査を進めていき、事件の被害者の息子である桐原亮司と、容疑者の娘である西本雪穂も、それぞれの人生を歩んでいくことに……。
という形で、以後、1985年(昭和60年)、1988年(昭和63年)、1989年(平成元年)にそれぞれエピソードが語られていき、最終的には1998年(平成10年)で事件の真相が明らかになります。

映画「白夜行」では、作中における年を表す描写として、その時代を象徴するキーワードが出てくるのが面白かったですね。
1980年は前述のクイズダービーの話、1985年は本田美奈子のコンサート、1989年は社交ダンス関連の話が出てくることで、それぞれの年が表現されています。
まあ、この3つの中で私がピンと来たのはクイズダービーだけで、社交ダンスは1996年公開映画「Shall we ダンス?」からの連想で少し時代がズレていましたし、本田美奈子に至っては存在すら知らなかったというのが実態だったりするのですが(^^;;)。

作中のストーリーは、最初から最後までとにかく「暗い」の一言に尽きますね。
殺人、冷たい家族関係、学校内でのイジメ、報われない愛、レイプ・性的虐待と、暗い話が目白押しに続きますし。
ところどころに「明るさ」を感じさせてくれるエピソードもあるにはあるのですが、それもほとんどは後半で不幸のどん底に突き落とすための伏線だったりします。
さすが元々がミステリー小説なこともあってか、物語終盤で全ての真相が明らかになる描写の運び方は上手いものがありましたが、最終的な結末も「何故そこでそんな選択を…!?」と言わんばかりのバッドエンドな終わり方をしていますし。
映画の宣伝ポスターで謳われている「二番目に殺したのは、心」というキャッチコピーに良くも悪くも偽りはなし、ですね。

ハリウッド映画にありがちな「爽快感を伴うハッピーエンド」的なものは全く期待できませんので、そういう作品を観たいという方にはあまりオススメできない作品ですね。
あくまでもミステリー好きのための映画、といったところでしょうか。

映画「GANTZ」感想

ファイル 257-1.jpg

映画「GANTZ」観に行ってきました。
集英社の青年漫画雑誌「週刊ヤングジャンプ」で連載中の同名作品実写映画2部作前編。
映画「大奥」で主役を演じた二宮和也と、映画「デスノート」シリーズでL役を担当した松山ケンイチが共演するということで大いに喧伝された作品です。
作中では「肉体や血が飛び散る」的スプラッタな描写が満載のため、この作品はPG-12指定されています。

二宮和也が演じる主人公のひとり・玄野計は、地下鉄の駅ホームで、松山ケンイチが扮するもうひとりの主人公・加藤勝の姿を見かけます。
玄野計と加藤勝は小学生時代の幼馴染で、前者は就職内定がもらえない大学生、後者は弟を守るために父親を殺して少年院に入っていたという設定です。
加藤勝は、駅ホームで線路に転げ落ちた酔っ払いを助けようと線路に飛び込み、酔っ払いをホームに退避させますが、ちょうどその時快速電車が迫ってきます。
玄野計は加藤勝を助けようと手を差し伸べるのですが、逆に線路内に引っ張られてしまい、結果、2人共々電車に轢かれることになってしまいます。
しかし次の瞬間、光に巻き込まれた2人は、東京タワーが見えるとあるマンションの一室に出現することになります。
部屋から外に出ることはできず、また部屋の中には数人の人間と黒い球体がひとつ。
呆然とする2人の前で、黒い球体が放つ青い光によって裸の女性が構築されていき、周囲の人間が「お前達もこうして出てきたんだ」と教えてくれます。
その直後、黒い球体から60年代を想起させるような音程の音楽が流れ、音楽が終了すると、黒い球体に文字が浮かび上がり、ねぎ星人という名の存在と戦うよう命じられます。
それと共に黒い球体が開き、黒い球体からこれまた黒ずくめな武器とスーツが出現。
戸惑いながらも武器やスーツを手にする中、突然部屋の外にワープさせられる部屋の人間達。
ここから、主人公と星人達との戦いが始まることになります。

最初のねぎ星人が殺され、ミッションクリアを達成した後に、黒い球体が「GANTZ」と呼ばれていることが判明します。
作中に登場する星人達は、ねぎ星人・田中星人・おこりんぼう星人の3種類。
ただし、最後のおこりんぼう星人の際には、ターゲットのおこりんぼう星人以外にも千手観音と巨大大仏がおり、これも倒さないとミッションクリアになりませんでした。
幼稚園児レベルのネーミングセンスとは裏腹に、星人達は超絶的な戦闘力と残虐性を秘めており、GANTZの召喚メンバー達を次々と虐殺していきます。
GANTZの召喚メンバー達は老若男女問わず選出の対象にされており、老婆と子供の組み合わせまで召喚されている上、それでも作中では容赦なく虐殺されていたりします。
その一方で、ミッションクリアまでにとりあえず生存さえしていれば、どんなに重傷を負っていても、ミッションクリア後に完治状態で最初の部屋に戻ってくることができます。
ミッションクリアになると、GANTZがメンバー達を採点していくことになるのですが、その採点基準は「直接星人を殺したメンバーに点数が与えられる」のみ。
採点の際、0点の人には何故か「びびりすぎ」だの「存在感なさすぎ」「いたの?」だのといった、人を小馬鹿にしているような一言評価がくっついていたりします。
ネタとしか思えない評価が出される度に、スクリーン内では笑い声があちこちから漏れていましたね。

星人を倒して100点になると、そのメンバーは「GANTZから解放される」か「好きな人間を生き返らせる」かの2択を選ぶことができます。
原作では他にも「強力な武器が得られる」という選択肢があったようなのですが、映画版では削除されているようですね。

作中に登場する武器は、トリガーを押して光が発射されてから数秒後に内側から破裂させるショットガンもどきな銃(小型と大型の2種類)がメインに使用されていますが、他に獲物をグルグル巻きにして捕獲する銃と伸縮自在のソードが登場します。
一方、個々人の名前が書かれているアタッシュケースに収納されているスーツは、身体能力と防御能力を飛躍的に上昇させてスーパーマンのごとき人間になれる夢のようなスーツで、作中でもこのスーツを身に纏い、高台からジャンプして有頂天になる玄野計の姿が描かれています。
黒一色で洗練されたデザインといい、その驚異的な性能といい、この間観賞した映画「グリーン・ホーネット」に登場した発明品の数々が霞んでしまうほどに、いかにも未来感溢れる道具と言えますね。
玄野計の有頂天な描写も、ああいうスーツがあったら確かにああなるだろうなぁ、というものでしたし。

作品的な雰囲気としては、以前に観賞したことのある映画「トロン:レガシー」に近いものがありましたね。
アレも未来兵器的な武器が登場しますし、何よりも夜の舞台をバックに黒ずくめなスーツを着用して活動していましたから(苦笑)。
アクション系の描写も、本場ハリウッドには及ばないにしても、日本映画としては十分頑張っている部類に入るのではないかと。

映画「GANTZ」は2部作構成とのことで、後編となる次回作品は2011年4月23日に公開予定とのこと。
エンドロール後に後編の予告がありますので、映画を観賞される際には最後まで席を離れないことをオススメしておきます。

ページ移動

  • ページ
  • 1
  • 2
  • 3

ユーティリティ

2024年11月

- - - - - 1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30

検索

エントリー検索フォーム
キーワード

ページ

  • ページが登録されていません。

新着画像

新着トラックバック

Re:デスクトップパソコンの買い換え戦略 ハードウェア編
2024/11/19 from ヘッドレスト モニター 取り付け
Re:映画「マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙」感想
2014/11/27 from 黄昏のシネマハウス
Re:映画「プリンセストヨトミ」感想
2014/10/22 from とつぜんブログ
Re:映画「ひみつのアッコちゃん」感想
2014/10/19 from cinema-days 映画な日々
Re:映画「崖っぷちの男」感想
2014/10/13 from ピロEK脱オタ宣言!…ただし長期計画

Feed