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2013年03月25日の記事は以下のとおりです。

映画「だいじょうぶ3組」感想

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映画「だいじょうぶ3組」観に行ってきました。
「五体不満足」の著書で知られるベストセラー作家・乙武洋匡(おとたけひろただ)の同名小説を原作とし、さらに同作品に登場する「生まれつき手足のない新任教師」を、原作者自ら出演&熱演する人間ドラマ作品です。

東京の郊外にある松浦西小学校。
新学期を迎えるとある年の4月、5年3組に二人一組の教師が赴任してきました。
ひとりは、生まれつき両手足がないという先天性四肢切断を持ち、松浦西小学校5年3組を担当することになった新任教師・赤尾慎之介。
もうひとりは、一応今作の主人公で、教育委員会から派遣した赤尾慎之介のサポート役の補助職員・白石優作。
2人は仕事仲間であると同時に幼馴染の関係にもあり、互いにタメ口で語り合う仲でもあります。
新学期初日から遅刻してきたらしい2人は、赤尾慎之介の手足のない身体に驚きの表情を浮かべる5年3組28名の生徒達に挨拶した後、職員室で早々に遅刻について叱られることになってしまいます。
さらに5年1組を受け持つ担任教師・青柳秀子には、「もっと教師としての自覚を持ってください」などとキツい調子で釘を指される始末。
しかし、赤尾慎之介はそれでもメゲることはなく、担任就任早々に今度は桜の大木の下にホワイトボードを持ち出し、5年3組の生徒一同を集めてホームルームの授業をおっぱじめたりするのでした。
当然、青柳秀子はカンカンに怒って補助職員の白石優作に詰め寄り、白石優作は言い訳と謝罪に四苦八苦することになるのですが(苦笑)。

それからしばらく経過したある日。
5年3組の生徒のひとりである「ブーちゃん」こと山部幸二の上履きが紛失するという事件が発生します。
報告を受けた赤尾慎之介と白石優作は、生徒全員に上履きを探させると共に自分も一緒に学校中を探し回るのですが、紛失した上履きは全く見つかりません。
そんな中、5年3組では、上履きを隠した人間がクラス内にいるのではないかという疑惑が持ち上がります。
5年3組はクラスメイト同士が掴み合いを始めるほどに騒然となりますが、赤尾慎之介の取りなしで何とかその場は沈静化し、事件はとりあえず棚上げにされます。
その後、運動会や遠足など、様々なイベントを迎えることになる5年3組の面々達。
そして赤尾慎之介は、その中でクラスメイト達の信奉を少しずつ獲得していくことになるのですが……。

映画「だいじょうぶ3組」では、原作者たる乙武洋匡が自ら演じる「生まれつき手足のない新任教師」こと赤尾慎之介を補助する、TOKIOの国分太一が扮する教育委員会の職員・白石優作が主人公ということになっています。
ところが実際には、作中における登場頻度や露出度は、どう見ても赤尾慎之介の方が圧倒的に多く、逆に白石優作のそれは、むしろ全体的に見てもかなり少ない部類に入るようにすら思われるくらいなんですよね。
かく言う私自身、エンドロールで国分太一の名前が一番最初に出てくるのを見るまでは、てっきり乙武洋匡の方が主演だとばかり考えていたくらいでしたし。
原作自体が乙武洋匡の自伝ということもあり、当然主演もそちらだろうと考えるのが自然だったのですから、これはちょっとした驚きでしたね。
まあ実質的には、国分太一と乙武洋匡の2人が主演ということではあったのでしょうけど。

その国分太一が演じる白石優作は、かつては作中の赤尾慎之介と同じく教師だったものの、昨今話題になっているモンスタークレーマーへの対応に忙殺された挙句、教師職から教育委員会へ異動となって挫折を味わったという過去を持っています。
赤尾慎之介の補助職員になったのも、幼馴染の要望を叶えると同時に、かつてのように子供達と再び向き合いたいからという理由もあったのだそうで。
そんな彼にとって、生徒達の信頼を次々と勝ち取っていく赤尾慎之介の存在は、さぞかし眩しいものに見えたことでしょうね。
特に物語後半では、登山遠足のために同行できない赤尾慎之介と一緒に遠足に行くべく、5年3組の生徒達が一丸となって校長に陳情するという光景まで現出しているわけですし。
並の教師どころか、それなりに慕われている教師でさえ、生徒をそこまで駆り立ているのは至難の業もいいところでしょう。
そりゃ白石優作も、赤尾慎之介相手にある種の尊敬と敗北感も覚えようというものです。
それが、登山遠足で生徒と昼食を兼ねた休憩をしていた際に現れたのでしょうね。
もちろん、当の赤尾慎之介は赤尾慎之介で、障害者としての悩みや葛藤もあれば、健常者に対して越えられない壁のようなコンプレックスを常に抱いていたりもするのですが。

今作の大きな特徴のひとつは、手足がない赤尾慎之介が、普段どのように日常生活を送っているのかがきっちり描かれている点ですね。
普段どうやって食事をしているのかとか、手紙に文字を書く様子とか、電動車椅子なしで階段を上る様とか、作中の赤尾慎之介というより原作者の乙武洋匡が普段やっていることが再現されているような感じでした。
物語序盤でも、生徒達が興味津々で赤尾慎之介が食事をする様に注目しているシーンがありましたが、観客にしてもそれは同じ心境だったことでしょう。
こういう描写が生々しく描かれている作品というのは、映画に限らず巷のエンターテイメント媒体でもそうそうあるものではないので、その点は結構新鮮な部分がありましたね。
この辺りは、さすが「五体不満足」の著者である乙武洋匡ならではの体当たりな演技が光っていると言えるでしょうか。
一方で、白石優作の恋人らしい坂本美由紀は、正直作中での存在意義が今ひとつ分かりにくい存在でした。
いくら白石優作が忙しそうにしているからって、変に遠慮して自己主張を控えた挙句、自分で勝手に不満を爆発させている様は、見ていてもどかしいものがあった上に「面倒な女だな」と考えるのに充分なものがありましたし。
彼女の言動から垣間見えるその心情は「もっと私のことを見て!」というものではあったのでしょうけど、別に白石優作だって坂本美由紀に全く構わなかったわけではなく、彼的にはむしろ誠実に向き合っていた部類に入るでしょうに。
相手が浮気をしているとか、なおざりな態度に終始しているとか言った事情でもあるのならともかく、そうではないのに不満を鬱積させるというのはどうにも理解に苦しむものがありますね。
映画ではラストで強引に上手く行きそうな雰囲気に収めようとしていましたが、あの後の2人の関係って果たしてどうなるのでしょうかね?

元々が自伝ということもあり、作中の物語は淡々とした調子で進行していくため、アクションシーンや手に汗握るスリリングな展開等の派手な描写は一切存在しない作品です。
しかし、教師・生徒それぞれが抱く葛藤や心の交流など、人間ドラマ的な要素はそれなりに「魅せる」ものがある映画でもあります。
そういったものが好きな方と、あとは作中の小学校の風景を見て昔を懐かしみたい方にはオススメの作品であると言えるでしょうか。

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