映画「白雪姫と鏡の女王」感想
映画「白雪姫と鏡の女王」観に行ってきました。
グリム童話「白雪姫」を原作に、ジュリア・ロバーツが邪悪の女王役を演じるコメディタッチなファンタジー作品。
2012年6月に日本で公開された映画「スノーホワイト」とはまた別の白雪姫物語となります。
なお、個人的に2回目となる1ヶ月フリーパスポート使用による映画無料観賞は今作で終了です。
最終的には総計13本の新作映画を無料観賞したことになりますが、去年の2倍以上の本数を叩き出すことはできましたし、まあ上出来な結果ではあるでしょうね。
映画の冒頭は、すっかりお馴染みとなった原作における白雪姫の誕生から18歳になるまでの生い立ちが語られることになります。
ただ、そのナレーションがジュリア・ロバーツ扮する女王の口から語られ、原作のプロローグを語った直後にいちいちツッコミを入れていく辺りは、露骨なまでのコメディな流れを感じさせてくれるものではありました(苦笑)。
映画「スノーホワイト」との違いは、国王が女王と結婚した直後に森の中で行方不明となったことくらいでしょうか。
白雪姫が18歳まで城の中で幽閉されること、女王が魔法の使い手で、かつその魔法の影響と圧政で国民が塗炭の苦しみを味わっているという点は、両者共に共通しています。
今作の女王はとにかく暴虐かつワガママな性格をしていて、人間を駒に見立てた実物大のチェスをしていたり、とある男爵からの求愛を罵りまくりながら拒絶したりとやりたい放題。
城内のメイド達からも全く好かれてなどいないようで、彼女らは国王の忘れ形見である白雪姫に期待を寄せるのでした。
彼女らは白雪姫が18歳の誕生日を迎えたその日、城の外へ出て外で何が起きているのかを白雪姫に見てくるよう促し、そのためのお膳立てを整えるのでした。
一方、城からそう遠くない森の中では、冒険の旅の途上にあるらしい隣国の王子と従者の姿がありました。
彼らはその森で、足に竹馬とホッピングを足し合わせたような機器を装着し巨人のように見せかけた7人の小人の盗賊団に襲われ、カネと身ぐるみをはぎ取られた挙句に逆さ吊りにされてしまうのでした。
そこへたまたま通りかかった白雪姫。
彼女は逆さ吊りになっていた王子と従者を解放し、その場ではすぐに王子と別れて反対側の道へと進んでいくのでした。
白雪姫は王国が治めている村へと向かい、かつて父親である国王と共に訪問した際は豊かだった村が、女王の魔法と暴政の影響で今やすっかり窮乏している事実を目の当たりにすることとなります。
白雪姫は、王国の窮状を救うためにも、女王を権力の座から引きずり下ろして王位を奪取することを決意するのでした。
一方、王子は城へと向かい女王と対面。
女王は王子が若いことと、出自が豊かな隣国で自国の財政難を解消できるとの打算から、年の差も考慮せずに王子と結婚することを画策します。
そんな中、城内で催された舞踏会で、王子と、ひそかに舞踏会に参加していた白雪姫が再会することになるのですが……。
映画「白雪姫と鏡の女王」に登場する白雪姫は、その美しさ云々よりも「色濃い眉毛の太さ」の方がはるかに印象に残るキャラクターですね(笑)。
何らかのデフォルメでも意図しているのかとすら考えてしまったほどに、太い眉毛が目立っています。
女王は「自分が若い」と思い込んでいる典型的なオバハン的な雰囲気がありありでしたし、わざとブサイクにしたとしか思えない配役のチョイスぶりは、美男美女で固めた感のある映画「スノーホワイト」とはまた対照的なものではあります。
あちらは女王からしてシャーリーズ・セロンが演じていて、若さ以外の全ての分野で白雪姫を圧倒していたものでしたが。
ただ、ジュリア・ロバーツが演じていた今作の女王も、「存在感」という点ではやはり白雪姫を圧倒していた感は多々ありますね。
変にツッコミを入れたり、家臣達に暴言を吐きまくったり、王子を自分になびかせるために惚れ薬(ただし子犬用)を使ったりと、色々とやりたい放題。
「財政難の解消」という政略的な要素もあったにせよ、若い王子と結婚しようとするオバハンな女王というのも、現実の政治の世界であればともかく、おとぎ話の世界ではなかなかに斬新かつ独創的なキャラクターですからねぇ(苦笑)。
一方の白雪姫も、特に序盤は従順さ丸出しで眉毛以外の存在感が薄かったですし、彼女が独自に動くようになるのは、7人の小人に出会って武術全般を身に付けて以降のことでしたし。
「スノーホワイト」といい今作といい、女王の方が白雪姫よりも目立つ存在になってしまうというのはお約束だったりするのでしょうかね?
原作の「白雪姫」と言えば、毒リンゴによる昏睡と王子様のキスによる覚醒が定番ですが、今作におけるそれは、どちらも取ってつけたかのような扱いになっている感が否めなかったですね。
そもそも今作における毒リンゴは、物語のラストでようやく登場するありさまだった上、それを食したのは白雪姫ではなく、白雪姫に食べさせようとしていた女王自身だったりします。
白雪姫自身には、「毒で倒れる」的な描写すらも全くありません。
むしろ、作中でそれに近い状況に陥っていたのは、本来は白雪姫を助けるはずの王子の方だったりするんですよね。
彼は女王から「子犬用惚れ薬」を飲まされたショックで頭がおかしくなった状態で、女王と王子の結婚式を妨害すべく乗り込んできた白雪姫と7人の小人の盗賊団と鉢合わせることになります。
そして、「子犬用惚れ薬」の魔法を解除するためには「真実の愛」によるキスが必要と7人の小人から言われた白雪姫が、王子にキスすることで王子を正気に戻す、というわけです。
王子様のキスで白雪姫が覚醒する、というエピソードは見事にどこかへ行ってしまっていますね(笑)。
これは「スノーホワイト」にも言えることなのですが、原作「白雪姫」の毒リンゴ絡みのエピソードを、「邪悪な女王と戦う白雪姫」の中に入れてしまうのがそもそも間違っているのではないでしょうか?
元々「白雪姫」という話には、「自分のために戦ってくれる王子様を待つ」というコンセプトがあり、それを補強する道具として毒リンゴのエピソードがあるわけです。
しかし「邪悪な女王と戦う白雪姫」という別のコンセプトでは、一時的にせよ白雪姫が倒れ、助けが来るのをただじっと待つだけの身となってしまう毒リンゴ絡みのエピソードは、コンセプトと合致しないミスマッチもいいところになってしまうんですよね。
「スノーホワイト」にせよ今作にせよ、毒リンゴ絡みのエピソードの扱いに製作者達が相当なまでに困り切っている実態が丸分かりで、「むしろ入れない方が良かったんじゃないの、このエピソードは」とすら考えてしまうくらいなんですよね。
それでも毒リンゴ絡みのエピソードが作中に挿入されるのは、そうしないと「白雪姫」の話では全くなくなってしまうからではあるのでしょうけど。
白雪姫をイビる継母の女王、世界で一番美しい女性を告げる鏡、そして毒リンゴの3つが揃って初めて、「白雪姫」という物語は「白雪姫」たりえるわけですからね。
ただその構図では、2作品の売りであるはずの「邪悪な女王と戦う白雪姫」というコンセプトこそがむしろ邪魔なシロモノである、ということにもなりかねないのではないかと思えてならないのですが。
今作にはアクションシーンも若干あるものの、基本的にはコメディがメインと言えるストーリー構成となっています。
オバハンな女王の毒舌と、事あるごとに身ぐるみ剥がされる王子の狂態、そして眉毛が目立つ白雪姫の成り上がり物語が見たいという方にはオススメの作品かもしれません(爆)。