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2012年09月02日の記事は以下のとおりです。

映画「ひみつのアッコちゃん」感想

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映画「ひみつのアッコちゃん」観に行ってきました。
赤塚不二夫原作の国民的人気を誇る同名コミック生誕50周年を記念して制作された、綾瀬はるか・吉田里琴が主演を担う実写映画化ハートフルコメディ作品。
ストーリーは完全オリジナルで、原作や既存アニメとは何の関連性もありません。
今作は元来観賞する予定はなかったのですが、現在がちょうど1ヶ月フリーパスポート発動期間中ということで、急遽観賞予定リストに加えられることになった経緯があったりします(^_^;;)。
しかし、こんなある意味「古典的作品」までとうとう実写映画化されるようにまでなったのですねぇ。
洋画・邦画を問わず、昨今の映画では原作マンガの実写化が顕著なのですが、この傾向、果たしていつまで続くことになるのやら。

映画のタイトル名や原作から考えても当然のごとく今作の主人公である「アッコちゃん」こと加賀美あつ子は、母親の化粧箱を無断で失敬して見様見真似の化粧をするような、小学5年生のちょっと活動的な女の子。
ある日、加賀美あつ子が5年2組の教室で化粧をしていたところ、今時珍しいガキ大将含む3人の男子児童にイチャモンをつけられた挙句、ガキ大将から物を投げつけられた衝撃で父親からもらったコンパクトを壊されてしまいます。
そのことを嘆き悲しんだ加賀美あつ子は、自宅の庭にコンパクトの墓を作り、壊れたコンパクトを丁重に葬ります。
しかしその夜、加賀美あつ子は突如、誰かに名前を呼ばれると共に白い光が自宅の外で放たれているのを目撃するのでした。
謎の声に導かれるままに彼女が自宅の外に出ると、そこには光に包まれたひとりの男が佇んでいました。
彼は自分のことを「鏡の精」と名乗り、壊れたコンパクトを長年にわたって大事にしてくれたお礼として、新しいコンパクトを加賀美あつ子にプレゼントするのでした。
そして彼はこう付け加えるのです。
そのコンパクトは魔法のコンパクトであり、「テクマクマヤコンテクマクマヤコン」と唱えて変身したいものの名前を言えば、その名前のものに変身することができること。
元に戻りたい時は「ラミパスラミパスルルルンパ」「ラミパスラミパスルルルルルー」と唱えれば良いこと。
そして、コンパクトの魔法は誰にも知られてはならず、もし知られたら魔法が使えなくなってしまうこと。
「鏡の精」が去った後、加賀美あつ子はコンパクトの魔法を何度か発動させ、「鏡の精」が言っていたことが事実であることを確認します。
元々「大人になること」に憧れを抱いていた加賀美あつ子は、自分が好きな時にすぐさま大人に変身することができるコンパクトをすっかり気に入り、大人の女性警察官に変身してガキ大将に説教をしたりするのでした。
そんな折、小学校の同級生と一緒に遊びに行った遊園地で、加賀美あつ子は御年27歳になるひとりの男性と「子供の姿で」出会うことになります。
色々あって遊園地の観覧車に、その男性と一緒に同乗することになった加賀美あつ子は、妙に寂しそうなその横顔が気になるのでした。
その男性とは本来、一度きりの出会いとなるはずでした。
しかしその後、コンパクトの魔法でまた大人に変身した加賀美あつ子は、かねてから興味があった化粧品の売り場で店員から化粧をしてもらっている際、何の因果か再びその男性と遭遇することになります。
彼は化粧品の開発・販売を担っている大企業「赤塚」の開発室長待遇の地位にある早瀬尚人という名前の人物であり、この出会いが加賀美あつ子と早瀬尚人、さらには「赤塚」の運命をも変えていくことになるのですが……。

初の実写版映画(テレビドラマでは既に前例あり)となる今作の「ひみつのアッコちゃん」は、そのメルヘンチックなお子様向け作品をイメージしやすい名前と実績に反して、企業乗っ取りだの株主総会だのといったドロドロな一面が前面に出てきます。
ストーリーの大部分が、化粧品会社「赤塚」および「赤塚」に勤務している早瀬尚人との関係に終始しているため、ストーリー的にはそうなるのも当然ではあるのですが、そのこともあってか、「子供としての加賀美あつ子および彼女周辺の人間関係」についてはかなり小さな比重でしか扱われていないんですよね。
ガキ大将とか加賀美あつ子の友人であるモコなどは、序盤と終盤以外ではほとんど「お情け」レベルの出番しかありません。
そこから考えると、今作はあくまでも「魔法の力で大人になった加賀美あつ子の物語」であり、同時に「大人に憧れる子供の現実遊離な物語」でもある、ということになるでしょうか。
物語終盤では、魔法が使えなくなった加賀美あつ子が、元いた「子供としての自分の居場所」に戻っていくという描写もしっかり描かれていますしねぇ。

ただ、物語全体で見ると、明らかに「魔法のコンパクト」以外の要素があるとしか思えない言動が、加賀美あつ子には目立ち過ぎますね。
たとえば序盤で加賀美あつ子は、冬休み中に通わなければならない塾をサボるために大人に変身して「加賀美あつ子の親戚」と称し、塾に直接乗り込んで「加賀美あつ子は外国へ行ったから当面塾は休むことになる」と塾講師?に告げることで休みを確保します。
しかし、こんなのは塾側が加賀美あつ子の母親に直接電話をかけて確認を取ればすぐにでも露呈するウソでしかありませんし、そもそも一度も面識もない「加賀美あつ子の親戚」なる人物の身分詐称を、塾側が頭から信じなければならない理由もありません。
むしろ塾側としては、加賀美あつ子が何らかの犯罪に巻き込まれた可能性をも考慮して、目の前の女性の身元や親への確認を、自分から率先して行わなければならないところでしょう。
今の時代、この手の対処を誤ればマスコミが総出で叩きにかかりますし、下手すれば塾の経営や信用にも多大な悪影響が出かねないのですから。
あんな稚拙なやり方で、よくもまあ親にもバレないサボりができたよなぁ、とつくづく考えずにはいられませんでした。
そして早瀬尚人が勤務する化粧品会社「赤塚」へバイト待遇で入社した後も、社会人としてのマナーなど欠片たりとも持ち合わせていない言動を披露するのは、その出自から考えてやむをえないにしても、それに対して実行力のある制裁が全く発動しないというのは奇妙な話です。
加賀美あつ子の「非礼」な言動を見て周囲の他者が取った行動って、せいぜい「口先だけの抗議」くらいなものでしかなかったですからねぇ。
特に酷いのは、「赤塚」の株主総会で披露されたマイクパフォーマンスですね。
作中では誰もが彼女に注目し筆頭株主を動かすほどの名演説的な演出として扱われていましたが、元々彼女は「赤塚」の株主ではなく、あの場における発言権限など皆無なはずなのですから。
それどころか、あんなマイクパフォーマンスは企業の株主総会に対する明確な妨害行為とすら見做され、最悪は法的に罰せられる危険性すら否定できないところでしょう。
というか、加賀美あつ子が通う小学校でさえ、ああいう「悪目立ち」する行為を抑制するための社会的なマナー程度のことは普通に教えられそうなものなのですけどねぇ。
ましてや、小学校でも5年生レベルであればなおのこと。
この辺りは「小学生ならではなの世間知らずと無邪気さ」を逆手に取って大人達を圧倒する美談的に扱ってはいるのでしょうが、展開に無理があり過ぎて、正直ここにすら「魔法の力」が介在していたのではないかと考えざるをえなかったですね。

あと、ラストの爆弾騒ぎで加賀美あつ子は、ネコに変身して爆弾の所在を確認した後に人員の誘導を行っているわけですが、何故あそこでネコから元の大人の姿に戻って他者に爆弾の存在を知らせようと考えなかったのでしょうか?
ネコに変身して爆弾の現場まで他人を誘導するなんて手段自体がまどろっこしすぎますし、実際、作中でも一度失敗しかけてすらいますよね、アレって。
そんなことをするよりも、一度大人に変身して素直に「工場に爆弾が仕掛けられています」と他者に知らせていた方がはるかに効率も良く、かつ自身の秘密を知られることなく魔法を失うこともなかったのではないのかと。
というか、もっと効率の良い方法を考えれば、魔法のコンパクトを使って爆弾解体業者に変身して自分で起爆装置を解除するとか、オリンピック級の長距離走&槍投げ選手に変身して爆弾を安全な場所まで持っていって空高く遠くに投げるとか、自分ひとりで解決できる手段はもっと色々あったはずなのですが。
作中でも、魔法のコンパクトでバイクレーサーに変身した際にオートバイまで一緒に出していた上、免許もなく一度も動かした経験すらないはずなのに問題なく普通に乗り回していたのですから、魔法のコンパクトの力を使えば決してできないことではないでしょう。
外見上の変身のみならず一流の技能まで備わる魔法のコンパクトなんて、無敵のチート能力もいいところなのではないかと思うのですけどねぇ(苦笑)。

あと個人的には、物語中盤で子供の加賀美あつ子が、唐○俊○ばりのネットからのコピー&ペーストで「冬休みの課題」をさっさと終わらせたところを佐藤先生に見つかって咎められていたシーンも笑えるものがありましたね。
映画における●沢●一レベルのP&Gな盗作行為自体は、ジャック・ブラック主演の映画「ガリバー旅行記」でも見られたものではありましたが、これって知識さえあれば子供でもできることでもないのだなぁ、と。

原作やアニメにおける「ひみつのアッコちゃん」は、全体的に子供がメインの作品であるのに対し、今作はストーリー的にも出演キャスト的に見ても「大人向けの大人のための作品」ではあるでしょうね。
企業乗っ取りや株主総会の話なんて、とても子供向けに作られたものとは思えないですし(苦笑)。
大人だけで観るのならともかく、すくなくとも親子連れで観賞しえる映画であるようにはあまり見えないですね、今作は。

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