映画「太平洋の奇跡-フォックスと呼ばれた男-」感想
映画「太平洋の奇跡-フォックスと呼ばれた男-」観に行ってきました。
大東亜戦争(太平洋戦争)で激戦が繰り広げられたサイパン島のタッポーチョ山で徹底抗戦を続け、民間人を守り通した大場栄大尉(通称フォックス)率いる47人の日本兵達の物語。
元アメリカ海兵隊のドン・ジョーンズがまとめた長編実録小説『タッポーチョ「敵ながら天晴」大場隊の勇戦512日』を原作とするノンフィクション作品です。
大東亜戦争(太平洋戦争)の最中にある1944年、6月に行われたマリアナ沖会戦で勝利し、事実上戦争の勝敗を決したアメリカ軍は、当時日本領だったサイパン島南部に上陸。
アメリカ軍は圧倒的な装備と兵力で島の日本軍を圧倒、追い詰められた日本軍は7月7日にバンザイ突撃を敢行、少なからぬアメリカ兵を道連れにして全滅することになります。
しかし、今作の主人公である大場栄大尉は、この突撃に参加しながらもかろうじて生き残り、さらに日本軍から離れて戦う堀内今朝松一等兵をはじめとするヤクザ物の集団に出会います。
生き残りを図るために互いに共同戦線を張り、アメリカ軍の索敵から身を隠しつつ安全な場所を求めて歩き回った末、一向は水がある一軒の廃屋に辿り着きます。
ヤクザ物達が水を求めて狂喜するのを尻目に、廃屋の中を調べる大場大尉。
するとそこには、両親を殺されカゴの中で放置されていた赤子の姿が。
赤子を連れて行くことは困難であるとヤクザ物達から言われた大場大尉は、アメリカ軍に保護してもらうべく、赤い布切れの目印を廃屋の玄関先に垂らしてその場を後にします。
その後大場大尉一向は、サイパン島中部にあるタッポーチョ山へと向かい、仲間達を集めつつ、アメリカ軍への抵抗を続けていくことになります。
一方、アメリカ軍ではバンザイ突撃後も日本軍の残党狩りが行われていました。
しかし、圧倒的優位の戦力差と勝勢に慢心しているためか、日本軍残党を舐めまくっているアメリカ軍。
日本に留学経験を持ち、日本語も堪能なハーマン・ルイス大尉が「彼らを侮ってはいけない」とたしなめるものの、大多数のアメリカ兵達は態度を改めようとしません。
そして案の定、大場大尉率いる部隊の山岳&ジャングルという地形を活かしたゲリラ戦により、少なからぬ死傷者を出してしまうアメリカ兵達。
一向に日本兵を捕まえられない現状に苛立ちを覚え始めたアメリカ軍は、何千人もの兵士を使った大規模な山狩りに打って出るのですが、それでもほとんど戦果は挙げられず犠牲は増えるばかり。
そんな中、徹底抗戦でアメリカ軍を翻弄する日本人指揮官を、アメリカ軍は畏敬の念を込めて「フォックス」と呼ぶようになります。
そしてハーマン・ルイス大尉は、サイパンのアメリカ軍収容所で保護している日本人の証言から、その「フォックス」が大場栄大尉であることを突き止めるのです。
映画「太平洋の奇跡-フォックスと呼ばれた男-」は、史実のサイパンの戦いで敗退していく日本軍がメインで描かれているため、ストーリーはお世辞にも明るいとは言えたものではないですね。
まあ、結末は「一兵残らず玉砕」ではなく、ちゃんと日本に帰還できる終わり方をしているので、その辺りは救いだったりするのですが。
サイパン島に駐留しているアメリカ軍は、民間人に対しても比較的寛大なスタンスで迎え入れていましたし、日本軍に対しても「フォックス」に好意的なハーマン・ルイス大尉が降伏交渉に臨んだりしています。
戦時中、最大の激戦地となったガダルカナル島では、日本軍は捕虜にされることすらなく徹底的に虐殺された事例が多々あったわけですし、それに比べればサイパン島はすくなくとも流血が少ないまとめ方ができたと言える方でしょう。
また、降伏交渉の際、大場大尉が「日本軍はアメリカ軍に降伏できないが、上官からの命令であればそれに従う」という形で事実上降伏を受け入れたシーンは結構印象に残りましたね。
日本軍を扱った戦争物としてはそこそこに良く出来ている方なのではないかと。