映画「バトルシップ」感想
映画「バトルシップ」観に行ってきました。
アメリカのハワイおよびその周辺海域を舞台に、地球外から総計5隻の宇宙船でやって来た侵略者達との戦いを描いた、ユニバーサル映画100周年記念作品。
通常、アメリカ映画は本家アメリカでの公開より数ヶ月遅れて日本では劇場公開されることが多いのですが、今作は逆にアメリカよりも1ヶ月早い日本公開となっています。
やはり今作では、内容自体が日米の共同軍事作戦をベースにしていることと、日本人俳優である浅野忠信が「マイティ・ソー」に次ぐ2作目のハリウッド映画出演ということで、興行収益が見込めると判断したアメリカ側がリップサービスをしてくれたという「大人の事情」でも背景にあるのでしょうけどね。
「マイティ・ソー」ではあまり目立たない脇役だった浅野忠信も、今作では準主役的なポジションにありますし。
物語の始まりは、地球外生命体が地球へやってくる2012年から遡ること7年前の2005年。
この年、アメリカでは、太陽系外にあるという地球型惑星と交信を試みる計画「ビーコン・プロジェクト」が立ち上げられ、衆人環視の中、ハワイのオアフ島に設置されたNASAの送信施設より目標の地球型惑星に向けて通信が発射されていました。
「ビーコン・プロジェクト」がTVニュースで流される中、とある酒場?では、一組の兄弟が今後のことについて何やら会話を交わしていました。
アメリカ海軍で現役エリート軍人として出世しつつある兄のストーン・ホッパーに対して、無職のトラブルメーカーで周囲からは鼻つまみ者扱いされている弟のアレックス・ホッパー。
2人の会話は、カウンター席に座ったひとりの女性を、今作の主人公であるアレックス・ホッパーが目に留めたところで中断します。
その女性サマンサ・シェーンに一目惚れしたアレックスは、早速サマンサに声をかけるのですが、最初は当然のごとく無視されます。
しかし、サマンサが店のマスターにチキン・ブリトーを注文したところ、売り切れで出せないという返答が返ってきたことにアレックスは食いつきます。
彼は「5分待ってくれればチキン・ブリトーを持ってくる」とサマンサに告げ、店を出て行くのでした。
彼はすぐさま近くのコンビニにまで足を運ぶのですが、そのコンビニは24時間営業ではないらしく、一足遅く営業時間を終えてシャッターを下したところでした。
「シャッターを開けてくれ」という懇願を無視されたアレックスは、何と裏口と天井裏?から店内に侵入してチキン・ブリトーを奪取。
しかし店内から脱出しようと入ってきた天井裏に戻ろうとして何度も失敗した挙句、店内をメチャクチャに破壊してしまい、警察当局に追われることに。
それでも警官に捕まる直前、アレックスは「何事か」と外に出ていたサマンサにチキン・ブリトーを渡すことに成功。
このことがきっかけとなり、サマンサとアレックスは付き合い始めるようになります。
しかし、一連のバカ騒ぎにアレックスの兄であるストーンは激怒、その精神を叩き直すべく、アレックスに対し問答無用で海軍に入ることを命令するのでした。
それから7年がたった2012年。
アメリカのハワイ・オアフ島では、記念艦となっている戦艦ミズーリの艦上で、リムパック(環太平洋合同軍事演習)を始めるにあたっての式典が行われていました。
演習が始まる前に、リムパック参加国の軍人同士によるサッカー杯が行われ、決勝はアメリカと日本で争われていました。
試合終盤、日本が1点のリードを守り続けている中、日本側の選手がボールではなくアレックスの顔面を蹴ってしまったことから、アメリカチームにペナルティキックのチャンスが舞い込んできます。
顔面を蹴られたことから脳震盪を起こした疑いがもたれたアレックスは、選手の交代を周囲から勧められますが、アレックスはこれを拒否して自分がシュートすることに固執します。
しかし、アレックスのシュートは高らかに舞い上がってゴールを飛び越え、この瞬間に日本の優勝が確定してしまいます。
試合の敗北にショックを受けるアレックスは、さらにその後、日本の海上自衛隊に所属している護衛艦「みょうこう」の艦長ユウジ・ナガタ一等海佐(アメリカでは大佐に相当)と殴り合い?の喧嘩沙汰を起こしてしまいます。
そのことが軍の上層部で問題になった結果、アレックスはリムパックが終了して帰港するのと同時に軍をクビにされることが決定してしまうのでした。
さすがに意気消沈し、無気力になってしまったアレックスでしたが、その頃、世界ではとんでもないことが発生していました。
何と、宇宙から正体不明の謎の飛行物体が5つ、編隊を組んで地球に接近してきたのです。
5つの飛行物体の中のひとつは、地球を周回している衛星に激突して空中分解して一部が中国の香港に落下、ビルが倒壊したりして大惨事となってしまいます。
そして残り4つは、今まさにリムパックが行われているハワイ沖に着水。
そのため、すぐ近くにいるリムパックの艦隊に謎の飛行物体を探索するよう、アメリカ本国から指示が来ることになります。
この指示を受け、飛行物体が着水した海域に3隻の艦艇が向かうことになりました。
そしてこれが、世界の命運を賭けることとなる戦いの始まりとなるのです。
映画「バトルシップ」では、実在する軍艦が作中で活躍しています。
同じく3隻の中の1隻で、日本の海上自衛隊所属の護衛艦みょうこう
そして主人公アレックス・ホッパーが搭乗している、USSジョン・ポール・ジョーンズ(以下「JPJ」)
当然、これ以外にも演習に参加していた軍艦はあるわけですが、実際には敵の宇宙船がハワイ沖を中心とした半径90㎞の海域に電磁バリアを張ってしまったために外部からの進入が一切不可能となったことから、たまたま飛行物体の調査でその海域内にいた3隻だけで宇宙船の相手をすることになってしまいます。
しかも3隻のうち、USSサンプソンと護衛艦みょうこうは敵の攻撃で早々に完全破壊されてしまったので、物語が終盤に近づく頃までは主人公が搭乗するJPJ「だけ」で敵の宇宙船と戦っていくこととなるのです。
世界各国の軍艦を集めたリムパックが舞台となっているのに、実質的にメインの戦いを繰り広げるのは駆逐艦1隻と敵宇宙船4隻だけという、何ともこじんまりとした展開なわけですね。
大規模な艦隊同士による大決戦的なものを考えていると、少々拍子抜けすることになるかもしれません。
ただ、規模はこじんまりとしたものであっても、それは戦闘シーンの迫力や手に汗握る演出を何ら軽減するものではありません。
序盤で披露される敵宇宙船の圧倒的な強さ。
レーダーの類を全て無効にされた状態で、完全破壊された護衛艦みょうこうから救助され指揮権を譲られたナガタの指揮の下、津波ブイを使った敵の追跡・捕捉・攻撃を行い孤軍奮闘するJPJ。
そして敵の宇宙船を3船まで破壊するも敵に逆襲され潰されてしまったJPJに代わり、一際巨大で電磁バリアを張っている元凶でも最後の敵宇宙船に戦いを挑む戦艦ミズーリ。
今作のタイトルでもある「バトルシップ」は、「戦う船」という比喩的な概念を意味するだけでなく、文字通りの「戦艦」、つまりミズーリのことをも指しているものでもあったわけですね。
この名前の繋げ方はなかなかに上手い落としどころなのではないかと思いました。
まあ、長年記念艦であった戦艦ミズーリに、すぐさま戦闘行動を可能にするだけの燃料や弾薬が満載されているなど本来ありえることではなく、その非現実性にツッコミどころの大穴があったのは少々苦しいところではあるのですが。
記念艦として停泊させておくだけのミズーリに常時燃料を入れておかなければならない理由がありませんし、使わない弾薬をミズーリにそのまま搭載したままにしておくなど、火薬管理の面から言っても危険極まりないのですから。
戦艦ミズーリを操れる老練の退役軍人達がアレだけいたのは、合同軍事演習の際の式典に列席するためという名目があったので、それで何とか説明も可能なのでしょうけど。
ただし、動かす過程が非現実的ではあっても、ああいう展開自体は結構燃えるものがありますし、戦艦ミズーリの活躍も演出もJPJのそれに決して劣るものではなかったので、映画としては大成功の部類に入るエピソードなのでしょうね。
映画「バトルシップ」では、エンドロール後にも続編を匂わせるようなエピソード映像が披露されています。
序盤で5隻の宇宙船のひとつが空中分解した際の脱出艇?がスコットランドに墜落しており、地元住民が興味本位でそのドアをこじ開けてしまい、中から宇宙人の手が出てきたところで終了、というものです。
今作は「ユニバーサル映画100周年記念作品」ということで作品内で話は完結しているだろうと考えていたので、まさかそんな映像があるとは思ってもみなかったのですが。
これってやはり「人気が出るなら続編を作ろう」みたいな意図でもあって入れている映像なのでしょうねぇ。
ただそれにしても、今作もエンドロールの途中で退席してしまい、結果としてその後の映像を見逃していた人が意外に多かったので、「やはり映画は最後まで観ないといけないなぁ」と改めて痛感せざるを得なかった次第です。
かくいう私も、以前はエンドロールの途中で席を立ってスクリーンから去っていた人間でしたし、実は今作でも「続きはないだろう」という考えから少しばかりそういう誘惑に駆られていたりしたのですが(^^;;)。
こういうのって、いいかげん何らかの対策を行う必要があるのではないかとは思わずにいられませんね。
映画料金を払いながら、エンドロール後の特典映像を見逃すのって結構な損失だと思いますし、しかし一方では「エンドロールなんて観る必要などない」と考える人が厳然として存在するわけで。
しかしだからと言って、「エンドロール後に特典映像が……」というアナウンスを事前に流すというのもサプライズな演出効果が薄れしまうという問題がありますし、微妙に難しい対処を迫られる課題ではあるのでしょうけどね。
ハリウッド映画が持つ迫力ある映像や演出、および単純明快な分かりやすいストーリー展開がお好みの方には、文句なしにオススメできる一品です。