テレビドラマ「大奥 ~誕生~ 有功・家光篇」 第9話感想
全10話放送予定のTBS系列の金曜ドラマ「大奥 ~誕生~ 有功・家光篇」。
残り2話となった今回は、2012年12月7日放映分の第9話感想です。
前回第8話の視聴率は、前々回最低記録を更新した第7話をさらに下回る7.0%。
正直、ここまで視聴率が上がらないというのは、もう番組の出来がどうとかいう以前にテレビの集客力自体が衰退しているとしか評しようがないですね。
なお、過去の「大奥」に関する記事はこちらとなります↓
前作映画「大奥」について
映画「大奥」感想&疑問
実写映画版とコミック版1巻の「大奥」比較検証&感想
原作版「大奥」の問題点
コミック版「大奥」検証考察1 【史実に反する「赤面疱瘡」の人口激減】
コミック版「大奥」検証考察2 【徳川分家の存在を黙殺する春日局の専横】
コミック版「大奥」検証考察3 【国内情報が流出する「鎖国」体制の大穴】
コミック版「大奥」検証考察4 【支離滅裂な慣習が満載の男性版「大奥」】
コミック版「大奥」検証考察5 【歴史考証すら蹂躙する一夫多妻制否定論】
コミック版「大奥」検証考察6 【「生類憐みの令」をも凌駕する綱吉の暴政】
コミック版「大奥」検証考察7 【不当に抑圧されている男性の社会的地位】
コミック版「大奥」検証考察8 【国家的な破滅をもたらす婚姻制度の崩壊】
コミック版「大奥」検証考察9 【大奥システム的にありえない江島生島事件】
コミック版「大奥」検証考察10 【現代的価値観に呪縛された吉宗の思考回路】
コミック版「大奥」検証考察11 【排除の論理が蠢く職業的男性差別の非合理】
テレビドラマ「大奥 ~誕生~ 有功・家光篇」
第1話感想 第2話感想 第3話感想 第4話感想 第5話感想 第6話感想 第7話感想 第8話感想
第9話は、ほぼ全編にわたってオリジナルストーリーが展開されています。
原作的には4巻P12~P33までの管轄となるのですが、この区間にはテレビドラマ版には全く登場しない神原家のエピソードも存在するため、原作ストーリーの観点から見るとほとんど進んでいなかったりするんですよね。
今回のオリジナルエピソードは以下の通り↓
・女版家光の公表後における稲葉正勝と有功との会話。
・稲葉正勝と澤村伝右衛門の酒盛りと昔の回想、さらに有功からの伝言が稲葉正勝に伝えられる。
・女版稲葉正則の動向。
・「御内証の方」ができた理由についての女版家光の(原作よりはもっともらしい)解説。
・女版家光に夜伽の相手に指名されるも、女版家光の懐妊により夜伽がお流れになる。
・お夏の方と玉栄の確執。
・「今度こそ(女版家光に)子供を産ませてみせる」と意気込む玉栄と、どこか達観している感のある有功。
・有功のお褥辞退願いの後、稲葉正勝に話しかけ、「そなたは死ぬことなく僧になって息子の菩提を弔え」と述べる女版家光。
前作映画「大奥」ではおよそ意味不明な概念として登場していた「御内証の方」がここでやっと出てきましたが、この導入に関する説明は原作よりはまだ「理性的に見える」シロモノではありましたね。
まあ原作では、どう見ても女版家光のヒステリックな癇癪とヤクザの言いがかり的な動機から生まれたものでしかなかったのですから、少しばかり理論武装らしきことをのたまうだけで大抵はマトモなように見えてしまうものではあるのですが(苦笑)。
とはいえ、テレビドラマ版のそれも、少し考えればすぐさまボロを晒すようなシロモノでしかないのですけどね。
何しろ、「一瞬たりとも何者かが将軍の上に立つことは許さぬ」「ひいては将軍の、徳川の威光を守ることにもなろう」などという女版家光の言が事実なのであれば、そもそも「叛逆者」の類にすら該当する「御内証の方」は、御白洲裁判にでもかけて打ち首獄門の上、その死と晒し首を公衆の面前で知らしめる必要が当然のごとく発生するはずでしょう。
もちろん、当時の法体系から言えば「御内証の方」本人だけでなくその親類縁者も同罪とならざるをえないので、当然それらの人々も同じ目に遭わせなければなりません。
女将軍の初体験が「将軍の身体に傷をつける」と定義され、それが叛逆罪なり将軍暗殺未遂罪なりに匹敵する大罪と見做されるのであれば、「何者かが将軍の上に立つこと」を許さず「将軍の、徳川の威光を守る」ためにも当然そこまでやらなければならないわけです。
将軍側に何ら後ろ暗いところがなく「御内証の方」を悪として断罪するのであれば、「御内証の方」は世間一般にその存在を晒して家族もろとも公然と処刑すべきなのです。
それをせずに「内々に死罪にする」などと文字通り女々しいタワゴトをのたまっている時点で、それを執り行うべき女将軍側に後ろ暗い事情があることを自分から白状しているも同然ではありませんか。
むろん、「御内証の方」を叛逆罪として公然と処刑などしようものならば、そもそも大奥に入ろうとするものなど誰もいなくなってしまうでしょう。
自分のみならず、家族や親戚までもが処刑に巻き込まれ御家断絶の事態にまで発展しかねず、さらには自身や家の名誉までもが汚され後世に至るまで断罪され続けることにもなるのですからなおのこと。
まあ女版家光も、そのような現実と後ろ暗さをある程度自覚しているからこそ、「御内証の方」は【内々に】死罪にしろとのたまっているのでしょうけどね。
そもそも、「御内証の方」の実態が世間一般に知れわたろうものならば、将軍家そのものが笑い物にされて、それこそ「将軍の、徳川の威光」を多大なまでに損壊することにもなりかねないのですし(爆)。
女版家光個人のレイプな初体験はいざ知らず、女版家光が言うところの「初体験」自体は女性であれば誰もが通る道でしょうに、そんなものにわざわざ死を与えるなんて、如何なる社会常識で考えてさえ頭の具合を疑われても仕方のない話でしかないのですから。
それとも「大奥」世界の女将軍とやらは、世間一般の女性達全てに対しても「自分の処女を奪った男は殺せ!」ということを社会通念として推奨しているとでもいうのでしょうかねぇ(苦笑)。
テレビドラマ版「大奥」も、残すはいよいよ最終話のみ。
予告編を見る限り、テレビドラマ版「大奥」は女版家光の死とその後日談が若干展開されることでもって完結し、次作の映画版「大奥 ~永遠~ 右衛門佐・綱吉篇」へと繋がっていくことになりそうですね。
徳川4代将軍家綱のエピソード、特に「明暦の大火」辺りの話は完全にすっ飛ばすつもりのようで。
今話の終盤で有功と女版家光がそれぞれ「死ぬな」と稲葉正勝相手に明言していた効果は、果たして「女版家光の死に際して追い腹を切った稲葉正勝」という原作の流れを改変することができるのでしょうか?