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2012年10月の記事は以下のとおりです。

映画「エクスペンダブルズ2」感想

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映画「エクスペンダブルズ2」観に行ってきました。
シルヴェスター・スタローンを筆頭に、往年のハリウッド人気アクションスターが一堂に会した前作「エクスペンダブルズ」の続編。
今作も前作同様に序盤から血が飛び散りまくるアクションシーンがひたすら披露されているのですが、今回は前作のR-15指定から何故か一段階下がったPG-12指定となっています。
描写的なレベルは前作のそれとほとんど変わりなんてないはずなのですが、この辺りの規制は相変わらず何を基準にしているのかよく分からないですね。

物語冒頭の舞台は、ネパール北東部シンドゥパルチョーク地区。
その地区を牛耳っているらしい武装集団のアジトの工場内で、顔を隠され囚われの身となっている男が拷問まがいの尋問を受けていました。
正体不明の囚われの男は何もしゃべっていないらしく、業を煮やした尋問役が殺害を示唆します。
そこへ、突如としてやってきた3台の曰くありげな重武装の車輛。
その中の1台に搭乗しているのは、前作から消耗品軍団(エクスペンダブルズ)のリーダーを担っていたバーニー・ロス(シルヴェスター・スタローン)と相棒のリー・クリスマス(ジェイソン・ステイサム)。
3台の車輌は、厳重な門と武装した兵士によって守られていたアジトをあっさりと突破し、周囲に銃を乱射して死を撒き散らしつつアジトの奥へと突き進みます。
そして、アジトの奥にあった工場へ車輌を突っ込ませ、冒頭の男がいる部屋までなだれ込み、中にいた兵士達を全員打ち倒して制圧を完了する消耗品軍団の面々達。
そして彼らは、囚われの身となっていた男の顔を覆っていた布を取って正体を確認。
するとそこにいたのは、前作でもチラリと出演していたアーノルド・シュワルツェネッガーが扮する消耗品軍団のライバル傭兵会社のリーダー・トレンチだったのです。
思わぬ形で再会することになったバーニー・ロスとトレンチでしたが、しかしバーニー・ロスが救出の目的としていたのはトレンチではなく、彼と一緒に囚われの身として縛られていた中国人の富豪でした。
トレンチも同じ人物を救出する依頼を受けていたとのことで、彼にしてみれば仕事の成果が挙げられなかった上にバーニー・ロスに助けられてしまった形です。
「借りを作ってしまったな」とボヤくトレンチは、解放されて消耗品軍団の面々からゴツい武器をもらった後、待機しているという自分のチームのところへ戻るべく別行動を取ることになります。
その後も消耗品軍団の面々は相変わらずの強さを見せつけ、ターゲットの中国人富豪と一緒にアジトを脱出。
そして、今回からの新参で予め脱出ルートで待機していた狙撃手のビリー“ザ・キッド”ティモンズのサポートもあり、やや危ない局面がありながらも何とか脱出に成功するのでした。

一仕事を終え、アメリカ・ニューオリンズにある消耗品軍団の本拠地で、バーニー・ロスは新参のビリー“ザ・キッド”ティモンズから、恋人ソフィアのために今月一杯を目途に消耗品軍団から足を洗いたいと相談されます。
バーニー・ロスはそれを了承し、彼に飲み直してくるよう諭し、自らはバイクに乗り、アジトの脱出の際に使用された水上飛行機へと向かいます。
無人の飛行機の中でひとり考えに耽ろうとするバーニー・ロスでしたが、無人のはずの飛行機の中には先客が潜んでいました。
それは、前作でバーニー・ロスとトレンチに仕事の依頼を持ちかけた、ブルース・ウィリスが演じるCIAの上級職員のチャーチだったのです。
彼は、前作で消耗品軍団が暴れ回った上に、黒幕だったCIA元職員のジェームズ・モンローが死んだことで莫大な利益を失ったことについての責任を問い、バーニー・ロスに一つの仕事を脅し交じりに押し付けてきます。
その仕事の内容は、バルカン半島アルバニア共和国内にあるガザック山脈に墜落した中国機の中にある金庫から、とあるデータボックスを回収してくるというもの。
金庫は120秒ごとに解除用パスワードが変更されるという特別製であるため、チャーチはパスワード解除要員として、マギーという女性エージェントを一緒に連れて行くよう命令します。
「ベビーシッターは得意じゃない」とボヤきつつも、バーニー・ロスは彼女を引き連れ、他の消耗品軍団の面々と共にバルカン半島の墜落現場へと向かうことになるのですが……。

映画「エクスペンダブルズ2」は、前作もそうでしたがとにかく出演者の顔ぶれが「豪華」の一言に尽きますね。
シルヴェスター・スタローン、ジェイソン・ステイサムなどの前作からの主演メンバーはむろんのこと、前作では顔見せ程度の出番しかなかったブルース・ウィリスとアーノルド・シュワルツェネッガーも、今回は消耗品軍団と共にアクションシーンを披露しています。
特に物語終盤で展開された、シルヴェスター・スタローンとブルース・ウィリスとアーノルド・シュワルツェネッガーの3者が一堂に並び、敵に銃を乱射しながらゆっくりと前進していくシーンは「壮観」の一言に尽きます。
ハリウッドアクション映画のファンならば、あのシーンを見るためだけのために今作を観賞しても良いほどに感涙もののワンショットです。
特にアーノルド・シュワルツェネッガーは、今回が実に9年ぶりとなるアクションシーンの披露とのことですし、「いよいよ本格的に復活したのだなぁ」と感慨もひとしお。
アーノルド・シュワルツェネッガーは、既に2013年の日本公開が決定している映画「ラストスタンド」で主演を担い、アクションスターとして本格的に復活する予定となっていますが、今作はその前準備といったところになるでしょうか。
また、この両巨頭以外でも、チャック・ノリスとジャン=クロード・ヴァン・ダムという人気アクションスターが新たに参戦し、前者は消耗品軍団を助ける凄腕の一匹狼ブッカー、後者は犯罪武装集団「サング」を束ねるリーダー&ラスボスのヴィランと、それぞれ重要な役割を作中で演じています。
残念ながら私は、チャック・ノリスとジャン=クロード・ヴァン・ダムの出演作品は1作も観賞したことがないのですが、こちらはこちらで往年のファンにとっては興奮ものの内容でしょうね。
前作でも大いに話題となった「豪華アクションスターの競演によるファン垂涎のアクション映画」というコンセプトは、今作でも健在といったところになるでしょうか。

ただ今回、あえて問題点を指摘するとすれば、それは今回のラスボスであるヴィランと消耗品軍団との初対面のシーンですね。
あの場面では、ヴィランが消耗品軍団のひとりで今月一杯の引退を表明していたビリー“ザ・キッド”ティモンズを人質に取ることで、消耗品軍団の面々を武装解除させた上に目的のブツを手にするのですが、その際ヴィランは人質ひとりを殺害するだけでさっさとその場を後にしてしまいます。
このことに怒ったバーニー・ロスをはじめとする消耗品軍団は、ヴィランに対する復讐を決意することになるわけですが、しかし何故ヴィランはあの時、他の消耗品軍団の面々もついでに皆殺しにしなかったのでしょうか?
あの場面の中でさえ、人質を助けるために武装解除しようとするバーニー・ロスに対し、リー・クリスマスが「そんなことをしたら俺達も皆殺しになるぞ」と警告していましたし、その後のヴィランの「無慈悲な支配者」としての描写を見ても、彼が消耗品軍団の面々に対して殺害を決断してはならない理由自体がありません。
消耗品軍団を放置していたら、彼らが仕事と復讐のために自分達に牙を剥いてくるであろうことなど、彼らの立場から見れば最初から分かり切っていることであるはずなのですから。
ひょっとするとヴィランは、消耗品軍団の面々達の実力を実は高く評価していて、将来的に彼らを自分の下へスカウトするつもりだったのかもしれませんが、それだと今度は、わざわざ消耗品軍団の眼前で人質をこれみよがしに殺害した理由の方が理解不能となってしまいます。
ヴィランは旧ソ連が隠したプルトニウムを掘り出して大儲けする予定だったようですから、消耗品軍団をわざわざ怒らせることで自分を殺害させようなどという自滅願望があったわけでも当然ないでしょうし。
あの時のヴィランには、「消耗品軍団を放置していたら危険である」ということが全く理解できていなかったのでしょうか?
いくら何でも、相手がそこそこに腕の立つ裏稼業の人間達であることくらいのことは彼にも理解できていたでしょうに、何故あんな中途半端な措置で将来の禍根を残し自らの破滅を招いてしまうのかと。
作品的に見れば、この辺りの描写は主人公の怒りと悲しみによる復讐心を惹起させると共に、悪役が絶対に許せない存在であることを観客に明示するためのものではあるのでしょうが、それならば「作中におけるヴィランとしての立場から見ても妥当な行動と理由の必然性」も一緒に示して欲しかったところではあります。

「エクスペンダブルズ」シリーズは3部作ということで、既に3作目制作の準備が進められているようですね。
予定では2012年秋から撮影に入るとの情報もありますし↓

http://www.cinematoday.jp/page/N0040614
>  [シネマトゥデイ映画ニュース] 映画『エクスペンダブルズ2』は全米では8月公開の予定だが、すでに『エクスペンダブルズ3』が秋から撮影されるという。
>
>  これは、映画『エクスペンダブルズ』でセラピーを受けている繊細なトール・ロードに扮したランディ・クートゥアのインタビューで確認されたものだ。
>
>  というのも
シルヴェスター・スタローンは最初からこの作品を3部作ととらえており、当然のスケジュールなのだという。
>
>  このシリーズは自ら消耗品「エクスペンダブルズ」と名乗る軍用銃のエキスパートであるバーニー・ロス率いる少数精鋭の命知らずの最強無敵の傭兵軍団がどこの国も合法的に手が出せないやっかいな事件を怒濤の超絶アクション満載で解決するというもの。
>
>  先日、スタローンはインタビューで『エクスペンダブルズ2』のレイティングが「R指定」(=17歳以下の観賞は保護者の同伴が必要)を受けるだろうと語っている。彼の考えは、それによってファンが期待している暴力シーンやFワードなど前作『エクスペンダブルズ』でファンが楽しんだ成人向け要素がすべて盛り込まれていることをファンに知らせたかったのではないか?
>
>  まだまだあいつらは大暴れをしそうだ。(後藤ゆかり)

また、次回作では既に「ナショナル・トレジャー」シリーズや「デビルクエスト」「ドライブ・アングリー」で主演を務めたニコラス・ケイジの出演が取り付けられている他、クリント・イーストウッドやハリソン・フォードなどといった大物ハリウッド俳優とも交渉が進められているとのこと。
ニコラス・ケイジはジョン・トラポルタと共に、今作制作の際にも出演交渉が進められていたものの、どちらもスケジュールの都合で出演できなかったとのことで、「エクスペンダブルズ3」で晴れてその雄姿が見られることになるわけですね。
3作目がいつ、どのような内容と出来と豪華キャストで劇場公開されるのかはまだ分かりませんが、今から楽しみな話ではあります。

ハリウッドアクション映画のファンならば必見、映画で爽快感を覚えたいという方にもオススメな一品です。

テレビドラマ「大奥 ~誕生~ 有功・家光篇」 第2話感想

最終話まで週刊連載する予定の、TBS系列の金曜ドラマ「大奥 ~誕生~ 有功・家光篇」。
今回は2012年10月19日放映分の第2話についての感想です。
ちなみに、初回放送となった第1話の視聴率は、ビデオリサーチの調べによれば11.6%だったのだとか。
正直、話の内容やTBS系列の番組であることを考えても、高いのか低いのか何とも微妙な数値ではありますね(苦笑)。
なお、過去の「大奥」に関する記事はこちらとなります↓

前作映画「大奥」について
映画「大奥」感想&疑問
実写映画版とコミック版1巻の「大奥」比較検証&感想

原作版「大奥」の問題点
コミック版「大奥」検証考察1 【史実に反する「赤面疱瘡」の人口激減】
コミック版「大奥」検証考察2 【徳川分家の存在を黙殺する春日局の専横】
コミック版「大奥」検証考察3 【国内情報が流出する「鎖国」体制の大穴】
コミック版「大奥」検証考察4 【支離滅裂な慣習が満載の男性版「大奥」】
コミック版「大奥」検証考察5 【歴史考証すら蹂躙する一夫多妻制否定論】
コミック版「大奥」検証考察6 【「生類憐みの令」をも凌駕する綱吉の暴政】
コミック版「大奥」検証考察7 【不当に抑圧されている男性の社会的地位】
コミック版「大奥」検証考察8 【国家的な破滅をもたらす婚姻制度の崩壊】
コミック版「大奥」検証考察9 【大奥システム的にありえない江島生島事件】
コミック版「大奥」検証考察10 【現代的価値観に呪縛された吉宗の思考回路】

テレビドラマ「大奥 ~誕生~ 有功・家光篇」
第1話感想

第2話のストーリーは、コミック版「大奥」2巻のP105~P166までの流れに沿ったものとなっています。
大奥へ入った有功と玉栄が、大奥に巣食う3人の御中臈にいびられまくる話ですね。
今回も女版家光の出番は全体的に見るとあまりなかったりするのですが、前回よりは要所要所で出てきて存在感をアピールしていた感じでした。
第2話における原作との違いは以下の通り↓

1.有功が玉栄に対し「大奥へ連れてきたこと」を詫びた際、玉栄が「春日局が旧家光に仕えていた大奥の女達を皆殺しにした可能性」について言及していたこと。
2.猫の若紫の名前の由来(源氏物語から取った)が説明されていたこと。
3.稲葉正勝の妻と子供?の話が盛り込まれていたこと。
4.神原家の面々が全く出てこなかったこと。

とは言え、基本的には第1話同様、原作のエピソードをそのままなぞる形で話は展開していくので、原作を知っている者から見て原作改変的な展開は今のところありません。
神原家の面々については、正直今回のテレビドラマで出てくるのか否かすら不明と言わざるをえないですね。
元々あの面々は「赤面疱瘡のために疲弊し変わっていく農村」を描写するために存在していたようなものですし、テレビドラマ版「大奥」では不必要と判断されている可能性も否めないところで。
出てくる可能性があるとすれば、この先に出てくるであろう「寛永の大飢饉」および女版家光の忍び旅辺りのシーンにでもなるのではないかと。
テレビドラマ版の製作者達としては、あくまでも「大奥」の宮中の話に専念したい、という意図でもあるのではないでしょうかね。

個人的に驚いたのは、玉栄が男共に犯されるという、ある意味18禁指定されても不思議ではない男色描写を、原作と同程度にはきっちりと描いていた点です。
これについては完全に飛ばすか、他のイジメな描写にすり替えるかするのではないかと考えてもいたのですが。
前作映画でも「男同士のキスシーン」なんてシロモノを描写してはいましたが、アレはPG-12やR-15指定も可能で、かつ客層を限定する映画だからこそ可能なのであって、誰もが視聴できることを前提とするテレビドラマでは、規制か何かに引っ掛かってできないのではないかと考えていましたからねぇ。
原作の忠実度、という点では今のところ全く文句のつけようがなく、むしろ原作を知っている人達の方が楽しめるのではないかとすら思いますね。
この路線を最後まで続けるのか、あるいは最後の最後で大どんでん返しでも仕掛けているのかは、今後の話を見ないと何とも言えないところではあるのですが。
完全なオリジナル要素となるであろう稲葉正勝の一家がどうなるのかは、原作を知る者としても興味をそそられるところですし。
まあ、「あの」春日局が蠢動しているとなると、どちらも相当なまでに悲惨な末路を辿っていそうではあるのですけどね。
Wikipediaによれば、史実の稲葉家は稲葉正勝の死後、次男の正則が家を相続したとのことではあるのですが……。

次回の第3話では2巻のラストまで進んで、いよいよ有功と女版家光との仲が進展していく展開になりそうですね。
個人的には、あの子猫の若紫が惨殺される光景がどうなるのか、あまり見たくないながらも見ずにいられないという心境ではあるのですが(T_T)。

アメリカの3D映画ブームに終焉の傾向

日本映画から3Dが消え去ってそれなりの月日が流れましたが、とうとうアメリカでも3Dブームに陰りが出てきたようです。
3D映画1本当たりの観客動員数が下降線を辿っており、今後の3D映画製作本数も横ばいになる見通しなのだとか。

http://www.cinematoday.jp/page/N0046994
>  [シネマトゥデイ映画ニュース] 2009年の映画『アバター』がきっかけとなって世界中を席巻した3D映画ブームが、ついに終わることになるだろうという調査結果が発表された。今年公開のハリウッド映画のうち3D作品は31本であり、来年も同程度の本数になるものとみられている。
>
>  2009年末に公開された3D映画『アバター』は空前の大ヒットを記録。近年のハリウッドでの製作状況を見てみると、18本の3D作品が公開された2009年以降、2010年は23本、今年に至っては31本が公開(予定)となっており、『アバター』の成功がその後の映画製作状況に影響を与えていることがうかがえる。
>
>  だが、大手金融機関グループのモルガン・スタンレーの調査によると、2013年に公開される予定の3D映画は現時点で25本と、これからの増加分を考えても、ほぼ横ばい。そのことも踏まえ、
今後数年はこれまでのように3D映画の製作本数が爆発的に増えることはないだろうと予想されている。
>
>  製作本数がほぼ横ばいとなっている理由については、
3D映画1本あたりの観客動員数が下降線をたどっていることが挙げられている。つまり、3D映画というだけで観客を集められていた時代は終わったということであり、これは実質的な3Dブームの終了を意味する。また、アメリカ国内に限っていえば、大手映画館チェーンによる3D対応劇場の拡大展開も頭打ちになっているのだという。
>
>  ここ数年の間に、日本でもすっかり普及した3D映画。当初から3Dカメラで撮影したものもあれば、2Dで撮影したものを後に3D映像に変換したものもあるなど、一口に3Dといってもそのクオリティーはさまざまだった。製作本数がこれ以上増えないことで、1本1本のクオリティーが上昇するのならば、ブームの終わりは映画ファンにとっても朗報といえるかもしれない。(編集部・福田麗)

確かアメリカでは以前、「映画ファンの70%が3Dを好む」などという調査結果が発表されていたのではありませんでしたっけねぇ(苦笑)。
しかもその中身を見てみると、実際には「映画ファンの中で3年以内に3D映画を見たことがある人」の中での7割であって、前提条件となる人は調査対象の半分弱にしか達しておらず、調査対象全体の割合としては3割強程度でしかないというというオチがあったり(苦笑)。
あのスカスカな調査結果を正確に反映しているのが、今回のごときアメリカの3D映画離れなのではないのかと。
日本で見られるような「3D特別料金」などを搾取しておいて技術的な駄作ばかりを乱発する3D映画は、むしろ忌み嫌われない方が変というものです。
あの料金徴収制度を止めるだけで、3D映像を取り巻く環境は劇的に改善するのではないかと思えてならないのですが、映画製作者や映画配給会社側としては「金のなる木」な3D料金を止めるつもりなどさらさらないのでしょうね。
この不況および映画業界を取り巻く厳しいご時勢の中では映画料金などそうそう引き上げられるものではなく、その中での3D料金というのは「値上げの口実」として十二分に活用しえるものなのですから。

まあ日本映画の場合、3D自体の成功率はアメリカと比較しても絶望的なレベルにしかなっておらず、「これではカネにならない」とでも判断したのか、映画「貞子3D」以降はほとんど3D映画が登場しなくなってしまいましたが。
しかしアメリカの場合、なまじ成功体験があるが故に、カネがかかる上に費用対効果が低下していることが分かっていてもなお、3Dを捨てることがなかなかできないのでしょう。
いつまでその「痩せ我慢」が続くのか、他人事であればさぞかし面白い見物になったのでしょうが、その手の3D映画のためにしばしば無用な出費を余儀なくされる私としては、早いところギブアップして欲しいところではあるのですけどね。

アーノルド・シュワルツェネッガーの主演映画が2013年公開決定

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アーノルド・シュワルツェネッガーが10年ぶりに主演を演じる映画が、2013年に日本で劇場公開されるとのことです。
映画の名は「ラストスタンド」。

http://www.cinematoday.jp/page/N0046975
>  [シネマトゥデイ映画ニュース] アーノルド・シュワルツェネッガーが、『ターミネーター3』以来10年ぶりに主演を務めた映画『ラストスタンド』が、4月27日に日本公開されることが決定した。本作でシュワルツェネッガーは、最新鋭の車を操り時速300キロを超えるスピードで逃走する凶悪犯罪者を確保するための最後の砦(ラストスタンド)となる保安官オーウェンズを演じた。
>
>  2003年にカリフォルニア州知事に就任して以来、映画『80デイズ』『エクスペンダブルズ』などでゲスト出演を果たすものの、主役は務めず、俳優としての一線を退いていたシュワルツェネッガー。2011年に州知事の任期を退任し、満を持して主演作に選んだのは、「シュワルツェネッガー・アクション完全復活」といわんばかりのアクション満載の一作だ。
>
>  今回、
日本での劇場公開決定と共に公開された特報でも、「ついに彼が帰って来る」というナレーションと共に映し出される「完全復活」の文字が印象的。シュワルツェネッガー演じるオーウェンズの「地獄が始まる」の一言で、迫力のカーチェイス・アクションが幕を開ける。高所から飛び降りるなど、65歳という年齢を感じさせない体当たりのアクションを繰り広げるシュワルツェネッガーだが、終盤には「年かな」ともらす一幕も。特報からは、現在のシュワルツェネッガーの魅力が詰まった一作を期待させられる。
>
>  映画『グッド・バッド・ウィアード』のキム・ジウン監督がメガホンを取り、共演にフォレスト・ウィッテカー、ジョニー・ノックスヴィルが名を連ねた『ラストスタンド』。シュワルツェネッガー演じる国境付近の小さな田舎町の保安官オーウェンズは、警官殺しの凶悪犯罪者にどう立ち向かうのか? シュワルツェネッガーの完全復活をこの目で見届けたい。(編集部・島村幸恵)
>
> 映画『ラストスタンド』は2013年4月27日より全国公開

アーノルド・シュワルツェネッガーは、カリフォルニア州知事引退後、ハリウッド映画界への復帰が注目されていましたが、自身の離婚話や隠し子問題が大々的にニュースで取り上げられた影響でその動向は二転三転していました。
当初の主演映画は、引退の決まった競馬の調教師がお金欲しさから雇い主の息子を誘拐する「クライ・マッチョ」という作品だったのですが、離婚問題を受けてアーノルド・シュワルツェネッガー本人がこの映画への出演を一旦中止する旨を発表しています。
そんなゴタゴタを経てようやく、2013年に久々の主演映画公開が決定したわけですね。
アーノルド・シュワルツェネッガーは、2012年10月20日に日本で公開される映画「エクスペンダブルズ2」にも出演しており、しかも今度はカメオ出演だった前作よりは活躍しているとの情報もあります。
どうやら本格的に俳優業を再開したようで、彼の活躍を見れる日が今から楽しみですね。

アメリカの週刊誌ニューズウィークが紙媒体の廃止を発表

アメリカの有力週刊誌ニューズウィークが、紙媒体を廃止しデジタル版へ完全移行すると発表しました。
同誌は広告収入が減少の一途を辿ったことから赤字が続いている一方で、デジタル版の購読者数が増えていることから、今回の決断に至ったとのこと。

http://sankei.jp.msn.com/life/news/121019/trd12101908060005-n1.htm
>  米有力週刊誌ニューズウィークの発行元は18日、12月末を最後に約80年間続けてきた米国での紙媒体の販売をやめると発表した。13年初めから完全に電子版に移行する。
>
>  
紙媒体での広告収入が減少する一方、電子版の購読者が増加。タブレット端末の急速な普及もあり、ネット化に踏み切る。
>
>  電子化後は「ニューズウィーク・グローバル」の名称で、世界共通の内容にする。
>
>  ニューズウィークは1933年創刊。広告収入の落ち込みで赤字が続き、ワシントン・ポスト社が2010年に売却。その後、米ニュースサイト「デーリービースト」と統合していた。

まさに出版不況のご時世を象徴するかのような発表ではありますね。
日本でも少なからぬ雑誌が廃刊や休刊に追い込まれていますし、ネットの隆盛に反比例する形で出版業界が衰退していく構図はどこも同じようで。
ただ、デジタル版へ移行したからと言って、ニューズウィークの赤字問題が解消するとも思えないのが救いようのないところなのですが(T_T)。
ネットは紙媒体に比べて拡散が行いやすく手軽な反面、利益率が少ないですし、紙媒体に慣れているからネットには抵抗が強いという人も意外に多かったりしますからねぇ。
日本の新聞などのように、ネット媒体に紙媒体と同じかそれ以上の購読料を徴収しているようではお先真っ暗もいいところでしょう。
まあ読者を紙媒体に釘付けにした日本の新聞社と違い、紙媒体を完全に廃止するニューズウィークは、さすがにそんな愚行をやらかしはしないでしょうけど。
このニュ-ズウィークの選択、果たして吉凶いずれの結果が出ることになるのでしょうか?

コミック版「大奥」検証考察10 【現代的価値観に呪縛された吉宗の思考回路】

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コミック版「大奥」検証考察もいよいよ10回目。
今回のテーマは【現代的価値観に呪縛された吉宗の思考回路】
過去の「大奥」に関する記事はこちらとなります↓

前作映画「大奥」について
映画「大奥」感想&疑問
実写映画版とコミック版1巻の「大奥」比較検証&感想

原作版「大奥」の問題点
コミック版「大奥」検証考察1 【史実に反する「赤面疱瘡」の人口激減】
コミック版「大奥」検証考察2 【徳川分家の存在を黙殺する春日局の専横】
コミック版「大奥」検証考察3 【国内情報が流出する「鎖国」体制の大穴】
コミック版「大奥」検証考察4 【支離滅裂な慣習が満載の男性版「大奥」】
コミック版「大奥」検証考察5 【歴史考証すら蹂躙する一夫多妻制否定論】
コミック版「大奥」検証考察6 【「生類憐みの令」をも凌駕する綱吉の暴政】
コミック版「大奥」検証考察7 【不当に抑圧されている男性の社会的地位】
コミック版「大奥」検証考察8 【国家的な破滅をもたらす婚姻制度の崩壊】
コミック版「大奥」検証考察9 【大奥システム的にありえない江島生島事件】

テレビドラマ「大奥 ~誕生~ 有功・家光篇」
第1話感想

コミック版「大奥」1巻のラストで没日録を読みふけり始めてから、7巻になってようやく現実に戻ってきた徳川8代将軍吉宗。
1巻の初版発行が2005年10月4日で、7巻のそれが2011年7月5日ですから、連載時間的には実に6年近くもの歳月が流れていることになります。
これほどまでの長期間にわたって回想シーンが続いていた作品というのも、そうそうあるものではないでしょう(苦笑)。
しかし、史実でも「中興の祖」として評価され、「大奥」世界でも英明な将軍として扱われているはずの吉宗は、回想シーンが終わるや否や、早速電波なことを主張し始めます↓

「なるほど、赤面疱瘡という病の事さえ無ければ、女は子を産み育て、男が家のために働くのは合理的のようにも思える。だがしかし、血統で家を繋ぐという点から考えると、男系にはいささか無理があるように思われるのだが、いかがじゃ?」
「女系ならばその当主が生むのだから、その子は間違いなく当主の子だ。疑いようはない。しかし、当主が男だとしたらその男の妻なり側室なりの産んだ子が、その男の真の子であるとどうして断言できる? たとえ今の大奥のような場所に女達を囲ったところで、どこかに男の入る隙はできようぞ。常にその家の血統には疑念がつきまとう事になりはせぬか?」
「そう考えると、男が働くのはともかく、家の当主は女である方が道理が通っているように思われるぞ」
(コミック版「大奥」7巻P167~P168)

吉宗って江戸時代中期を生きた人間であるはずなのに、これを読むとまるで現代人が憑依しているとしか思えないですね。
世界の王朝や伝統ある貴族階級などで何故男系が主流なのかというと、その最大の理由は「子孫が増やしやすいから」の一言に尽きます。
「大奥」世界がそうであるように、女性が家長という女系の場合、子孫を直接的に増やすことができるのは当主だけであり、かつ身体的・年齢的に子供を増やすにも大きな制約が存在します。
それに対し、男性が当主の男系であれば、女性を何人も囲うことで理論的には子供を無制限に作ることが可能です。
これは、「血統を維持し家を存続させる」という点で女系よりもはるかに有利となります。
もちろん、これは一夫多妻制や側室制度が認められているという前提あってこそのものではあるのですが。
キリスト教の影響で一夫一妻制が基本原則とし、庶子には基本的に王位継承権が認められなかったヨーロッパ諸国では、しばしば王朝断絶の危機に見舞われており、実際に断絶して余所の国の親戚筋が王位を継承したなどという事例も少なくありません。
そんな事態を避けたいからこそ、東洋やイスラム圏では一夫多妻制や側室制度が認められてきたという歴史的経緯もあったりするわけで、一夫多妻制や側室制度も「男女平等」などという現代的なイデオロギーだけで一方的に切り捨てて良いものなどではないのですけどね。
しかし、一夫多妻制や側室制度よりは「後継者作り」の観点から見て劣るにせよ、一夫一妻制であっても男系であれば、「再婚」という形で別の女性と結ばれることでまた新たに子作りを行うことも可能なのに対し、女系の場合はそれすらもできないのです。
「大奥」世界でも、徳川5代将軍綱吉が「月のもの」が来なくなったために、いくら男性と交わっても子作りが不可能になってしまったという問題が現出していたではありませんか。
しかも、女性は男性と比べてその手の「子作り」の条件がかなりシビアなのですし、ましてや「大奥」世界のごとく女性が男性に代わって外へ働きに出ているような社会システム下ではなおのこと、子作りはいよいよもって至難を極めると言わざるをえないでしょう。
こんな状態で、一体どうやって血統を保ち家を存続させることができるというのでしょうか?

それから吉宗が危惧している「その男の真の子であるとどうして断言できる?」という問題については、「では何故大奥や後宮というものがこの世に存在しているのですか?」で話は終わりですね。
史実の大奥で男子禁制となっていたのは、以前にも述べたように、将軍以外の他の男性の精子が女性の卵子に入ってくる問題を事前に防止・抑止することを最大の目的としているわけです。
もちろん、「史実の」江島生島事件のごとく、不義密通が発生して大問題となる事例もありはするのですが、そういった問題の発生についても、大奥を管理することでゼロにはならずとも「限りなくゼロに近づける」ことは充分に可能です。
要は「リスク管理をきちんとすれば良い」という程度の話でしかないわけです。
そして、そのリスク管理と引き換えにすることで、男系は血統と家双方の存続を保証する後継者作りを、理論的には無制限に行うことが可能となるのです。
これが江戸時代当時の社会にとってどれほどまでの恩恵であるのかは、今更言うまでもありますまい。
そこまでの恩恵があるからこそ、リスク管理だってきちんと行われることになるわけで。
どうもこの辺りの吉宗の発言は、原発がもたらす利益と経済効果を無視して「とにかく原発は危ないから即時全廃すべきだ!」とがなり立てまくる脱原発な方々の思考発想にも通じるものがありますね(苦笑)。
危険があるのであればその危険を限りなくゼロに近づけられるリスク管理を行う、という程度の発想もないのでしょうかね、吉宗には。

それと、これは吉宗に限らず「大奥」世界全体に関わる話でもあるのですが、実は男系と女系の違いというのは、後継者確保の観点以上にもっと深刻な問題が存在します。
それは、「男系から女系に代わることは、血統の断絶・王朝の交代・家の乗っ取りを意味する」と見做されることです。
現実世界において実際に血統が男系から女系に代わった事例としては、18世紀に女帝マリア・テレジアが即位したオーストリア・ハプスブルク家が挙げられます。
マリア・テレジアの父親である神聖ローマ皇帝カール6世は、唯一誕生した男児が出生後1年で死去するなどして男子の後継者に恵まれず、長女のマリア・テレジアを後継者に据えざるをえなくなりました。
彼女はフランスのロレーヌ家、ドイツ名ではロートリンゲン家の当主だったフランツ・シュテファンと結婚し、1740年にハプスブルク家の領国と家督を継ぐこととなります。
彼女の即位はオーストリア継承戦争を誘発することになりましたが、最終的に彼女は対プロイセンを除き勝者となり、以後は彼女の夫や息子が神聖ローマ帝国およびオーストリア帝国の皇帝位を独占することになりました。
その結果、彼女はハプスブルク家最後の男系君主となり、以後のハプスブルク家はロートリンゲン家に取って代わられることになったのです。
家格的には当然のごとくハプスブルクの方が上なので「ハプスブルク=ロートリンゲン家」などと称してはいますが、男系血統の観点から見れば、これは本当のハプスブルク家などではなく、実はロートリンゲン家以外の何物でもないのです。
男系というのは「その家に属する父親」がいて初めて成立するものであり、それが女系に代わるというのは「家が乗っ取られる」ことを意味するのです。
「ハプスブルク=ロートリンゲン家」にしても、その実態は「ロートリンゲン家がハプスブルク家を自称しているだけ」でしかないのですから。
現代の日本でも、天皇家の皇位継承問題で女系を認めるか否かで大いに揉めている事例があるわけですが、これが揉める最大の理由もまた「女系を認めると天皇家が全く別の存在にすり替わってしまう」「日本の歴史上初の王朝交代に繋がってしまう」という懸念があるからです。
世界最古の王朝としての天皇家の存続および「万世一系」の観点から見れば、これが日本古来の伝統と格式を揺るがすものであることは誰の目にも明らかです。
現代でさえ、男系女系にはかくのごとき問題が存在するのですから、ましてや現代よりもはるかに「家」の存続を大事にする江戸時代の人間が、女系問題の恐ろしさを認識していないはずがないでしょう。
男系の血統が女系を認めるということは、つまるところ「自分の家を他人に乗っ取られても良い」と認めてしまうことと同義なのですから。
これから考えると、男系から女系への転換という男女逆転な社会システムの変革を実行してのけた「大奥」世界というものが、いかに愚かしいシロモノであるのかも分かろうというものです。
何しろ、「大奥」世界の人々がが男系から女系へと変わっていった最大の理由が、よりにもよって「家の存続のため」だというのですから。
自家の存続のために、どこの馬の骨ともしれない人間に自家を乗っ取られることを容認するなんて、当時の江戸時代の社会的慣習から見てさえも自殺行為以外の何物でもないのですが。
特に徳川家が男系から女系になるというのは致命傷もいいところで、下手をすれば「徳川を僭称する○○を討伐する」的な大義名分による大規模戦争が頻発する危険性すら多大なまでに存在しえたのです。
実際、女版家光より後に即位した徳川家の将軍達は、その全てが「徳川を僭称する全く別の何か」でしかないわけですし。
まあ、そんな男系女系の本質的な相違と問題点を本当に理解している人間がもし「大奥」世界にひとりでもいたのであれば、たとえいくら「赤面疱瘡」が猛威を振るっていたからといって、女子に家を相続させるなどという行為を社会システムとして容認する愚行などやらかすはずもないのですけどね。
「あの」春日局からして、女系の危険性を理解していたとは到底考えられないのですし。

吉宗の何故か奇妙に現代的な価値観に基づく見当ハズレな主義主張は、以下のような発言にもよく表れています↓

「何という事だ。男子が少ないのがこの国だけの事で外国は男が女と同じ数いると申すのなら、とても鎖国を解く事などできぬわ! 武芸を習っておった時も、紀州時代に戯れに力士を相撲を取った時も思うたことだったが……」
「力士はわざと私に負けよったが、あの剛力……。力自慢の女二人がかりでも敵うものではない。もし今開国したら、我が国はいとも容易く外国に攻め入られ、外国の属国となってしまうに違いない。開国をし、広く外国と交易を…などと思っていた私の考えの甘かった事よ…!!」
(コミック版「大奥」7巻P170~P171)

史実の江戸幕府は「鎖国」なんか一度も行ったことはない、というツッコミについては以前にも指摘済みなので二番煎じになるにしても、「鎖国を解いたら外国が攻めてくるから鎖国を解くことはできない」などと結論するとは驚きですね。
江戸幕府が他国と貿易をする際に、その窓口を長崎の出島に限定し、中国とオランダとのみの交易に専念することができた最大の理由は、17世紀前半当時の日本が世界有数の鉄砲保有国で当時のヨーロッパ諸国にも対抗しうるだけの軍事大国であったからです。
相手から交易を申し込まれてもこれを拒絶し、場合によっては力づくでも排除する姿勢を示すことが可能だったこと、これこそが「鎖国」こと海禁政策を江戸幕府が実現しえた真の原動力なのです。
現に、日本と同じような海禁政策を行っていた清王朝などは、19世紀にイギリスをはじめとするヨーロッパ諸国の圧倒的な武力の前に敗れ、無理矢理開国を強いられていたりします。
自国の意思がどうであろうと、相手国が圧倒的な武力を背景に砲艦外交を展開したり、実際に戦争に訴えたりすれば、否応なく、それも圧倒的に自国に不利な条件下で開国を余儀なくされることになるのです。
ならば「鎖国」で「赤面疱瘡」や男女比率の情報を外に出さないようにすれば……というのも、これまた以前にも述べたようにあまりにも機密保持という概念を知らなさすぎです。
機密というものは「その存在と内容を知っている人間が3桁もいたら隠すこと自体が不可能に近くなる」というのが基本中の基本というべきあり方なのであって、「赤面疱瘡」のような誰もが知っている情報を隠蔽するなど、全知全能の神でもない限りは絵空事の類でしかないでしょう。
ヨーロッパ諸国とて、本気で日本に攻め込みたいと考えるのであれば、国内情報を把握するためのスパイや工作員をいくらでも派遣して情報収集に努めるでしょうし、たとえ限定的であっても交易や交流があれば、それを介して全く情報が漏れないなど到底ありえないことです。
「鎖国」の方針を堅持していさえすれば「鎖国」が無条件で実現しえる、などと考えていたりする辺り、吉宗の発言は「『平和』という言葉を念仏のように唱えてさえいれば無条件に平和が実現する」と考える現代の日本国憲法9条教徒を髣髴とさせるものがありますね。
まあ、「赤面疱瘡」下の日本があまりにも異常な状況に置かれていることを認識でき、「赤面疱瘡」の根絶や男子に対する武芸の奨励などに努めた辺りは、そういった認識すら抱くことができなかった凡百の女性達よりも「相対的に」評価できる面はあるのでしょうけど。

しかしこうして見ると、コミック版「大奥」というのも現代的男女平等やヒューマニズムな価値観から全く脱却できていないのだなぁ、とつくづく感じずにはいられないですね。
そりゃまあ、いくら時代が江戸時代で大奥を舞台にしているとは言っても、現実の商売相手はあくまでも現代人なのですから、ある程度妥協しなければならない要素は当然あるのでしょうが、物語の根幹をなす世界設定や社会システムが現代的男女平等やヒューマニズムな価値観の引き写しでしかなく、当時の価値観とは全く相容れないものになってしまっているというのは正直どうなのかと。
以前からしばしば述べていることですが、いっそ男女逆転の詳細な変遷など全く描くことなく、恋姫無双などのように「最初から男女逆転していることが理屈抜きで当たり前になっている世界なのです」と開き直ってファンタジーに徹していた方が、却って設定面での穴は無くなったのではないかと思えてならないのですけどね。

次回の考察では、男性差別社会と化した「大奥」世界の歪んだ社会文化について検証してみたいと思います。

Twitter APIの仕様変更に伴う不具合の頻発

TwitterのAPIが仕様変更となったことに伴い、ブログのTwitterウィジェットでツイートが取得できなくなったなどの不具合が頻発しています。

当ブログでも、Twitterのアカウントからツイートを取得するウィジェットを使用していたのですが、先週の木曜日頃から突然ツイートが表示されなくなるという問題が発生したため、対処方法を調べていました。
調査の結果、暫定的にTwitter APIの参照先アドレスを、以下のよう変更すれば良いことが判明↓

<script type="text/javascript" src="https://www.tanautsu.net/blog/skin/blogger.js"></script>
<script type="text/javascript" src="http://twitter.com/statuses/user_timeline/tanautsunet.json?callback=twitterCallback2&count=75"></script>

<script type="text/javascript" src="https://www.tanautsu.net/blog/skin/blogger.js"></script>
<script type="text/javascript" src="http://api.twitter.com/1/statuses/user_timeline/tanautsunet.json?callback=twitterCallback2&count=75"></script>

赤文字部分青文字部分に変更。
※上記で紹介しているHTMLタグ内における「<」「>」「&」は、全て半角から全角に変換しています。

ただし、これはあくまでも2013年3月まで限定の暫定的な対処方法でしかなく、それ以降も継続して使用したい場合はOAuthによる認証が必要とのこと。
何故急にこんな問題が発生したのか当初は疑問だったのですが、そう言えば2ヶ月ほど前にこんな記事が掲載されていたなぁ、ということをふと思い出しました↓

http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1208/17/news037.html
>  米Twitterは8月16日(現地時間)、数週間後に予定しているTwitter APIのバージョン1.1へのアップデートと開発者向けガイドライン「Developer Rules of the Road」の改定について説明した。クライアントアプリのユーザー数に上限を設けるなど、サードパーティーにとって厳しい内容になっている。
>
>  開発者はAPIのアップデート後、半年以内にこの改定に対応する必要がある。
>
>  同社のコンシューマープロダクト担当ディレクター、マイケル・シッピー氏は6月末に“Twitterのユーザー体験の一貫性を保つため”サードパーティーによるAPI利用に関するガイドラインを厳格にすると発表しており、今回その内容を具体的に説明した。
>
>  まず、
すべてのAPIで、アクセスするのにOAuthによる認証が必要になる。従来はアプリケーションについて、TwitterはIPアドレスしか認識できなかったが、ボットやスパムを防止するために認証プロセスを追加したとしている。
>
>  また、APIを実行できる回数が、従来は認証が必要なAPIへのすべてのアクセスの合計上限が1時間当たり350回だったのが、
一部のAPI(タイムラインの表示など)は1時間当たり720回に、それ以外のほとんどのAPIは1時間当たり60回にと、APIごとに上限が設定されるようになる。
>
>  Developer Rules of the Roadの改定では、Display GuidelinesがDisplay Requirementsになる。つまり、従来は必ずしも厳格に守らなくてもいいガイドラインだったものが要件になり、守らなければAPIを利用できなくなる。6月末にLinkedInがツイートの表示を終了したのは、この改定に沿ったものだったようだ。
>
>  また、
クライアントアプリのユーザー数の上限を10万人にする(超える場合はTwitterの許可が必要)。現在既に10万人以上のユーザーがいるアプリについては、現在のユーザー数の200%まではユーザーを増やすことができるが、いずれの場合も上限に達したら、後はサービス提供を継続することはできてもTwitterの許可なしではユーザー数を拡大できない。
>
>  つまり、例えば友達が使っている人気のサードパーティーアプリに後からサインアップしようとしても、そのアプリが制限に達している場合は使えないということになる。
>
>  このようにサードパーティー製アプリによるAPI利用を厳格にする一方、同社は6月に発表した「Twitter Cards」の利用を開発者に勧めている。Twitter Cardsは、開発者のコンテンツをツイートする場合の表示を管理できる機能で、これにより、開発者は自分のWebサイトへのトラフィックを増やせるとしている。Twitterは、ユーザー体験の一貫性を保つために、ユーザーには極力純正アプリを使ってもらい、サードパーティーにはアプリ作成ではなく、Twitter内でのプレゼンス拡大という形での参加を求めているようだ。

記事中にあるTwitter APIのバージョンアップ予定時期とも合致しますし、今回の不具合はこのバージョンアップに伴う副作用ということになるのでしょう。
ブログ用ウィジェット以外でも、今回のバージョンアップ以前にmixiやGREEでTwitter外部連携を行っていた場合、設定が強制的に解除されてしまうケースも確認されました。
Twitter社による仕様変更でそのサービスを受ける側が自主的な対応を余儀なくされる、というのは何とも理不尽な話ではあるのですが、Twitter絡みの提供サービスを受けている方は、何らかの対応が必要なのではないかと思います。

Twitter APIの仕様変更は、Twitterと外部連携している個人ブログやサービス提供サイト等では死活問題もいいところですね。
対処法が分かってしまえば修正自体はそれほど手間のかかるものではありませんが、実際はその「分かるまで」が問題なわけで。
放置状態のブログやサービス提供サイトでは、何もできないまま機能不全に陥らざるをえないでしょうし、今回の問題に対応できないサイトやブログは意外に多いものとなりそうです。
2013年3月になればまた少なからぬ混乱が巻き起こる可能性が濃厚ですし、今回のバージョンアップで今後一体どうなっていくのでしょうかね、Twitterは。

映画「推理作家ポー 最期の5日間」感想

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映画「推理作家ポー 最期の5日間」観に行ってきました。
19世紀前半のアメリカで推理小説を執筆し有名になったエドガー・アラン・ポーの、その死に至るまでの最後の5日間に何が起こったのかについて描いたサスペンス・スリラー作品。
今作は猟奇的な殺人および死体の描写が満載のため、R-15指定されています。

1849年10月のアメリカ・メリーランド州ボルティモア。
闇夜の中で、女性のけたたましい悲鳴が響き渡る中、複数の警官達が悲鳴の発生源と見られるアパートへとなだれ込みます。
しかし、警官達が階段を駆け上がっていく途中、女性の悲鳴は途絶え、また現場と思しきアパートの一室からは、ドアの鍵がかけられる音が部屋の内側から鳴り響きました。
警官達がドアを破って強行突破すると、そこにあったのは母娘とおぼしき女性2人の遺体。
母親は絞殺された後に首を掻き切られ、娘は暖炉の煙突の中に逆さ吊りされた状態で発見されました。
警官達は部屋の中をくまなく調べ始めましたが、部屋の中には誰もおらず、またドア以外で唯一外へ出られる窓には釘が打ち込まれていて全く開けられない状態。
何ら成果なく一旦引き揚げた警官達によって報告された、この不可解な事件を担当することになったエメット・フィールズ刑事は、釘が打ち込まれている窓がバネ仕掛けで動くというトリックがあることを見つけ出します。
そしてフィールズ刑事は、殺人の手口とトリックが、当代の推理小説家エドガー・アラン・ポーの小説に出てくる内容と酷似していることに気づくのでした。

一方、同時期にたまたまボルティモアへやってきていた当のエドガー・アラン・ポー。
しかし彼は事件が発生した同時刻、酒場でマスターと口論になった上、他の客と揉め事を引き起こして店から叩き出されていたのでした。
彼はまた、ボルティモアの名士?であるチャールズ・ハミルトン大尉の娘で恋人のエミリー・ハミルトンと接触を図りますが、チャールズはエドガー・アラン・ポーを毛嫌いしており、彼に銃を突き付けて追い返してしまいます。
さらには、カネを無心するために自分が文芸評論を寄稿している新聞社パトリオットでは、「売れない文芸評論よりも売れる小説を書け!」と言ってきたマドックス編集長と口論になってしまう始末。
当時でもそれなりには売れている作家だったはずなのに、やたらと困窮している上にかくのごとく周囲から鼻つまみ者的な扱いを受けているエドガー・アラン・ポー。
彼がアメリカ社会で「アメリカを代表する作家」として認められるようになるのは、エドガー・アラン・ポーの死後から実に1世紀近くも経過して以降のことであり、当時は作風がアメリカ社会と馴染まなかったことや、作家の地位そのものが低かったことも手伝って、貧困な生活を余儀なくされていたわけです。
そんな中でも、エミリー・ハミルトンは彼のことを真剣に想っていたらしく、来るべき仮面舞踏会で自分にプロポーズしてほしいとエドガー・アラン・ポーに懇願するのでした。
その想いに気を良くしたエドガー・アラン・ポーは、翌日、富裕者層の中高年女性達を相手に詩を朗読する仕事をこなしていました。
しかしその現場へ、突如警官達が多数押しかけ、エドガー・アラン・ポーは冒頭の事件絡みで重要参考人として連行されることになってしまいます。
彼はエメット・フィールズ刑事との尋問の中で、自分の小説を利用した殺人が行われていることを知ることになるのですが……。

映画「推理作家ポー 最期の5日間」で勃発する連続殺人事件は、エドガー・アラン・ポーの小説で開陳されているトリックや固有名詞等を流用して行われています。
最初の殺人事件が「モルグ街の殺人」、次の殺人が「落とし穴と振り子」、その次の仮面舞踏会では「赤き死の仮面」、それぞれの作中で描かれているトリックや殺人が用いられています。
その忠実度は、当のエドガー・アラン・ポーですら驚くほど(苦笑)。
しかし、具体的にどの著書のどの内容が現実のトリックや殺人の手法と合致しているのかについては、実際にポーの小説を読んだ人でないと理解できるものではなく、何も知らない人間から見たらあまり楽しめるものではないのではないか、とは思わなくもなかったですね。
そもそも、最初の事件でエドガー・アラン・ポーの小説との関連性を見破ったエメット・フィールズ刑事でさえ、それ以降はエドガー・アラン・ポーの知識に頼りきりになっていた感が否めなかったくらいですし。
この辺りは、映画製作者も承知の上で、エドガー・アラン・ポーの作品を知らない人向けに演出したものではあるのでしょうけどね。
知っている人から見たら小説との関連性が完全に理解できて面白さもまた違ってくるのだろうなぁ、とエドガー・アラン・ポーの作品は一部の小説タイトル名くらいしか知らない私などはついつい考えてしまうのですが(^^;;)。

ただ、ラストで明らかになった真犯人は、最初からエドガー・アラン・ポーを主要ターゲットにするつもりで犯行をやらかしたとは正直思えないところが少なくないですね。
そもそも、警察が殺人内容とエドガー・アラン・ポーの小説との関連性に全く気付くことなく捜査を行っていたりしたら、当然エドガー・アラン・ポーに捜査要請などすることすらなく、またエドガー・アラン・ポー側も事件の存在すら認知することもなく、その時点でいともあっさりと計画が頓挫してしまいます。
実際、警察もエメット・フィールズ刑事がたまたま気づいたからエドガー・アラン・ポーに目星をつけられたようなものだったのですし。
また、警察が小説との関連性【だけ】でもってエドガー・アラン・ポーを犯人と決め付け、そのまま不当逮捕して裁判にかけてしまう、という事態も全くなかったわけではないでしょう。
それまでのエドガー・アラン・ポーは素行不良が目立っていてあちこちでゴタゴタを巻き起こしていたのですし、警察が思い込みだけで彼を犯人扱いして逮捕を決断するというシナリオも全くありえないわけではなかったのですが。
真犯人の目的はあくまでもエドガー・アラン・ポーにこそあったのですから、ここで警察が無能ぶりを発揮した捜査を行うと、彼の目的は全く達成できなくなる可能性が濃厚だったのではないかと。
その点で真犯人は、見事にエドガー・アラン・ポーと事件の関連性に気付いて彼に捜査の協力をさせたエメット・フィールズ刑事に感謝しなくてはならないかもしれませんね。
……もっとも、ラストで彼に不意を突かれ撃ち殺される羽目になった真犯人にしてみれば、「何故俺が奴に感謝などしなければならないんだ!」とあの世で恨み言のひとつも言いたいところではあるのかもしれませんが(笑)。

個人的には、物語終盤でエドガー・アラン・ポーが真犯人と対峙した際、いくらエミリー・ハミルトンが人質に取られているからとはいえ、真犯人が強要するままに毒を飲んだのが少々疑問ではありましたね。
あの場面で彼は、丸腰の真犯人に対して銃を所持していたのですし、一度は真犯人の直近で発砲して脅しをかけてもいたわけでしょう。
ならばそれをさらに延長させて、真犯人の手なり足なりでも撃って拷問同然にエミリーの居場所を聞き出す、といった行動に出れば、あるいは彼女ばかりか自分自身さえも無傷で助かったのではないのかと。
自分が相手の要求を文字通り飲んだからと言って、真犯人が素直に口を割るとは限らないことくらい、仮にも周囲の人間関係に悩まされ続けてきたエドガー・アラン・ポーの立場であれば理解できないはずもなかったでしょうに。
結局彼は、真犯人の口ではなく自身の推理によってエミリー・ハミルトンを助けていたりするのですし。
彼が毒を飲んだのは全く無意味な行為かつ無駄死にとしか言いようがなかったのですが、この辺り、エドガー・アラン・ポーは相当なまでに「人を疑うことを知らない【いいひと】的な人間」として描かれていますね。
40年も、それも困窮な生活を強いられ風当たりの強い世の中を生きていてそれはどうなのよ、としか評しようがないところなのですけど。

作中にはやたらと猟奇的な殺人描写や、血を流して苦悶の表情を浮かべている死体が映し出されたりするので、その手の描写が嫌いな方にはあまりオススメできるものではないですね。
ミステリー好きか、エドガー・アラン・ポーの作品が好きという方向けの映画、といったところになるでしょうか。

映画「SAFE/セイフ」感想

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映画「SAFE/セイフ」観に行ってきました。
「トランスポーター」シリーズや「エクスペンダブルズ」シリーズ、直近では映画「キラー・エリート」で活躍しているジェイソン・ステイサム主演のアクション・サスペンス作品。
今作では最初から最後までとにかくバイオレンスな展開、特に序盤は拷問に近い虐待シーンが延々と続くためか、R-15指定されています。
また今作は、熊本県では毎度おなじみの熊本シネプレックス1箇所限定での上映だったため、いつものごとく熊本市中心部まで足を運んでの観賞となりました。
……これでも「上映されるだけまだマシ」と言わざるをえないところに、熊本の泣けてくる映画事情があったりするのですが(T_T)。

ジェイソン・ステイサムが主演ということもあり、当然のごとくアクションシーンを売りにしている映画である今作ではあるのですが、しかし最初の20分ほどはとにかく鬱々な展開が延々と続きます。
何しろ冒頭のシーンからして、地下鉄で投身自殺を図ろうとする男と、マフィアから心細い逃亡を続けている少女の姿が描かれているのですから。
そのすぐ後から、1年前まで遡って2人がどのような経緯でそうなったのかについて描写されていくことになるのですが、それがまた暗くかつバイオレンスに満ち溢れたエピソードの羅列ときています。
警察をクビにされ、マイナーな総合格闘技のファイターにまで落ちぶれた挙句、本来自分が負けなければならないはずの八百長試合で誤って相手をKOしてしまったことで大損害を被ったロシアン・マフィアに自分の妻を殺されてしまう、今作の主人公ルーク・ライト。
さらに彼は、ロシアン・マフィアの若頭に「今後お前と親しくした人間は容赦なく殺す」とまで脅されてしまい、ホームレスとして生きていく羽目となってしまいます。
さらに彼は、過去に警察でも何か揉め事があったらしく、たまたま再会した警官達に一方的な殴る蹴るの暴行まで受けてしまいます。
一方、中国の南京で平穏に生活していたにもかかわらず、その驚異的な記憶力で逆に学校から厄介払いされてしまった上、チャイニーズ・マフィアに人攫い同然に拉致されアメリカまで連れてこられてしまった少女メイ。
年端も行かない少女であるはずのメイに対し、まるで見せしめと言わんばかりに脅しや虐待・殺人行為まで披露してのけるチャイニーズ・マフィア達の所業は、ルーク・ライト絡みの暗いエピソードにまつわる鬱々なイメージをさらに増幅させる効果がありましたし。
作品の意図としては、序盤でこれでもかと言わんばかりにマフィアや警官達を「絶対的な悪」として描いた上で、それらを徹底的になぎ倒すことで観客に爽快感を抱かせようという意図でもあったのでしょう。
しかし、あれらの描写のせいでR-15指定された上に、観客的にも結構鬱々な気分にさせられてしまうあれらの描写は、それを見る側に少なからぬ忍耐を要求させるものでもあるため、見る人によっては結構賛否が分かれるところではあるでしょうね。

過去の経緯が明らかになり、舞台が再び地下鉄に戻ってきたところで、いよいよ今作の本当の「売り」が披露されることになります。
謎の暗号を記憶している少女メイと、捕縛すべく動いたロシアン・マフィアの一味を目撃したルーク・ライトは、それまで実行しようとしていた投身自殺を止め、メイを助けるべく動き始めるのです。
彼が何故メイを気に留めたのかは作中でも理由が語られていないのですが、ルーク・ライトの最初の目的は、どちらかと言えば自分の妻を殺したロシアン・マフィアへの復讐の方だったのでしょうね。
メイの存在もさることながら、彼女に気を取られて後ろがおろそかになっているロシアン・マフィアのメンバー達は、ルーク・ライトにとっては格好のターゲットでもあったでしょうし。
それまでの無抵抗&無気力感を完全に帳消しにするかのごとく、ルーク・ライトは一方的に敵を叩き潰しまくります。
それまでマフィアや警察の横暴の前に、ただひたすら黙って耐えていただけのルーク・ライトのあまりにも突然の変貌ぶりには、「今までのアレは何だったんだ!」という感想を抱くのに充分なものがありましたが(苦笑)。
まあ、序盤におけるあんな鬱々な展開を最後まで続けられてもそれはそれで論外なのですし、ここから映画としては面白くなるので良しとはしているのですが。

映画「SAFE/セイフ」の面白さは、ジェイソン・ステイサムが演じる主人公のアクションやカーチェイスもさることながら、チャイニーズ&ロシアンの2大マフィアと汚職警官達による三つ巴の構図にあります。
3勢力は、メイが記憶している数字の暗号を他の2勢力に先んじて自分達で手中に収めるために、主人公のみならず他の2勢力に対しても積極的に攻撃を仕掛けてきます。
1勢力がルーク・ライトとメイを追っている際、彼らは目先の2人のみならず他の2勢力とも抗争していたり攻撃されたりしているんですよね。
そのため、彼らは2人の捕獲に集中することができず、結果として2人を逃がすという行為をしばしば繰り返すことになります。
2人を追跡している2大マフィアの幹部達は「もしメイが敵の手に落ちたら……分かっているな?」的な脅しを上層部から受けていますし、警察は警察で市長の意向もあり少なからぬ利権が絡んでいるため、メイの捕獲に躍起になっているありさま。
ルーク・ライトひとりと1勢力だけであれば、さしものルーク・ライトも勝てなかったでしょうにねぇ。
実際、ルーク・ライトとメイが泊まった高級ホテルを中国マフィアが奇襲をかけようとした際には、ホテルの警備員と警官達が中国マフィアに攻撃を仕掛けたりしなければ、ルーク・ライトの油断もあってミッション・コンプリートが達成できていたのではないかと考えられるものがありましたし。
この複雑な三つ巴にルーク・ライトが介入して圧倒的な暴力で敵を倒していく様は、まさに爽快の一言に尽きます。
またルーク・ライト自身、3勢力の均衡と対立構造を利用した立ち振る舞うのが上手かったですね。
獲得した情報を使って駆け引きを行ったり、かつての仇敵達とすら一時的かつ利害関係絡みとは言え平然と手を組んでいたりしますし。
もちろん、双方に全く信用はなく「用が済んだらこいつは殺す」と互いに裏切りの好機を模索する上での共闘ではあったのですが。
ラストの決着のつけ方も全く意外な展開ではありましたが、これも良い意味で意表を突かれた感じでした。

アクション映画好きか、ジェイソン・ステイサムのファンな方であれば、まず観に行って損をすることはない作品と言えるのではないかと。

テレビドラマ「大奥 ~誕生~ 有功・家光篇」 第1話感想

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2012年10月12日より始まった、TBS系列の金曜ドラマ「大奥 ~誕生~ 有功・家光篇」。
今回よりテレビドラマ版の終了まで、その流れと原作からの改変要素について追っていきたいと思います。
今回は10月12日放映分の記念すべき第1話の感想です。
なお、当ブログでは前作映画および原作版の「大奥」についても色々と書いております↓

前作映画「大奥」について
映画「大奥」感想&疑問
実写映画版とコミック版1巻の「大奥」比較検証&感想

原作版「大奥」の問題点
コミック版「大奥」検証考察1 【史実に反する「赤面疱瘡」の人口激減】
コミック版「大奥」検証考察2 【徳川分家の存在を黙殺する春日局の専横】
コミック版「大奥」検証考察3 【国内情報が流出する「鎖国」体制の大穴】
コミック版「大奥」検証考察4 【支離滅裂な慣習が満載の男性版「大奥」】
コミック版「大奥」検証考察5 【歴史考証すら蹂躙する一夫多妻制否定論】
コミック版「大奥」検証考察6 【「生類憐みの令」をも凌駕する綱吉の暴政】
コミック版「大奥」検証考察7 【不当に抑圧されている男性の社会的地位】
コミック版「大奥」検証考察8 【国家的な破滅をもたらす婚姻制度の崩壊】
コミック版「大奥」検証考察9 【大奥システム的にありえない江島生島事件】

第1話のストーリーは、コミック版「大奥」2巻の最初からP107までの話をなぞったものとなっています。
後に「お万の方」となる有功が、本物の家光の代わりとして擁立された女版家光と出会うまでの物語です。
最初は前作映画「大奥」の続きで、徳川8代将軍吉宗が没日録を読み始めるところから始まるのではないかと予想していたのですが、それはなかったですね。
前作映画では「暴れん坊将軍」的な演出もあったわけですし、吉宗にも友情出演程度くらいの出番はあるかと考えていたのですが(^_^;;)。
内容を見る限りでは、これでもかと言わんばかりに原作のストーリーどころか描写までも忠実に再現している感がありましたね。
コミックを片手に作中の描写を比較してみても、登場人物がしゃべっているセリフも、その場その場におけるシーンでの姿勢などもほぼ同じでしたし。
原作と違うシーンと言えば、江戸城の屋敷に閉じ込められた有功と玉栄と明慧の3人が屋敷から一時的に脱走したことと、原作にはあったレイプやセックスの描写が軒並み省略されていたことくらいでしょうか。
まあ後者については、PG-12やR-15指定も可能な映画と異なり、テレビドラマではその手の描写を描きたくても描けない状態にあるのですから、当然と言えば当然の措置ではあるのでしょうけど。

配役を見てみると、個人的には春日局が原作よりも若く、かつ何か違う印象を受けましたね。
原作の春日局は髪が白髪なのですが、テレビドラマ版の春日局は黒髪で、それだけでかなり若いイメージが付きまといましたし。
一応春日局は、史実でも寛永20年9月14日(1643年10月26日)に死去しており、第1話終了時点(寛永17年(1640年)夏)で既に老齢かつ余命3年程度しかないのですから、ここは白髪でも良かったのではないかと思えてならなかったのですが。
登場人物の姿形はもちろんのこと、明慧が澤村伝右衛門に斬られる描写までそっくりそのまま再現しているほどだったのに、春日局だけ何故黒髪に変えてしまったのか、少々疑問なところではありますね。
ひょっとすると、後の話で白髪にして「老い」を表現するという演出でもするのかもしれませんが、それにしても「3年程度でそこまで変わるのか?」という違和感が伴わざるを得ないでしょうし。

ところで春日局と言えば、ラスト付近で原作には全くなかった面白い設定をのたまっていましたね。
曰く「御三家に男子がいない」と。
こんなことは原作の春日局は全く述べてなどいませんでしたし、テレビドラマ版同様に春日局に相談を持ちかけられた松平伊豆守信綱も、これまた春日局の「徳川の血を絶やさぬために……」云々のスローガンに対して「春日局が残したいのは徳川家の血というより、彼女が溺愛した家光公の血筋なのではないか?」という疑問を抱いています。
松平伊豆守信綱がこんな疑問を抱くのも、家光の血筋以外に徳川御三家やその他の傍流の「徳川家の血を引く存在」がいるからに他ならないからでしょう。
だからこそ私も、コミック版「大奥」検証考察2【徳川分家の存在を黙殺する春日局の専横】で、件の春日局の対応の問題点を指摘していたわけですし。
では今回、改めて追加された「徳川御三家に男子はいない」は果たして正しいのか?
徳川御三家というのは、江戸幕府の開祖たる徳川家康の9男・10男・11男を始祖とする徳川分家のことを指します。
その始祖の生没年を調べるだけで、この春日局の発言が全くの大嘘であることがすぐに分かってしまうのです。
徳川御三家の始祖の生没年は以下の通り↓

尾張藩の尾張徳川家 始祖・徳川義直
 生誕 慶長5年11月28日(1601年1月2日)
 死没 慶安3年5月7日(1650年6月5日)
紀州藩の紀州徳川家 始祖・徳川頼宣
 生誕 慶長7年3月7日(1602年4月28日)
 死没 寛文11年1月10日(1671年2月19日)
水戸藩の水戸徳川家 始祖・徳川頼房
 生誕 慶長8年8月10日(1603年9月15日)
 死没 寛文元年7月29日(1661年8月23日)

1634年に家光が赤面疱瘡で死んだ時点では当然3者全てが生存しており、かつ彼らは全員家光よりも年上なので、彼らが赤面疱瘡を患う可能性は家光のそれよりもさらに低いと言わざるをえないでしょう。
特に水戸徳川家に至っては、その成立自体が1636年なので、それ以前の時点で始祖たる徳川頼房が死んでしまうと、下手すれば家の存在自体が歴史から消滅してしまうことにもなりかねません。
そして、徳川御三家が創設されたそもそもの目的が「宗家存続」にある以上、将軍位に何かがあった場合は自家の存続や相続よりもそちらが何よりも優先されなければならないのも自明の理というものです。
徳川御三家の始祖が生存している以上、最悪の場合は彼らの中の誰かが徳川将軍になりさえすれば良く、「徳川御三家に男子はいない」云々の発言は何ら成立することがないのです。
何故春日局は、こんなすぐに誰にでも分かるウソなんてついてしまったのですかねぇ。
徳川御三家のお家事情なんて、江戸城に参内する武士であれば誰でもすぐに分かる程度の情報でしかないでしょうに。
この辺りの設定、後日のエピソードでフォローされることがあったりするのでしょうかねぇ。
コミック版「大奥」でさえ、徳川御三家は家光の時代には全く言及すらされていないというのに。

設定面では1話目の段階で早くもミソがついてしまった感がありますが、「原作の忠実度」という点ではなかなかのものがあるのではないかと。
次回予告では有功が素振りをやっているシーン・白猫の若紫、それに玉栄が大奥の男衆に対して「殺してやる」と呟くシーンが出てきますが、ストーリー自体はどこまで進むことになるのやら。

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