映画「タイタニック(3D版)」感想
映画「タイタニック(3D版)」観に行ってきました。
ジェームズ・キャメロン監督が製作し1997年に公開され、同監督製作映画「アバター」に抜かれるまで興行収益がギネスブックに登録されるほどの大ヒットを記録した、パニック・ラブロマンス映画の3D映像リメイク作品。
映画「タイタニック」については、私は以前にも作中の恋愛描写についてこんな感想を書いたことがあったりします↓
映画「タイタニック」の現実逃避な恋愛劇
https://www.tanautsu.net/blog/archives/weblog-entry-61.html
こんな感想記事をアップしていることからも分かるように、個人的に映画「タイタニック」は1997年の劇場公開当時に既に観賞済みであり、そのこともあって当初は無視を決め込む方針でした。
3D映像しか売りがない、という時点で敬遠するのに充分なシロモノでしたし。
ところが、以前に映画「ヒューゴの不思議な発明」で試写会当選して無料で観賞できたことに味をしめ、無差別に試写会応募をしていたところ、その中からたまたま「タイタニック(3D版)」の試写会当選が転がり込んできたんですよね。
そうなると、「まあせっかくタダなのだし、ネタ収拾も兼ねてまた観に行ってみるか」ということになって、結果今回の観賞に繋がった、というわけです。
こんな形で、実に15年ぶりに同じ映画をしかも映画館で観賞する、というのもなかなかできない経験ではありましたね(苦笑)。
ちなみに、今作の正式な劇場公開日は2012年4月7日の予定となります。
映画「タイタニック(3D版)」のストーリーは、1997年当時に公開された映画と全く同じです。
というより今作は、当時の映画を単に3D映像で観賞できるようにしたというだけですので、エピソードの追加などといった要素すらも全くなかったりするんですよね。
過去に映画館やレンタルなど何らかの形で作品を観賞した人にとっては、単なる過去作の再確認にしかなりません。
では、今作におけるほとんど唯一のセールスポイントで、かつ大々的に喧伝されている3D映像はどうなのかというと、こちらはこちらで「注意して見ていれば若干浮き出ている箇所があるのが分かる」「2D版とはかろうじて区別がつくかどうか程度」のシロモノでしかなかったりします。
もちろん、3D映画の傑作とされる「アバター」や、この間観賞した「ヒューゴの不思議な発明」などとは比較のしようもなく、これ【だけ】のために映画を観賞する価値があるのかと問われると、はなはだ疑問と言わざるをえないところです。
「アバター」と「ヒューゴの不思議な発明」が、最初の段階から3D専用のカメラを使って映画の撮影が行われていたのに対し、大多数の3D映画は「2Dで撮影し終わった映画を後付の編集加工で3D化する」という手法が取られています。
しかし、最初から3Dを意図して製作された3D映像と、後付で編集加工されたそれとでは、その出来やクオリティにおいて雲泥の格差が存在します。
もちろん、前者の方が後者をはるかに突き放して秀逸な出来なわけですが。
そして「タイタニック(3D版)」もまた後者の部類に属するのです。
それから考えると、3D映像的には「タイタニック(3D版)」が「アバター」「ヒューゴの不思議な発明」に及ばないのも当然の結果ではあったのでしょうね。
元々2Dで撮影していた「タイタニック」を、後付で3Dに加工すること自体に無理があることなんて、製作陣からして最初から分かっていたのではないかと思えてならないのですが。
実際、「タイタニック」「アバター」双方の生みの親であるジェームズ・キャメロン監督からして、以下のような発言をしていた経緯もあるみたいですし↓
アメリカ映画産業の3Dブームに暗雲!? 最低水準の3D映画の乱発に危険信号
http://www.cinematoday.jp/page/N0025070
> 後処理で3Dにした映画を観ると、往々にして画像が暗く、鮮明な立体感にも欠けるという違いが表れます。ちなみに日本でも大ヒットしたティム・バートン監督の『アリス・イン・ワンダーランド』も後処理で3Dにしたものです。後処理決定を下したバートン監督に対して、『アバター』のキャメロン監督は、「2Dで撮影した映画を3Dで公開するなど、まったくの無意味」と公の場で厳しく批判し、話題になりました。
>
> さらにキャメロン監督はこう付け加えました。「最近、スタジオ側のプロデューサーが、撮影が終わった後に3Dにするという決定を下す場合がある。こういったクリエイティブな事はスタジオでなく監督が行うべきである」と。
……まさか後年、他ならぬ自分自身で製作した2D映画が「後付3D化でリメイク&劇場公開される」なんて夢にも思っていなかったでしょうねぇ、ジェームズ・キャメロン監督は(苦笑)。
今回の「タイタニック(3D版)」自体が、3D映画へのこだわりを持つジェームズ・キャメロン監督に対するあてつけでも意図しているようにすら思えてならないのは私だけなのでしょうか(爆)。
3D映像関連以外で私が抱いた感想としては、「この当時のレオナルド・ディカプリオってえらい若かった上に役柄も全く違っているなぁ」といったところですね。
私が「タイタニック」以外で観賞したレオナルド・ディカプリオ主演作品と言えば、2008年公開映画「ワールド・オブ・ライズ」と、2010年公開映画「シャッターアイランド」「インセプション」があるのですが、全体を通じて「闇の世界のプロ」「妻子を愛しているが、妻の奇行に常に悩まされている」的な役柄が際立っていました。
最新の主演作である2011年(日本では2012年1月)公開映画「J・エドガー」でも、アメリカFBIの豪腕実力者にして「アメリカの影の支配者」とまで評されていたジョン・エドガー・フーヴァーを演じていましたし。
それに対し、「タイタニック」でディカプリオが演じたジャック・ドーソンは、「貧乏だけど裏表のない若者」的な役柄だった上に外見も非常に若々しく、近作の傾向とは非常に大きなギャップがあるんですよね。
「15年もの歳月で、ディカプリオも恐ろしく変わってしまったよなぁ」と改めて感慨を覚えたものでした。
ただ、当のディカプリオ自身は、自身が主演を演じたはずの映画「タイタニック」に対して必ずしも好意的ではないようで↓
レオナルド・ディカプリオ、『タイタニック』出演を後悔?
http://www.cinematoday.jp/page/N0005624
> [シネマトゥデイ映画ニュース] レオナルド・ディカプリオが、雑誌のインタビューで、世界的大ヒットとなった『タイタニック』への出演が観客に自分のイメージを植えつけてしまった、と語った。ディカプリオは『タイタニック』と同時期に、ポール・トーマス・アンダーソン監督作『ブギー・ナイツ』でマーク・ウォールバーグが演じたポルノスターの役をオファーされていたが、「そちらを選べばよかった」と告白。「自分のことを知られれば知られるほど、アーティストにとってミステリアスな部分は奪われてしまい、役を演じていても観客に真実味を与えられなくなってしまう」と、心の内を語った。
これから考えると、近年におけるディカプリオの役柄こそが「ディカプリオが本来望んでいたもの」ということになるのかもしれないですね。
3D映像に特にこだわりを持つ人でもなければ、今作の観賞はレンタルDVDでも充分なのではないかと思わなくもないですね。
特に今回の場合は「映画の方が早く観賞できる」という利点すらも皆無ですし。