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2011年05月08日の記事は以下のとおりです。

映画「岳-ガク-」感想

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映画「岳-ガク-」観に行ってきました。
小学館発行の漫画雑誌「ビッグコミックオリジナル」で連載中の石塚真一原作漫画「岳 みんなの山」をベースとする、山岳救助にスポットを当てた小栗旬&長澤まさみ主演の映画作品です。
同じく遭難者の救助活動をテーマにしつつも、舞台が海である「海猿」シリーズとは対極に位置する作品と言えますね。

映画「岳-ガク-」の物語は、ひとりの登山家が北アルプスを登山中、足を滑らせてクレバスに落ちていくシーンから始まります。
すぐさま救助要請が長野県警北部警察署の山岳救助隊に入ることになるのですが、ヘリで現場へ急行するにも時間がかかり過ぎることが問題として取り沙汰されます。
ちょうどそこへ、その日から山岳救助隊に配属されることになっていた椎名久美が部屋へ入ってきます。
椎名久美が部屋に入ってきたことに誰も気づかないまま揉めに揉める山岳救助隊の面々ですが、不意に呟いた山岳救助隊の隊長・野田正人の鶴の一声が全てを決します。
「そうだ、三歩がいる!」
三歩こと島崎三歩は、誰よりも山を愛し、世界中の巨峰を登り歩いてきた山岳救助ボランティア。
彼は普段から北アルプスの山で寝食するほどの「山バカ」であり、この日も現場から比較的近い山中で野宿していたのでした。
野田正人は早速三歩と連絡を取り、ヘリで救助に駆けつけるまでに現場へ駆けつけ応急的な措置をしておくよう依頼します。
ここで呟かれた「三歩?」という疑問の声に、ようやく椎名久美の存在に気づく山岳救助隊の面々。
しかし時間が差し迫っていることもあり、山岳救助隊はその質問に対する回答もそこそこ直ちに行動を開始。
椎名久美も移動するヘリに同乗することを許可され、一緒に現場へ向かうことになります。
一方、島崎三歩は何事もなく無事にクレバスへ辿り着き、クレバスに嵌った形で底への落下を免れていた遭難者を見つけ出し、無事を確認すると「良く頑張った」と励ましつつ、遭難者を担いでクレバスから脱出します。
クレバスから脱出して少し歩いたところで、椎名久美も搭乗している山岳救助隊のヘリが現場に到着し、遭難者は無事に保護されます。
ヘリの中から、遭難者を担いだままヘリに手を振る島崎三歩を眺める椎名久美。
これが2人の出会いとなるのです。

その後の映画「岳-ガク-」のストーリーは、山岳救助隊の新米女性隊員・椎名久美の視点をメインに進行していくことになります。
男だらけの職場で、紅一点として厳しい訓練に励む椎名久美。
しかし物語前半は、その努力も全て空回りしているような印象が否めず、周囲に対しても頑なな態度を取っていたりします。
また、物語中盤付近で休暇中に自主訓練をしている最中、自分の目の前で崖から転落した登山者を目撃することになるのですが、「その場で待機しろ」という山岳救助隊本部からの命令を無視して登山者を助けるべく行動したりしています。
その登山者は結局、崖から落ちた時点で頭蓋骨陥没の致命傷を負っていたのでどの道助からなかったのですが、その後、遺体となった登山者を崖の下に投げ捨てるという決断と下した山岳救助隊と、現場に駆けつけ実行に移した島崎三歩に、椎名久美は反感を抱きます。
挙句、その反感から登山者に八つ当たり的な言動を展開したり、怒りのあまり足元がおろそかになって自身が足を滑らせ遭難してしまったりと、物語中盤までの椎名久美は本当に全く良いところがなかったですね。
昴エアレスキューのヘリパイロットである牧英紀から「お前のような奴を何と言うか知っているか? アマチュアって言うんだよ」と酷評されていた描写は、「全くもってその通り」と思わずにはいられませんでしたね。
まあ、これが物語後半を盛り上げる伏線にもなるのですが。

椎名久美関連の描写に象徴されるように、映画「岳-ガク-」は山岳救助の厳しさと現実を良くも悪くも前面に出している作品であると言えます。
物語中盤の山岳救助は、遭難者を発見することはできても助からないものばかりですし、遺体に対面した遺族が救助活動を行っていたはずの山岳救助隊を罵倒し土下座を要求する描写まで存在します。
幾度も危機的状況に置かれながらも、最終的には誰も死ぬことがなかった映画版「海猿」シリーズとはこの辺りについても対極ですね。
個人的には「ああ、こういう場面、現実にも絶対にありえるだろうなぁ」と思いながら観賞していましたが。

物語前半のボロボロな惨状にさすがに意気消沈していた椎名久美は、山岳救助隊の隊長である野田正人から、島崎三歩の過去を聞かされます。
踏破だけで10日もかかるという断崖絶壁に挑戦していた際、自分と共に競いあっていた友人を失い、その遺体を2日がかりで担いで山を下りたという過去を。
山岳救助で冷酷な判断を平然と実行しているように見える島崎三歩にそんな過去があると知った椎名久美は、反発を抱いていた島崎三歩の元を訪ね、自身の父親の身の上話を始めます。
椎名久美の父親は今の山岳救助隊の元隊長で、椎名久美が幼少の頃、無謀な山岳救助に単身挑み、生命を落とした人物でした。
椎名久美は最初それに反発していたものの、17回忌に父親宛の手紙を読んだことから山岳救助を志すようになったそうです。
この時の会話と島崎三歩の激励で何か吹っ切れるものがあったのか、それ以降の椎名久美の成長ぶりは著しかったですね。
最後には「(遭難者を救うためとはいえ)よくぞそんな決断が下せたものだ」的な非情な決断まで実行に移していますし。

原作は未読なのでどうなのかは分かりませんが、すくなくとも映画「岳-ガク-」については「椎名久美の成長物語」的な側面が大きくクローズアップされているのではないでしょうか。
島崎三歩は一応主人公のはずなのに、「他人の視点から見た島崎三歩」的な描写しかなく、島崎三歩自身がどんなことを考えていたのかがはっきりと分かるような描写はほとんどありませんでしたし。
その辺りは原作ファンから見たら微妙に評価が分かれるところかもしれません。

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