映画「DOG×POLICE 純白の絆」感想
映画「DOG×POLICE 純白の絆」観に行ってきました。
警備犬と警察官が互いに成長しつつ、警視庁を震撼させる連続爆破事件に挑む姿を描いた作品。
今作は、映画料金一律1000円で観賞できるファーストデー(映画の日)での観賞となりました(^^)。
物語は、多くの人で賑わう大型ショッピングモールで、ゴミ箱に設置されていた爆弾が爆発するシーンから始まります。
死亡者1名と多くの負傷者を出す騒ぎに発展する中、警察による厳戒態勢が布かれ、現場に近づこうとする野次馬を抑えるために多くの警察官が動員されることになります。
その中の警察官のひとりである主人公・早川勇作は、群がる野次馬の中に不審な人物を発見します。
自分と目が合うや否や突然逃げ出したその人物を、早川勇作は後先考えず自分の持ち場を無断で抜け出して追跡行を開始します。
何とか不審人物を追い詰め、公務執行妨害の現行犯で捕まえることに成功したものの、不審人物との取っ組み合いの最中、たまたま自転車でその場を通りかかった通行人が巻き添えになり怪我をしてしまうというアクシデントが発生してしまいます。
通行人が怪我をしていることを確認し、そのことに責任を感じざるをえなかった早川勇作はすぐさま救急車を呼ぼうとしますが、通行人は「もうすぐ赤子が産まれるから…」という理由でその申し出を拒否します。
早川勇作が通行人を乗せた自転車をこぎ、辿り着いた目的地では、しかし出産は出産でも人間ではなく犬のそれが行われようとしている場面でした。
実は件の通行人は獣医さんだったわけですね。
出産の場では早川勇作も手伝わされる形で、3匹の仔犬が健康体で無事に出産されます。
しかし、そこで獣医が母親犬の様子を確認すると、さらにもう1匹、母親の胎内に引っかかっている仔犬が確認されました。
何とか仔犬は母親の胎内から引きずり出されたものの、他の黒い仔犬と違って皮膚の色が白く、その上呼吸もしていなかった状態であり、獣医と母親犬の飼い主らしき人物は「これは死んだな」と諦めムードに入ってしまいました。
しかし早川勇作は諦めることができず、人工マッサージもどきな行為を繰り返すことでその白い犬の蘇生に成功します。
これが、早川勇作と後のアルビノ犬シロとの最初の出会いでした。
早川勇作が取っ組み合いの末に捕まえた不審人物は、結局件の爆破事件とは何の関係もなく、さらに早川勇作は独断専行について上司から厳重注意を受け始末書を書かされることになります。
それからしばらくして早川勇作は、それまで所属していた部署から、警視庁警備部二課装備第四係、通称「イヌ屋」への配置転換を命じられます。
そこでは、災害救助や犯人の制圧行動を主な任務とする「警備犬」の育成と訓練をメインとする部署でした。
警備部所属の「警備犬」は、刑事部鑑識課の所属で犯人の足跡調査などといった捜査の支援を主な役割とする「警察犬」とは明確に区別されるということが、作中でも説明されています。
しかし、犯人逮捕を志していた早川勇作にとって「イヌ屋」の仕事は熱意を失わせるに十分なもので、ついに彼は「イヌ屋」こと警視庁警備部二課装備第四係の係長である向井寛に土下座まで刑事部に戻すよう懇願までする始末。
しかし向井寛の口からは、早川勇作の独断専行と協調性のなさが刑事部側で問題視され「こいつはいらない」と評されていた事実が無情にも告げられ、早川勇作は前途の暗さに絶望することになるのでした。
そんなある日、向井寛は早川勇作を連れ、早川勇作が育成・訓練するための警備犬、通称「バディ」をあてがうための犬を選出します。
その犬は何と、物語冒頭で早川勇作が生命を助けたアルビノ犬シロだったのです。
嗅覚が鋭い母親の血統を受け継いでいるシロは、アルビノ(劣性遺伝)というハンディを背負い、普通の犬並みの体力や持久力を持ち合わせていないことから「警備犬としては不適格」という評価が下されていたような犬でした。
不平満々な様子を見せながらも、早川勇作はシロを警備犬として育て上げるべく奮闘することになるのですが……。
映画「DOG×POLICE 純白の絆」を一通り観賞していて思ったのは、「この作品、ストーリー構成や設定が映画『岳-ガク-』にそっくり」というものでした。
特殊な仕事についての詳細かつ現実的な説明。
自分なりの理想をもって上司に反発して独断専行ばかりやらかした挙句、情け容赦のない現実を見せ付けられて挫折を味わう主人公。
その主人公に現実を見せ付ける役割を担う凄腕な実力を持つ教育係の存在。
上司の過去の出来事に纏わる上司とメインヒロインとの因縁めいた人間関係。
全て映画「岳-ガク-」にも存在する作品の特徴です。
特に、メインヒロインである水野夏希の父親がかつての上司で、かつその上司の娘を部下として迎え入れることになったという向井寛の過去話などは、聞いた瞬間に「岳-ガク-」で山岳救助隊をまとめていた野田正人のエピソードを連想してしまったほど全く同じパターンでした。
この作品、「岳-ガク-」をかなり意識して製作していたのではないか、とすら考えてしまったほどです。
ただ一方で、「DOG×POLICE 純白の絆」は「岳-ガク-」ほどには主人公の成長がきちんと描かれていないようにも見えましたね。
というのも、今作の主人公・早川勇作は「独断専行や協調性のなさ」から組織でハブられ、また物語中盤でも少なからぬ失敗を繰り返し、周囲からも散々に問題点を指摘され注意も受けているのですが、物語後半になってさえもその行動原理は全然改善されてなどいないんですよね。
爆弾を処理する際も、爆破事件の犯人を追い詰める際も、結局彼はひたすら周囲と連携を図ることなく独断専行を貫き通しています。
一番問題なのは、彼が独断専行的な行動を取る際、上司や他の同僚に対して無線通信で連絡を取るということすらもしていない点です。
作品は違いながらも、同じ警視庁警備部に所属しかつ独断専行も多かったSPシリーズの井上薫でさえ、上司や同僚達と密接に連絡を取り合って相互連携を図るシーンが少なからず盛り込まれていたというのに。
自分の状況はこうだからどうすれば良いかと上に指示を仰ぐ、という常識はもちろんのこと、「ただいま犯人を追跡中、現在○○地点から△△方面に移動中」のような状況報告すら、作中の早川勇作はほとんど行っていません。
緊急事態であり時間的な余裕もない、という事情もありはしたでしょうが、手を使わずに無線通信ができるわけですし、簡単な状況報告の類であれば走っている途中でも容易に行うことはできたはずなのですが。
最低限の状況報告さえ行っていれば、上層部だってバカではないのですから後詰の支援や援軍の派遣程度のことは充分に行えるでしょうし、そういうことはむしろ非常時で失敗が許されない状況「だからこそ」しっかりやっておく必要があるものだったでしょうに。
物語のラストで早川勇作が重傷を負った際でも、現在位置を知らせる連絡を早川勇作がちゃんと行っていれば、シロがあんな無駄に走る手間も必要なく、また水野夏希に危険な作業をさせることもなく、より安全確実に味方からの救助を受けることができたはずです。
そう考えるとラストのアレも、主人公の「独断専行と協調性のなさ」の結果としての自業自得としか言いようがなかったのではないかと。
「岳-ガク-」の成長要素が「現実の直視」と「非情な決断力」だったのに対し、「DOG×POLICE 純白の絆」では「周囲との協調性」が何度も強調されていたことが、成長物語としての評価の違いを生んだのでしょうけどね。
作品のテーマ自体は決して悪いものではなく、またアクションや迫力ある描写もまずまずの出来ではあっただけに、成長物語としての部分をもう少し練りこんで欲しかったところですね。
藤岡真
アルビノは先天的にメラニン色素が欠乏する遺伝子疾患ですが、「劣性遺伝」ではありません。
「劣性遺伝」の「劣性」とは「形質」の劣性ではなく、「発現」しにくいという意味での劣性です。以前、『メタルギア・ソリッド』で双児のスネークに関して、ソリッドが優性、リキッドが劣性の遺伝子を持って生まれたという誤った設定で、問題になったこともあります。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8A%A3%E6%80%A7