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2012年05月21日の記事は以下のとおりです。

映画「ファミリー・ツリー」感想

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映画「ファミリー・ツリー」観に行ってきました。
ハワイ諸島を舞台に繰り広げられる、ジョージ・クルーニー主演の人間ドラマ作品。
今作で主演を演じていたジョージ・クルーニーは、第84回アカデミー賞で主演男優賞にノミネートされており(ただし受賞はならず)、今作自体も同賞で脚色賞をこちらは受賞しています。

物語の冒頭は、ハワイのオアフ島沖の海を疾走するモーターボートに楽しそうに乗っているひとりの女性が映し出されます。
この女性がその直後に事故に巻き込まれ、意識が戻らず容態も悪化していく植物状態と化してしまったことが、今作における物語の始まりとなります。
その女性エリザベス・キング、およびエリザベスの夫にして今作の主人公であるマット・キングとの間には、2人の娘がいました。
ひとりは17歳で現在はハワイ島にある全寮制の高校で離れて生活している長女のアレクサンドラ・キング(作中では「アレックス」と呼ばれている)。
もうひとりは地元の小学校に通っている10歳の次女スコッティ・キング。
ところがスコッティは、母親が事故を起こしたショックから外で問題を起こすようになってしまい、スコッティの友人の母親から苦情の電話がかかってきて対応に追われる始末。
マットは、それまで仕事一筋で家族をほとんど顧みてこなかった典型的な仕事人間であり、家の問題は全て妻であるエリザベスが見ていました。
そのため、エリザベスが事故で動かなくなって以降は、それまで妻が見ていた子供の面倒を自分が担わなくてはならなくなってしまい、何をすれば良いのか分からず途方に暮れる日々を過ごす羽目に。
さらにマットには、家庭の事情とは別にもうひとつの問題を抱え込んでいました。
先祖代々受け継いでいたカウアイ島のキプ・ランチにある広大な土地の信託期限があと7年で切れてしまうことから、土地の売却を迫られていたのでした。
妻のありがたみを今更のように理解したマットは、妻の容態が回復し退院したら、土地を売り払った金で妻と娘に裕福な生活をさせてやろうと、前向きな決意を新たにするのでした。
ところが、その決意に反して、エリザベスの容態は日を追う毎にむしろ悪化していくばかり。
ついには、「可能な限りの手は尽くしましたが、奥さんに回復の見込みはありません」とまで医者から告げられてしまい、本人が事前に表明していた意向により「尊厳死」の道を選択するよう言われるのでした。

かすかな希望すらも粉砕されてしまい、いよいよ絶望的な事態を否応なく直視せざるをえなくなったマットは、長女のアレックスを連れ戻すべくハワイ島へと向かいます。
自分ひとりでは次女の面倒を見きれないという事情もありましたし、何よりも家族の一員として母親の容態に関する情報を共有する必要があったためです。
寮から抜け出してボーイフレンドのシドと夜遊びをしていた中でマットとスコッティに対面する羽目となったアレックスは、当然のごとくバツが悪い上に不満タラタラ。
しかし、自宅のプールでエリザベスの容態について知らされたアレックスは激しく動揺せざるをえませんでした。
ただその動揺は、単に母親の死に直面したから、というだけではなかったのです。
動揺を続けるアレックスをマットが問い詰めると、何とアレックスはエリザベスが浮気をしていたという事実をマットに対して告白したのです。
あまりにも想像の斜め上を行っていた事態に驚愕したマットは、すぐさま自宅を飛び出して親友夫妻の自宅へと文字通り走っていき、エリザベスの浮気について問い質すのでした。
さらにマットは、浮気について問い詰めた親友夫妻から、妻が自分と離婚する気であったことまで知る羽目となってしまいます。
親友夫妻の夫から、「ブライアン・スピアー」という妻の浮気相手の名前を知ることができたマットは、妻とブライアン・スピアーに怒り狂いながらも、死期が近いエリザベスの最期を看取らせるために、ブライアン・スピアーの居場所を探し始めるのでした。

映画「ファミリー・ツリー」では、家族を顧みることなく仕事一筋に集中しすぎた男の悲哀が描かれています。
妻であるエリザベスの不倫や遊び、それに子供の問題が発生していた原因を突き詰めると、結局全てがそこに行き着いてしまうわけで。
仕事人間であるマットにしてみれば、別に家族のことをないがしろにしていたわけではなく、むしろ「【家族のために】汗水流して働いていた」というのが偽らざる心情ではあったのでしょう。
しかし、それは結果として家族、特に妻との間が疎遠になることに繋がってしまい、それが結果的に妻の不倫や子供との意思疎通不足という事態に直結してしまったわけです。
こういうのってアメリカ以上に日本の方が大量に転がっていそうな話ではあるのですが、仕事人間側から見れば自分の努力が全く報われていないわけで、たまったものではなかったでしょうね。
もちろん、仕事人間の夫が家族を顧みないからといって、それは妻の浮気という背徳行為の責任を何ら軽減も免罪もするものではありえないのですが。

しかも、エリザベスの浮気相手であるブライアン・スピアーは、物語後半で判明するのですが妻と2人の子供がいる既婚者だったりするのですからねぇ。
マット達がブライアン・スピアーの所在を見つけ出した際は幸福な家庭だったはずのスピアー家が、夫の不倫発覚後にボロボロになってしまい、その怒りと恨みをブライアン・スピアーの奥さんが動かないエリザベスに激昂しながら叩きつける様は、観客として観ている側としても充分に共感できるものがありました。
夫の不倫に直面する羽目になった奥さんと子供達は100%の被害者であり何も悪くなどないのですから。
アレを見ていたら、キング一家には申し訳ないですが「ちょうど良いタイミングで奥さんが死ぬことになって良かったじゃないか」とすら思えてしまったほどです(-_-;;)。
もっとも、エリザベスの不倫の相方であるブライアン・スピアーにとっては、エリザベスの死は災厄以外の何物でもなかったでしょうけどね。
奥さんの分も含めて、自分とマットの家族双方に賠償等の問題が確実に降りかかってくることになるのですし、自分の境遇や心情を共有できる相手さえもいなくなってしまったわけなのですから。
まあ、これは自業自得として諦めてもらうしかないのですけど。

崩壊寸前の家族問題や不倫問題、それに土地売却の問題など、作品的にはなかなかに重いテーマが目白押しですが、全体的にのんびりとしたハワイアンな音楽や雰囲気がそれを和らげている感じですね。
ハワイ諸島の各所が映し出されていく中、のんびりと観光しながらストーリーが進んでいくような感すらありましたし。
ストーリー自体はお世辞にも明るいとは言い難いものがありますから、製作側としてはそういった「雰囲気作り」で暗さを払拭していく意図があったのでしょう。
実際、これで音楽や雰囲気までセカセカしていたら、それこそ何の面白みもない鬱々とした展開にしかならなかったでしょうし。
また、物語後半のブライアン・スピアー探しの際、何故か一緒になって付いてきた長女アレックスのボーイフレンドであるシドの存在も良い緩衝材となっていました。
最初の方では不謹慎発言を連発しまくって周囲から顰蹙を買っていたシドは、しかし物語が進むにつれてアレックスのみならずマットの良き理解者へと変わっていきました。
彼自身、つい最近に父親を事故で亡くしたという経緯もあったとのことで、キング家に共感もしやすかったのでしょう。
最初は「何故こんなのにアレックスは惚れたんだよ」と考えていたくらいでしたが、なるほど、これならば惚れる理由も理解はできるなと。
こういった「小道具」の使い方はかなり上手い部類に入るのではなかったかと。

ジョージ・クルーニーのファンな方々と族系の人間ドラマ好みな方にはイチオシの作品であると言えそうです。

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