映画「幸せへのキセキ」感想
映画「幸せへのキセキ」観に行ってきました。
イギリスの新聞コラムニストであるベンジャミン・ミーの回顧録を元に製作された、マット・デイモン主演の人間ドラマ作品。
回顧録という性格上、名前も改変されることなく原作者がそのまま今作の主人公となっています。
今作は2012年6月8日に日本で劇場公開される予定の映画なのですが、今年5本目となる試写会上映に当選し、今回も劇場公開に先行する形での観賞となりました。
スズメバチ?の大群の只中に飛び込んだり、ハリケーンの中に突っ込む飛行機内でのリポートを敢行したりといった実績で、それなりに名が知られている新聞記者のベンジャミン・ミー。
彼は半年前に最愛の妻を亡くし、そのショックから未だに立ち直れずにいました。
会計士の職にある兄のダンカン・ミーからもしきりに再婚を勧められますが、ベンジャミンは「この街にいるとどうしても亡き妻のことを思い出してしまう」とあまり乗り気になれないでいました。
また、自分と同じく傷心を抱え込んでいる、妻との間に出来た子供である14歳の息子ディランと7歳の娘ロージーにも、どのように接していけば良いのか悩む日々が続いていました。
特にディランは、母親が亡くなって以降は心が荒むばかりで、父親に反抗的で学校でもたびたび問題を起こすようになるありさま。
そんなある日、ベンジャミンは自分の企画をボツにし、お情けレベルの仕事を与えて飼い殺しにしようとする会社の方針と反発し、上司に「会社を辞める」と宣言して会社を飛び出してしまいます。
さらにそれと合わせるかのように、息子ディランもまた、校則違反を重ね続けたことが災いして退学処分に。
生活基盤がボロボロになってしまったベンジャミンは、これを機会に新しい家を購入してそこへ引っ越し、新しい生活を始めることを決意するに至るのでした。
これが初仕事という新米不動産業者の案内の下、ベンジャミンとロージーの2人は候補となる家を物色しにかかるのですが、2人の希望と合致した家はなかなか見つかりません。
とうとう紹介される最後の物件となった家に2人は到着するのですが、そこは敷地面積が他の物件と比べても恐ろしくデカい家でした。
家の状況も決して悪いものではなく、2人はここを気に入りベンジャミンも家を購入する気になったのですが、新米不動産業者はそこで何故か難色を示します。
新米不動産業者にベンジャミンが説明を求めた時、突如獣の咆哮が辺りにこだまします。
そして新米不動産業者は、ここが実は動物園の一部であることをベンジャミンに話すのでした。
ローズムーア動物公園と呼ばれるその動物園は、かつてのオーナーが死んで以降は閉鎖を余儀なくされており、今では元オーナーの遺言と遺産でかろうじて維持されている状況にあるとのこと。
そして、閉鎖された動物園を維持・管理し続けることが、家を購入する際の必須条件であるとされていたのでした。
それまでの人生で動物の管理などとは全く無縁だったこともあり、ベンジャミンも最初は当然のごとく家を買うべきか否か逡巡します。
しかし、ロージーが楽しそうに動物と戯れている光景を見て、子供達のために家を購入することをベンジャミンは決断するのでした。
そして数日後、前の家を引き払って引っ越してきたベンジャミン・ミーの一家は、ローズムーア動物公園で動物達の飼育に当たっていた飼育員達と共に、動物園の再建に乗り出すこととなります。
ベンジャミンの一家を物色していたのは2月であり、役所による動物園の審査が行われるのは6月30日。
この6月30日に審査をパスすれば、7月7日に動物園をオープンさせることができるのです。
しかし動物園の再建には、当然のごとく多くの問題が立ちはだかっていたのでした……。
映画「幸せへのキセキ」の作中で2人の子供の父親役を演じているマット・デイモンは、実生活でも4人の子供の父親であるのだとか。
そのためなのか、作中では母親を亡くして子供達への対応に悪戦苦闘を余儀なくされつつ、それでも子供達の幸せを願う無器用な父親像を存分に演じていました。
物語中盤頃までは「息子への当たりと娘贔屓が酷すぎないか?」という部分もありましたが、そういう態度を取っている理由や葛藤なども父親ならではのものはありましたし。
マット・デイモンは、映画「ヒアアフター」以降、アクションシーンが少ない、もしくは皆無な映画にばかり出演していますが、本人的にはそちらの方が本望だったりするのでしょうかね?
まあ息子にしてみれば、「暗い目が死んだ母親に似ていることがイライラするから」などという理由で自分に当たられてはたまったものではないのですが、まあ父親がああいう感情を持つこと自体は(良くはないにしても)ありえることではあるのではないかと。
ただ、そこから端を発する息子と父親の対立が、スパーという老齢のベンガルドラを看取るシーンを介してとは言え、やや唐突に終わってしまった感は否めなかったところですね。
ただでさえあの息子は、物語序盤から父親に対して反発ばかり見せていたのですからなおのこと。
まあ、息子の父親に対する反発自体は、あの年齢相応の「思春期」「反抗期」という部分も多分にあったのでしょうけど、あの父親の告白はそれでも結構大きな精神的ダメージにもなったでしょうし、普通に考えたら親子関係はむしろ悪化すらしてしまうものではなかったのかと。
息子が父親に対し激発するところから、どのような心情と過程を経てあの和解のシーンへと至っていたのかについて、もう少し詳細に描写しても良かったのではないかと思うのですが。
今作は映画「幸せの教室」と同じく、これと言った悪役が全くいない映画と言えますね。
一応、飼育員達が動物園の審査を行うウォルター・フェリスという役人を酷評したり悪態をついたりする描写はあるのですが、彼にしても別に不正な手段でわざと失格にするような審査を行ったり動物園に嫌がらせをしたりするわけでもありません。
審査自体は至って公正なもので、むしろ動物園側の方が、動物園の各所で発生するアクシデントや不具合を急場凌ぎで取り繕うべく奔走している感すら否めなかったところですし。
この審査の流れは、2006年公開映画「県庁の星」の終盤で行われたスーパーマーケットの営業差し止め検査の行程に近いものがありましたね。
国は違えど、どこでもああいうことはするのだなぁ、と妙に感心してしまったところでした(^^;;)。
どことなくほんわかできる映画を観たい、という方にはオススメの作品ですね。