ウソと欺瞞の産物でもある「自粛」ムードの深刻な拡大
東日本大震災以降、「自粛」ムードの拡大が止まるところを知りません。
ついには東京都知事である石原慎太郎氏自ら、
「同胞の痛みを分かち合うことで初めて連帯感ができてくる」
「戦争の時はみんな自分を抑え、こらえた。戦には敗れたが、あの時の日本人の連帯感は美しい」
などとして、東京都民に事実上の「花見自粛要請」まで出してしまう始末です↓
http://megalodon.jp/2011-0331-2005-28/www.sankeibiz.jp/macro/news/110330/mca1103302006015-n1.htm
この手の「自粛」が横行する真の理由が、実は「被災者に対する配慮」などではなく、打算・自己保身・自己満足の類の言い換えでしかないことは、当ブログでも何度か指摘してきました。
東京都をはじめとする関東地方で「自粛」が掲げられる理由はもう少し事情が異なりますが、それでも「被災者に対する配慮」が真の理由でないことには変わりありません。
8月に開催予定だった東京湾大華火祭の中止が発表された際にも、表向きの理由としては確かに「被災者への配慮」が掲げられていました。
しかし実際には、警察や消防他との安全上の調整が困難を極めることや、公共交通機関を動かすための電力が不足するという、極めて散文的かつ事務的な事情の方が大きかったのだそうです。
それならば何故、イベントを中止する本当の理由を正直に言わないのでしょうか?
企業や団体、そして地方自治体などといった大きな組織が公然と「自粛」を口にすれば、個人やその他の組織もそれに追随するようになり、ウソの口実があたかもブームであるかのごとく社会に蔓延するようになってしまいます。
本来震災の被害に遭わなかったはずの西日本や北海道でさえ、関東地方を「震源」とする「自粛」ムードが広がっており、あまつさえ「自粛」をしないと何か悪いことでもしているかのごとき「空気」が大手を振ってまかり通っているのです。
こういう時こそ非被災地が中心になって経済を回さなければならないはずなのに、このような「空気」の蔓延は経済活動を悪戯に阻害するだけで、百害あって一利なしでしかありません。
他ならぬ被災者ですら「自粛」よりも「援助」をこそ望んでいます。
打算・自己保身・自己満足に加えて欺瞞の産物ですらある「自粛」のどこにマトモな存在価値があるというのでしょうか?
イベントを何らかの理由で中止にしなければならないのであれば、「被災者への配慮」などというウソの口実ではなく、本当の事情を「公に」説明すべきです。
多摩武蔵守
今朝の産経新聞で、このテーマに関する論考を見つけました。
「立命館大の門田幸太郎教授(社会心理学)は『計画停電も実施され、電気を使用することで周囲に迷惑をかけているうしろめたさもあり、空前の自粛ムードにつながった。さらに日本人特有の『右へならえ』の心理も働き、拡大したといえる』とした上で、「ただそれが長期化すると、被災者が『自分たちが迷惑をかけている』と思うようになる」と指摘。『合理的判断に基づくもの以外、感情的な自粛はむしろ必要ないのではないか』と話している。」
http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/110401/dst11040122210075-n2.htm
「立正大の斉藤勇教授(社会心理学)は自粛ムードを『同じ日本人が苦しむ中、自分だけ楽しんでいいのかという“やましさ”の影響が大きい』と指摘。『こうした日本人としての連帯意識の強さは絆とも言い換えられ、決して悪いことではない。今後はそれを復興に向けた力に置き換えていく必要がある』と話している。」
http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/110401/dst11040122250076-n2.htm
上記の記事では浅草の三社祭中止に賛否の声が寄せられ、6割賛成だったと書かれています。
またある食品メーカーでは「被災地に食べ物がないときに、食品のCMはできない。CM再開がイメージダウンにつながれば、本末転倒だ」と嘆いたということです。
これらのことを、反証がないのでさしあたって正しいという前提で進めると、自粛ムードがこれだけ広がったのも、一般社会にそれを受け入れる下地があり、社会的合意があるということでしょう。
冒険風ライダーさんのように自粛ムードに異を唱える人も少なからずいますし、私も賛成ですが、「自粛」が「打算・自己保身・自己満足に加えて欺瞞の産物」と断ずることはできないのではないかと考えます。
それよりは「連帯意識を復興に向けた力に置き換えましょう。石原都知事にもそう言って欲しかった」というような語り口の方が、説得力を持てるのではないかと考えます。
さいごに、いつもコメントに丁寧なお返事を返して下さり、ありがとうございます。