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2013年02月16日の記事は以下のとおりです。

映画「王になった男」感想

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映画「王になった男」観に行ってきました。
17世紀前半の李氏朝鮮の宮廷を舞台とし、イ・ビョンホンが一人二役で主演を担う韓国映画となります。
今作は韓国で製作された映画ということもあり、当初は観賞予定作品のリストにも全く入っていなかったのですが、久々に試写会に当選するという僥倖に恵まれたため、「まあタダなのであれば……」ということで観賞に臨むことと相成りました。
韓国映画は、心理描写一辺倒&ラスト30分がグダグダの「リベラ・メ」や、トンデモ反日臭があまりにも強すぎる「マイウェイ 12,000キロの真実」と、どうにも良い印象を持ちようがないのが実情だったのですが、今作は如何に?

1616年の李氏朝鮮。
日本では徳川幕府が豊臣家を滅ぼし太平の世の礎を確立しつつあり、支那では明王朝が衰退から滅亡へと邁進しつつあったこの時代、当時の李氏朝鮮では光海君という人物が15代国王として君臨していました。
この光海君というのは、1623年に政敵にクーデターを起こされ廃位させられたという経緯も手伝い、李氏朝鮮では「暴君」という評価を受けている国王だったりします。
後世でもそんな評価な光海君は、作中でも周囲から恐れられる暴君として振る舞っており、それ故に自身も他者から暗殺される危険に怯えていました。
特に食事時などは、毒殺されるリスクが少なからず存在することもあり、光海君も毒見役に当たり散らすなど神経を尖らせていました。
暗殺のリスクを何とかして減らしたいと考える光海君は、国王の意思を臣下達に伝達したり、逆に臣下や民の意見を国王に伝える役割を持つ承政院の都承旨(トスンジ・承政院の長官)の地位にあるホ・ギュンに対し、自分とよく似た影武者を探させろという命令を下します。
しかし、影武者がなかなか見つからない中で、光海君に対する暗殺の脅威はますます増大するばかり。
光海君もホ・ギュンも、光海君の影武者をますます切望するようになっていきます。

そんなある日。
光海君の部下達は、ついに光海君と瓜二つの人間を見つけ出すことに成功します。
その男は、事実上の売春婦に相当する妓生(キーセン)達のたまり場である妓生宿のひとつで、妓生達を相手に国王の道化として振る舞っていたのです。
その道化師の名前はハソン。
目的の人物をついに見つけ出した彼らは、ハソンを家から宮廷に連れ出し、光海君と対面させることになります。
一時は光海君の不興を買う危機に直面しながらも、ハソンは持ち前の機転で逆に気に入られ、当人は乗り気ではなかったものの、光海君の意向により彼の影武者として採用されることとなります。
当初は3日に1度宮廷に赴けば良いとされた影武者役だったのですが、ハソンが最初に影武者を務めた夜の直後、光海君は突如体調を崩し倒れ意識不明の状態となってしまいます。
光海君は政敵から毒を盛られた可能性もあり、彼が死ねば宮廷、ひいては李氏朝鮮そのものが混乱することは必至でした。
事態を重く見たホ・ギュンの判断により、ハソンは四六時中宮廷内で光海君を演じることを余儀なくされるのですが……。

映画「王になった男」は、ひたすら周囲に恐怖と威圧感を与える暴君と、右も左も分からない宮廷でコメディな言動に終始しつつ、次第に王としての風格を持ってくる道化師という、全く異なる役柄を演じきったイ・ビョンホンの好演が光る作品ですね。
全体的にはシリアスな展開ですが、物語中盤はコメディとしても成り立っており、どちらの観点でも一見の価値はあります。
ただ、当時の朝鮮の独特な文化や政治情勢が何の説明もなく当たり前のように作中に挿入されているため、李氏朝鮮の知識がない人が見たら理解に苦しむ描写が少なくないのがやや難点なところです。
その手の歴史用語でマトモな説明があったのは、税制改革の一環である大同法くらいなものでしたし。
また、韓国映画なのですから韓国文化を前面に出すのは良いにしても、当時の宮廷におけるトイレ事情とか、国王の糞便を舐めて健康状態を判断する「嘗糞」なんてシロモノを、しかも全年齢対象の映画で出してくるのは正直どうなのかと。
ウンコを元に製造される「トンスル」なる人糞酒などというシロモノが現代にいたるまで存在する朝鮮では、嘗糞なんて行為も当たり前の文化なのかもしれませんが、朝鮮以外の文化圏の人間は確実に引かざるをえないでしょうに(苦笑)。
嘗糞描写では、試写会のスクリーン内でもどよめきが起こっていましたし、ある程度朝鮮文化を知っている私でさえ「そこまでやるか」と思わずにはいられなかったですからねぇ。
この手の描写って、韓国以外の国で果たして一般受けしえるものなのかと、いささか心配せずにはいられないですね。

また、韓国映画の弊害のひとつである「ラスト30分の展開が暗い」という要素は、今作でも健在ですね。
道化師のハソンは、最終的に李氏朝鮮の宮廷から逃亡を余儀なくされ、船に乗って難を逃れるという結末で終わっていますし。
一応、若干妙な感動エピソードなシーンが挿入されてはいるのですが、基本的な流れは「陰々滅々なまでに暗い」の一言に尽きます。
この辺りは、「マイウェイ 12,000キロの真実」でも似たような流れがありましたし。
何故韓国映画は毎回毎回「暗い結末」な話ばかり作ろうとするのか、全くもって理解に苦しむのですが。
個人的には、ハリウッド映画によくある「爽快感に満ちたハッピーエンド」的な終わり方をする方向で作品を製作していった方が、韓国のみならず他国でも一般受けしやすい映画ができるのではないかと思えてならないのですけどね。
アクションシーンとか演出面などは結構良いものを持っているのですから、ストーリー展開の問題を改善さえすれば、韓国映画はもっと飛躍しえる可能性があるはずなのですが……。

韓国映画として見た場合、今作は過去2作と比較しても意外なくらいに良く出来ている部類に入るとは思います。
ただ、これがハリウッドや躍進著しい日本映画に対抗しえる作品なのかというと、やはり首を傾げる評価にならざるをえないところですね。
内容的に見てもあまり万人向けに作られているとは言い難く、明らかに人を選ぶ映画なのですし。
ただでさえ今週は「ダイ・ハード/ラスト・デイ」などの大作が目白押しなのですし、また昨今の日韓関係の悪化という政治事情もありますから、興行収益的には結構厳しい戦いを強いられる映画と言えそうです。

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