映画「日本列島 いきものたちの物語」感想
映画「日本列島 いきものたちの物語」観に行ってきました。
カメラマン達の実に2年半にも及ぶ動物達の観察と記録を元に製作されたドキュメンタリー映画。
映画「日本列島 いきものたちの物語」の内容は、イギリスのBBCが製作し、日本では去年公開された映画「ライフ -いのちをつなぐ物語-」の日本国内限定版、といったところですね。
ただ、「ライフ -いのちをつなぐ物語-」が、世界各国に生息する様々な動物10数種類およびその特徴をひたすら紹介していく進行だったのに対し、今作では主要なスポットが当てられる動物は以下の6種に限定されます。
北海道 知床半島 ヒグマ(双子の兄弟)
北海道 釧路湿原 キタキツネ
北海道 襟裳岬 アザラシ
青森県 下北半島 ニホンザル(人を除く霊長類で世界最北端に生息)
兵庫県 六甲山地 イノシシ
鹿児島県 屋久島 ヤクシマザル(ニホンザルの亜種)
これら以外にも紹介されている動物や海洋生物は一応いることはいるのですが、それらの生物達は上記6種の動物紹介の幕間に、ほんの一場面を紹介される程度の内容しか紹介されていないんですよね。
メインはあくまで上記6種で、彼らは冬の終わり頃から翌年の春頃までの生態の様子が紹介されています。
子育て関係は「ライフ -いのちをつなぐ物語-」でも描かれた部分ですが、親から離れて独立していく過程は今作オリジナルですね。
見ていて対照的だったのは、台風に耐えられず死んでしまった自分の子供を、まるで生きているかのように毛繕いをし続けた挙句、死んだ子供の後を追うように死んでいった屋久島ヤクシマザルの母ザルと、子育て5ヶ月で子供に噛み付いて自分のところから叩き出した釧路湿原キタキツネの母キツネですね。
一見正反対に見える母親としての行動ですが、これはどちらも立派な母性本能の産物なのです。
単独で生きていくことが不可能な子供の時期は、もちろん親として子供を外敵から守り育てていく。
そして子供が一人前に育ち、自立できる時期になると、子供を自立させるために自分の子供をあえて攻撃し自分から引き離す。
どちらも、生き抜くために必要不可欠となる動物的な母性本能の為せる業であるわけです。
母キツネの元から追い出された子ギツネは、同じように追い出された異性のキツネを探して子作りを行い、産まれた子供に対してまた同じことを繰り返すわけですね。
キタキツネの子供追い出し行動は奇異なものに映るかもしれませんが、動物一般における母性本能としてはこちらの方が普通なのです。
むしろ、人間のように「子供が成長してもなお子供を保護し続けようとする心理」が母性本能に備わっているような生物の方が極めて稀だったりします。
これは、人間が他の動物に比べて子育ての期間を長く必要とすることが影響しているのでしょうね。
人やサルなどの霊長類系は寿命が長いこともあってか子育ての期間も長いのですが、キタキツネは一般的な寿命が5~6年で子育て期間5ヶ月、イノシシやヒグマなども子育て期間は半年程度と作中でも明示されていましたし。
今作は映画「ライフ -いのちをつなぐ物語-」と同じく、動物をドキュメンタリー的に見せるのがメインの作品なので、物語としての面白さやハリウッド系のような迫力ある演出などとは全く縁がありません。
動物がとにかく好きという方や、誰かに動物を見せたいという人には必見の価値もあるのでしょうが、一般受けする映画とはやはり言い難いですね。