映画「アイアンマン3」感想
映画「アイアンマン3」観に行ってきました。
マーベル・コミックにおける同名作品の実写映画シリーズ第三弾にして(一応は)完結編。
今作は3D/2D同時公開ですが、幸いにして時間が合ったこともあり、私が観賞したのは2D版でした。
時系列的には前作「アイアンマン2」ではなく、去年公開された映画「アベンジャーズ」からの続きとなっています。
今作における主人公トニー・スタークの葛藤は、明らかに「アベンジャーズ」での出来事が発端になっていますし、逆に「アベンジャーズ」を観賞していないと、トニー・スタークの葛藤の要因が一体何なのかさえも理解できないのではないかと。
続編を積み重ねたシリーズ作品ならではの弊害と言えるのではないですかね、こういうのって。
映画「アベンジャーズ」の戦いから1年。
謎の宇宙人達に自国の大都市ニューヨークを襲撃されたにもかかわらず、その対処を「アベンジャーズ」の面々に任せきりで、自分達は大都市もろとも敵を消滅させるべく核ミサイルを発射した以外は全く何もしていなかったアメリカの政府と軍は、その腹いせと言わんばかりにヒーロー達を危険視する風潮をせっせと醸成し続けていました。
その割には、今作の主人公トニー・スタークが開発したアイアンマンのパクリなパワードスーツを「アイアン・パトリオット」などと名付けて軍の作戦に充てるなどといった「個人の武力に依存する行為」を平気で行っているのが、アメリカ政府と軍のお茶目なところでもあるのですが(苦笑)。
「アイアン・パトリオット」のパイロットは、前作「アイアンマン2」でウォーマシンを操りトニー・スタークと共闘したジェームズ・ローディ中佐が担っていたりします。
さて、アメリカ政府と軍から危険視されているメインターゲットであるはずのトニー・スタークは、1年前の「アベンジャーズ」の戦いで精神的な外傷を被っていました。
彼は、「アベンジャーズ」で強大な敵を目の当たりにしたこと、および核ミサイルをニューヨークから異空間?の敵基地へ進路変更した際、エネルギー切れで落下したことなどから不眠症やパニック症候群を患ってしまい、アイアンマンの元となるパワードスーツの更なる開発に没頭する日々を送っていたのでした。
トニー・スタークの恋人で、前作「アイアンマン2」でスターク・インダストリーズのCEOに就任したペッパー・ポッツも、トニー・スタークのノイローゼ気味な様子を心配していました。
そんなある日、ペッパー・ポッツの元に、アルドリッチ・キリアンという科学者が姿を現します。
彼はAIMという組織に所属する科学者で、かつて1999年のスイスでトニー・スタークと面談の約束を取りつけていながら、彼に面談をすっぽかされた過去を持つ人物です。
彼は「エクストリミス」という人間の潜在能力を爆発的に増大させる技術の開発を一緒に行おうとペッパー・ポッツに提案するのですが、ペッパー・ポッツは「軍事利用に繋がりかねないから」とこれを拒否。
トニー・スタークの父親ハワード・スタークによって設立されたスターク・インダストリーズ社は、「アイアンマン」1作目の頃から、トニー・スタークの意向で「軍事兵器関連の開発はしない」という方針を明確に打ち出していますからねぇ。
このアルドリッチ・キリアンに不審を抱いた、スターク・インダストリーズ社の警護主任でトニー・スタークの友人でもあるハッピー・ホーガンは、アルドリッチ・キリアンとその同行者を追跡するのですが、謎の爆発に巻き込まれ意識不明の重体となってしまいます。
このことに怒りを覚えたトニー・スタークは、ハッピー・ホーガンに重傷を負わせた犯人への報復をマスコミの前で宣言し、自分の家の住所を公開し「攻撃してこい」と言わんばかりに煽り立てるのですが……。
映画「アイアンマン3」では、前作「アイアンマン2」で悪役側が活用していた「パワードスーツの遠隔操作」が重要なキーワードとなっています。
今作ではこれを使い、他人にアイアンマンのパワードスーツを装着させて安全地帯まで逃走させたり、逆に敵に装着させて動きを封じ自爆させたりといった、何ともユニークな使用方法が披露されていたりします。
特に終盤では、遠隔操作で自動操縦されているアイアンマンのパワードスーツがとにかく大量に参戦し、主人公トニー・スタークをサポートしています。
敵に次々とアイアンマンをパワードスーツを破壊される都度、新たなパワードスーツを召喚して装着し戦いを続けるという構図は、なかなかに斬新なものがありました。
単なるヒーローとしてではなく、明らかに「兵器」と割り切った上でのいわゆる「使い捨て」的な発想でもありますし、これだけでも一見の価値はあると言えるのではないかと。
ただその分、映画のタイトル名でもあるはずの「アイアンマン」があまり前面に出ていなかったきらいはあるのですが。
特に物語中盤などは、アイアンマンのパワードスーツの多くが破壊され、唯一の機体?も修復中という事情があったとはいえ、終始トニー・スタークとして戦っていたようなものでしたし。
あれらの戦いは、アイアンマンが所持する遠距離攻撃兵器「リパルサーレイ」を除けば、そこらのアクション映画でも普通に描かれる内容でしかなかったのですからねぇ。
まあその分、緊迫感に満ちた戦いを演出できてはいるのですが。
しかしまあ、作中で披露されているアイアンマンの大量生産&遠隔操作能力と、「エクストリミス」注入による遺伝子改造?技術を駆使すれば、トニー・スタークの葛藤も案外簡単に解決するのではないですかね?
これは全て、人類の技術によって増産も改良も可能な技術であり、それ故に個人の能力に依存するヒーローですらをも凌ぐ能力を、しかも集団で備えさせることをも可能とするのですから。
すくなくとも、「アベンジャーズ」の戦いレベル程度の侵略者達であれば、アイアンマン100体と「エクストリミス」の強化人間100人程度もいれば、簡単に撃退してしまうことも容易なことでしかないでしょう。
まあ、アレはあくまでも「尖兵」レベルでしかなかったでしょうし、黒幕達は未だ強大な力を秘めたモンスターなり兵器なりを温存してはいるでしょうが、すくなくとも人類側の戦力強化の一端には充分になりえるはずです。
何も敵との正面対決だけでなく、民間人の避難誘導や救援活動などでも、あの手の兵器や強化人間には大いに使用されることになるのですし。
「アベンジャーズ」の戦いで、未知の宇宙人達の脅威を痛感せずにいられなかったのは何もトニー・スタークだけでなく、直接の脅威に晒されたニューヨーク市民やアメリカ政府などもそうだったでしょうし、彼らもまた、その手の研究開発には積極的に乗り出さない方が変なのですが。
アルドリッチ・キリアンも、その手の見極めをきっちり行い、真っ当な手段で自分達の技術を(特にアメリカ政府辺りに)売り込んでいれば、あるいはトニー・スタークをも凌ぐ救国の英雄、もしくはVIPクラスの重要人物として扱われる日も来たかもしれないのに、何とももったいないことをやらかしたものです。
映画「アイアンマン3」では、エンドロール後に特典映像があります。
これは今作に限らず、今まで映画館で上映されてきたマーベル・ヒーロー映画全てに共通する特徴でもあるので、今作もそうだろうと予測するのは何ら難しいことではなかったですね(苦笑)。
そんなわけで今作は、映画の幕が下りてスクリーンが明るくなるまでは席は立たないことをオススメしておきます。
今作の特典映像は、今作のストーリーを誰かに語っているトニー・スタークと、映画「マイティ・ソー」の続編映画「マイティ・ソー/ダーク・ワールド」の紹介となっています。
「マイティ・ソー/ダーク・ワールド」では、「アベンジャーズ」で捕縛され収監されているらしいロキも映し出されていましたから、こちらも時系列的には「アベンジャーズ」の続きということになるのでしょうね。
今作もそうなのですが、前作からの流れと全く繋がっていないシリーズ作品のストーリー構成、というのは正直どうなのかと。
この分だと、映画「キャプテン・アメリカ ザ・ファースト・アベンジャー」の続編「キャプテン・アメリカ ザ・ウィンター・ソルジャー(原題)」も、当然「アベンジャーズ」からの続きということになるでしょうし。
マーベル・ヒーロー作品は、各ヒーロー毎に完結しているのではなく、全ての映画をひっくるめてひとつのシリーズ作品である、とでも考えるべきなのかもしれないのですけどね。