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2012年07月30日の記事は以下のとおりです。

映画「エイトレンジャー」感想

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映画「エイトレンジャー」観に行ってきました。
アイドルグループの「関ジャニ∞(エイト)」が上演してきた、同名のスーパー戦隊シリーズのパロディ物を映画化したコメディ作品。
なお、私は「エイトレンジャー」の元ネタについては全くタッチすることなく今作に臨んでいます。

物語の舞台は、民主党が20年以上も政権を担っていたらこうなるのではないかというレベルまで荒廃している2035年の日本。
少子化が今よりもさらに進んで人口は7500万人にまで減少し、円の価値が下落して経済は衰退。
日本政府は「小さすぎる政府」への転換を目指し、警察や消防などの公共サービスの類を大きく削減。
その結果、日本有数の人口を誇る東京や大阪などの大都会にのみ、充実した公共サービスによる秩序が存在する状態と化していました。
人口の希薄な地方の小さな市町村の類は完全に見捨てられ、地方都市でさえヤクザが跳梁跋扈し犯罪やテロが横行する始末。
特に少子化の影響から、子供の誘拐および人身売買が横行し、それがヤクザやテロリスト達の資金源になるという、極めて不安定な社会が現出していました。
警察は警察で、「事件に対処して欲しければまず多額の入金をしろ!」などと民衆に向かって堂々とのたまえるほどの腐敗ぶりを披露する惨状を呈していたりします。
そのため一般的な日本国民は、明日をも知れない苦しい生活の中、自分の身は自分で守ることを余儀なくされていたのでした。
誰もが先行きに不安を抱き、未来に希望が抱けない、まるで「北斗の拳」の無秩序な世界や、お隣の中国のモラルハザードな一般社会を再現しているかのごとき未来の日本。
そして、作中の物語の主要舞台となる八萬市(エイトシティ)もまた、犯罪組織の凶悪犯罪に悩まされていました……。

物語の冒頭、今作の主人公である横峯誠は、闇金からの借金取りに追われていました。
海辺の公園でついに借金取りに追い詰められ、カネを返すか海に投げ込まれるかの二者択一を迫られる横峯誠。
そこへ突然現れ、杖1本?で借金取りをあっさりと蹴散らしていった謎の老人。
老人は自らをヒーロー協会の理事長と名乗り、横峯誠をヒーロー協会へスカウトします。
ヒーロー協会での活躍次第では、お前の借金を肩代わりしても良いという条件付で。
危機的条件を助けられたということもあり、渡された電子ホログラム名刺?の案内に従い、ヒーロー協会の本部を訪れる横峯誠。
到着早々、彼は理事長によってヒーロー協会お抱えの戦隊「エイトレンジャー」のブラック&リーダーを任され、その他6名の隊員のまとめ役を任されることになります。
突然の抜擢に戸惑う横峯誠ですが、紹介された他の6名の「エイトレンジャー」達は、揃いも揃ってやる気がなく、訓練どころかひたすらダラけているありさま。
一応、横峯誠も含めた7人の「エイトレンジャー」達には、一定の条件が揃うと超人的な力を発揮できるスーツを支給されてはいたのですが、その発動条件は7人の中の誰にも分からず、現時点では宝の持ち腐れ同然の状態。
この状況を打破すべく、彼らはヒーロー協会の切り札で「伝説のヒーロー」としてその名を轟かせるキャプテン・シルバーに教えを請おうと動き始めるのですが……。

映画「エイトレンジャー」は、スーパー戦隊のパロディというだけでなく、物語の随所に「お遊び」的なギャグ要素が盛り込まれています。
たとえば、主人公の横峯誠がヒーロー協会を訪れた際、理事長からヒーロー協会のCM映像を見せられるシーンがあるのですが、そのCMの内容は、頑丈そうな物置にヒーロー協会の構成員が100人乗っていて自分達をアピールするというシロモノでした。
これは、物置の上に100人の人間が乗って頑丈さをアピールしていたイナバ物置のCMをいじったパロディです。
作中のヒーロー協会のそれは、最初物置の上に乗っていた100人がだんだんと数を減らしていき、しまいには10人を切ってしまう衰退ぶりを披露するという、何とも哀愁漂う仕上がりになっていましたが(苦笑)。
横峯誠も「何故物置?」というツッコミを小声で呟いていましたが、何故こんなネタをわざわざ仕込んでいたのか、観客としても是非知りたいところではありました(^_^;;)。
また、舘ひろしが演じるキャプテン・シルバーが居住するアパートの部屋の中には、何故か1980年代にテレビ放映されていた往年の刑事ドラマ「あぶない刑事」のポスターが貼られていて、「俺、そっくりだとよく言われるんだよね」と当の本人が弁明するシーンが披露されていたりします。
そっくりも何も、アンタは「あぶない刑事」で普通に主演のひとりを担っていたじゃないか舘ひろし、と往年の「あぶない刑事」ファンとしては思わずツッコミを入れてしまったものでした(^^;;)。
この辺りの所謂「お遊びネタ」は、今作の監督である堤幸彦の持ち味ではあるのでしょうね。
彼が同じく監督を担っていた映画「SPEC~天~」でも、この手の「お遊びネタ」が随所にちりばめられていましたし。
この「お遊びネタ」に代表されるように、今作の内容はギャグコメディをメインかつ前面に展開しつつ、要所要所でシリアスな要素を挿入するという構成になっています。
キャプテン・シルバーと横峯誠の関係や、今作のラスボスとのやり取りなどは、結構シリアスな展開になっていたりしますし。
この辺りの構成は、人によって好みが分かれそうなところではありますね。

それにしても、この世界における日本政府って、一体どこまで無能な統治をやっていたのだろうかと、正直その部分については色々と疑問を抱かずにはいられませんでしたね。
そもそも、今でさえ供給が需要よりも膨らんでいる「デフレギャップ」が叫ばれている中で、一種の需要減・供給増の効果をもたらす構造改革的な「インフレ対策」を打ち出すなど、狂気の沙汰もいいところなのですが。
作中における日本政府が実行した政策というのは、公共事業や公共サービスの削減という「小さすぎる政府」の実現であり、それは必然的にそれらのサービスに携る人達の給与を削り、需要を減らしてしまうことになります。
それは一方では「製造コストの減少」による供給増をもたらすことにも繋がるのですが、給与が減れば当然一般国民の購買力は低下せざるをえないので、そんな中で供給量が増えても経済は豊かにはなりません。
まさに「供給が需要を上回るが故のデフレギャップ」に苦しんでいる日本で、さらにそれを促進するような政策を行うのは自殺行為も良いところでしょう。
ならば外国に輸出して外貨を稼げば良いではないか、とは誰もが考えるところでしょうし、作中では「円の価値が下がった」と言われているのですから対外貿易にはむしろ適しているはずなのですが、その割には作中の日本は対外貿易で潤っているような形跡すらもありません。
昨今の日本経済で問題になっている事案のひとつに「円の価値が異様なまでに高くなっている」ことが上げられるのですから、「円の価値が下がる」円安は、むしろ日本経済にとって恩恵になりえるものではないかと思えてならないのですが。
あの世界の日本って、円の価値云々以前の問題として、諸外国から何らかの経済制裁ないしは海上封鎖でも行われているのではないか、とすら考えてしまったくらいなのですけどね。
第一、あそこまで経済状態がボロボロで大都会以外の治安も悪化し、かつ内部統制もままならない状態では、他国のスパイや特殊工作員なども今以上に入りたい放題になるでしょうし、場合によっては地方自治体のいくつかが諸外国のカネによって買収され、無血で他国領土化する可能性すら起こりえるのですけど。
そうでなくても、日本の周辺には中韓朝やロシアなどといった、日本侵攻の意思を明確に示している国々が蠢いているのですし。
むしろ、危機的状況に乗じられて日本が他国に攻め入られ分割占領された状態という、映画「ファイナル・ジャッジメント」的な状況の方が、日本の未来図としては「より」ありえそうな気がしなくもないのですけどね。
まあ、消費税増税やTPPなどという「デフレ下のインフレ対策」を堂々と推進し、その他の面々でも愚劣な政策や失政に邁進している民主党政権のようなシロモノが長く続けば、こんな荒唐無稽な暗い世界も夢物語ではなく実際に起こりえるのではないか、という「恐怖の可能性」もゼロとは言えないのが、いささかウンザリするところではあるのですが。
こんなアホな世界を現出させないためにも、国民のための政治をきちんと行ってくれる政治家や政権をきちんと選ばなければならない、という教訓を教える映画としても、今作はそれなりに機能するものと言えるのではないかなぁ、と。

ちなみに、作中における「エイトレンジャー」というのは「8人で構成される戦隊」ではなく、物語の主要舞台となっている八萬市(エイトシティ)の戦隊という意味を持つのだとか。
だから「エイトレンジャー」と銘打っているにもかかわらず、実際の戦隊の構成員は7人しかいないわけですね。
映画ではなく元ネタの方の「エイトレンジャー」は、「関ジャニ∞(エイト)」の結成当初が8人のメンバーだった頃の名残なのだそうですが。
映画のタイトルと予告編を初めて見た時は、キャプテン・シルバーか、ヒロイン(兼ラスボス)の鬼頭桃子のどちらかを含めて8人になるのではないかと考えていたものでした(^^;;)。
同じような構成だった映画「ワイルド7」は、当初は部外者だったヒロインがラストでメンバーに加わるというパターンになっていましたし。
ラストを見る限り、人気が出れば続編を作る気ではあるようなのですが、果たして興行的に成功するのでしょうかね、この映画は。

上でも述べていますが、今作は基本的にギャグコメディがメインで構成されていますので、その手の作品が嫌いという人にはあまりオススメできるものではないですね。
ただ、舘ひろしが本来お笑い物の戦隊スーツを違和感なく着こなしてシリアスな役柄を演じている様は結構面白いものがあったりするので、舘ひろしファンな方々は意外と必見かもしれません。

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