映画「神様のカルテ」感想
映画「神様のカルテ」観に行ってきました。
医師でもある夏川草介原作の同名小説をベースとした、地方医療における現実と患者の心の問題を描いたヒューマンドラマ系の作品。
物語の舞台は長野県松本市。
ここにあるそこそこ大きな総合病院である本庄病院で多くの患者を診る勤続5年の若き医師・栗原一止が主人公となります。
序盤の栗原一止は、表情というものがほとんどなく、目は虚ろで勤務中にしばしば独り言を呟き、さらには患者に対して淡々と事務的に対応しているかのような人物として描かれています。
重度のガン患者のひとりが危篤状態に陥った際も、その対応は事務的かつ淡々としたもので、その態度を新人の女性看護師・水無陽子に罵られていたりしています。
また、女性看護師が昼食に誘ったりする際も、「私には妻がいるから女性からの誘いには乗らないようにしているんだ」などという理由で断ったりするような「現実離れした堅物」的な一面も持ち合わせています。
その妻である栗原榛名は、作中でも長野の山々を撮影しているボランティア?の山岳写真家。
非常に良く出来た奥さんで、医師稼業で多忙を極めている夫を陰に日向に支える妻として描かれています。
趣味的には全く噛み合いそうにない上にお互い積極的でもなく、しかも恐ろしく堅物そうなあの2人が一体どうやって出会い、結婚にまで至ったのか、正直興味をそそられるところではありましたねぇ。
作中ではそのあたりの事情については全く語られませんでしたし。
まあWikipediaによれば、2人は結婚前も現在も居住している御嶽荘の住人同士という共通項があったそうなので、その縁から始まった夫婦関係ではあるのでしょうけど。
そんなある日、栗原一止にひとつの転機が訪れます。
本庄病院の消化器内科部長で栗原一止の上司でもある医師・貫田誠太郎が、信濃医科大学の研修に参加するよう栗原一止に勧めてきたのです。
勧められるがままに信濃医科大学の研修に参加した栗原一止は、大学の教授でその道の権威として知られる高山秀一郎にその医療技術を見込まれ、大学病院で勤務してみないかと誘われることになります。
より高度な最先端の医療技術を研究することが可能となる、万全の医療体制でより多くの患者を救うことも出来、もちろん自身の立身出世の道も開かれると、まさに良いことずくめの誘いであり、同僚で栗原一止の先輩である砂山次郎もまた誘いに乗るよう強く勧めてきます。
しかし、研修の最中に診断したひとりの女性の存在が、栗原一止のその後の動向に大きな影響を与えることになります。
安曇雪乃というその女性は、大学の研修では既に手の施しようがない末期ガン患者という方向で話がまとまっていきます。
そして、大学での研修を終え、再び本庄病院での勤務に勤しむ栗原一止の元に、如何なる理由でか栗原一止を探していた安曇雪乃が訪れるのです。
信濃医科大学病院で余命半年の末期ガンであると宣告された上に「その間に自分がやりたいことをやりなさい」と見捨てられたことを語る彼女に、栗原一止は「次の外来はいつにしましょうか?」と優しく語りかけるのでした。
それ以降、栗原一止は治癒の見込みがない安曇雪乃を本庄病院に受け入れるのですが……。
映画「神様のカルテ」では、患者の心の問題に医者がどのように接していくべきかについて、主人公が思い悩む姿が描かれます。
高度な技術力と的確かつ冷徹な判断力・決断力のみならず、患者の心の問題についても向き合っていくためのスキルを要求される上、医療関係者が最善の限りを尽くしても手の施しようがなく死んでしまう患者だって当然いるわけですから、医師という職種はなかなか難しいものがあります。
それだけでなく、診療しなければならない患者の許容量がオーバーしてしまい、重症患者を「たらい回し」しなければならない事態が発生することもありますし、そんな状況で患者が死んだ場合でさえ、遺族から罵倒どころか訴訟を持ち込まれることすらあるのです。
作中でも急患が受け入れられないと栗原一止が決断したり電話で話したりする場面がありましたし、「35時間連続労働」などという労働基準法を盛大に違反しているような問題を、現場の医師達がごく普通のことであるかのように話している場面があったりします。
主人公が医療現場の現実に悩み苦しむのも当然といえば当然ですね。
ただ、本当に医療問題の救いようがないところは、そういった多大な問題を抱え込んでいる日本の医療事情でさえ、世界的に見れば実は世界最高水準を誇っているという点なのですけどね。
大金持ちしかマトモな診療が受けられないアメリカ(1日の入院費用が数千ドル単位、個人破産の理由第一位が医療費等)や、診療までに恐ろしく時間がかかるイギリス(救急病院の待ち時間でさえ数時間以上はザラ、重症患者の入院・手術などは半年以上待ちが当たり前等)などの医療崩壊の実態は日本の比ではありませんし。
アメリカやイギリスにしてみれば、「神様のカルテ」で描かれている医療現場など「大多数の患者にとってありえない非現実的な理想郷」でしかないでしょうね。
日本以外の他国の人間がこの映画を観たらどんな感想を抱くのか、是非とも知りたいところではあります。
作中の描写の問題点としては、栗原夫妻が居住している御嶽荘の面々が突然のように現れるため、彼らの人間関係を理解するのに最初は苦労することが挙げられるでしょうか。
話が進むにしたがい、栗原夫妻と彼らが長年の親しい関係にあるらしいことは分かってくるのですが、原作を知らない私としては「この人達って誰?」「何故同じ屋根の下で一緒に暮らしているの?」と疑問符ばかり出ていました。
御嶽荘という住居自体、最初は「奥さんが経営している旅館か?」とすら考えていたくらいでしたし。
ただでさえ医療現場の描写に重点が置かれている中でこれらの事情をも一緒に説明するのは難しかったのでしょうし、それが学士との別れのシーンの感動を薄めるものではないのですが、その辺についてのフォローがもう少しあれば世界観の理解もしやすかったのではないかと。
ストーリーの路線としては、映画「星守る犬」のような「悲劇を伴うが未来に希望が抱ける感動ドラマ」に近いものがありますね。
作中に犬は全く出てきませんが(^^;;)。
そういう作品が好きという方であればオススメです。
サクラ
嵐、櫻井翔の神様のカルテを見て、とてもすばらしい作品出した。友達も感動で泣いてしまいました。
とてもお進めデス!ぜひ見て下さいネ!