映画「ラストスタンド」感想
映画「ラストスタンド」観に行ってきました。
元カリフォルニア州知事のシュワちゃんことアーノルド・シュワルツェネッガーが、久々に主演を演じるアクション作品です。
脇役としては、カリフォルニア州知事就任以降でも映画「エクスペンダブルズ2」などで出演歴があるシュワルツェネッガーですが、主演作は2003年公開映画「ターミネーター3」以来、実に10年ぶりとなります。
そんなわけで今作は、「アーノルド・シュワルツェネッガー完全復帰作品」としても喧伝されているわけですね。
なお、今作は作中で流血シーンや人が死ぬ描写があるためなのか、R-15指定されています。
……ただ、作中の殺人シーン程度の描写であれば、全年齢指定の「藁の楯/わらのたて」にも普通にあったはずなのですが……。
物語はアメリカ・ネバダ州ラスベガスから15㎞離れたハイウェイで、スピード違反を検挙するために待機しているパトロールカーが映し出されるところから始まります。
平常業務の最中に夜食を食べていたそのパトロールカーの警官は、そのすぐ横をヘッドライトを消して猛スピードで疾走していく黒い車に全く気付きません。
スピード違反検挙用の速度計は正直に反応し違反速度を計測し、警官もさすがにそれには気付くものの、速度計に表示されているスピードは何と時速197マイル(317㎞)という、一般車では到底出すことのできないシロモノ。
そのため警官は、これはクルマではなく、無灯火の航空機か何かに違いないと、わざわざ近くの空港の管制塔に連絡をつけるという、後から見ればおよそ見当ハズレなことをやらかす始末なのでした。
その翌朝。
ラスベガスの南に位置し、隣国メキシコと国境を接するアリゾナ州の田舎町ソマートン・ジャンクションでは、町の人口の多くが地元ハイスクールのフットボールチームの応援へと向かい始めていました。
ソマートンの町長も例外ではなく、彼は片道5時間かかるフットボールの試合会場にクルマを出そうとしない町唯一の正保安官に不満を述べていました。
アーノルド・シュワルツェネッガー扮するその保安官レイ・オーウェンズは、「人口の多くが観戦でいなくなるこの町に残らなければならない」と町長の要求を一蹴。
そして、町長が消防車専用車線に赤いシボレーカマロZL1を違法駐車していることを見つけ、ただちに移動するよう通告するのでした。
フットボールの応援で頭がいっぱいの町長はそれに従わず、代わりに「火事が起こったら動かしておいてくれ」とレイ・オーウェンズにクルマのキーを預け、そのまま町を出て行ってしまいます。
フットボールの応援に向かう町長に「マヌケ」と小声で罵るレイ・オーウェンズは、その足で町のレストランへと向かいます。
するとそこでは、いつもと異なる2人の男が食事をしていたのでした。
2人に不審を抱いたレイ・オーウェンズは、男達にあれこれと話しかけ質問しまくり、結果、男達はレイ・オーウェンズを避けるように店を出て行ってしまいます。
男達が乗った大型トラックのナンバーを記録したレイ・オーウェンズは、その足で自分の部下である3人の副保安官のうち2人を捜しに向かうこととなるのですが……。
映画「ラストスタンド」は、「アーノルド・シュワルツェネッガー完全復帰作品」と銘打っているだけあって、完全にアーノルド・シュワルツェネッガーありきの作品となっていますね。
ストーリー内における美味しいところは全部ひとりで持っていっている感がありますし。
とはいえ、昔の作品と比較してみると、やはり動きにスピーディさがなくなっていて、「年を取ったなぁ」という感想が正直前面に出てきてしまいますね。
シュワちゃんは2013年4月現在で御年65歳とのことですし、それも当然のことではあるのでしょうけど。
当の本人も、劇中で「年かな」なんてのたまっている始末ですし、その辺はやはり自覚せざるをえないところでしょうね。
それでもまあ、往年の雄姿の再来とまではいかずとも、アクション俳優としてのアーノルド・シュワルツェネッガーはまだまだ健在で、銃撃戦や肉弾戦などを派手に演じてくれています。
惜しむらくは、物語の舞台がアメリカの片田舎で、チャチな武器を駆使しても倒せてしまう敵という、これまでの作品と比較しても相当なまでに世界観やスケールが小さいという点にあるでしょうか。
まあ、「完全復帰作品」というのであれば、このレベルがちょうど良かったのかもしれませんけど。
アーノルド・シュワルツェネッガー扮するレイ・オーウェンズの大活躍に対し、ただひたすら引き立て役に徹させられているFBIの無様ぶりは、別の意味で笑えるシロモノにしかなっていないですね。
周到な準備を整えていたとはいえ、3代目麻薬王カブリエル・コルテス奪還作戦の前に為す術もなく一方的にやられまくるFBIの面々。
道路を封鎖したり、ヘリで追跡したり、SWATを先回りさせたりと、FBIも決して無為に時を過ごしていたわけではないのですが、そのことごとくがあっさりと粉砕されてしまうありさま。
特に、圧倒的な武力で突破されてしまったバリケードはまだしも、カブリエル・コルテスのドライビングテクニックに翻弄されるだけで、ただの1発の銃弾を発射することすらなくクルマを横転させられ無力化されてしまったSWATの面々は、あまりにも情けなさ過ぎると言わざるをえません。
如何に移動中で、かつ後方から奇襲をかけたとはいえ、1台のクルマに2台のSWATのクルマが、それもドライビングテクニックだけで潰されるって、別の意味で奇想天外な展開としか言いようがなかったですね(苦笑)。
あの神がかりなドライビングテクニックを駆使すれば、物語終盤のカーチェイスでも、カブリエル・コルテスは案外すんなり生き残って国境を超えることもできたのではないのかと。
物語終盤におけるレイ・オーウェンズとのカーチェイスでは、カブリエル・コルテスはSWATを撃沈した時のような積極性がなく、妙に「逃げ」のスタンスに徹していた感がありましたが、クルマを使って相手を潰す戦法は取れなかったのでしょうかねぇ。
アーノルド・シュワルツェネッガーのファンな方々であれば、その雄姿を拝むという一点だけでも観賞の価値がある映画ではないでしょうか。