映画「ドットハック セカイの向こうに(3D版)」観に行ってきました。
2002年から始まり、マンガ・アニメ・ゲームその他多彩にメディアミックス展開されてきた「.hack(ドットハック)」シリーズの3Dアニメ映画。
当初、今作は私の映画観賞予定リストには含まれていなかったのですが、たまたま休みとなった2月1日がちょうど「映画の日」で映画料金が割安だったこともあり、急遽映画館へ足を運ぶことになりました。
3D版しか上映されていなかったので泣く泣く3D料金での観賞となりましたが、相変わらず2Dとどこら辺が異なるのかよく分からない映像で、その点については「何故こんなことに余計なカネを使わなければならないのか?」といつものことながら嘆かざるをえなかったですね(T_T)。
物語は2024年、何故か数匹のクジラとそれを取り囲んでいる数隻の船の様子が描かれている有明海の描写がひとしきり映し出された後、とある中学校で行われている学力テストの風景から始まります。
作中における2024年の学校では、机に固定されている?iPadの発展型のような端末を使って授業やテストが行われているらしく、また黒板もチョークで書き込むものではなく「黒板型電光掲示板」のようなシロモノに変えられています。
また、テストが終わったら後ろの席から解答用紙を集めていくのではなく、教師の端末に答案内容を送信するという形になっています。
ただ、この一見「未来」を感じさせるハイテクの数々にも問題がないわけではなく、テストの問題を解くのに難儀していたらしい今作の主人公・有城そらの席では、端末の調子が悪いのか教師の下へなかなかデータが送信されないといった不具合が発生したりもしていました。
ああいうのって意外に大きな問題になりそうな気もするのですが、それはさておき、テストが終わったクラスでは、冒頭に出てきた有明海に流れ着いたというクジラの話題で持ちきりになっていました。
ちなみにクジラの描写は、今後の物語で何らかの伏線として機能するのではないかと思ったのですが、結局序盤でクラスメイト達に話題を提供した以上の役割はありませんでした(T_T)。
話題となっている有明海が中学校からほど近いこともあり、友人達から一緒にクジラを観に行こうと誘われる有城そらですが、有城そらは迷った末にこれを断り、そのまま自宅への帰路に着きます。
その帰り道、有城そらは街の水路にあるベンチに座り込んでいる熱中しているクラスメイト・田中翔に出会います。
彼は「FMD」と呼ばれている特殊なメガネをかけ、携帯でも出来るオンラインゲーム「THE WORLD」に没頭していたのでした。
実は有城そらのクラスでは「THE WORLD」が流行しているらしく、「THE WORLD」をプレイしたことがないのは有城そらひとりだけという状況でした。
有城そらは頑固一徹の祖父の影響もあり、その手のゲームに全く近づこうとはしなかったのです。
他のクラスメイトとの会話でもしばしば「THE WORLD」の話が持ち出され、ひとり全くゲームをプレイしていない有城そらは、どこか話題から取り残されたような感覚を覚えるようになっていました。
幼馴染の岡野智彦および田中翔と一緒に福岡市の天神へ遊びに行った際も、「THE WORLD」絡みで新型「FMD」を購入するため家電ショップへ向かう友人達と途中で別れてしまうことに。
ところがその家電ショップで岡野智彦と田中翔は、ちょうど買い物を済ませて店から出てこうとする有城そらの祖父・有城武生を発見。
近くのマクドナルド?で問い詰めた結果、有城武生もまた「THE WORLD」にハマっていることを告白したのでした。
有城武生と出会ってすぐに再度合流するよう携帯で連絡を受けた有城そらもこの事実を知るところとなり、これが有城そらが「THE WORLD」の世界に踏み込むひとつの大きなきっかけとなります。
そんな中、ホームサーバー情報収集ロボ「まことさん」から「THE WORLD」のお試しが届いたという連絡を受け、さらに田中翔から「FMD」を貸してもらったことなども手伝い、有城そらは「THE WORLD」の世界へ足を踏み入れることになるのですが……。
この映画では、オンラインゲーム「THE WORLD」と、福岡県柳川市を主要舞台に物語が展開されます。
「THE WORLD」はあくまでも架空の存在ですが、作中に登場する現実世界の施設などは、現実にあるものがそのまま使われています。
たとえば、主人公達が通っている中学校のモデルは柳川市立柳城中学校で、体育館や校舎といった外観もそっくりに描写されています。
また、主人公達が福岡市の天神へ遊びに行く際に使用していた鉄道は、作中で走行している列車内にある電光掲示板に「福岡(天神)行き 次は花畑」と表示されていたことから、福岡市天神から福岡県南端の大牟田市までを結ぶ西鉄天神大牟田線であると簡単に特定できます。
福岡(天神)駅も花畑駅も共に西鉄天神大牟田線にある駅であり、特に西鉄久留米駅の南隣に位置する花畑駅は西鉄天神大牟田線にしか存在しないのですからね。
これが西鉄天神大牟田線の駅一覧↓
http://www.nishitetsu.co.jp/train/rosen/o.htm
さらに、天神で主人公達が街を歩いていた際に描写されていた大通りや建物などといった諸々の風景も、実際に天神で見られるそれをそのままベースにしていますし、作中に出てくる家電ショップでは、九州大手の家電量販店「ベスト電器」オリジナルの店内放送BGMが流れていたりします。
アレを聞いた時は、映画「ニューイヤーズ・イブ」および映画「ジョニー・イングリッシュ 気休めの報酬」で、「TOSHIBA」という実在の企業名がしばしば登場していた事例をついつい思い出してしまったものでした(苦笑)。
物語後半に登場する病院に至っては、そのものズバリ「長田病院」という固有名詞がデカデカと描写されていましたし、その外観もまた、福岡県柳川市に実在している長田病院そのものだったりします。
柳川市の内科専門病院:清和会長田病院(ながたびょういん)
http://www.seiwakai.info/nagata/index.html
公式サイトのプロダクションノートによれば、今作の映画制作者達は、作中に登場している店や施設のほとんどから実際に許可を取って描写していたのだそうです。
西鉄天神大牟田線と福岡天神は個人的に馴染み深いものだったこともあり、風景などはよく覚えているだけに「ああ、ここは見覚えがあるな、あそこら辺だろう」とあちこちで何度も感慨を抱いたものでした。
現地を知っている九州の人間としてそう感じるわけですから、その作りこみぶりは相当なまでに気合が入っているものなのではないかと。
ただ、肝心の柳川市はロクに行ったことがないので、柳川市のシンボルにして観光名所にもなっているはずの水路と川下りは、すぐには「柳川のことか!」と連想することができなかったのですが(^^;;)。
一応知識としては柳川にもそういう名所があることを知ってはいたのですけど、個人的に「川下り」と言ったら、一度も行ったことのない柳川の川下りよりも、過去に実際に乗ったことのある球磨川のそれの方が先に結びつくものだったりしますからねぇ(苦笑)。
九州ローカルネタ以外で印象に残ったことと言えば、2012年時点の水準から見ればとてつもなく高性能なのに、作中の基準的には2世代前の旧型らしいホームサーバーの「まことさん」の存在ですね。
IT絡みについては何も知らない主人公を完璧にサポートできる機能がある上に、主人公の命令や質問に対しても受け答えができるという高性能なAI機能が搭載されているときています。
今から僅か12年後でああいうのが一般化するというのはまさに夢のような世界ではありますね。
ただ、いずれはAI機能が実用化されるにしても、今から僅か12年で、それも一般家庭でも普通に購入できるというところまで発展できるのかと言われれば、かなり疑問と言わざるをえないところではあるのですが。
「ナイトライダー」シリーズを観ていた頃からああいうのは好きではあるのですけど、いつになったら作中のようなAI機能が一般的な商用実用化のレベルにまで到達するのかなぁ、と。
映画「ドットハック セカイの向こうに」は、良くも悪くも「オンラインゲームについて知っている人向けの内容」で構成されていますね。
一応主人公を「オンラインゲーム初心者」に設定した上で、何も知らない人間の視点からオンラインゲームにハマっていく過程を描いてはいますが、オンラインゲームのことを知らなかったり、偏見を抱いていたりする層に受けるような作品ではないのではないかと。
客層をかなり限定しそうなので、大ヒットは難しいと言わざるをえない映画ですね。