21世紀に入ってからの映画の発展を語る際にシネマコンプレックス、通称「シネコン」の存在を外すことはできないでしょう。
シネコンとは、同一の施設に複数のスクリーンがある映画館のことで、日本ではワーナー・マイカル・シネマズ、TOHOシネマズ、シネプレックスなどが主な代表格です。
往時は2億5000万人を数えた日本の映画人口は、テレビやレンタルビデオなどの普及およびそれに伴う映画産業自体の衰退などにより、1990年代には半分以下の1億2000万人にまで落ち込んでいました。
ところがシネコンは、それまで「高嶺の花」だった映画をより身近でかつ手軽に観賞できる娯楽に昇華させると共に映画人口を1億6000万人にまで回復させ、映画の衰退と映画人口の減少に歯止めをかける存在となりました。
特に市街地郊外にショッピングモールと並んで併設されるシネコンには、移動の手間と交通費の負担が軽くなるという大きな利点があります。
市街地中心にある映画館の場合、移動だけでも少なからぬ時間と手間がかかる上に駐車代等の交通費が無視できず、これが客離れを起こす大きな原因となっていました。
それに対し郊外型シネコンは、市街地中心に比べて手軽に行ける距離にあり、また駐車代に至っては無料で済ませられるところも少なからず存在します。
都市圏と異なり、周囲に映画館というものがない上に鉄道網があまり発展していない車社会の地方において、このメリットは非常に大きなものがあり、それまで映画に興味がなかった人をも映画に引き込めるようになったわけです。
またシネコンの大きな特徴として、売店の存在は無視できません。
従来の映画館にあった売店は、映画グッズとスナック菓子が適当に置かれただけの、規模が小さい上に品揃えも品質もお粗末なシロモノでしかありませんでした。
そのため、以前は映画館に入る前にわざわざコンビニに入って買い物をし映画館に入る、などということすら行っていたほどです。
しかしシネコンの売店は映画グッズも飲食類も品揃えがはるかに豊富。
特に映画観賞の際の定番となるポップコーンに至っては、それ単品の店を作っても充分に儲かるのではないかとすら思えるほどの一品だったりします。
個人的にはワーナー・マイカル・シネマズで売られていたポップコーンが一番美味しかったですね。
映画を「より」身近で手軽に観に行けるものへと進化させ、売店をも充実させることで相乗効果的な売上アップと集客を行う。
この点においてシネコンは既存に映画館を大きく引き離しており、都市部に集中していた既存の映画館がシネコンに取って代わられてしまったのも必然かつ時代の流れというものだったでしょう。
一方でシネコンの今後の課題としては、その便利さと集客性故にあちこちに乱立され過剰競争が発生している問題についてどのように対処するか、ということがまず挙げられますね。
若干微増しているとはいえ、最盛期に比べればやはり少ない映画人口に対して、映画観賞が行えるスクリーン数はその最盛期と同等以上にまで増えている状態。
結果、映画館同士で客を取るための過剰競争が発生した挙句、1スクリーン辺りの利益が減ってしまい、採算割れを起こす危険性が懸念されるわけです。
熊本でも、2004年に熊本市の東隣にある菊池郡菊陽町にTOHOシネマズ光の森、熊本市ダイエー熊本店横にシネプレックス熊本がオープンしたのを皮切りに、2005年、2006年にも郊外型シネコンが立て続けに開館し乱立状態に。
熊本はシネコンの激戦地と言われており、シネコン同士が互いにシノギを削る一方、市街地にあった従来の映画館はシネコン群に客層を食われ、衰退傾向にあります。
シネコンが映画の発展に大きく寄与する存在であると共に、消費者にとっても便利なものであることはまず間違いありません。
シネコンには集客や採算性の問題をクリアしてもらった上で、今後も少なからぬ映画ファン達に数多くの映画を提供し続けてもらいたいものですね。