映画「復讐捜査線」感想(DVD観賞)
映画「復讐捜査線」をレンタルDVDで観賞しました。
日本では2011年に公開されたアメリカ映画で、メル・ギブソンが8年ぶりに俳優として主演を果たしたことで話題となった、イギリスBBCのテレビドラマ「刑事ロニー・クレイブン」を原作とするアクション・サスペンス作品。
この映画は一応熊本では(県内1箇所だけとは言え)映画館で上映されていたのですが、諸般の都合で結局観賞し損ねていた作品でした。
「娘が目の前で殺される」というコンセプトがある上、流血シーンもそこそこにあることから、映画館ではPG-12指定されていました。
映画の冒頭では、まず「Edge of Darkness」という英語版の原題タイトルと共に、湖?と思しき場所に水死体が3体浮かび上がってくるというシーンが映し出されます。
このシーンの意味は物語後半で明らかとなるのですが、そのシーンの後、幼い少女が海で戯れている様子を撮影しているビデオシーンが登場します。
そしてまた舞台は切り替わり、いよいよ物語本編が本格的に始まることになります。
マサチューセッツ州ボストンで刑事の職にある今作の主人公トーマス・クレイブンは、地元ボストンの駅で、久々に再会することになった娘のエマ・クレイブンを待っていました。
普通に予定通り再会して喜びを分かち合う2人。
しかし、エマを一度車に待機させ、近くのスーパーで買い物をして戻ってきたトーマスは、娘が激しく咳き込んでいる様を目撃することになります。
自宅へと帰る途中の道程で、2人はどこの家庭でも普通にありそうな普通の会話を交わします。
自宅へと帰り、あまり得意ではないらしい料理に奔走しつつ、先ほどの娘の様子が気になり、「医者へは行ったのか?」と尋ねるトーマス。
エマは「疲れているだけよ」と返答を返すのですが、エマの様子はさらに奇異な様相を呈し始めます。
鼻血を流し始めた上、嘔吐までし始め、さらに駆けつけたトーマスに対して突然ヒステリックに「医者へ行かなきゃ」と叫び始めるエマ。
娘のただならぬ様子に戸惑いつつも、トーマスはとりあえず娘の言う通り医者へ連れて行こうと外出の準備を始めます。
そしてトーマスがエマと一緒に玄関に出た、まさにその時、突如「クレイブン!」という叫びと共にショットガンが発砲されます。
ショットガンから発砲された弾丸はエマを直撃し、エマは血飛沫と共に自宅の中まで吹き飛ばされてしまいます。
トーマスは銃を取り出し応戦しようとしますが、発砲者はすぐさま車で逃走。
発砲者よりもエマのことが気になったトーマスは自宅へ取って返し、エマの元へと駆け寄るのですが、エマは既に虫の息状態。
「お前は宝だ!」と叫ぶトーマスに対して「分かっている」と応えただけで、エマはあの世へと旅立ってしまったのでした。
その後。
警察による現場検証が始まり、同僚達がトーマスを気遣って声をかけるのですが、トーマスはすっかり尖ってしまっていました。
身の危険があると忠告する同僚をトーマスは退け、その他の警官達も必要最低限の現場検証を行わせただけで退去するよう怒鳴りつけてしまいます。
ひとりとなった自宅で、娘のことを回想したり、娘の幻聴を聞いたり、大きな物音に過剰反応したりと、精神的にかなり参っている様子を見せるトーマス。
翌日、全く普通通りに警察へ出勤したトーマスは、事件について全く手がかりがないこと、警察がトーマスをターゲットにした犯行であるとして捜査を進めていることを知ります。
しかし、自分が狙われる覚えが全くないトーマスは、休職すべきではないかという警察上層部の提案も拒絶し、独自に調査を開始するのでした。
身辺整理も兼ねているのか、娘の遺品や連絡先などを洗っていたトーマスは、やがてそこから、娘が勤めていた企業に対する疑念を芽生えさせていくのですが……。
映画「復讐捜査線」を観賞していて考えずにいられなかったのは、「暗殺者の手際があまりにも悪すぎる」ということですね。
そもそも最初の暗殺からして、暗殺者は何故トーマスという目撃者が目の前にいる中でエマ「だけ」を殺した挙句そのまま逃走したのか、という疑問があります。
あの場でトーマスを生かしていたら、自分の情報が警察側に手がかりとしてもたらさせてしまうことにもなりかねない上、あの状況だとトーマスがエマから何らかの情報提供を受けている可能性も当然存在しえます。
エマだけでなくあの場にいたトーマスも一緒に殺し、さらには家捜しも徹底的に行い証拠を発見すれば回収し、去り際には家に火を放って未発見かもしれない証拠も完全に消滅させる。
そこまでやらないと、暗殺者および依頼者の目的が達成されたとは到底言い難いでしょう。
しかも、暗殺に使用した銃には、至近距離からの狙撃で周囲の住人に銃声を聞かれ自分の姿を目撃される危険性すら存在するのに「サイレンサーを装備して銃声を小さくする」といった類の工夫すら施されていませんでしたし。
まあ、あの限られた時間と状況で家捜しはさすがに難しかったにしても、トーマスも一緒に殺すという選択肢は充分に実行可能でしたし、またしなければならなかったと思うのですけどねぇ。
これだけでも暗殺者は致命的なミスを犯しているというのに、その後も暗殺者達は、素人でもやらなさそうなミスを次から次にやらかしていきます。
車で情報交換をしていたトーマスおよびエマについての情報をトーマスに提供していた人物を襲撃するのは良いとして、情報提供者【だけ】を御丁寧に区別して跳ね飛ばした挙句、トーマスに反撃のチャンスと時間的余裕を与えてしまい、案の定返り討ちにされてしまう暗殺者。
ダンプカーでも借りて車ごと潰してしまうとか、マシンガンを何丁か用意して車に大量の銃弾を奇襲的に叩きつけるなどといった手法でも使えば、トーマスも情報提供者もほとんど無傷でまとめて始末できたというのに。
襲撃するための車からしてマトモな防弾対策すら施されておらず、トーマスが所持している程度の銃で簡単に致命傷を被ってしまうありさまでしたし。
それでも物語後半では、トーマスの同僚を買収して自宅に侵入し、トーマスの隙を突いて気絶させることに成功するのですが、彼らは後始末の手間でも考えたのか、トーマスをその場で殺さなかったんですよね。
で、軍需企業ノースモアの廃屋?に閉じ込めたまで良かったのですが、何と暗殺者達はトーマスの自由を奪うに当たって手錠で両手を拘束し(あまり頑丈でもない)ベッドに括り付けただけで常時の見張り番もつけず、それどころか監視カメラすらも設置せず放置していたんですよね。
結果、トーマスは自力で拘束を破ってしまい、逃走に成功してしまう始末。
さらには、全ての真相を知ったトーマスが捨て身で襲撃してくるであろうことを予測することもできず、それどころか屋敷の警備を強化することすらもせず、何の芸もない正面攻撃をみすみす許してしまうという形でトーマスの復讐を完遂させられてしまったのでした。
この中の何かひとつでも彼らがやるべきことをきちんと適正に行っていれば、初回のミスも充分に挽回することができたというのに。
トーマスが結果として娘の復讐を遂げることができたのは、トーマスの執念などよりも遥かに高い比率で「暗殺者達の無為無能」という要素があったとしか思えないのですけどねぇ(苦笑)。
復讐劇としてはサスペンスも絡めていて上手い構成ではありますし、メル・ギブソンの演技も往年のカッコ良さを感じさせるものではありましたが、暗殺者達の手腕をもう少し「プロの仕事」にふさわしい洗練されたものにして欲しかったところです。
まあ、その手のプロフェッショナルでもない一介の刑事が超人的なアクションで敵を次々となぎ倒していく、というのも違和感だらけの設定ではあるのでしょうが、やはり敵側の守りも攻めも常識では考えられないほどに脆すぎるよなぁ、と。