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2011年12月03日の記事は以下のとおりです。

映画「RAILWAYS 愛を伝えられない大人たちへ」感想

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映画「RAILWAYS 愛を伝えられない大人たちへ」観に行ってきました。
富山県に実在する富山地方鉄道を舞台に、長きに渡って鉄道運転士を勤めた男とその家族を描いたヒューマンドラマ。
今作は「RAILWAYS」シリーズ2作目とのことですが、前作とは「地方の鉄道および鉄道運転士を扱っている」というコンセプトの共通点はあっても、ストーリーや登場人物等での関連性は一切ないので、前作を知らない人でも問題なく観賞できます。

今作の主人公である滝島徹は、富山地方鉄道で実に42年も勤務し続け、かつ35年もの間無事故の実績を持つベテランの鉄道運転士。
その彼が定年退職を迎える1ヶ月前、55歳で長年専業主婦として滝島徹を支えてきた妻佐和子と、妊娠中の娘片山麻衣が、踏切の前で停まっている車の中で走行していく列車を眺めているところから物語は始まります。
滝島徹がいつものように鉄道運転士の仕事を終えて自宅に帰ると、妻が看護師の仕事をしたいと相談をもちかけてきました。
実は妻の佐和子は元々看護師の職に就いていたものの、ガンを患った母親の介護のために仕事を辞め、以後はずっと専業主婦として家事を担っていたという経緯がありました。
そして、夫の定年退職と、物語中盤で明かされるあることがきっかけで第二の人生を歩みたいと考え、再び看護師の仕事に就こうと考えたわけです。
しかし夫である徹は「お前が働く必要はない」と聞く耳を持たず、2人は激しい口論を繰り広げることとなってしまいます。
挙句、口論の最中に、「同僚が倒れたからすぐ来てくれ」という鉄道会社からの緊急連絡で、滝島徹は会社へとんぼ返りをしてしまうのでした。
トラブルを何とか処理し、滝島徹が再び家に帰ってみると、自宅から妻の自家用車がなくなっており、家の中も誰もいなくなっていました。
先ほどの件が原因で失踪した以外の何物でもない状況に直面した滝島徹は、朝になって娘夫婦に妻の所在を確認する電話をかけてみますが、当の娘夫婦は妻の失踪の事実すら知らない始末。
そうこうしているうちに仕事の時間が迫ってきたため、滝島徹は妻の所在が不明なままの状態で鉄道会社に出勤する羽目となります。
一方、鉄道会社では、滝島徹の同僚が倒れてしまったことで問題が発生していました。
倒れた同僚が新人の鉄道運転士見習いである小田に対して行っていた研修指導が継続できなくなってしまっていたのです。
小田の研修期間は残り1ヶ月もないということもあり、その研修指導員の穴埋めの話が滝島徹に持ち込まれてきます。
妻のことが気になりつつも、滝島徹は通常の鉄道業務と小田の研修指導を一緒にこなしていくことになるのですが……。

映画「RAILWAYS 愛を伝えられない大人たちへ」では、実在する富山地方鉄道が舞台の中心となることもあり、富山地方鉄道を実際に走行している、レッドアロー・かぼちゃ電車・だいこん電車等の愛称で知られる列車が登場します。
主人公・滝島徹が作中で主に運転しているのは、二両編成の「レッドアロー」ことモハ16010形。
地方でしか見られない列車が、田舎ならではのだだっ広い田園や山間をひた走るシーンが作中で何度も繰り広げられるのも、「RAILWAYS」シリーズの魅力のひとつでしょう。
実際、前作「RAILWAYS 49歳で電車の運転士になった男の物語」でも、劇場公開された2010年5月以降、物語の舞台となった島根県の一畑電車は利用者が急増し前年同時期に比べて8.7%増益になったのだとか。
今作でも同じ効果がそれなりに期待できるのではないかと。

また今作では、主人公である鉄道運転士・滝島徹役を担っていた三浦友和の好演が光っていました。
三浦友和も作中の主人公とほぼ同年齢とのことですが、昔ながらの頑固オヤジとしての姿と、それ故に周囲と衝突し葛藤する様子を、カッコ良さと貫禄も交えて丁寧に演じていました。
彼が登場している映画で私が観賞した作品としては、「マイ・バック・ページ」「星守る犬」がありますが、どちらもチョイ役での登場だったにもかかわらず「妙にカッコ良いキャラクター」というのが印象に残っていたものでした。
特に「星守る犬」では「この人にも何か曰くありげな別の物語がありそう」とすら考えたくらいでしたし。
今作は、彼のファンであればまず必見と言える映画でしょうね。

作中のストーリーでは、主人公の鉄道運転士としての仕事と別居を始めた妻の訪問看護の仕事、そして、互いに無器用な形でしか相手に接することができず、結果的にスレ違ってしまう夫婦の関係が描かれています。
主人公は、妻に対してだけでなく娘夫婦、さらには、同僚が倒れたことで半ば押し付けられた新人の小田に対する研修指導などでのやり取りでも無器用な面を見せており、そのためにしなくても良い損をしているような印象が多々あります。
奥さんに対する態度も、別に相方のことを蛇蝎のごとく嫌っているわけではなく、むしろ(間違ったものであったにしても)自分なりに相手のことを考えていたが故の失敗だったわけですし。
一方の奥さんは奥さんで、看護師の仕事をすることについて「母親をなくしたことに対することに対する気の迷いだろう」と誤った分析をしながらも「好きにすれば良い」ととにもかくにも容認してくれた夫に対し、「何故分かってくれないの!」と激高した挙句に結婚指輪と離婚届を突きつけてくる始末ですし。
これまでの鬱屈がたまっていたという事情もあったのでしょうが、それを差し引いても「そこは怒るところなのか?」と若干は疑問を抱かずにいられませんでした。
いっそ本当に互いに憎しみ合うような関係であれば却って話は簡単になったのでしょうけど、そうではないからこそ複雑で解決しがたい問題なんですよね、ああいう夫婦関係のこじれは。
2人の関係に娘夫婦がやきもきしていたのは当然でしょうが、当の本人達でさえも「何とかしてくれ」と言いたい気分ではあったことは間違いなかったでしょうね。

アクション映画のような派手さは皆無ですし、また世代によって評価にかなりの差が出そうな作品ではありますが、個人的には充分に面白くオススメの作品だと思います。

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