映画「ホビット 思いがけない冒険(3D版)」感想
映画「ホビット 思いがけない冒険」観に行ってきました。
映画「ロード・オブ・ザ・リング」3部作の時代から遡ること60年前を舞台とする、ピーター・ジャクソン監督製作によるファンタジー・アクション大作。
今作は3D版メインの上映であり、2D版はほとんど上映されていなかったため、やむなく3D版での観賞となりました(T_T)。
まあ3Dの出来自体はそれなりのものはあると言えるレベルではあったのですが、3Dのために無駄金を使いたくない私としてはあまり慰めにならないというか(-_-;;)。
現行の料金体系では、3D映画はただそれだけで高くなるという理不尽な問題が常に付きまとうことになるのですし、いい加減何らかの改善が必要なのではないかと思えてならないのですけどね。
今作は、映画「ロード・オブ・ザ・リング」の1作目が開始される直前の時間軸で、年老いたビルボ・バギンズが「ロード・オブ・ザ・リング」の主人公であるフロド・バギンズをあしらいつつ、過去を回想するという形で語られることになります。
今作の冒険が行われることになったそもそものきっかけは、中つ国の東に位置する「はなれ山(エレボール)」に存在し繁栄を極めていたドワーフの王国が、ある日突然ドラゴン・スマウグの襲撃に遭い壊滅的な被害を被り滅亡したことにありました。
生き残りのドワーフ一族は、スマウグの襲撃時にドワーフ王国の王子の立場にあったトーリン・オーケンシールドによってかろうじてまとめられ、その日暮らしの生計を立てつつ、「はなれ山」に居座るスマウグを討ち取り国を再興すべく準備を進めていたのでした。
トーリンの古くからの友人であった灰色の魔法使い・ガンダルフもまた、トーリンの旅に同行することになるのですが、その際ガンダルフは、ホビット庄に住むホビットのビルボ・バギンズを推挙し、トーリンと12名のドワーフ達と共に旅に同行させることを提言します。
当初は「招かれざる客」同然に強引に自分の家に押し入ってきた上、家に備蓄されていた食糧を食い漁ってしまったドワーフ達とガンダルフに対してまるで好意的でなく、旅の同行にも難色を示していたビルボ・バギンズ。
またドワーフ側も、ロクな体力も戦闘力もないホビットを自分達の仲間として迎えることに積極的ではなく、むしろ反対の声すら上がる始末。
当の本人も周囲もそろって懸念と反対の声を上げる中、ガンダルフただひとりがビルボ・バギンズの有用性を強引に主張するという構図になっていました。
翌日、目を覚ましたビルボ・バギンズは、アレだけどんちゃん騒ぎを繰り出しまくっていたドワーフ達とガンダルフが既に出払ってしまったことを知ります。
彼らが出払った後の家には、仲間になる際の契約書だけが残されていました。
その契約書を握りしめたビルボ・バギンズは、昨日までの消極的な態度はどこへやら、ドワーフ達の後を追い、彼らの旅の参加を表明するのでした。
かくして、ビルボ・バギンズの長い長い旅が始まることとなるのですが……。
映画「ホビット 思いがけない冒険」は、「ロード・オブ・ザ・リング」3部作の前日譚ということもあり、同シリーズでラスボスだったり死んでいったりした懐かしい顔ぶれが作中に登場しています。
「ロード・オブ・ザ・リング」2作目でラスボスとして振る舞っていたサルマンも、今作ではまだ悪に染まっていないものの頭が固く融通が利かない人物として登場していたりしますし、同じく2作目から登場し「愛しいしと」という口癖が有名なゴラムも登場しています。
ただ、個人的に一番驚きなのは、「ロード・オブ・ザ・リング」から60年前の世界が舞台のはずなのに、今作ではその「ロード・オブ・ザ・リング」の時よりもむしろ老け込んだ感すらあるガンダルフですね。
普通、時系列が過去となる前日譚を扱った話で同じ登場人物が出てくる場合、その登場人物は「未来」の作品よりも若々しい姿で登場するものではないのでしょうか?
現に作中のビルボ・バギンズは、冒頭で年を取っている容貌と60年前の若々しい姿の差が誰の目にも分かるように描写されていたのですし。
作中の描写を素直に信じると、ガンダルフは60年の歳月を経て逆に若返っていることになってしまうわけで、「一体どういう年の取り方をしているんだ?」とは疑問に思わずにはいられなかったですね(苦笑)。
今作や「ロード・オブ・ザ・リング」の設定によれば、ガンダルフは人間ではなく「イスカリ」と呼ばれる魔法使いとのことで、この世界における魔法使いというのは「職種」ではなく「種族」として位置づけられる特殊な存在のようです。
その寿命は人間よりもはるかに長く老化もゆっくり進行するもののようで、道理で60年もの歳月の差がある割には容姿がほとんど変化していなかったわけですね。
ただ、エルフみたいに桁外れな長命で死や老いとは無縁そうな種族であっても、「若返り」まではさすがに無理なわけですし、この辺りは作中時間ではなく「現実世界の時間の流れ」というものを感じずにはいられないですね。
何しろ、ガンダルフが映画で初登場した「ロード・オブ・ザ・リング」1作目の公開から、2012年の時点で既に10年以上もの歳月が経過してしまっているのですし、配役の人も一貫して同じ人が担っているのですから。
前日譚なのに、時系列的には後であるはずの作品よりも登場人物が年を取って見える、というのは現実の時間が流れている以上は避けられない問題なのでしょうが、作中におけるビルボ・バギンズの事例のごとき「配役の変更」とか「容貌のCG加工」で何とか凌ぐ方法はなかったのかなぁ、と。
映画「ホビット 思いがけない冒険」は、「ロード・オブ・ザ・リング」と同じく3部作構成の中の1作品であり、残り2作は2013年~2014年にかけて公開される予定となっています。
次回作の2作目は「ホビット スマウグの荒らし場」、完結となる3作目が「ホビット ゆきて帰りし物語」というタイトルに、それぞれなるのだそうで。
3部作の導入部となる今作では、ビルボ・バギンズが冒険に参加してから、様々な襲撃やアクシデントを経て、はるか遠方にボンヤリと見えている「はなれ山」を一望するまでのストーリーが描かれています。
本質的に戦いに向いておらず、中盤頃までは仲間の足を引っ張っていた感のあるビルボ・バギンズでしたが、終盤ではオークに追い詰められ首を刎ねられようとしていたトーリンの絶体絶命の危機を助けるという大金星を挙げ、トーリンをはじめとするドワーフ達にその実力を認められるようになります。
その点では、終始指輪の誘惑にしばしば魅了された挙句、最後には一時的にせよ誘惑に屈してしまった「ロード・オブ・ザ・リング」のフロド・バギンズよりもはるかに主人公らしいキャラクターではありますね(苦笑)。
「ロード・オブ・ザ・リング」では、フロド・バギンズよりもその従者だったサムの方が、人格面で言っても活躍度から見てもはるかに主人公の風格があったくらいでしたし(爆)。
「ロード・オブ・ザ・リング」と言えば、今作でビルボ・バギンズが拾うことになった指輪が、「ホビット」3部作の中でどのような役割を果たすことになるのかも要注目ですね。
あの指輪、「世界を支配する力がある」とか御大層なことを言われている割には、作中における実際の描写では「身体が透明になれる」程度くらいしか「持ち主の役に立つ能力」というものがなく、それ以外は敵の標的になるとか死霊に追われるとかいったマイナスの効用しかなく、「何故こんなシロモノに誰もが魅了されるのか?」とつくづく疑問に思えてならないところですし。
「ホビット」3部作で指輪の所持が問題化することはないと思われるのですが、指輪は果たしてどんな活躍をすることになるのやら。
「ロード・オブ・ザ・リング」のファンであれば充分に楽しめる映画ではあります。
ただ前日譚とは言え、「ロード・オブ・ザ・リング」の登場人物も少なからず登場していることなどを鑑みると、ある程度「ロード・オブ・ザ・リング」の予習をしてから今作に臨んだ方が「より」楽しめるかもしれませんね。