映画「ソーシャル・ネットワーク」感想
映画「ソーシャル・ネットワーク」観に行ってきました。
世界最大のSNSに成長したFacebook(フェイスブック)の創設者で、天才肌ながら奇矯な人物として描かれているマーク・ザッカーバーグと、彼の親友だったエドゥアルド・サベリンの2人を軸に展開する、ノンフィクションの人間ドラマ作品です。
作中では男女が絡み合ったり、女性が服を脱ぐシーンが含まれていたりするためか、この作品はPG-12指定されています。
映画「ソーシャル・ネットワーク」は、天才であるが故に反社会的な振る舞いが目立つ主人公に凡人が振り回され、そこから亀裂が生まれて訴訟にまで至る、という構図で物語が展開していきます。
この映画のストーリーは、作中でも展開されている裁判の当事者となっているエドゥアルド・サベリンの視点に基づいた証言を元に構築されているとのこと。
作中におけるエドゥアルド・サベリンは、マーク・ザッカーバーグの早口かつ奇矯な言動と、自分に無断で進められる会社運営の数々に振り回されるわ、タチの悪い女には引っかかるわと、見ていて思わず同情したくなってしまう不幸っぷりで描かれています。
その一方で、主人公たるマーク・ザッカーバーグは、物語冒頭ではエリカという女性に早口で奇矯な言動を披露してフラれ、その腹いせに彼女の悪口雑言をブログに書き殴った挙句、ハーバード大の女性の顔を格付けするサイト「フェイスマッシュ」を即興で作成・公開し、大学から処分を受けるなど、序盤から「天才とバカは紙一重」を地で行く人物として描写されています。
ちなみにマーク・ザッカーバーグをこっぴどくフッたエリカ・オルブライトは、物語の最後でFacebookにアカウント登録していることが明らかになるのですが、誰がFacebookを創設したのか当然知っているでしょうに、そこに自分の個人情報を載せるなんて凄く豪胆な女性だなぁ、というのが感想でしたね(苦笑)。
マーク・ザッカーバーグとエドゥアルド・サベリンの関係は当初良好だったのですが、音楽無料配信サービス「ナップスター」の創設者であるショーン・パーカーが2人に接近し、Facebookの運営に関与するようになってから仲が急激に悪化します。
天才肌同士で意気投合し、Facebookを飛躍的に拡大していくマーク・ザッカーバーグとショーン・パーカー。
それに対し、地道な努力が全く報われず、プライベートではヒステリー女の口撃に晒されるエドゥアルド・サベリン。
ショーン・パーカーに敵意を抱き、マーク・ザッカーバーグに対しても不信感を抱いたエドゥアルド・サベリンは、2人に無断で会社の口座を凍結させてしまい、さらにそのことで所持していた株の大部分を剥奪されるという報復を受けた結果、訴訟にまでもつれ込むことになります。
ただ、作中におけるエドゥアルド・サベリンの行動は、個人的には「理解や同情はできても共感や賛同はできない」というのが本音だったりします。
動機が「会社の悪事を暴く」的なものですらないばかりか、彼の勝手な行動が創業期のFacebookの活動に少なからぬ障害を与えかねないものだったことは事実なのですし。
常識的な行動に終始しすぎて努力が空回りしていた、という側面が否めないですね。
この親友2人を当事者とする訴訟とは別に、「ソーシャル・ネットワーク」ではもう1件、「Facebookは自分達のサイトを盗作して製作した」とする「ConnectU論争」と呼ばれる訴訟が取り上げられています。
知名度的にはこちらの方が有名な話のようなのですが、映画の中では扱いが比較的小さい上、原告であるウィンクルボス兄弟&ディヴィヤ・ナレンドラの主張に対し、被告たるマーク・ザッカーバーグは「聞く耳持たない」的な態度に終始していました。
原告側の人物描写も「姑息」「権威主義」といった類の言葉で全てが表現できるような言動ばかり披露される始末で、こちらについては同情すらもできませんでしたね。
こちらの裁判は結局、Facebook側が原告に対し6500万ドルの和解金を支払うことで終息したとのこと。
マーク・ザッカーバーグがほとんど無茶苦茶かつ好感度ゼロな人物として描かれているにもかかわらず、微妙に観客を惹きつけるキャラクターになっていたのは面白かったですね。
映画のモデルにされた「本物」のマーク・ザッカーバーグも、映画制作の際の取材は拒否したものの、完成した映画は映画館を借り切ってFacebook社員全員と観賞したのだとか。
本人談によれば、映画の中で描かれている自身の言動や動機に関して異を唱えているものの、作中に登場する衣装や俳優の演技などについては高く評価しているのだそうです。
2011年1月現在、Facebookは未だ日本SNS最大手の一角すら担えていない惨状を呈しているのですが、映画「ソーシャル・ネットワーク」は果たして日本SNS市場におけるFacebookの起爆剤となりえるのでしょうか?