ヨーロッパ随一の「移民に寛容な国」として長年多くの移民を受け入れてきたイギリスが、ついに移民の規制に乗り出しました。
デービッド・キャメロン首相は、イギリス南部ハンプシャー州で開かれた保守党の会合で行った演説で、移民の受け入れ数を現状の年間「数十万人」から「数万人」に減らすと公約しました。
さらに、これまでのイギリスの福祉政策を「移民が多くなった元凶」として批判すると共に、「大量の移民ではなく優秀な移民のみを歓迎する」と発言しています。
http://megalodon.jp/2011-0417-1721-53/www.newsweekjapan.jp/stories/world/2011/04/post-2055.php
イギリスに限らず、ヨーロッパ諸国の多くが移民の問題に悩まされています。
オランダでは1960年代から70年代にかけて、不足する労働力を補うためにモロッコから大量の移民を受け入れましたが、彼らはオランダの文化・宗教はおろか言語さえも一切受け付けず、結果、オランダは従来のオランダ社会と移民社会の2つに分断されることとなりました。
移民してきたモロッコ人達はオランダ社会に敵対的で、数的にも総人口の約10%を占めることから、社会的不安を構成する要因のひとつにすらなっているのです。
1970年半ば頃まで大量の移民を受け入れてきたフランスでは、移民の増加がフランス人の失業率を押し上げていると考えられていることや、移民の居住区が盗みや暴力事件等の犯罪の温床となっていることなどから、「フランス文化を尊重しない移民」の排斥を訴える「国民戦線」という政党が公然と支持を伸ばしています。
スウェーデンでも移民の問題は深刻で、スウェーデン南部の人口第3位の都市マルモでは、人口25万のうち4分の1がイスラム系の移民で占められ、スウェーデン文化に溶け込まず失業率も高い彼らの存在は、やはり犯罪の増加や社会不安の要因のひとつとなっています。
外国からの移民は、生活水準が低く貧しいことや、現地の文化に溶け込まず自分達の生活習慣を維持することなどから、移民を受け入れているはずの国と国民を敵視していることもしばしばです。
また出生率が高く、故郷の家族を呼び寄せ一緒に暮らすケースも多いことから人口増加のスピードも速く、総人口に占める割合が増えていることも大きな社会不安となっているのです。
白人移民に社会の主要部分を乗っ取られ滅亡を余儀なくされたハワイ王国や、中国人移民の大量流入によって中国に編入させられた満州地方および滅亡の危機に瀕している満州人など、移民はそれ自体が立派な侵略の尖兵にもなりうる、極めて危険な要素なのです。
正直遅きに失した感がなきにしもあらずですが、イギリスもようやく他のヨーロッパ諸国と認識を共有し、移民規制に乗り出すようになったというわけですね。
移民問題は日本でも「対岸の火事」として見て良いものなどではありません。
様々な特別措置で支援しているばかりか、TBSのような大手マスメディアを乗っ取りすらしている在日韓国・朝鮮人や、近年急速に増加している中国人移民の問題など、日本にも移民の問題は存在するのです。
日本で移民を推進してきた人達は、「ヨーロッパの移民受け入れと多文化主義を見習え」的なことを述べていたわけですが、そのヨーロッパからして上記の惨状なわけです。
日本もそれこそ「ヨーロッパに倣って」移民受け入れの政策を見直すべきなのではないでしょうか?
ところで「イギリスの移民受け入れ」と言えば、やはりあの御方を無視するわけにはいかないでしょう。
己の著書でこんな絶賛調な文章を、ストレス発散とばかりに盛大に書き殴っていた人です↓
創竜伝10巻 P93下段~P94上段
<四人はB&Bを出て、おおざっぱにテムズ川の方角へと向かった。一軒の店にはいって買い物をし、街角の旧式な時計を見ると九時半である。
始はデジタル時計よりアナログ時計のほうが好きだ。デジタル時計は「五時五七分」というように単一の基準と表現を押しつけてくるが、アナログ時計だと「五時五七分」「六時三分前」「もうすぐ六時」という風にさまざまな見かたができる。ゆとりと多様性を感じさせてくれるからなのだが、「緻密さと正確さとを欠く時代遅れのもの」といわれれば、たしかにそれまでである。だが万人が秒以下の単位まで厳密な時間に追われる必要はないだろう、とも始は思うのだ。そして、アナログ時計の心地よさをロンドンの街に感じる。古いビルを建てなおすときに、内装や設備は最新式にしても外見は古いままに保つ。日本橋の真上に高速道路をかぶせて建設し、醜悪な市街づくりに狂奔してきた日本では、泡沫経済がはじけて消えた後に、コンクリートの原野だけが残った。あらゆる亡命者を受け容れ、王室に対しても言論の自由を認めた大英帝国の度量を学びとらないまま、虚妄の繁栄を終わろうとしている。かつて「日本だけが永遠に繁栄する」とか「株と土地は永遠に値が上がりつづける」とか主張していた経済評論家たちは、いまごろどうしているのだろうか。>
イギリス病のすすめ・文庫版あとがき P239
<この四年の間に、イギリスには移民がさらに増え、文学、音楽、演劇、映画から料理に至るまで多彩で多様な創造と発展があいついでいます。それは非寛容と独善に対する寛容と自由の勝利です。このような勝利をこそ、「先進国」は誇りとし、永続させてほしいとつくづく思うのです。>
創竜伝13巻でも、「外国からの移民・難民に門戸を開放する」などという政策提言が掲げられているくらいですから、イギリスの移民受け入れ政策に対する田中芳樹の思い入れはかなりのものがあります。
それだけに、今回のイギリス保守党が掲げた公約とそれを指示する国民の存在は、田中芳樹にとっては裏切り行為もいいところで、まさに「非寛容と独善に対する寛容と自由の【敗北】」以外の何物でもないシロモノだったことでしょう(苦笑)。
もしこのニュースを田中芳樹が知るところになれば、次の薬師寺シリーズの新刊辺りで、デービッド・キャメロン首相をモデルにした悪役が登場したり、「人類の敵」「神をも恐れぬ犯罪行為」と言わんばかりの社会評論が盛大に繰り広げられたりすることになるかもしれませんね(爆)。