日本映画の振興支援策と日本の映画料金の問題について
2011年の興行収入が前年比で2割近くも落ち込んだことから衰退の危機が囁かれる日本の映画業界。
その復活のカギは「政府の支援体制の拡充」にあるのだそうです↓
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20121104-00000000-fsi-bus_all
> 2011年の興行収入が前年比17.9%減の約1812億円に落ち込み、衰退の危機がささやかれる映画産業に、明るい兆しが見え始めた。複数のスクリーンを持つシネマコンプレックス(シネコン)で娯楽作品が集中的に上映されることが多かった興行にも、個性的で質の高い作品を求める機運が出始め、目の肥えたファンが戻りつつある。10月下旬に開かれた東京国際映画祭は今年で25回を数え、世界で存在感を高めつつある。映画産業「復活」の鍵は欧米に見劣りする政府の支援体制にありそうだ。
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> 「映画は時代を映す鏡。その力を信じたい」。10月28日に閉幕した東京国際映画祭の記者会見で審査員の一人、イタリアのエマヌエーレ・クリアレーゼ監督は、こう強調した。日本の映画興行を取り巻く環境は大きく変化している。2000年ごろから、郊外のショッピングセンターなどにシネコンが急増。人気作を集中上映し、不人気だとすぐ打ち切る手法が定着した。そのため映画製作は、人気テレビ番組の続編や漫画を原作とするなど、一定の観客が見込める作品に偏った。
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> 並行して個性的な作品を上映するミニシアターが激減。主に1980年代、欧州などの芸術性の高い作品をロングランヒットさせた役割は影をひそめた。また複製フィルムからデジタル素材による上映に移行しつつあり、設備投資の余裕がなく、閉館する地方映画館も増えている。
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> さらに、シネコンの成長も頭打ち状態だ。全国でシネコンを運営するユナイテッド・シネマ(東京都港区)は3月、経営不振のため親会社の住友商事から投資会社に売却された。さまざまな映像コンテンツがインターネットで入手できるようになり、映画館に足を運ぶ人も減っている。今後は「増えすぎたスクリーン数の淘汰(とうた)が始まる」(証券アナリスト)とされる。
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> とはいえ大量のコンテンツが出回るようになったことで、かえって「ファンの好みが多様化し、個性的な作品が受け入れられる土壌も戻ってきた」(映画祭関係者)との指摘がある。大手映画会社の東宝は2013年2月期連結決算の最終利益は前期比32%増の130億円と見込む。大ヒットした「テルマエ・ロマエ」が収益を押し上げたほか、社会派作品の「終の信託」も手がけ、今後も「バラエティーに富んだ作品をそろえていきたい」(担当者)という。
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> 映画産業にとって、運営の見直しが迫られるシネコンが今後、国内外の質の高い作品をいかに取り込んで商業ベースにのせるかが大きな課題となる。今年の東京国際映画祭は、沖縄・尖閣諸島の国有化で日中関係が冷え込む中での開催となり、中国作品の「風水」が直前に不参加を表明するトラブルに見舞われた。だが「映画と政治は別」と上映に踏み切り、政治介入を拒んで存在感を高めた。中国の関係者からも称賛の声が上がったという。
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> 今年の最高賞と最優秀監督賞を受賞した仏作品「もうひとりの息子」は、子供の取り違え事件を通じ、イスラエルとパレスチナの対立や人々の苦しみを描いた作品だ。映画祭関係者はこの作品の今後に期待をかける。昨年の最高賞は出品国の仏や欧州だけでなく、日本でもヒット作品となった。受賞作がヒットすれば次回以降に質の高い作品が集まり、映画祭の知名度も上がる好循環が生まれていく。
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> 一方、映画産業に対する政府の支援体制が不十分だとする声が少なくない。10月26日、都内で開かれた東京国際映画祭の分科会「国際共同製作を考えるセミナー」では、参加した仏のプロデューサーが、日本の映画について「米国のように『産業』なのか、仏のように『文化』なのか、性格が中途半端な点が成長を妨げている」と指摘した。
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> 欧米では複数の国による「国際共同製作」を支援する仕組みが整っており、ロケの便宜を図ったり、経費の税額を控除して製作費を支援する制度がある。日本でも11年度から政府の支援が始まった。ただ予算は年間で約2億円、1作品当たりの支援は数百万円から数千万円にとどまる。海外の大作級の映画の製作費は数十億円から100億円単位にのぼるだけに、海外勢が日本と共同製作をしたくなる動機付けにはなりにくい。
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> 縦割り行政への批判もある。映画製作は通常、企画立案から公開まで数年かかるが、「官庁は1年単位で担当が変わり、責任の所在もあいまいで交渉しにくい」と関係者は打ち明ける。東京国際映画祭の知名度はカンヌ、ベルリンといった伝統ある国際映画祭には遠く及ばず、当面の目標は「アジアのゲートウェイ」。だが、移民の多いカナダで毎秋開かれるトロント国際映画祭が似通う目標を掲げているほか、韓国・釜山や中国・上海の新興映画祭が政府の強力な支援も得て急速に台頭するなどライバルも少なくない。
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> 東京国際映画祭のイベントに参加した枝野幸男経済産業相は「『クールジャパン』を推し進めてきた中で、文化や芸術の力が最も大きく現れるのが映画」と持ち上げた。その力を、政府がどこまで引き出せるのかも問われている。(藤沢志穂子)
最後の枝野の発言には大笑いもいいところですね。
内容はともかく「お前が言うのか!」と。
そもそも日本の「文化や芸術」のみならず、必要不可欠な研究開発事業などを「事業仕分け」の名の元に根絶させようとすらしてきた元凶は、一体どこの政党だったのでしょうかねぇ。
これまでのゴタゴタの数々を鑑みても、民主党に映画を振興させられるような能力どころか意思すらもないことは、既に誰の目にも明らかではありませんか。
日本映画の振興は確かに大事なことではあるでしょうが、そのためにはまず、民主党が政権から滑り落ち、この世から消滅することが何よりの必須条件とならざるをえないでしょう。
民主党では文化振興どころか、日本の国益も国力も、下手すれば国の存続自体すらも危ういものにさせかねないのですから。
民主党が日本の映画振興に寄与したいというのであれば、自分自身こそがまずは消滅すべきですね(爆)。
どんな施策よりもそれこそが、映画のみならず日本全体のためにもなるのですから(笑)。
ところで、「2011年の興行収入が前年比で2割近くも落ち込んだ」というのは、映画の内容ではなく単に震災の影響が大きかったのではないのでしょうか?
震災直後は当然のことながら東北地方では映画自体がマトモに観賞できなくなったわけですし、計画停電で大騒動になっていた関東地方でもそれは同様だったでしょう。
またその他の地方も、「震災自粛」という名の愚かしい「空気」のせいで、映画のみならず全ての経済活動に多大な損壊が発生する始末でしたし。
「震災自粛」のせいで中止されたイベントなどは数知れず、その悪影響は震災から半年くらいは何らかの効力を持ち続けていたわけですから、映画の興行収入が落ちるのもそれはむしろ当然のことではないかと。
ああいうのって、個人や企業が個別に対処できるシロモノではないのですし。
映画の支援内容について私が是非推進して欲しいのは、やはり何と言っても劇場公開映画の地域間格差の改善ですね。
以前から何度かネタにしていますが、熊本の映画館で観賞可能な映画作品というのは、東京のそれの5分の1以下の数しかなかったりします。
九州第3の、それも政令指定都市を擁する熊本ですらそうなのでは、それ以下の規模しかない遠隔の地方と東京との格差はさらに悲惨なものがあるでしょう。
となると、地方の人間の場合はそもそも「観賞したくてもできない映画」や「最初から存在すら知ることができない映画(地方で上映されない映画はテレビやラジオで宣伝されることすらない)」がたくさんあることになってしまいます。
もちろん、今はレンタルによるビデオ観賞という最終手段がありますから「絶対に観賞できない」ということはないでしょうが、映画振興という観点から見れば、レンタル依存という形態は健全なあり方であるとは言えないでしょう。
これを是正し、どんな映画でも全国津々浦々での観賞が可能になれば、それは特に「興行収入は望めないが内容的に面白かったり特殊なテーマを追ったりしている映画」には大きな後押しとなるのではないでしょうか。
具体的には、映画の製作費が1億円以下の映画限定で「この映画を各劇場1スクリーン/2週間程度の期間限定で公開すれば、公開にかかった費用+αを全額負担する」的な「映画館への支援」を行うべきではないかと。
映画振興や人材発掘などの観点から見ても、優先的に支援すべきは「売上が見込める大作映画」ではなく「売上はでないかもしれないが今後の可能性に期待できるマイナー映画」でこそあるべきでしょうし。
即効性はまずないでしょうし、この手法でも駄作が貴重なスクリーンを占有する可能性が否めなかったりもするのですが、映画の支援というのはまずこの辺りから始めるべきではないかなぁ、と。
一方で「映画料金を改定して安くする」などといった誰でも考えそうな手法は、少なくとも現時点における映画業界の現状を鑑みる限りではあまり賛同はできないですね。
確かに日本の映画料金は世界的に見ても高いことで有名なのですが、本当に問題なのは「では何故そこまで日本の映画料金は高くなったのか?」ということにあるのです。
その理由は単純明快で、「映画を観る人&1人当たりの映画観賞本数が少ないから」これに尽きます。
映画を観る人が少なく、映画があまり観られることがないからこそ、安い映画料金では利益を上げるどころか元手を回収することさえもできず、結果どうしても単価を高くしなければならなくなる、それが日本の映画料金が高くなっている元凶なのです。
売れない商品は売上単価を上げざるをえず、結果ますます売れなくなる、という市場原理の悪循環が映画にもある、というわけです。
逆にアメリカでは映画料金が日本の半分以下と、日本の映画料金との比較でよく言われるのですが、アメリカの場合は日本の倍の人口に加えて1人当たりの映画観賞数も多く、そして何と言っても世界規模で自国の映画を上映できることから、利益回収が容易であるという事情が少なくないのです。
市場が日本国内限定で、たまに海外に進出する映画があるだけでニュースになるレベルの日本映画が真似できるような相手では、すくなくとも現段階ではありえないでしょう。
今の段階で映画料金を下げると、映画製作の現場ではますます売上至上主義的に傾斜したり、製作費をさらに切り詰めたりして、結果的に却って映画の品質が低下するリスクすらありえます。
そもそも映画料金を下げたところで、ちょっとやそっとの改定では「レンタルの方が料金も安いし面倒が少ないからそちらの方がマシ」となるだけで見た目的にも逆効果ですし。
日本の映画料金を下げるのは、日本の映画市場が今よりも拡大し、海外進出も当たり前の状態になった時であるべきなのではないかと。
日本映画の振興にはまだまだ多くの課題があるでしょうが、洋画と対等に肩を並べられるだけの勢力にまで台頭しえた今の状況は喜ばしい限りですね。
これからも、更なる発展と良作の提供を願いたいものです。