邦画への偏見を助長した映画「きけ、わだつみの声 Last Friends」
私が映画館に行って観る映画というのは、その大部分が洋画の、特にアクション物とSFX系によって占められています。
元々私は「バック・トゥ・ザ・フューチャー」から映画観賞が本格化したという経緯がありますし、また観ていて爽快感が伴う映画というのが好きなこともあって、ハリウッド映画は自分の好みに合うものが多いんですよね。
一方、邦画はどうかというと、こちらは長いこと
「アニメや特撮を除けば、エンターテイメント性を捨て去り、外国向けのステレオタイプ的な日本の宣伝広告を目的にしている、映画というものを根本的に勘違いしているジャンル」
などという偏見に満ち溢れた評価ばかり叩きつけていた時期がありました。
私の場合、元々その偏見は漠然とながら存在していたものなのですが、それが深刻なまでに確たる評価として確立してしまうきっかけになった映画が存在します。
それは、1995年に戦後50周年記念と銘打って公開され、戦時中における最前線の悲惨な実態を描いた「きけ、わだつみの声 Last Friends」という映画です。
この映画は最初から最後までとにかく雰囲気が暗く、また日本側はやることなすこと全面的に悪として描かれている反面、アメリカ軍がまるで正義の使徒であるかのように描写されています。
ラストも主人公を含めた日本軍側の登場人物全員死亡という何の救いもない結末で、爽快感を楽しむためのエンターテイメントとしてはゴミもいいところ。
「反戦平和」というものを強調し宣伝広報したいがあまり、肝心要なエンターテイメント性をかなぐり捨てていたそのスタンスは、映画作品というよりも「反戦平和のための教材」とでもいうべきシロモノ。
一応は映画作品なのだから、エンターテイメントとして面白い物にはなっているだろうという私の期待は完膚なきまでに裏切られました。
この映画以後、「邦画は駄作の代名詞」という評価が完全に確立してしまい、邦画自体を再び観るようになるまで5年、その評価が覆るのには実に10年近くもの時間が費やされました。
これまで観てきた映画の中でも「時間を無駄にした、カネ返せ」とまで思った映画は、これともうひとつの作品だけですね。