映画「白夜行」感想
映画「白夜行」観に行ってきました。
東野圭吾原作のサスペンス小説映画版。
質屋の殺人事件から始まる、被害者の息子、容疑者の娘、そして18年もの歳月をかけ真相に迫る刑事の視点で綴られる心理描写ミステリー作品です。
ちなみに私は、原作未読のまま映画を観に行っています。
物語最初の舞台は1980年(昭和55年)、廃ビルで質屋の店主だった桐原洋介が、廃ビルで遊んでいた子供達に発見されることから始まります。
事件発覚後、まずは被害者の妻である桐原弥生子と、質屋の従業員である松浦勇が警察に事情聴取されます。
その際、両者の事情聴取に当たっていた刑事・笹垣潤三は、質屋の2階にいた被害者の息子である桐原亮司からの話を聞くことになります。
この時のアリバイ証言である「テレビを見ていた」に関する裏づけとして行われた「クイズダービーではらたいらが竹下景子に敗れた」という説明は、当時の時代を象徴していて何とも懐かしい気分にさせられましたね(苦笑)。
その後の警察の調査で、被害者は西本文代という女性の家に足繁く通っていたことが判明。
彼女とその愛人である寺崎忠夫が容疑者として浮上したため、笹垣潤三は相棒の古賀久志と共に西本文代の自宅を訪問します。
その際に留守だった西本文代に代わって応対したのが、西本文代の娘で当時小学生だった西本雪穂。
被疑者である西本文代を待つ間、ハードカバー本?の「風と共に去りぬ」を黙々と読んでいる西本雪穂に、笹垣潤三は強い印象を抱くことになります。
やがて帰宅した西本文代に、笹垣潤三は事情聴取を行っていくのですが、彼女には事件当時「公園でブランコをこいでいた」というアリバイが出てきます。
決定的な証拠も出ないまま捜査が難航する中、西本文代はガス中毒で、寺崎忠夫は交通事故でそれぞれ死亡してしまいます。
有力な容疑者が死亡してしまったことに加え、警察上層部のひとりの出世問題が切迫していたという事情が重なったことも相まって、結局事件はそのまま被疑者死亡ということで表面的には決着することになります。
しかし、笹垣潤三はこの決着に納得がいかず、自らの出世を棒に振ってまで独自に調査を進めていき、事件の被害者の息子である桐原亮司と、容疑者の娘である西本雪穂も、それぞれの人生を歩んでいくことに……。
という形で、以後、1985年(昭和60年)、1988年(昭和63年)、1989年(平成元年)にそれぞれエピソードが語られていき、最終的には1998年(平成10年)で事件の真相が明らかになります。
映画「白夜行」では、作中における年を表す描写として、その時代を象徴するキーワードが出てくるのが面白かったですね。
1980年は前述のクイズダービーの話、1985年は本田美奈子のコンサート、1989年は社交ダンス関連の話が出てくることで、それぞれの年が表現されています。
まあ、この3つの中で私がピンと来たのはクイズダービーだけで、社交ダンスは1996年公開映画「Shall we ダンス?」からの連想で少し時代がズレていましたし、本田美奈子に至っては存在すら知らなかったというのが実態だったりするのですが(^^;;)。
作中のストーリーは、最初から最後までとにかく「暗い」の一言に尽きますね。
殺人、冷たい家族関係、学校内でのイジメ、報われない愛、レイプ・性的虐待と、暗い話が目白押しに続きますし。
ところどころに「明るさ」を感じさせてくれるエピソードもあるにはあるのですが、それもほとんどは後半で不幸のどん底に突き落とすための伏線だったりします。
さすが元々がミステリー小説なこともあってか、物語終盤で全ての真相が明らかになる描写の運び方は上手いものがありましたが、最終的な結末も「何故そこでそんな選択を…!?」と言わんばかりのバッドエンドな終わり方をしていますし。
映画の宣伝ポスターで謳われている「二番目に殺したのは、心」というキャッチコピーに良くも悪くも偽りはなし、ですね。
ハリウッド映画にありがちな「爽快感を伴うハッピーエンド」的なものは全く期待できませんので、そういう作品を観たいという方にはあまりオススメできない作品ですね。
あくまでもミステリー好きのための映画、といったところでしょうか。