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2013年01月23日の記事は以下のとおりです。

自転車事故を悪玉扱いする警察が駆使する「数字のトリック」の実態

東京地検が、悪質な信号無視を繰り返す自転車の運転者を、従来の原則不起訴から略式起訴する方針に改めることを明らかにしました。
何でも、自転車による事故の「割合」が増えたことが理由なのだそうで↓

http://megalodon.jp/2013-0122-2237-49/sankei.jp.msn.com/affairs/news/130121/crm13012122280023-n1.htm
>  悪質な信号無視を繰り返す自転車の運転者について、東京地検は21日、これまで原則不起訴としてきた方針を改め、道交法違反(信号無視)罪で略式起訴する方針を明らかにした。都内で自転車が関係した事故の割合が高まっており、悪質な運転に厳しい姿勢で臨むことが必要と判断した。こうした運用は全国の検察で初めてという。
>
>  地検によると、略式起訴の対象となるのは、2人乗りや携帯電話を使用しながらなど安全への配慮を欠いた運転をしたうえで、さらに信号を無視し、事故を引き起こしそうになったケース。2回以上繰り返した場合、原則略式起訴する。略式起訴されれば、5万円以下の罰金刑が科される。
>
>  自転車の運転者には自動車と違って、刑事手続きを免除する反則金制度が存在しない。略式命令を受けると前科となるため、検察は同じ信号無視で自転車の運転手にだけ前科がつくのは不公平との考えから、すべて起訴猶予などの不起訴処分にしてきた。
>
>  事故を引き起こした場合は従来通り、より重い業務上過失致死傷罪などが適用される。
>
>  警視庁によると、
都内の交通事故のうち自転車が関係した割合は、平成19年の34・8%から24年には36・2%と上昇。信号無視の自転車が事故を引き起こした割合も同期間で8・0%から9・6%に増えている。

自転車事故にまつわるこの手の数字を見る度に、「数字のトリック」という言葉をついつい連想せずにはいられないですね。
警察が「自転車事故が増えている」と主張する時、その根拠として使われる数字は「事故全体の割合」であって「実数」ではありません。
「実数」で言えば、自転車事故による死亡者数は、警察の主張とは反対にむしろ減少傾向にすらあるのです。
総務省の公式サイトにある交通事故の各種統計表によると、ここ10年における自転車乗用中における死亡者数は以下のようになっています↓

自転車乗用中における死亡者数
平成14年(2002年) …… 919人
平成15年(2003年) …… 858人
平成16年(2004年) …… 772人
平成17年(2005年) …… 765人
平成18年(2006年) …… 720人
平成19年(2007年) …… 678人
平成20年(2008年) …… 639人
平成21年(2009年) …… 632人
平成22年(2010年) …… 586人
平成23年(2011年) …… 561人
平成24年(2012年) …… 512人

10年前と比較しても自転車事故による死亡者数が減っていることが、これで一目瞭然でしょう。
それに対し、交通事故全体の年間死亡者数は以下の通り↓

交通事故全体の年間死亡者数
平成14年(2002年) …… 7,498人
平成15年(2003年) …… 6,903人
平成16年(2004年) …… 6,594人
平成17年(2005年) …… 6,200人
平成18年(2006年) …… 5,704人
平成19年(2007年) …… 5,174人
平成20年(2008年) …… 4,590人
平成21年(2009年) …… 4,378人
平成22年(2010年) …… 4,288人
平成23年(2011年) …… 4,131人
平成24年(2012年) …… 3,908人

自転車事故も含めた交通事故による死亡者数そのものが減少傾向にあるという、なかなかに喜ばしい調査結果が叩き出されています。
そして、交通事故全体の年間死亡者数に対する自転車乗用中における死亡者数の「割合」を計算すると、以下のような数字が弾き出されるわけです↓

交通事故死者数全体に対する自転車事故死亡者数の割合
平成14年(2002年) …… 12.3%
平成15年(2003年) …… 12.4%
平成16年(2004年) …… 11.7%
平成17年(2005年) …… 12.3%
平成18年(2006年) …… 12.6%
平成19年(2007年) …… 13.1%
平成20年(2008年) …… 13.9%
平成21年(2009年) …… 14.4%
平成22年(2010年) …… 13.7%
平成23年(2011年) …… 13.6%
平成24年(2012年) …… 13.1%

そう、自転車事故の死亡者数以上に交通事故全体の死亡者数が減っているために、割合的には自転車事故が却って増えている「ように見える」、という「数字のトリック」がこれで成立するわけです。
こんな「数字のトリック」を利用して自転車を悪玉扱いする昨今の警察やマスコミの報道には、つくづく疑問符をつけずにはいられないですね。

※今回参考にした統計資料
http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/List.do?lid=000001104745

自転車事故ほど、警察から悪玉扱いされ「数字のトリック」が盛んに活用されている事例もそうはないでしょうね。
「割合」ではなく「実数」の上では、自動車事故も自転車事故もそれに伴う死亡者数も全て減少の一途を辿っているというのに、ちょっと数字をいじるだけで真逆に見せかけた結果を提示することができるわけです。
警察にしてみれば、交通事故の件数も検挙者数も激減の一途を辿っているので、仕事がなくなることに対する危機感と新たな利権確保の観点から、自転車事故を殊更大々的にクローズアップしている一面もあるのかもしれませんが、自転車利用者の一般庶民にしてみれば何とも傍迷惑な話でしかありません。
警察は以前にも、「自転車は歩道ではなく車道を走るべし」などという、地方の道路事情を完全に無視した上に却って事故を増やしかねない本末転倒の方針を実施しようとすらしていた前科があるわけですし。
自転車事故対策それ自体は結構なことなのですが、自動車による事故の方が自転車のそれよりも数も多ければ質も悪いことを無視した誇大広告的な自転車悪玉論は、事故撲滅とは全く別の意図を勘ぐられても仕方がありますまい。
こういった実態を無視した統計や方針って、交通事情を却って悪化させるだけでしかないのではないかと思えてならないのですが。

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