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2012年12月15日の記事は以下のとおりです。

テレビドラマ「大奥 ~誕生~ 有功・家光篇」 最終話感想

全10話で構成されるTBS系列の金曜ドラマ「大奥 ~誕生~ 有功・家光篇」。
いよいよ最終回となる今回は、2012年12月14日放映分である第10話の感想となります。
前回第9話の視聴率は、最低記録を更新した前々回第8話と同じ7.0%。
結局、視聴率的には下から数えた方が早い低調な番組ということになりそうですね、今回のテレビドラマ版「大奥」は。
もっとも、一連の「大奥」シリーズは元来映画こそが本命なのでしょうから、「映画の番宣」としてはそれなりのものはあったかもしれないのですが。
なお、過去の「大奥」に関する記事はこちらとなります↓

前作映画「大奥」について
映画「大奥」感想&疑問
実写映画版とコミック版1巻の「大奥」比較検証&感想

原作版「大奥」の問題点
コミック版「大奥」検証考察1 【史実に反する「赤面疱瘡」の人口激減】
コミック版「大奥」検証考察2 【徳川分家の存在を黙殺する春日局の専横】
コミック版「大奥」検証考察3 【国内情報が流出する「鎖国」体制の大穴】
コミック版「大奥」検証考察4 【支離滅裂な慣習が満載の男性版「大奥」】
コミック版「大奥」検証考察5 【歴史考証すら蹂躙する一夫多妻制否定論】
コミック版「大奥」検証考察6 【「生類憐みの令」をも凌駕する綱吉の暴政】
コミック版「大奥」検証考察7 【不当に抑圧されている男性の社会的地位】
コミック版「大奥」検証考察8 【国家的な破滅をもたらす婚姻制度の崩壊】
コミック版「大奥」検証考察9 【大奥システム的にありえない江島生島事件】
コミック版「大奥」検証考察10 【現代的価値観に呪縛された吉宗の思考回路】
コミック版「大奥」検証考察11 【排除の論理が蠢く職業的男性差別の非合理】

テレビドラマ「大奥 ~誕生~ 有功・家光篇」
第1話感想  第2話感想  第3話感想  第4話感想  第5話感想  第6話感想  第7話感想  第8話感想  第9話感想

最終話は、原作4巻P34~P57までのエピソードで構成されています。
女版家光が死ぬまでのストーリーであり、また同時に次作映画「大奥 ~永遠~ 右衛門佐・綱吉篇」の布石ともなる話でもあります。
この区間は、テレビドラマ版には全く登場しない神原家のエピソードが少なからぬページが割かれているいるため、今話における原作ストーリーは実質ほとんど存在せず、当然のごとく今回もテレビドラマ版オリジナルエピソードが中心となっています。
今回のオリジナルエピソードは以下の通り↓

・女版家光の出産の朗報に接し、姫であることを最初は嘆くが、報告者の発言で考え直し喜ぶ玉栄。
・玉栄に出産祝いを述べつつも、どこか突き放したかのような態度を取る有功。
・徳子姫(後の徳川5代将軍綱吉)を相手に子煩悩ぶりを発揮し可愛がる玉栄。
・「有功との間に子供が生まれていたら……」という仮定の話をする女版家光。
・長女の千代姫(後の徳川4代将軍家綱)と次女長子姫(後の徳川綱重)が学問を学んでいるシーン。
・千代姫の教育を女版家光から依頼される有功。
・澤村伝右衛門と共に静かに酒を酌み交わすシーンで、「出家しろと言われたのに何故大奥に留まったのか?」と質問される稲葉正勝。
・徳子姫と戯れている最中に突如病に倒れる女版家光。
・女版家光の「わしは死ぬのか?」という問いに対し、自分の娘をダシにするお夏の方と玉栄、そしてただ小さく頷く有功。
・後継者問題について「長幼の序」を説く有功。
・大奥の男達を吉原に送り込んだ政策の結果を報告する有功。
・徳子姫が次代の将軍に選ばれなかったことを嘆き悲しみ、有功に八つ当たりする玉栄。
・女版家光への殉死後、息子の亡霊と会話を交わす稲葉正勝の亡霊。
・亡き稲葉正勝の手紙を稲葉家に届ける澤村伝右衛門。
・出家して桂昌院となった玉栄との別れの際、礼を述べる有功。
・自身の死に際、「共に死のう」という以前の約束を破棄して有功に千代姫の後見を依頼する女版家光。

原作ではほとんど「やっつけ仕事」だったかのごとく駆け足かつ省略し過ぎな女版家光の晩年でしたが、テレビドラマ版は相当程度のエピソードを追加していますね。
何しろ原作では、たったの1ページで女版家光は唐突に病死してしまっていましたし(苦笑)。
物語的な必然性がどうとかいう以前に、単なる史実との辻褄合わせのために死んだとしか思えない描写でしたからねぇ、原作における女版家光の死は。
その点テレビドラマ版は、女版家光が死に至るまでの過程をきちんと描いていて、原作の補完としてはそれなりのものがありはしますね。
女版家光死後の後継問題も「いつの間にか決まっていた」的な扱いでしたが、こちらでは有功の助言で女版家光が決断するという形で描かれていましたし。
ただ、結果として玉栄の意を踏みにじる形となった有功を、よくまあ玉栄は恨むことすらなく別れの挨拶ができたものだよなぁ、とは思わずにいられなかったですね。
玉栄は、アレだけ徳子姫を将軍にすることを熱望し、お夏の方への対抗意識に満ち満ちていたわけなのですから、その道を阻んだ有功に対して殺意すら抱いてもおかしくなかったのではないかと思えてならなかったのですが。
徳子姫が後に5代目の将軍になれる未来なんて、あの当時の玉栄に分かるはずもないのですし。
徳子姫の存在があってさえ、とことん有功を尊崇してやまないのですねぇ、玉栄は。

それと、前話で有功と女版家光の双方から「死ぬな」と言われていたにもかかわらず、稲葉正勝は結局原作同様に殉死してしまっていましたね。
稲葉家というオリジナルな存在も登場していたのですし、テレビドラマ版では実家に戻って余生を過ごすシナリオでもあるかと当初は予測したりもしていたのですが。
澤村伝右衛門と酒を酌み交わしたシーンでのやり取りが、そのまま稲葉正勝の死亡フラグとなっていました。
原作にもあった、殉死後の稲葉正勝に対する有功の発言「あなたも…上様に恋した男の一人だったのでしょうか…」は、テレビドラマ版では愛情ではなく忠誠心という形で発露されており、この落としどころは上手いものがあるのではないかと思いました。
原作では何を意図していたのかも不明な台詞でしたし。
原作補完という点から言えば、テレビドラマ版「大奥」はまずまずの出来であると言えるでしょう。

しかし、女版家光の死の間際における玉栄とお夏の方との張り合いぶりは、正直笑わずにいられないものがありましたね。
両者共、女版家光ではなく自身および娘の今後の権勢にばかり目が向いていることが誰の目にも分かる対応ぶりでしたし。
まあアレがあったからこそ、ただひとり淡々と女版家光のことを思いやる有功の言動が光もするわけですが。

今回でテレビドラマ版「大奥 ~誕生~ 有功・家光篇」は完結を迎え、次の舞台はいよいよ2012年12月22日公開映画「大奥 ~永遠~ 右衛門佐・綱吉篇」へと向かうことになります。
全体的に暗い話が続いていたテレビドラマ版とはまた違った面白さがあちらにはありそうではありますが、さて肝心の出来は一体どうなることやら。
当然私も、次作映画は観賞する予定です。

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