バッドエンドが全てを台無しにした映画「パーフェクト・ストーム」
世の中には色々な映画があるもので、作中の設定や映像処理が良く出来ているにもかかわらず、ストーリー的には「一体何が言いたかったのか?」と何度も首をひねってしまう映画というものが存在します。
2000年公開映画「パーフェクト・ストーム」などは、まさにその典型と言える作品です。
映画「パーフェクト・ストーム」は、1991年にアメリカ東部の北大西洋沖で実際に発生した史上最大の大嵐(3つの嵐が折り重なって発生した「パーフェクト・ストーム」)と、その大嵐に自ら突っ込んで乗員も船も丸ごと行方不明となったアンドレア・ゲイル号という漁船のエピソードを元に製作された作品です。
映画の宣伝では、30メートル以上の大津波が船を襲う画像がよく使われていました。
この映画、主に各主要キャラクターを取り巻く人間ドラマに力を注いでいる前半から、大嵐を相手に七転八倒の苦闘を演じる中盤の終わり頃までの出来はそれほど悪くありません。
そこまでは多くのハリウッド映画でもよく見られるパターンですし、先の展開を期待させるものが充分にありました。
問題はその結末部分。
まさに映画の宣伝でも使われていた「パーフェクト・ストーム」による大津波に襲われ転覆したアンドレア・ゲイル号およびその乗員達は、それまでの奮戦の甲斐もなくそのまま海の藻屑と消えてしまいます。
誰一人として助かることなく、残された遺族達が悲しむシーンで終わるのです。
ノンフィクションとしてのアンドレア・ゲイル号はまさに船ごと行方不明となり、生存者は一切確認できていないわけですから、史実を忠実になぞるためにそのような結末が用意されたのでしょう。
しかし映画のストーリーとして見ると、その結末は「一攫千金に目が眩んだ漁船が勝手に大嵐に自ら突っ込んで乗組員全員が死んだ自業自得な話」にしかなっておらず、観客の共感が呼べるだけの物語性も悲劇性もおよそ皆無。
しかもアンドレア・ゲイル号は、何も知らないまま大嵐に巻き込まれたわけではなく、大嵐の存在を事前に察知しその危険性を充分に承知していた上、別の漁船から警告まで受けていながら件の行動に出ていたわけですし、その行動によって救助隊が出動する事態にまで発展しているのですから、実のところ同情の余地すらも全くなかったりします。
それでも、せめてひとりでも生存者がいれば、大自然の恐ろしさとそれを乗り越えた人間の強さ、そして何よりも自分達の無謀な航行に対する反省といった色々な描写や表現もできたでしょうし、悲劇性の中にも「生きていて良かった」的な明るさを演出することもできたはずなのに、肝心の結末がアレではねぇ…(-_-;;)。
せっかく丁寧に作りこんでいたにもかかわらず、最後の最後で全てが台無しになってしまった作品として、映画「パーフェクト・ストーム」は悪い意味でその名を歴史に残してしまった作品と言えるでしょう。
なまじ人間ドラマや大嵐との戦いの演出が良く作りこまれていただけに、支離滅裂なバッドエンドの悪さが余計に際立つ、非常に残念な作品です。