映画「SPACE BATTLESHIP ヤマト」感想
映画「SPACE BATTLESHIP ヤマト」観に行ってきました。
言わずと知れた、キムタクこと木村拓哉主演による、アニメ「宇宙戦艦ヤマト」の実写映画版。
ちょうど映画の日の初日だったこともあってか、スクリーンは満席とは言わないまでも結構客で埋まっていました。
ちなみにこの映画が、私が今年映画館で観た映画としてはちょうど30本目となります。
ストーリーの冒頭は、ガミラス艦隊の前に地球側の戦力が為すすべなく一方的に叩き潰されていく中、主人公である古代進の兄・古代守が、味方の撤退を援護すべく、艦隊司令沖田十三の命令に背く形でガミラス艦隊に特攻をかけていく話となります。
原作では生きて捕虜にされる(らしい)古代守ですが、実写映画版ではガミラス艦隊に一方的に乗艦を攻撃され続け、そのまま帰らぬ人となってしまいます。
一方その頃、主人公の古代進はというと、かつて所属していた軍を退役し、ガミラスによる遊星爆弾によって放射能で溢れ返った地上で防護服を着ながらレアメタルを探索する仕事に従事していたりします。
その仕事の最中、突如空からイスカンダルのメッセージを乗せたカプセルが至近距離に落下。
衝突の衝撃で防護服が吹き飛び、地上の致死量を超える放射能に晒される古代進ですが、何故か死ぬこともなくピンピンしていたりします。
実はこれが物語後半の伏線となるのですが、自身に何が起こったのか呆然として空を見上げる古代進の視界に、ガミラス艦隊に破れつつも唯一帰還してきた、艦隊司令沖田十三の艦が下りてきます。
こんな感じで物語は進行していきます。
映画「SPACE BATTLESHIP ヤマト」における登場人物達の設定は、上記で説明した古代兄弟の事例を見ても分かる通り、原作のそれをかなり改変しています。
たとえば、古代兄弟の両親がガミラスの遊星爆弾が原因で死んだ、という設定自体は同じなのですが、原作はそのままストレートに遊星爆弾の直撃が原因となっているのに対し、「SPACE BATTLESHIP ヤマト」では、遊星爆弾が地球に落下するのを防ぐために軌道を逸らす攻撃を古代進率いる部隊が行った結果、逸れた先にあった宇宙ステーションに遊星爆弾が直撃し、そこにいた古代兄弟の両親が死んだ、ということになっています。
このことが、物語序盤で古代進が軍を退役していた理由にもなっていて、劇中の古代進はやや陰があるキャラクターとして描かれています。
その一方で、兄を見殺しにして帰還した沖田十三に怒鳴り込みに行ったり、命令違反を犯してまでヒロインの森雪を救助に向かったりと、猪突猛進的な性格も健在だったりするのですけどね。
ただ、一番原作の設定から遠くかけ離れた存在となっているのは、やはり何と言ってもガミラスとイスカンダルですね。
ガミラスは原作ではデスラー総統を国家元首とする帝国ですが、「SPACE BATTLESHIP ヤマト」におけるガミラスは、それ自体がひとつの生命体的な存在で、作中のガミラス軍もその生命体の一部として描かれ、デスラーというのは「ガミラスの頭脳的精神体の呼称」だったりします。
かなりマイナーなたとえになるのですが、ゲームの「マブラヴ オルタネイティヴ」に登場するBETAに近い存在、というのが実態でしょうか。
デスラーは精神体のため、ヤマトの艦内に2回ほど直接出現し、主人公達に敵対的なメッセージを残していきます。
一方のイスカンダルも、ガミラスと表裏一体を為す精神体の呼称で、滅びゆく惑星と運命を共にしたくないガミラスの暴走から人類を救うため、地球にメッセージを届けたという設定です。
原作の「形を変えた国家間紛争」的な要素は全くないと言って良いですね。
作中で進行しているストーリーは、どちらかと言えば主人公を取り巻く登場人物達の人間ドラマを重視した展開がメインでしたね。
SFX系の描写も「日本映画としては」「ハリウッドと比較しても」迫力があって良く出来ている部類には入ると思います。
ただ、すくなくとも物語中盤までのSFX的な描写は比較的あっさり風味な感じで時間も少ないような印象を受けました。
ハリウッド映画でよく見られるような、とにかく手に汗握るギリギリのシーンを目一杯引っ張って観客を引き込む、みたいな描写がなく、本来ギリギリなシーンがあっさり終わってしまっている感じです。
物語後半におけるSFX的な戦闘シーンでも、「ここは俺が食い止めるからお前は早く行け!」的な描写で彩られていますし、特に終盤はヤマト最後の特攻絡みでこれまたお涙頂戴シーンに多くの時間が費やされていますからねぇ。
また、ヤマト最後の特攻シーンは、キムタクと同じSMAP仲間の草彅剛が主役を演じた2006年公開映画「日本沈没」のラストとかぶるものがありました。
沖田十三が名台詞「地球か……何もかも皆懐かしい」を一字一句正確に呟いた後に力尽きるなど、原作ファン向けのサービスも少なからず盛り込まれています。
ただ、前述のように作中の設定についてはかなりの改変が行われていますので、原作至上主義の方にはあまり相容れない映画ではあるかもしれません。
それでも、SFX的な描写も含め、日本映画としては決して悪い出来な作品ではないので、原作ファンもそうでない方も、機会があれば是非観に行かれることをオススメしておきます。