映画「SUPER 8/スーパーエイト」感想
映画「SUPER 8/スーパーエイト」観に行ってきました。
スティーブン・スピルバーグが製作を、J・J・エイブラムスが監督を担当したSF映画。1979年に実際に起こった事件を下地にした、映画撮影に情熱を燃やす少年少女達の活躍を描いた作品です。
なお、映画のタイトルにもなっている「SUPER 8」というのは、元々はコダック社が出した8ミリフィルムの名称なのだとか。
この物語の舞台は1979年。
物語序盤で、1979年にアメリカで実際に発生したスリーマイル島原発事故についての状況を報じているテレビニュース番組が流れていることから、それが誰でも一目瞭然に分かる構成になっています。
これが今現在における日本の日常風景の一部にまでなってしまっていることは何とも皮肉としか言いようがないのですが、それはさておき。
物語は、主人公ジョー・ラムの母親が事故で亡くなり、葬儀が行われている場面からスタートします。
葬儀の中、自分達が製作している映画の内容がゾンビを扱う作品であることから「撮影は中止だな」と嘆いているジョー・ラムの友人達。
当のジョー・ラムは葬儀が行われている家の外にあるブランコでひとり呆然と佇んでいたのですが、そこへ黄色い車が停車し、ひとりの風体悪そうな男が降りてきます。
彼は主人公の家に入っていくのですが、何故か家の中で騒動になった挙句、ジョー・ラムの父親で保安官でもあるジャック・ラムに引き立てられた挙句、パトカーに乗せられて連行されてしまいます。
これが物語後半である重要な伏線として生きてくるのですが、序盤はとりあえず意味ありげな描写に留まったまま話が進みます。
それから4ヶ月後のある日、ジョー・ラムの親友&映画撮影仲間のリーダー格で小太りの少年チャールズ・カズニックが、アリス・デイナードに映画撮影の協力を取り付けることに成功します。
誰にも邪魔されない無人の環境で撮影を行わなければならないことから、真夜中にこっそり家を抜け出して待ち合わせをすることになったジョー・ラムと映画撮影仲間達。
真夜中、集まった仲間達の下に、親の車を無断で拝借した上無免許運転でやってきたアリス・デイナード。
保安官の息子であるジョー・ラムが撮影仲間にいることに、アリス・デイナードは「親に告げ口されるのではないか?」という懸念から一旦は撮影協力を降りようとしますが、ジョー・ラムが「親には黙っている」と約束。
渋々ながらも了承したアリス・デイナードは、映画撮影仲間達を連れ、撮影現場となる無人駅へと向かうのでした。
撮影準備を進める最中、アリス・デイナードは劇中の登場人物としての演技を行うのですが、演技前はやる気なさげだったアリス・デイナードのかなり堂に入った演技ぶりに、一同からは感嘆の声が上がります。
この時ジョー・ラムがいかにも一目惚れしたような描写が挿入されているのはお約束ですね(苦笑)。
さらに本番撮影の準備を進める一同ですが、そこへ真夜中だというのに駅めがけて数十もの車輌を牽引する貨物列車が走ってきます。
迫力ある場面を撮影する千載一遇のチャンスと踏んだチャールズ・カズニックは、すぐさま撮影に入ることを決断し仲間達に指示、準備不足ながらも早速撮影が始まります。
駅を通過していく貨物列車を背景に順調に撮影は進んでいき、ご機嫌なチャールズ・カズニックをはじめとする仲間達ですが、ジョー・ラムはそこで、貨物列車の先頭車輌めがけて走ってくる1台の車を目撃します。
車は線路で90度ターンすると、線路の上を先頭車輌目指して走り始め、結果両者は見事に正面衝突することになります。
当然列車は脱線、さらに後続車輌が次々と玉突き事故を起こし、車輌が宙を舞うわ駅舎に直撃するわ、ついには危険物を満載していた車輌が爆発までするわの地獄絵図が現出し、主人公一同ももはや撮影どころではなく、我が身の安全を優先にただひたすら逃げるしかなくなります。
そんな中、横倒しになったとある車輌の中で「何か」が暴れ出し、叩きつけるような轟音と共に厚い鉄製の扉を吹き飛ばす描写がジョー・ラムの眼前で展開されます。
「あれは何なのだろう?」と疑問に思いつつも、何とか事態が一段落したこともあり集まってきた主人公一同は、事故の発端となった車を探し出します。
あれだけの事故だったにもかかわらず、車に乗っていた黒人男性は重傷を負いつつもちゃんと生きていて、しかも意識まではっきりとしていて、あまつさえ主人公一同に「このことは誰にも言うな」と警告する余裕までありました。
その警告に呼応するかのように事故現場へ殺到する謎の集団。
主人公一同はさっさとアリス・デイナードの車に乗り込みその場からさっさと逃走するのでした。
しかしその後、頻発する不可解な出来事に行方不明者の続出、さらにはいかにも秘密を抱えて現地で動き回る軍の存在など、小さな田舎町は次第に不穏な空気に包まれていきます。
様々な謎を抱えつつ、物語はさらに佳境へ入っていくことになるのですが…。
映画「SUPER 8/スーパーエイト」のハイライトは、やはり何と言っても、真夜中にこっそりと映画撮影をしている主人公達の眼前で発生する貨物列車事故ですね。
重量感溢れる貨物列車が次々と玉突き衝突して宙を舞い、轟音と共に周囲を破壊していく様はまさに圧巻で、これだけでも充分に映画を観る価値があります。
実はこの貨物列車事故はモデルとなっている実在の事件があるのだそうで、奇しくも同じ1979年にオハイオ州で発生した貨物列車事故をベースにしているのだとか。
元ネタはこれ↓
この列車事故には不可解なところがあり、事故処理にかかる費用が当時の相場で5万ドルだったのに対し、何と200万~1000万ドルもかかっていると当時の新聞では報じられたのだそうです。
この列車事故の不可解さと、宇宙人絡みの話として有名なエリア51関係の都市伝説的なエピソードの数々を組み合わせて、映画「SUPER 8/スーパーエイト」のストーリーが構築されているわけですね。
映画「SUPER 8/スーパーエイト」に登場する宇宙人は、人を襲う宇宙人として描かれながらも、元々は「たまたま地球に不時着して帰りたかっただけなのに、人間の実験台にされて敵意を抱くようになった被害者」としての一面も併せて描写されています。
例の貨物列車事故を起こした黒人男性も、彼の心情に共感して実験台にすることに反対し、それが元で軍を追放され、それでも宇宙人を助けようとして事に及んだのだそうです。
この辺りは「宇宙人=絶対悪の侵略者」として描かれがちなスタンダードなハリウッド映画とは一線を画していますね。
まあ元々、「人間と宇宙人との心の交流」を描いた映画「E.T.」を製作した経歴を持つスティーブン・スピルバーグが今作でも製作を担っているわけですし、その系統の流れを汲んでいるだけではあるのでしょうけど。
物語終盤にも、まさに「E.T.」そのものの「主人公と宇宙人による心の交流」的なやり取りもありましたし。
「E.T.」のストーリーを少しでも知っていたら、「ああ、やっぱりこういう描写があるのか」と思わず頷いてしまうこと請け合いですね(笑)。
映画「SUPER 8/スーパーエイト」のラストを飾るエンドロールでは、主人公をはじめとする映画撮影チームが製作した手作り映画が披露されています。
作中でもしばしば撮影シーンが描写されていましたが、「ここであのシーンが使われているのか」と楽しく観賞できます。
なので、エンドロールが始まっても、席を立たずにそのまま映画を観賞し続けることをオススメしておきます。