映画「インモータルズ -神々の戦い-」感想
映画「インモータルズ -神々の戦い-」観に行ってきました。
紀元前1200年頃のギリシャを舞台に、闇の神々タイタン族を復活させようとするイラクリオンの王ハイペリオンと、若き青年テセウスとの戦いを描いた作品。
作中では、首を掻き切られるシーンや振り回された武器で身体が炸裂するシーン他、流血&残虐描写が随所に盛り込まれており、当然のごとくR-15指定を受けています。
はるか昔、神々達の間で大きな戦いが起こりました。
戦いはゼウスを主神とする光の神々の勝利し、敗れた闇の神タイタン族はタルタロス山の地底深くに封印されました。
それから長い時が過ぎた、紀元前1200年頃の古代ギリシャの時代。
光の神々に敵意を抱き、その存在を滅ぼさんとするイラクリオンの王ハイペリオンが、領土の拡大と、タイタン族の封印を解くべく、軍勢を率いてギリシャ各地に侵攻を始めます。
タイタン族の封印を解くためには、はるか昔の神々の戦いで失われたとされる伝説の武器「エピロスの弓」が必要とされ、ハイペリオンはそれを探し出すためにギリシャ各地の神殿を襲撃していました。
その侵攻はやがて、半島の崖をくり貫いて作られている小さな村にも押し寄せ、村側は身分の高い者から順に安全な場所まで避難する決定を下します。
その小さな村に、神を信じず自分の武器のみを頼みに武芸に励むひとりの青年がいました。
彼の名はテセウス。
信心深い母親と共に生計を立てていたテセウスは、母親の身分が低くかつ村人のレイプによって産まれた子供という出生事情も相まって、他の村人達から蔑みの目で見られる日々を送っていました。
ハイペリオンの侵攻で村から避難することが決定された直後に、彼は自身の出生をバカにしてきた兵士のひとりと諍いを起こし、結果テセウスと母親はハイペリオンの軍勢が侵攻してくるであろう日に村からの避難を開始するよう命じられてしまいます。
そしてハイペリオンが村に侵攻してきたその日、テセウスは軍勢を相手に奮闘するものの、ハイペリオン自らの手によって母親を殺されてしまい、自身も多勢に無勢で囚われ奴隷の身とされてしまうのでした。
しかし、母親を失い無気力になって奴隷労働に従事していたテセウスの前に、4人組の巫女が連行されてきます。
彼女らは未来を予知する能力を持つ巫女で、その能力故にハイペリオンの軍勢に囚われの身となっていたのでした。
4人組の中で未来予知能力を持つ「本物」の巫女はただひとりで、あとの3人は「本物」を特定させないための一種の影武者という設定です。
「本物」の巫女であるパイドラは、テセウスの前を通りがかった際、彼が「エピロスの弓」を手に入れる未来を垣間見ます。
テセウスの未来に微かな希望を見出したパイドラは、テセウスと共に奴隷労働の現場から脱走を図ることを決断するのですが……。
映画「インモータルズ -神々の戦い-」で主人公となっているテセウスは、ギリシャ神話ではクレタ島の迷宮に幽閉されていた牛頭人身の怪物ミノタウロスを倒した英雄として有名を馳せている人物です。
その縁からなのか、今作の物語中盤でも当然のごとくミノタウロスと迷宮もどきが登場しており、ミノタウロス相手にテセウスが奮闘するアクションシーンが挿入されています。
今作におけるミノタウロスは、ハイペリオンの命令によってテセウスを殺しパイドラを拉致するために差し向けられた刺客、という役柄になっていました。
ただ作中のテセウスは、武芸に優れてはいるものの超人ではないので、1対1や1対数人程度の戦いならば奮闘もできるのですが、多勢に無勢という局面では数に押し切られるか、文字通りの「困った時の神頼み」で危機を脱出するかのどちらかに終始しています。
ただ、その「困った時の神頼み」の局面が実は意外に多かったりするのが、作品構成的には少々困り者ではあるのですが(-_-;;)。
また基本的なストーリー進行は、良くも悪くも単純明快で王道路線的な勧善懲悪物といったところですね。
ハイペリオンは問答無用で悪逆非道の王として描かれており、作中ではその残虐さを表現するために、母親の首を直接掻き切ったり、任務に失敗した部下を惨たらしく殺害したりするシーンなどが盛り込まれています。
個人的に印象に残ったのは、序盤でテセウスと諍いを起こし喧嘩両成敗で処分を受けたことに不満を持ち、ギリシャを裏切って自分の元に降ってきた兵士に対し、「裏切り者は信用できない」と言いながら、部下に命じて裏切り者の男性器をハンマーで潰させたシーンです。
映画の中で堂々と「去勢」の描写を展開するという事例はあまりお目にかけないものだったので、「いくらR-15とは言えそこまでやるか」というのが私の感想でしたね。
しかしこの王様、あれだけの大軍勢を率いていた割には、物語終盤で「エピロスの弓」を使いタイタン族の封印を解く際には、自分が指揮すべき軍と別行動を取り、しかもただのひとりの護衛を連れて行くことすらもなく、単身で現場に向かっていたりするんですよね。
タルタロス山の戦いにおけるイラクリオン軍は、タルタロス山の大壁で篭城するギリシャ軍を何十倍もの兵力で圧倒していたわけですし、ハイペリオンの立場であれば、その中から自分の護衛の百や二百くらい捻出することも充分に可能だったはずなのですが。
やたらと猜疑心の強い王のようでしたし、自分の護衛すらも信用していなかったのかもしれませんが、ちゃんと護衛を連れて行っていればテセウス一派の襲撃も簡単にあしらえたでしょうに。
ギリシャ軍だってどんな奇策を駆使してくるか分からないわけですし、神々の戦争介入や解放するはずのタイタン族が自分達に牙をむいて襲い掛かってくるケースも考えられるのですから、ハイペリオンは必要最低限どころか軍を二分するレベルの護衛を連れて行っても良かったのではないのかと。
ちなみに、ハイペリオンによって「去勢」されてしまった裏切り者の兵士は、ハイペリオンにテセウスに関する情報を提供する役割を担った以外は全くと言って良いほどに見せ場がなく、物語終盤のタルタロス山の戦いでも、「雑兵のひとり」同然の扱いでテセウスに瞬殺されてしまう始末。
一騎打ちに持ち込むことすらできなかったのですから哀れとしか言いようがありませんでしたね(T_T)。
序盤でテセウスと因縁もあったわけですから、最後くらい何か見せ場があるのではないかと期待していたのですが。
R-15系の残虐描写が嫌いという方にはあまりオススメできる映画ではなく、逆に血どころか肉片が飛び散るようなスプラッタ系アクションシーンが好みという方には必見の映画、と言えるでしょうか。