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2次創作「銀河英雄伝説~新たなる潮流」の主人公人物評

銀英伝の2次創作小説「銀河英雄伝説~新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)」。
銀英伝の大ファンだったという日本人の佐伯隆二(25歳)が、何故か銀英伝世界に転生し、銀英伝の原作知識を持ったエーリッヒ・ヴァレンシュタインとして活躍するという、いわゆる「紺碧の艦隊」系架空戦記的な歴史改変を売りにした作品です。
小説一覧はこちら↓

銀河英雄伝説~新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
http://ncode.syosetu.com/n4887n/

本編は2012年2月11日現在、未だ未完結ながら総計239話にも及ぶ大長編で構成されており、またその内容や銀英伝原作に関する考察は、賛否いずれにせよ、銀英伝を詳細に読み込んだ上で練られていることがよく分かります。
銀英伝ファンか、あるいはタナウツの主旨に賛同できる人間であれば、まず読んでみて損はない2次創作作品であろうと思います。

ただ、人物評も人それぞれで千差万別であることを承知の上で言わせてもらうと、個人的にはこの作品の主人公であるエーリッヒ・ヴァレンシュタインという人物にはまるで共感も好感も抱けない、というのが正直なところだったりします。
そう思うようになった最初のきっかけは、作中におけるヴァレンシュタインの対人コミュニケーション能力がとにかく悪すぎることにあります。
作中のヴァレンシュタインは、その原作知識に基づいた事件や戦争の処理能力から、上司となる人物から何かと頼られることが多いのですが、それに対してヴァレンシュタインは表面的な礼儀作法すらもマトモにこなしている形跡がなく、不平満々な態度を相手の前で堂々と曝け出したりしています。
それどころか、平然と貴族に対して銃口を向けたり、後半になると門閥貴族の面前で堂々とゴールデンバウム体制批判まで展開したりしていますし。
銀英伝の原作設定から考えたら、不敬罪だの大逆罪だのといった罪を着せられて何度処刑台に直行してもおかしくないほどの言動を披露しているにもかかわらず、上司側はそれに対して特に問題視することもなくヴァレンシュタインを重用し続けるんですよね。
好き勝手に振る舞うヴァレンシュタインを受け入れられるほどに上司(リヒテンラーデ候や帝国軍3長官の面々)の人間性ができているのは、原作から乖離し過ぎているのみならず、ヴァレンシュタインの歴史改変とも全く無関係に発生しており、何故彼らの性格設定がこれほどまでに変わっているのかについての理由説明すらもありません。
まず、この構図自体が全く納得できませんでした。

次に引っかかったのは、ヴァレンシュタインがやたらと「奇麗事」にこだわる信念を披露する一方で、自身は謀略に邁進していたこと。
ヴァレンシュタインは、同盟軍に大打撃を与えることに成功した銀英伝原作1巻の同盟軍帝国領侵攻作戦における焦土戦略を「政治的なマイナス面の影響が大きすぎる」と採用せず(第99話)、またその後のリンチを使った原作の救国軍事会議クーデター絡みの謀略を「捕虜交換は紳士協定」だの「人道」だのといった言葉で否定しています(第136話)。
しかし、その前のイゼルローン要塞攻防戦でヤンに自分を消すための謀略を仕掛けられたことに激怒した挙句に同盟相手に謀略戦を展開し、原作同様の帝国領侵攻作戦を行わせたのは他ならぬヴァレンシュタイン自身ではなかったのでしょうか?
しかも第89話の最後では、「お前が俺を殺すために三百万の人間を殺すのなら俺がお前を殺すために三百万の人間を殺してもお前は文句を言えまい。お前が一番嫌がることをやってやる」などとヤンに対する個人的な怒りから大量の人間を殺す宣言までやらかす始末だったんですよね。
自分はこういうことを平気で明言した上に実行までしておきながら、同盟にクーデターを起こさせようとラインハルトが提言したら「紳士協定」だの「人道」だのを並べて拒否するって、それは自分だけを特別扱いしているタチの悪いダブルスタンダード以外の何物でもないでしょう。
謀略を否定するにせよ肯定するにせよ、自分と他人で一貫して同じ論理を適用するのであれば、まだヴァレンシュタインの言動は筋が通っていたのですが、これでは単に自己利益に基づいたその場その場の御都合主義でしかありません。
個人的な復讐心から千万単位の人間を殺すのは「紳士協定」だったり「人道」だったりするのでしょうかね、ヴァレンシュタインの論理では。

で、作中におけるヴァレンシュタインは、原作知識に基づいてラインハルトが抱える諸問題の数々をモノローグで指摘していたりします。
それ自体はタナウツでも過去に指摘されていたものもあって、それなりの説得力はあるのですが、上記2つの問題を鑑みると、さすがに「お前が言うな!」とは言いたくもなってくるんですよね。
ヴァレンシュタインはどう見てもラインハルトと同等、下手すればそれをも上回る人格破綻者ですし、それが周囲に受け入れられているのは、それが周囲にとっても利益をもたらしたことと、何よりも原作から著しく乖離している上にヴァレンシュタインの言動と歴史改変とは何の関係もない原作キャラクターの性格改変の産物によるものでしかないのです。
それに加えてヴァレンシュタインには、絶対的な預言書とすら言える原作知識という必勝の武器まで備わっています。
ここまでヴァレンシュタイン個人の才覚とは全く無縁なところで確立されている御都合主義的な絶対優位を前提に、それを持たない他者に、あたかも絶対に到達しえない高みから見下ろし神の鉄槌でも打ち下すかのような論評を繰り広げるヴァレンシュタインの態度は、どうにも受け入れ難いものがあります。
せめてあの上司達の設定が原作のままで、それをヴァレンシュタインが己の力と謀略と社交辞令の限りを尽くして心酔させていった、とでもいうのならばまだ共感もできたのですけどね。
自分の立場がどれほどまでに恵まれ、他者からは羨望されるものであるのか、ヴァレンシュタインはほんの少しでも考えたことがあるのでしょうか?
作中の言動を見ても、ひたすら被害妄想一歩手前レベルの被害者意識ばかりが前面に出ている始末ですし、自省という言葉ともかなり縁遠い性格をしていますからねぇ(-_-;;)。

また、これはずっと疑問に思っていたことなのですが、どうしてヴァレンシュタインは、自身の知識や戦略の出所、すなわち「自分が転生者であるという事実」を誰にも明かそうとしないのでしょうか?
全宇宙に向けてその事実を大々的に公表するわけはさすがにないにせよ、「これは信頼できる」と判断した1人~極少数の人間にその事実を伝えることで自分の利用価値をアピールしたり適切な助言をしたりする、という選択肢は、むしろない方が却って不自然なのではないかと思うのですが。
ヴァレンシュタインを取り巻く周囲の人間達は、ヴァレンシュタインの才覚に感嘆し頼りにする一方、その神がかり的な予見力に一種の恐怖心すら抱いていました。
ラインハルトやキルヒアイスなども、ヴァレンシュタインのその才覚に恐れを抱いたひとりでしたし、それを恐れるが故に彼らはヴァレンシュタインと反目する羽目になったわけです。
しかし、もしヴァレンシュタインが最初からラインハルトとキルヒアイスに「転生者である自分の事実」を教えていたら、すくなくとも2人はヴァレンシュタインに対して「得体の知れない恐怖」を抱く必要はなくなったはずですし、未来を知りえるヴァレンシュタインの力を利用することで利害関係が成立し、そこから相互信頼を得ることだってできた可能性もあります。
もちろん、最初は当然の反応として「こいつ気は確かか?」「正気か?」的な奇異な目で見られるでしょうが、本来誰も知りえない原作の事実などを当ててみせたり、原作知識に基づいた未来予測を披露したりすれば、相手だって最終的には納得せざるをえないでしょう。
現にヴァレンシュタインはそういう「神がかり的な予測」を作中で何度も披露しているのですから、なおのことその信憑性は高くなるはずです。
しかも未来を知るヴァレンシュタインは元々ラインハルトに仕えるつもりだったわけですからなおのこと、信頼の証として自身の秘密を打ち明けても良かったのではないかと思えてならないのですが。
ところがヴァレンシュタインは、作中の極々親しい人間に対してさえ、自身の転生の秘密を全く明かそうとしないどころか、そもそもほんの一瞬でも考えた形跡すらもないんですよね。
実はヴァレンシュタインって、一見外面の良い友好的な雰囲気に反して、自分以外の人間を一切信頼も信用もしてなどいないのではないか、とすら考えてしまったくらい、頑ななまでに秘密主義に徹し過ぎているのですが。
この辺りも、ヴァレンシュタインの対人コミュニケーション能力に致命的な問題があると私が考える理由のひとつだったりします。

ヴァレンシュタインを見ていると、どうも私は創竜伝の竜堂兄弟を想起せずにはいられないんですよね。
むやみやたらに自己防衛本能が強すぎる、他人を全く信用せず傍若無人に振る舞う、謀略を全否定して夢想的な3流ヒューマニズムを信奉する、全く同じことを自分がやるのはOKだが他人がするのはNGというダブルスタンダード。
全て竜堂兄弟が持っている人格的・思想的な欠陥ですからねぇ(苦笑)。
性格自体もあの兄弟4人のそれを全て合体させたかのようなシロモノですし。
まあ唯一、竜堂兄弟が持つ何よりも最悪の致命的欠陥である「反対しながら代案がない」とだけは無縁なのがせめてもの救いではあるのですが。

あと、エーリッヒ・ヴァレンシュタインの転生元である佐伯隆二という人物は、作中で披露している「原作知識」を見る限りでは、原作小説版ではなくアニメ版のファンだったみたいですね。
カストロプ星系の「アルテミスの首飾り」のエピソードやクラインゲルト子爵領の話なんて、当然のごとく原作小説版には全くありませんし。
そして、だからこそヴァレンシュタインは、作者である田中芳樹という存在に束縛されることなく、アレだけの原作考察ができるのではないかと。
ひょっとすると佐伯隆二は、銀英伝の原作者が田中芳樹であるという、ある意味最も基本中の基本である「原作知識」を知らなかった可能性すらありえます。
創竜伝やアルスラーン戦記などの他の田中作品は一切引き合いに出されていませんし、それどころか田中芳樹の「た」の字すらも全く出てこないのですから。
「絶対作者はそんな細かいことまで考えてねぇよ」と言いたくなるほどの内容ですからねぇ、ヴァレンシュタインの原作考察は。

かくのごとく、主人公には全く共感も好意も持ちようがないのですが、それも含めた総体としての「ひとつの物語」としては読み応えのある面白い作品ではあるので、今後とも注視していきたい2次創作シリーズではありますね。

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コメント

黒犬13号

本文未読ですから先入観でしかないのかもしれませんが、
典型的なメアリー・スーって感じですねえ。

http://ja.wikipedia.org/wiki/Mary_Sue

佐伯隆二というのは思いっきり作者の自己投影なんじゃないか、と。

  • 2012/02/12 10:50:00

冒険風ライダー(管理人)

>黒犬13号さん
ただ作中で披露されている原作についての考察や物語進行については、賛否いずれにせよ原作をよく読んだ上で練りこまれているものではあります。
タナウツの閲覧者であればかなり楽しめるであろうことは請け合いです。

ただ、本質的に人格破綻者であるヴァレンシュタインを寛大に受け入れさせ出世させていくために、原作キャラクターの性格を意図的に改竄しているところが唯一「惜しい」と言えるところですね。
ヴァレンシュタインのいる「銀英伝世界」というのが、原作(およびアニメ版)に基づいた「本当の銀英伝世界」であるようには見えないのが何とも……。
別にヴァレンシュタインがいなくても、原作からの歴史改変が普通に起こりえそうに思えてなりませんからねぇ、アレでは。

S.K

「気高いリップシュタット同盟」に笑いつつ、あれならゴールデンバウム王朝は中興してもいいんじゃないかという気分になりました。
「旗色が悪いにもかかわらずラインハルト一点賭けで
ゴールデンバウム王朝打倒を画策するオーベルシュタイン」というのもかなりシュールというか不条理というか。
ただ逆に
>「お前が俺を殺すために三百万の人間を殺すのなら
>俺がお前を殺すために三百万の人間を殺してもお前
>は文句を言えまい。お前が一番嫌がることをやって
>やる」
は、まあ敗将の激昂として3巻のミュラーもやったので
見逃しても良い気はしました。
総合的な感想としては「初志貫徹してラインハルトに
仕えていれば格好がついたのに方向間違ったなあ」
という感じですね。

冒険風ライダー(管理人)

>S.Kさん
> 「気高いリップシュタット同盟」に笑いつつ、あれならゴールデンバウム王朝は中興してもいいんじゃないかという気分になりました。

確かに無用なまでに高潔過ぎましたからねぇ、アレは(苦笑)。
ただ、特定の登場人物の性格を改変していること自体もさることながら、その性格改変が一体どのような基準に基づいて行われているのかが不可解すぎるのは正直どうかとは思うのですが。
ブラウンシュヴァイク公やフレーゲル男爵などがやたらと高潔になっている一方、ランズベルク伯やフォーク准将などはほぼ原作設定のままだったりとか。
貴族達の性格を変えるのであれば全員の性格を変えてしまい「貴族達は全て有能かつ識見がある」みたいな感じにしても良いはずなのに、貴族全体の傾向自体は原作通りだったりしますし。
ヴァレンシュタイン贔屓の神(作者)の恣意性がこれほど露骨に出ているところもそうはないよなぁ、と。

> まあ敗将の激昂として3巻のミュラーもやったので
> 見逃しても良い気はしました。

ミュラーの場合は元々「用兵家としてのヤンおよび実績」は高く評価していましたし、ヤンと直接対面して印象を変えたという描写もある(銀英伝5巻P234)のでまだ理解もできるのですが、ヴァレンシュタインの場合はそうではないですからねぇ。
そもそもヴァレンシュタインは、第191話でキルヒアイスが自分を殺しに来て返り討ちにした際、

「謀略に卑怯などという言葉は有りません。謀られるほうが間抜けなだけです。卑怯と罵られるのは最高の褒め言葉ですよ。それだけ相手を悔しがらせたという事ですからね」

とまで明言してのけているのに、それを自分自身には全く適用してなどいないのですから。
この論理に従えば、第89話でヤンを「そこまでやるのか」「復讐してやる」と罵り倒していたヴァレンシュタインは実はヤンを最高に賛辞していたことになってしまうのですが、当然そんなことには全く気づいてもいないでしょうね、彼は。
自分の利害が絡むと、自分の信念も持論も投げ捨てて自己防衛を優先した挙句、「俺は悪くない、全て他人が悪いんだ」と必死になって自分を説得するのがヴァレンシュタインという人間らしいので。
最近作者が集中的に書いている「亡命編」などは、そのヴァレンシュタインの本性が露骨なまでに出ていて、もう笑うしかないというか……。

> 総合的な感想としては「初志貫徹してラインハルトに
> 仕えていれば格好がついたのに方向間違ったなあ」
> という感じですね。

ラインハルトとヴァレンシュタインが仲違いした最大の理由は、ヴァレンシュタインが自身の秘密をラインハルトに話さなかったことにあると思うのですけどね、私は。
それが結果的に、ラインハルトとキルヒアイスにヴァレンシュタインへの恐怖心を抱かせたわけで。
最終的に信じてもらえる方法なんていくらでもあるのですから、ヴァレンシュタインが自身の秘密を誰にも話してはならない理由などどこにもないはずなのですけど。
そんなに後生大事に自分ひとりだけで抱え込んでいなければならないものなのですかね、たかが「原作知識」とやらが。

banラーメン

 初めて書き込みをさせて頂きます。
 楽しくヴァレンシュタイン氏の考察を拝見させて頂いています。

 この2次創作小説は、原作を読み込んでいる読者にはニヤリとさせられるものがありますが、私は途中で読むのをやめてしまいました。今はまた、さらりと当たり障りの無い部分だけ、読んでいる感じです。

 あまりにも原作から離れ、原作のキャラの肉付け部分が改変されてしまい、もはや『銀河英雄伝説』とはまったくの別物だと思ってしまったからです。私だけではなく、ファンが多い小説に突っ込みを考えている方がいるのだなぁと、ホッとさせて頂きました。

 今は、まったくの別物だと思って読んでいますが。あれだけ政府の高官(文官で明らかに核上の相手)に無礼千万しておいて、他の文官から恐れられないって事はないでしょうに。リヒテンラーデ侯が指摘していましたが、このままではあらゆる意味で政治が曲がってしまいますね。軍部の元帥一人の顔色を伺って政治を取らねばならない状況に追い込まれていても、当人だけはわかっていない(笑)たぶん、この世界のフリードリヒ陛下はわかっているのでしょうね。

 大人がフォロー、『人罪』になりそうなヴァレンシュタイン氏を、『人財』たる宰相へと導く。これってありえないと思いながらも、それがまかり通ってしまうのが、この物語の恐ろしさ。こんな国には生きていたくないですね。もはや専制君主国家でもなく、ヴァレンシュタイン愛護団体にこのごろは見えます(汗)

 ヴァレンシュタイン氏の物語の対極だと個人的に思う作品もあります。アルカディアの『蝶は羽ばたいた』。転生者がひたすら黒子に徹し、原作知識を利用してどうにか、戦争の被害を無くそう。主要人物たちの死亡を無くそうと裏で走り回ります。これほど主要人物の死亡(原作においての)が少ない作品は私、近年読んだ事がありませんでした。もうお読みかもしれませんが。参考までに紹介させて頂きます。

  • 2012/06/29 14:03:00

冒険風ライダー(管理人)

>banラーメンさん
こちらこそはじめまして。
よろしくお願い致します。

>  あまりにも原作から離れ、原作のキャラの肉付け部分が改変されてしまい、もはや『銀河英雄伝説』とはまったくの別物だと思ってしまったからです。私だけではなく、ファンが多い小説に突っ込みを考えている方がいるのだなぁと、ホッとさせて頂きました。

私もあれには最初大きな違和感を覚えていた部分でした。
あの程度のことで老齢な登場人物達の性格設定が簡単に変わったりするわけないだろう、と私も散々ツッコミを入れていたものでしたし。
まあしばらくして、「こういう前提の話なのだから仕方がないか」と不承ながらも割り切らざるをえませんでしたが。

> あれだけ政府の高官(文官で明らかに核上の相手)に無礼千万しておいて、他の文官から恐れられないって事はないでしょうに。リヒテンラーデ侯が指摘していましたが、このままではあらゆる意味で政治が曲がってしまいますね。軍部の元帥一人の顔色を伺って政治を取らねばならない状況に追い込まれていても、当人だけはわかっていない(笑)

ヴァレンシュタインって、「上司にそういう態度を取ることで自分が罰せられるかもしれない」という発想がまるでないんですよね。
ある程度地位が上がってきた頃ならともかく、序盤から中盤にかけては門閥貴族のような権力やコネクションがバックについていたわけでもなく、徒手空拳も同然の状態だったというのに。
あの好き勝手な態度の淵源については、いくら作中の記述を調べても全く何も出てこないんですよね。
だから私としては、「神(作者)の祝福」だの「神(作者)の奇跡」だのといった概念を持ってこざるをえないわけなのですが。

> こんな国には生きていたくないですね。もはや専制君主国家でもなく、ヴァレンシュタイン愛護団体にこのごろは見えます(汗)

その表現はまさに「本編」における帝国にピッタリですね(苦笑)。
「亡命編」の同盟はもっと深刻で、地球教もビックリのヴァレンシュタインを崇め奉る神権国家と化している感すらありますが(爆)。
そのうちヴァレンシュタインを神格化するための巨大な銅像でも作られて、ニュースなどで「我が国の神聖にして偉大なる鋼鉄の名将…」とか言い出したりするのではないかなぁ、と(笑)。

犀藤

>表面的な礼儀作法すらもマトモにこなしている形跡がなく
「形跡がなく」とまで言うと嘘になりますね。
多分、帝都防衛司令官代理を努めた頃以降のことを仰っているのだと思いますが。
(それ以前は「余程育ちがいいのだろうか?」といわれるほど礼節を保っています)

>平然と貴族に対して銃口を向けたり
大義名分はあるんですが?
帝都防衛司令官代理が「叛乱者」に対してであったり、不敬罪を犯した者に対してであったり。

>後半になると門閥貴族の面前で堂々とゴールデンバウム体制批判まで展開
既にそれだけの権力を持っていますし、皇帝の承認の下に動いているのですが……。

>何故彼らの性格設定がこれほどまでに変わっているのか
これについては、幾つかに対しては想像がつく気もしますが、全てに納得できるかというとそうでもないですねw

>やたらと「奇麗事」にこだわる信念を披露する一方で
「奇麗事」ではなく、単純に政治的なデメリットがあるんだよ、という事なのではないかと。

>自分だけを特別扱いしているタチの悪いダブルスタンダード
「他人を殺せても自分が死ぬのはやっぱり嫌」、これは極自然な感情なんじゃないのかなあ……。
肉親を殺された事による、自己生存欲求の高さ……主人公の性格が合わなければ読まなきゃいいんじゃないのかと。

>絶対的な預言書とすら言える原作知識という必勝の武器
>個人の才覚とは全く無縁なところで確立されている御都合主義的な絶対優位
原作知識チートものが嫌いなら読まなきゃいいのに……と思うのは私だけなんでしょうかね?

>「自分が転生者であるという事実」を誰にも明かそうとしないのでしょうか?
普通カミングアウトしないものじゃないのかと……。
>むしろない方が却って不自然なのではないか
周囲にばらす方が不自然です。

>「得体の知れない恐怖」を抱く必要はなくなったはず
>相互信頼を得ることだってできた可能性もあります
その前に狂人だと思われたり、貴方のように周囲がチートする主人公を妬む可能性の方が大ですね。

>謀略を全否定して
してませんけど……。少なくとも「全否定」はしてません。

>「絶対作者はそんな細かいことまで考えてねぇよ」と言いたくなるほどの内容
創作に転生()した主人公が自己の置かれた状況を真剣に考察するのは当然じゃないのかと。命懸かってますし。

……「原作知識チートものは嫌いなんだよ!」の一言で済むんじゃないんですか?これ。

  • 2012/09/17 01:03:00

冒険風ライダー(管理人)

> 「形跡がなく」とまで言うと嘘になりますね。
> 多分、帝都防衛司令官代理を努めた頃以降のことを仰っているのだと思いますが。
> (それ以前は「余程育ちがいいのだろうか?」といわれるほど礼節を保っています)

教官や上司に対して普通なら言い難いであろう物事や自分の本心をズケズケと主張するあの態度は、どう見ても「表面的な礼儀作法」すら遵守しているとは言い難いものがあるのですが。
士官学校時代から一貫してそうだったじゃないですか。
表面的に敬語を使っているだけでは「礼儀作法に叶っている」とは到底言えたものではないですよ。

> 大義名分はあるんですが?
> 帝都防衛司令官代理が「叛乱者」に対してであったり、不敬罪を犯した者に対してであったり。
> 既にそれだけの権力を持っていますし、皇帝の承認の下に動いているのですが……。

原作「銀英伝」におけるゴールデンバウム王朝において、平民出身のヴァレンシュタインが貴族に対して容赦なく振る舞うこと自体がありえません。
原作のクロプシュトック侯の反乱の際、ミッターマイヤーが軍法に則ってブラウンシュヴァイク公の親類縁者を処断した件でさえ、不当な圧力が加わってミッターマイヤーは獄に入れられたのです。
平民出身という弱い立場のヴァレンシュタインに如何なる大義名分があろうと、それを権力や暴力で覆してしまえるだけの力が門閥貴族側にはあるのです。
ましてや、公衆の面前におけるゴールデンバウム王朝批判なんて、たとえ皇帝の後ろ盾があろうと「叛逆者」の烙印が押されその場で処刑されても文句の言えない所業です。
王朝に叛逆するものは皇帝個人の意思よりも優先して処断されなければならない、というゴールデンバウム王朝の国是は、原作でも普通に明記されているものなのですから。
そういう「ゴールデンバウム王朝の体質」や「力の論理」を無視した振る舞いができるヴァレンシュタインの言動そのものが、原作の設定から考えても明らかに異常なのです。

> 「奇麗事」ではなく、単純に政治的なデメリットがあるんだよ、という事なのではないかと。
> してませんけど……。少なくとも「全否定」はしてません。

同盟との捕虜交換の際、原作同様にそれを利用した内部分裂工作をラインハルトが提示した際、ヴァレンシュタインはこれ以上ないほどの綺麗事を並べ立ててラインハルトを罵りまくっていましたが……。
帝国領侵攻作戦やヴェスターラントの虐殺絡みのラインハルト批判についても、89話のヤンに対する「三百万虐殺肯定発言」や「亡命編」における諸々の所業を鑑みると空しい限りでしかありませんね。
ヴァレンシュタインがラインハルトの「思想や行動」を批判するのであれば、自分がそれと全く同じ「行動」に出ることを誰よりも戒めるべきなのではありませんか?
自分の利害が絡んだ途端に、自分が批判していた「行動」と全く同じことをやらかすというのではダブルスタンダード以外の何物でもないですよ。
そんなことをされたら、「じゃあ何故ヴァレンシュタインはラインハルトを批判しているの? どちらも【同じ穴のムジナ】でしかないのに」という根源的な疑問すら抱かざるをえないのですから。
ラインハルトを批判するために謀略を否定するのならば、自分についても同じように謀略を否定すべきですし、そうでないなら謀略を否定してはなりませんし、ラインハルトを「謀略否定」の観点から批判すべきでもありません。
自分ができず、またする気もないことを他人に押し付けるな、という至極簡単な話ですよ。
それをせず、その場その場の都合や自分の利害に基づいて態度を使い分けるからこそ、ヴァレンシュタインの言動は問題視されるのです。

> 肉親を殺された事による、自己生存欲求の高さ……主人公の性格が合わなければ読まなきゃいいんじゃないのかと。
> 原作知識チートものが嫌いなら読まなきゃいいのに……と思うのは私だけなんでしょうかね?

あなただけの考え方ではないでしょうが、それは同時に「臭いものに蓋」「事なかれ主義」的なものでもあるという自覚くらいは持っていて然るべきでしょう。
というかそれを言うならば、ヴァレンシュタイン伝の作者氏にだって、そこまでラインハルトや銀英伝が嫌いなら読まなければ良かったのに……と言えてしまうのではありませんかね?
まさか、そんな考えには賛同しないと思いますが……。

> 普通カミングアウトしないものじゃないのかと……。
> 周囲にばらす方が不自然です。
> その前に狂人だと思われたり、貴方のように周囲がチートする主人公を妬む可能性の方が大ですね。

「マブラヴ オルタネイティヴ」という作品では、未来から転生?してきた主人公の白銀武が、転生後の世界にいる香月夕呼に自身の秘密を包み隠さず話すというエピソードが普通にあったりします。
もちろん、最初は当然のごとく信じてはもらえなかったものの、当時は香月夕呼しか知りえなかった機密事項を披露したり、未来を予測したりすることで、彼は信用を獲得することに成功しています。
転生の秘密を話す際に重要なのは、「それが事実である」ことを如何にして証明するかにあります。
そして、ヴァレンシュタインの原作知識には、自身の転生が事実であることを証明できるだけの材料がいくらでも転がっています。
であれば、一時的に狂人と思われても、すぐさまそれを信用に変えることは充分に可能であるわけです。
信用を獲得しえるだけの材料も公算も充分にあるというのに、何故それを活用しないのか、それが不思議でならないのですよ。
ましてや、ヴァレンシュタインが元々ラインハルトに仕えるつもりだったのであればなおのことです。

> 創作に転生()した主人公が自己の置かれた状況を真剣に考察するのは当然じゃないのかと。命懸かってますし。

原作のキャラクター設定の多くが改変されている時点で、「この世界は原作銀英伝とは似て非なるものなのではないか?」程度のことくらいは考えてもらいたいものなのですけどね。
あそこまで原作とは似ても似つかないほどの設定改竄を行っていながら、銀英伝の二次創作を名乗られましてもねぇ……。

> ……「原作知識チートものは嫌いなんだよ!」の一言で済むんじゃないんですか?これ。

違います。
キャラクター設定の改竄や原作ではありえない政治理論など、原作知識やヴァレンシュタインの才覚以外の要素で物事が動きすぎるために「原作知識チート」としてすら成り立っていないというのが問題なのですよ。
私がしばしば「ヴァレンシュタインは神(作者)の祝福によって護られている」などと揶揄するのも、原作知識やヴァレンシュタインの才覚とは全く関係なしに、ヴァレンシュタインに都合良く動く珍現象があまりにも多すぎるからです。
「原作知識チート」なら「原作知識チート」としてきちんと描いてほしいものですよ、本当に。

犀藤

>教官や上司に対して普通なら言い難いであろう物事や自分の本心をズケズケと主張するあの態度は
>士官学校時代から一貫してそうだったじゃないですか

あの……本編でも外伝でも、士官学校当時に於ける教官との直接対話の描写なんて、本編第六話の校長室での会話以外存在しないんですけど。
貴方の脳内で補完された内容を持ち出されても困ります。

>平民出身という弱い立場のヴァレンシュタインに如何なる大義名分があろうと、それを権力や暴力で覆してしまえるだけの力が門閥貴族側にはあるのです。

ありません。
帝都防衛司令官代理であった時にはオーディンに於いて最大の戦力を有していましたし、
その後に於いてもリッテンハイム候やフレーゲル男爵を殺害したわけではないので、軍を完全に敵に回す(権威の問題です)リスクを犯すに足る動機が不足しているのです。
ミッターマイヤー少将(当時)のケースと単純に比較するのは無理があると思うのですが。

>ましてや、公衆の面前におけるゴールデンバウム王朝批判なんて、たとえ皇帝の後ろ盾があろうと「叛逆者」の烙印が押されその場で処刑されても文句の言えない所業です。

時系列が混乱してませんかね……。
というか本編では「公衆の面前におけるゴールデンバウム王朝批判」なんて箇所はありません。
「『少数の』『信頼できる部下の前での』発言」ではなかったのかと思いますけど。
どちらにしても、その時点では帝国軍の、そして帝国の実権をほぼ掌握済みなので、門閥貴族を今更恐れる必要はないのではないでしょうか。

>同盟との捕虜交換の際、(略)ヴァレンシュタインはこれ以上ないほどの綺麗事を並べ立ててラインハルトを罵りまくっていましたが……
>「亡命編」における諸々の所業を鑑みると空しい限りでしかありませんね

え? 本編に於ける発言と「亡命篇」に於ける言動が矛盾している事を非難されているのですか?
まあ、それはともかくとして、別に「亡命篇」でも紳士協定的な事を踏み躙ったりはしていませんが……。

>ヴァレンシュタインがラインハルトの「思想や行動」を批判するのであれば、自分がそれと全く同じ「行動」に出ることを誰よりも戒めるべき

「全く同じ『行動』」、これをもう少し厳密に定義して欲しいのですがね。
・謀略上の紳士協定破棄
・謀略による民間人大量殺人
・通常の軍事行動による大量殺人
これが貴方の中でごっちゃになっているので議論にならないのですよ。

>それは同時に「臭いものに蓋」「事なかれ主義」的なものでもある

違いますね。
貴方の精神の安定に配慮しただけです。

>ラインハルトや銀英伝が嫌いなら読まなければ良かったのに

この作品、銀河英雄伝説やラインハルトへのヘイトものでないと思いますよ?
原作でもラインハルトは完璧超人として描かれていた訳ではありませんし。

>香月夕呼に自身の秘密を包み隠さず話す
>香月夕呼しか知りえなかった機密事項を披露したり、未来を予測したりすることで、彼は信用を獲得することに成功

彼女凄い天才じゃなかったですかね……。
論理性を重んじる彼女と他の凡人の反応を一緒にされてもねえ……。

>転生の秘密を話す際に重要なのは、「それが事実である」ことを如何にして証明するかにあります

違います。全く違います。
転生の秘密を話す際に重要なのは、「話した後の安全性」です。
「素晴らしい能力を持った尊敬に値する人物」が「原作知識チートの凡人」に過ぎなかった、という事実を知った人間の反応は予測不可能です。
失望でしょうか、それまでの尊敬の念を裏切られた事への怒りでしょうか、「その原作知識があれば俺にだって……」という妬みでしょうか。
プライドの高いラインハルトなら尚の事です。

>「この世界は原作銀英伝とは似て非なるものなのではないか?」程度のことくらいは考えてもらいたい

これに関しては全面的に同意します。
「この世界でも」という言葉自体は実に数多いのですが……。
少なくとも相違点の発見により、原作知識が当てにならなくなった事への不安が描写されていなければおかしいですね。

>あそこまで原作とは似ても似つかないほどの設定改竄を行っていながら、銀英伝の二次創作を名乗られましてもねぇ……。

言い過ぎだと思います。
設定改変はブラウンシュバイク公爵、リッテンハイム侯爵などの(トリューニヒトはまだグレーだな……)一部の登場人物の性格などに止まっています。
それとも、原作設定を忠実に再構成した作品しか二次小説として認めないとの御意見なのでしょうか?

>原作知識やヴァレンシュタインの才覚以外の要素で物事が動きすぎる

この作品(本編)での御都合主義要素って、第1巡察部隊司令時代に密輸船と遭遇した事くらいだと思っております。
(あれがなきゃ、未だにオーディン周辺で第1巡察部隊司令をやっていた筈)

>ヴァレンシュタインに都合良く動く珍現象があまりにも多すぎる

何の事を仰っておられるのか些か分かりかねます。
(原作知識チートによって)多大な功績を挙げ、(原作知識チートによって)多くの才能に溢れた人材を登用した、私欲も無く冷静沈着な(まあ外からそう見えるだけなんですが)人間が、周囲から尊敬され評価されなかったらその方がおかしいのでは?

  • 2012/11/15 19:31:00

冒険風ライダー(管理人)

> あの……本編でも外伝でも、士官学校当時に於ける教官との直接対話の描写なんて、本編第六話の校長室での会話以外存在しないんですけど。
> 貴方の脳内で補完された内容を持ち出されても困ります。

本編9話にも、「帝国文官試験」に合格した士官学校の校長がヴァレンシュタインを何度も呼び出し、官僚にならないかと何度も執拗に勧められていたのを「兵站統括部でなければ任官しない」とまで言って押し切った、という記述があります。
これも「教官や上司に対して普通なら言い難いであろう物事や自分の本心をズケズケと主張するあの態度」には充分に該当するでしょう。
それにここでは、その手のスタンスがヴァレンシュタインに一貫して存在する事例が最低ひとつ提示できれば目的は達成できるわけで、既にひとつある時点で何の問題もないと思うのですが。

> ありません。
> 帝都防衛司令官代理であった時にはオーディンに於いて最大の戦力を有していましたし、
> その後に於いてもリッテンハイム候やフレーゲル男爵を殺害したわけではないので、軍を完全に敵に回す(権威の問題です)リスクを犯すに足る動機が不足しているのです。
> ミッターマイヤー少将(当時)のケースと単純に比較するのは無理があると思うのですが。

リッテンハイム候やフレーゲル男爵に銃を突きつけて脅す的な行為をやらかしている時点で、少なくともリッテンハイム・ブラウンシュヴァイクの両家から恨みや憎しみ等の負の感情を買っても文句は言えないでしょう。
そして彼らには実力も権力もそれなりにはあるわけですし、最悪「暗殺」や「謀殺」などといった行為を陰から駆使してヴァレンシュタインを排除するという危険性だって当然考慮しなければならなかったはずなのですが。
原作でも、外伝1巻でミッターマイヤーが艦隊戦の最中にコルプト子爵に襲撃された作中事実がありましたし、ベーネミュンデ侯爵夫人がたびたびラインハルトを襲撃していた問題もあったのですから。
権力・財力・暴力をある程度掌握している人間は、どんな理不尽な理由で攻撃してくるか分かりませんし、少し頭の回る人間であれば、その際にも合理的に説明がつけられる口実や責任回避の逃げ道を適当にでっち上げるものなのです。
それがいつ、どのような形で自分にとって作用することになるのか、少しは考えても良さそうなものなのですけどね。
目先のプライドに拘泥しすぎて、先のことがまるで見えていないのですよ、ヴァレンシュタインは。

> 時系列が混乱してませんかね……。
> というか本編では「公衆の面前におけるゴールデンバウム王朝批判」なんて箇所はありません。
> 「『少数の』『信頼できる部下の前での』発言」ではなかったのかと思いますけど。
> どちらにしても、その時点では帝国軍の、そして帝国の実権をほぼ掌握済みなので、門閥貴族を今更恐れる必要はないのではないでしょうか。

第百二十一話 元帥杖授与
http://www.akatsuki-novels.com/stories/view/1660/novel_id~103
> 「そちを貴族にしてはどうかと言うものが有る」
> 「……」
> 「これまで平民が帝国元帥になった前例は無い。貴族に列するべきだとな」
>
> ヴァレンシュタインは顔を伏せたまま答えない。周囲がざわめく。陛下の問いに答えない、本来なら不敬といって良いだろう。答えないことで不快感を表しているのか……。陛下も怒ることなく話し続ける。
>
> 「どうじゃな、ヴァレンシュタイン」
> 「その儀は御無用に願います」
> 「ほう、いらぬか」
>
> 「臣は平民として最初の元帥かもしれません。しかし最後の元帥ではありません。御無用に願います」
> 周囲がまたざわめいた。最後の元帥ではない。その言葉の意味する所は貴族の否定……。

皇帝自らの手による元帥杖授与式、しかも大勢の貴族が参内する中でこんな態度を取れば、元々貴族制度と密接不可分に結びついているゴールデンバウム王朝では「体制批判」と解釈されない方がむしろ変です。
すくなくとも、そのように訴えて「ヴァレンシュタインは大逆罪を犯した!」と主張する人間がひとりどころではなくいても不思議ではありません。
元帥と言えども、大逆罪は普通に適用されますから、この時点でヴァレンシュタインは処刑台へ直行することになっても文句は言えないのですけどね。
ゴールデンバウム王朝下で「体制批判」がいかに重罪であるかということを、ヴァレンシュタインどころか帝国の人間が知らないはずはないと思うのですが。

> え? 本編に於ける発言と「亡命篇」に於ける言動が矛盾している事を非難されているのですか?
> まあ、それはともかくとして、別に「亡命篇」でも紳士協定的な事を踏み躙ったりはしていませんが……。

人の文章を都合よく切り貼りして全く違う文章を作り出して反論する典型例みたいな文章ですね。
【89話のヤンに対する「三百万虐殺肯定発言」】という文章もあったのに、それは完全無視ですし。
そしてこれと全く同じことを、ヴァレンシュタインは亡命編でも普通に述べていたりしますよね。
ヴェスターラントや帝国領侵攻作戦時におけるラインハルトの決断を人非人だと言わんばかりに批判していたヴァレンシュタインが、自分の利害が絡んだ途端に全く同じことをやらかす、というダブルスタンダードな行為がいかにヴァレンシュタインの正当性を壊してしまうのかなんて、よほどのバカでもない限りは簡単に理解できそうなものなのですけどね。

> 「全く同じ『行動』」、これをもう少し厳密に定義して欲しいのですがね。
> ・謀略上の紳士協定破棄
> ・謀略による民間人大量殺人
> ・通常の軍事行動による大量殺人
> これが貴方の中でごっちゃになっているので議論にならないのですよ。

私の主張のどこをどう見たら「ごっちゃになっている」と解釈しえるのか理解に苦しむのですが……。
ヴァレンシュタインのラインハルト&ヤン批判を読み返して、固有名詞を全部ヴァレンシュタインに置き換えてみても全く同じことが言えてしまう批判は全て該当する、としか言いようがないのですが。
まあとりあえずは、「謀略上の紳士協定破棄」と「通常の軍事行動による大量殺人」については本編89話のヤンに対する「三百万虐殺肯定発言」と本編136話の捕虜交換批判が、「謀略による民間人大量殺人」については亡命編58話におけるヴァレンシュタインの発言が、それぞれ該当するとは明言しておきましょうか。

> この作品、銀河英雄伝説やラインハルトへのヘイトものでないと思いますよ?
> 原作でもラインハルトは完璧超人として描かれていた訳ではありませんし。

……そもそも「原作知識チートものが嫌いなら読まなきゃいいのに……」って、あなたが先に持ち出していた文言でしたよね?
それに対する返しがアレだったのに、自分の発言を皮肉られていることにも気づかないとは、すいぶんとまあ能天気な話ですな(苦笑)。
まあ同じ返しをまたやるというのも何なのですが、それを言うのであれば私の一連の考察も、別にヴァレンシュタイン伝のヘイトものというわけではないのでしてね(笑)。
むしろ私くらい、ヴァレンシュタイン伝を細部まで読み倒し楽しんでいる読者というのもそうはいないだろう、とすら考えているくらいですし(爆)。
この手の手垢のついた主張なんて、所詮はこの程度の返しが簡単に行えてしまうシロモノにすぎないのですよ、いいかげんにお分かり頂けましたか?

> 彼女凄い天才じゃなかったですかね……。
> 論理性を重んじる彼女と他の凡人の反応を一緒にされてもねえ……。

……ヤンやラインハルトって、すくなくとも銀英伝の作中でもヴァレンシュタイン伝の中でも、そして何よりもヴァレンシュタイン個人の脳内評価でさえも「天才」という位置付けではなかったのですか?
少なくとも他のキャラクターと比較すれば相対的に論理性を重んじる彼らと、他の凡人の反応を一緒にされましてもねえ……(爆)。

> 違います。全く違います。
> 転生の秘密を話す際に重要なのは、「話した後の安全性」です。
> 「素晴らしい能力を持った尊敬に値する人物」が「原作知識チートの凡人」に過ぎなかった、という事実を知った人間の反応は予測不可能です。
> 失望でしょうか、それまでの尊敬の念を裏切られた事への怒りでしょうか、「その原作知識があれば俺にだって……」という妬みでしょうか。
> プライドの高いラインハルトなら尚の事です。

は?
香月夕呼が天才だから白銀武の転生話を信用した、というのであれば、それは同様に天才であるヤンやラインハルトにも当然同じことが言えてしまうのではないのですか?
人格の問題であれば、香月夕呼もなかなかに奇矯な性格と謀略思考の持ち主だったのですし、未来話関連でヒステリックに怒鳴り散らす局面もあったりしたのですけど。
ましてや、ヴァレンシュタインは最初からラインハルトに仕えるつもりだったのですからなおのこと、自分の売りを積極的にアピールしても問題はなかったはずでしょう。
原作のヤンもラインハルトも、「自分にとって使える」人間に対してそこまで狭量な人物としては描かれていないはずなのですけどね。

> 言い過ぎだと思います。
> 設定改変はブラウンシュバイク公爵、リッテンハイム侯爵などの(トリューニヒトはまだグレーだな……)一部の登場人物の性格などに止まっています。
> それとも、原作設定を忠実に再構成した作品しか二次小説として認めないとの御意見なのでしょうか?

原作がある作品をベースにした二次創作というのであれば、すくなくとも原作に記載されている諸々の設定はひとつ残らず忠実に再現しないと論外です。
それを変えるというのであれば「変わっていく過程」をきちんと描くべきです。
それもせず、最初からこうだったと言わんばかりの設定改竄を理由の明示もなく行ったら、それはもう原作破壊に他なりません。
設定を改竄すること自体が問題なのですから、それが一部であろうが全部だろうが論外であることに変わりはないのです。

> 何の事を仰っておられるのか些か分かりかねます。
> (原作知識チートによって)多大な功績を挙げ、(原作知識チートによって)多くの才能に溢れた人材を登用した、私欲も無く冷静沈着な(まあ外からそう見えるだけなんですが)人間が、周囲から尊敬され評価されなかったらその方がおかしいのでは?

実はヴァレンシュタインは「原作知識チート」などではないのですよ。
むしろ、それだからこそ問題なのでしてね。
ヴァレンシュタインの言動の中には、前述の元帥杖授与式における貴族否定なスタンスの披露などのように「原作設定から考えても、それをやったら原作知識やヴァレンシュタイン個人の才幹に関わりなく処刑台へ直行させられても不思議ではない」という内容のものが少なくないのです。
亡命編は特にその傾向が酷く、しかもその手のヴァレンシュタインの言動が何故免罪されるのかについて全く言及されていないか、理由にもならない屁理屈にしかなっていないケースがほとんどです。
それがヴァレンシュタインに纏わる御都合主義の問題点であり、私が「神(作者)の奇跡」「神(作者)の祝福」と呼ぶものの実態でもあるわけです。
「原作知識チート」ならば「原作知識チート」としてきちんと動かして欲しいものなのですけどね。

犀藤

>「教官や上司に対して普通なら言い難いであろう物事や自分の本心をズケズケと主張するあの態度」には充分に該当する

「自分の進路に対して自己の意見を堅持する」という行為が貴方の中では「教官や上司に対して普通なら言い難いであろう物事や自分の本心をズケズケと主張する」という事に該当するとでも言うのですか?
自分で言っていて「流石に無理があるな」とは思っていないのですか?

>最悪「暗殺」や「謀殺」などといった行為を陰から駆使してヴァレンシュタインを排除するという危険性だって当然考慮しなければならなかったはず

勿論最悪のケースが発生する可能性はいつだって存在しています。
ですが、そのような事が『政治的に』可能なら、何故ミッターマイヤーは平時に於いて謀殺されなかったのですかね?

>外伝1巻でミッターマイヤーが艦隊戦の最中にコルプト子爵に襲撃された作中事実がありました

つまり、「艦隊戦のドサクサで無ければ手を出せなかった」、という事実の証明になる訳です。

>ベーネミュンデ侯爵夫人がたびたびラインハルトを襲撃していた問題もあった

つまり、「ベーネミュンデ侯爵夫人のような常軌を逸した精神状態の人間でない限り、そこまでの無茶は出来ない」という事を意味しています。

>権力・財力・暴力をある程度掌握している人間は、どんな理不尽な理由で攻撃してくるか分かりませんし、

権力・財力・暴力をある程度掌握している人間はそれを維持できるだけの知性があります。
でなければ、他の野獣たちに食い物にされるだけです。

>少し頭の回る人間であれば、その際にも合理的に説明がつけられる口実や責任回避の逃げ道を適当にでっち上げるものなのです

少し頭の回る人間であれば、その程度の「口実や逃げ道」では軍・政府高官の怒りから逃げ切れないと判断し、とりあえずその時点での直接的謀殺は諦め、次の機会を窺うでしょう。

カストロプ公爵は特殊なケースだと理解していますよね?
逆に言えば、他の貴族達にどれだけ権力があろうと、彼ほど無茶な事は出来ない、という事を意味しています。

>目先のプライドに拘泥しすぎて

何の事か判りかねます。リッテンハイム侯爵やフレーゲル男爵に対する行動の動機は、プライド云々ではなく、政治的もしくは謀略上の理由からなのですが。

>元々貴族制度と密接不可分に結びついているゴールデンバウム王朝では「体制批判」と解釈されない方がむしろ変です。

「ヴァレンシュタインの発言は貴族否定に繋がる可能性がある」を拡大解釈して、「公衆の面前におけるゴールデンバウム王朝批判」と同義とする事には些か疑問を感じるのですけどねえ。
貴方が自明の事としている「ゴールデンバウム王朝と貴族制度は密接不可分に結びついている」というのを論理的に証明してみてください。
「密接不可分であるからといって二者が等しい存在とは言えない」というのは、それ程重要な点ではないのでスルーしてもいいですけど。

>この時点でヴァレンシュタインは処刑台へ直行することになっても文句は言えない

この時点でヴァレンシュタインは軍権を掌握し、皇帝からの絶対的なまでの信任を受けているというのにですか?
そんな事を言い出す貴族が出たら、それを口実に捕縛され処刑されてしまうのですが……。
寧ろ、ヴァレンシュタインの思う壺でしょう。
皇帝が弱者だったのは、門閥貴族を打倒し得る実戦力を持つ信頼できる臣下がいなかったからです。
この時点で(門閥貴族の多くはまだ理解できていませんが)、皇帝と門閥貴族たちの力関係は逆転しているのです。

>人の文章を都合よく切り貼りして全く違う文章を作り出して反論する典型例みたいな文章

では、
『「亡命編」における諸々の所業を鑑みると空しい限りでしかありませんね』
の部分は如何なる意味で持ち出されたのか、説明してみてくれますか? 誤魔化さずに。

>ヴェスターラントや帝国領侵攻作戦時におけるラインハルトの決断を人非人だと言わんばかりに批判

「どうも気が進まない」を拡大解釈するにも程がありませんか?
すぐ後に「政治的なマイナス面の影響が大きすぎる。取るべきではない。」と言っています。
政治的な点を問題にしているのです。

>私の主張のどこをどう見たら「ごっちゃになっている」と解釈しえるのか理解に苦しむのですが……。
>「謀略上の紳士協定破棄」と「通常の軍事行動による大量殺人」については本編89話のヤンに対する「三百万虐殺肯定発言」と本編136話の捕虜交換批判が、「謀略による民間人大量殺人」については亡命編58話におけるヴァレンシュタインの発言が、それぞれ該当するとは明言しておきましょうか。

何も理解してませんね……。
それらはそれぞれ別個に取り扱うべき事象だと言ったのですが……。

>「謀略による民間人大量殺人」については亡命編58話におけるヴァレンシュタインの発言が、それぞれ該当する

違います。「これからも何百万、何千万人の帝国人を殺してあげますよ。」は「通常の軍事行動による大量殺人」に該当します。

まず前提として、
①焦土戦術とヴェスターラントに対しては本編第99話に於ける記述を見る限り、ヴァレンシュタインは倫理上の観点からの批難をしていません。
②捕虜交換時に於ける間諜潜入に対しては(本編第136話)、
「転生する前は捕虜交換を利用した内部分裂工作にそれほど強い嫌悪感を抱いていたわけではない。いやむしろ嫌悪感など全く無かった。しかし、この世界に来てかなり考えが変わった。」
「人道って何だ、さっきの感謝は何なのだ、そう言いたくなるのは俺だけだろうか。」
「つまり、同盟政府はラインハルトを信じられなかったのだと思う。その事が彼らにラインハルトを拒否させた……。」
紳士協定破棄に関して倫理的な観点からの批難はしていますが、政治的なデメリットについても問題視しています。

◎通常の軍事行動による大量殺人

「本編第89話に於けるヤンへの報復宣言」が該当します。
軍人なので政治的・軍略上のメリットがあれば問題があるとは思えません。
(「亡命篇第58話に於ける帝国軍殺戮宣言」も該当しますが、別の世界線上に於ける別の自分の発言の責任を負うべきではないでしょう)

◎謀略による民間人大量殺人

焦土戦術とヴェスターラント(の虐殺の黙認)が該当します。(本編第99話)
前述のようにヴァレンシュタインは政治的なデメリットについて問題視しています。

◎謀略上の紳士協定破棄

捕虜交換時に於ける間諜潜入が該当します。(本編第136話)
前述のように政治的なデメリットについて問題視していると共に倫理的な観点からの批難をしています。

「捕虜交換時に於ける間諜潜入」に対する倫理上の批難が、「ヤンへの報復宣言」と矛盾する、と言われればそうなのですが……。
貴方の主張には事実と異なる点が多いですよ?

>ヤンやラインハルトって、すくなくとも銀英伝の作中でもヴァレンシュタイン伝の中でも、そして何よりもヴァレンシュタイン個人の脳内評価でさえも「天才」という位置付けではなかったのですか?

「軍事的な分野に於ける天才」の筈ですが。
他の分野では、ヤンは二流の歴史学者、ラインハルトは万能に近い秀才でしかないんですけど……。

>他のキャラクターと比較すれば相対的に論理性を重んじる彼ら


原作にそんな記述がありますか?
ラインハルトは比較的感情に流される傾向がありますし、ヤンとて論理性よりも自分の好悪を優先した結果が同盟の滅亡に繋がったのではないですか?

>原作のヤンもラインハルトも、「自分にとって使える」人間に対してそこまで狭量な人物としては描かれていない

問題点はまさにここにあります。
彼等にとってヴァレンシュタインは、「自分にとって使える人間」ではなく「自分にとって使える知識を持つ人間」なのです。
自分を軽々と凌駕出来るだけの原作知識を、自分のものにしてしまえば用済みですし、その知識が他に漏れる事によってその優位性が消滅してしまう訳ですね。
ラインハルトがそのような危険人物を放置するほど能天気だとは思えません。
(オーベルシュタインがこの情報を知れば即時抹殺は間違いないでしょう)
ヤンに関しては些か不確定な面がありますが、『歴史の流れを歪ませる異分子』に寛容に接してくれるのかについては疑問の余地があります。
ヴァレンシュタインが亡命篇でカミングアウトしなかった事がそれ程おかしいとは思えません。
(暗殺されかかったり、前線送りにされたりした後で、初対面の人間を全面的に信用できるでしょうか?)

・即座にカミングアウト⇒信用されるまで数年間(?)狂人扱い⇒信用されたとしても要抹殺対象と認識される
・原作知識チートを見せ付けてからカミングアウト⇒幻滅・失望・憎悪⇒やはり抹殺対象として認識される

>香月夕呼

そもそも、Muv-Luv Alternativeで、何故彼女以外の仲間にカミングアウトしなかったんですかね。
彼女が超の付く天才科学者であったからという理由ならば、ヤンやラインハルトたちには適用不可ですし、人格的にも深い理解を持ち、信頼できる相手であるところの仲間達にまでその事実を伏せたのは何故ですか?
自分で自分の主張を否定してしまっている事に気がついていないのでは?

>設定を改竄すること自体が問題なのですから、それが一部であろうが全部だろうが論外である

貴方の極めて偏った意見は理解しました。御自身の主張が少数派である事は認識して下さい。

>私の一連の考察も、別にヴァレンシュタイン伝のヘイトものというわけではないのでしてね(笑)。
>「原作知識チート」ならば「原作知識チート」としてきちんと動かして欲しいものなのですけどね。

では何故、正確な分析と事実と異なる根拠に基づいた批判が混在しているのですか?
その点について御自身の頭で考え、結論を出してください。
それが、貴方の人間的成長に繋がる事を強く希望します。

  • 2012/11/28 00:00:00

冒険風ライダー(管理人)

> 「自分の進路に対して自己の意見を堅持する」という行為が貴方の中では「教官や上司に対して普通なら言い難いであろう物事や自分の本心をズケズケと主張する」という事に該当するとでも言うのですか?
> 自分で言っていて「流石に無理があるな」とは思っていないのですか?

「自分の進路に対して自己の意見を堅持する」なる信念をああいう形で実行に移すのでは、すくなくとも他人から見れば「教官や上司に対して普通なら言い難いであろう物事や自分の本心をズケズケと主張する」と評されても文句は言えないでしょう。
銀英伝と同じ田中作品の「カラトヴァ風雲録」に登場するファビオンのごとく「自分は直接反対しないが、他人のコネなどを使って相手の主張を退かせる」的な腹芸でも披露しているのであれば、また話も違ってきたでしょうけど。

> 勿論最悪のケースが発生する可能性はいつだって存在しています。
> ですが、そのような事が『政治的に』可能なら、何故ミッターマイヤーは平時に於いて謀殺されなかったのですかね?

> つまり、「艦隊戦のドサクサで無ければ手を出せなかった」、という事実の証明になる訳です。

> つまり、「ベーネミュンデ侯爵夫人のような常軌を逸した精神状態の人間でない限り、そこまでの無茶は出来ない」という事を意味しています。

政治的謀略だって、いつ如何なる場合においても常に自由気ままに発動可能というわけではありますまい。
発動の際にはタイミングもあれば時勢というのも必要不可欠ですし、その機会に恵まれなければ謀殺できない、ということだって普通にありえますよ。
「戦場のドサクサに紛れて……」というのは、その意味では非常に使い勝手の良いシチュエーションだから多用された、ただそれだけのことです。
他にもっと上手い方法があってタイミングもバッチリと条件が揃っていたのであれば、躊躇うことなくそちらの策を採用したことでしょうね。
ちなみにベーネミュンデ侯爵夫人にしても、最後のアンネローゼ襲撃以外では自身に危険が迫らないような工作くらいはしていたでしょうし、でなければあの襲撃よりも前の時点で彼女はラインハルト襲撃の罪に何らかの形で問われてはいたはずでしょう。
当時のラインハルトも、一応は皇帝の寵姫の弟という立場にあったのですし。
そのタイミングを常に伺う人間を、作中のヴァレンシュタインはとにかく無差別かつ衝動的に敵に回しているようにしか思えないのですけどね。
ましてや、原作とは全く異なる性格設定を持つ(それ故に原作知識が必ずしも有効たりえない)人間を相手に、です。

> 権力・財力・暴力をある程度掌握している人間はそれを維持できるだけの知性があります。
> でなければ、他の野獣たちに食い物にされるだけです。

> 少し頭の回る人間であれば、その程度の「口実や逃げ道」では軍・政府高官の怒りから逃げ切れないと判断し、とりあえずその時点での直接的謀殺は諦め、次の機会を窺うでしょう。

> カストロプ公爵は特殊なケースだと理解していますよね?
> 逆に言えば、他の貴族達にどれだけ権力があろうと、彼ほど無茶な事は出来ない、という事を意味しています。

そんな「高度な」知性の持ち主な門閥貴族は、原作銀英伝においてはヒルダやマリーンドルフ伯などの一部例外を除き存在しないのですが。
カストロプ公爵は、そのワガママ三昧かつ知性の欠片も見い出しえない門閥貴族の中でも、特に強欲と自己保身に特化した化け物だった、というだけの話ですよ。
その息子のマクシミリアンなんて、原作では考えもなしに帝国政府に喧嘩を打って動乱を起こす始末だったのですし。
原作のブラウンシュヴァイク公が、たかだか甥が一人殺されただけでヴェスターラントの核攻撃を命じた事例を、まさかご存じないわけないですよね?
トップからしてこの程度の知性なのでは、その下の思考水準など推して知るべしですよ。
そもそも、原作者たる田中芳樹からして、悪役をそのように卑小に描く傾向が多大なまでにあるのですし。

> 何の事か判りかねます。リッテンハイム侯爵やフレーゲル男爵に対する行動の動機は、プライド云々ではなく、政治的もしくは謀略上の理由からなのですが。

自分がああいう挑発的な言動をすることによって門閥貴族達を暴走させることを期待している、とでもいうのであればまだ「計算ずく」という評価も可能なのですが、ヴァレンシュタインは明らかに「相手の敵意を買う」という問題について全く何も考えていないか、極めて軽視している傾向が多々ありますよね。
そして、ラインハルトに対してはそういう言動をすることを戒めたり人格未熟として批判したりしているのに、自分はまさにそういう言動をする、というのが問題だと言っているのですが。

> 違います。「これからも何百万、何千万人の帝国人を殺してあげますよ。」は「通常の軍事行動による大量殺人」に該当します。

殺害対象が「帝国軍」ではなく「帝国人」という時点で、これは民間人も当然のごとく含められ、軍事行動とは別の大量虐殺も普通に行われると解釈されるべきなのですが。
その発言の発端となった、ヴァレンシュタインの両親の墓を暴いた件の実行犯も「帝国軍」ではなく「(遺族や平民を含めた)帝国人」なのですし。
ヴァレンシュタイン本人の意図はどうであれ、すくなくとも件の発言を受けた帝国側は当然そう解釈するに決まっているでしょう。
ヴァレンシュタインの発言は「帝国人」の上から下まで全てを敵に回す行為だったのですが、これが政治的マイナスにならないとでも?

> (「亡命篇第58話に於ける帝国軍殺戮宣言」も該当しますが、別の世界線上に於ける別の自分の発言の責任を負うべきではないでしょう)

この発言でやっと分かりましたよ、何故ここまで「亡命編のことを本編に持ってくるな」と主張されるのかが。
私が一貫して主張しているのは「発言の責任」ではなく「発言の正当性」なのです。
そりゃ確かに、本編におけるヴァレンシュタインが亡命編の自身の言動について責任の取りようはないでしょう。
しかし「発言の正当性」というのは、状況が変わっても普遍的に適用することが可能なのです。
たとえば「政治的デメリットがあるから○○という策はやるべきではない」という場合、その「発言の正当性」は似たような事案であれば常に同じように適用することが可能ですし、またそうすべきなのです。
その発言がAというケースでは適用されるがBという事件では全く適用されないという場合、その発言には正当性がない、もしくはダブルスタンダードであると見做されるのです。
ヴァレンシュタインの発言に正当性があるのであれば、その正当性は本編だろうが亡命編だろうが普遍的に適用されて然るべきものなのです。
「本編ではこんなことを言っているのに亡命編では何故自爆的な発言をしているんだ?」という批判は、ヴァレンシュタインの発言に正当性がない、もっと言うと「説得力がない」ということを指しているわけです。
全く同じ事象で全く異なる主張が繰り広げられる場合、そうなるに至った特殊な理由や経緯が必要不可欠なのですが、本編と亡命編にそのような説明はどこにも存在しません。
強いて挙げるのであれば「ヴァレンシュタイン個人の事情」くらいなものですが、ヴァレンシュタイン以外の何者にも関係のないそんな私的事由では、「発言の正当性」を担保しえる要素になど全くなりえないのですし。
だからこそ、本編と亡命編の発言は互いに矛盾していると私は主張するわけです。

> 「軍事的な分野に於ける天才」の筈ですが。
> 他の分野では、ヤンは二流の歴史学者、ラインハルトは万能に近い秀才でしかないんですけど……。

あなたの「天才」の定義は「=ありとあらゆる方面で万能」だったりでもするのですかね?
元々「天才」というのは「全てにおいて万能」というわけではなく、特定の分野に才能が偏っている状態にあると、これは原作銀英伝の中でさえ言及されていることなのですが。
第一、「他の分野」について言及するのであれば、香月夕呼にしても自身の得意分野以外では凡人以下な部分だってありえるでしょうに。

またラインハルトについては、銀英伝3巻P37に「ラインハルトが軍事の天才であると同時に統治の天才でもある」という記述がありますし、原作者たる田中芳樹自身からして「意図的に完璧な存在にしました」などとのたまっているようなキャラクターとして定義されていたりします。
もちろん、政治と軍事以外な分野では「異性への関心」のごとく凡人以下な部分も多々ありはするでしょうけど。
政治面でも天才と原作では定義されているラインハルトと香月夕呼の天才性って、一体どこら辺に違いがあるというのですか?

> ?
> 原作にそんな記述がありますか?
> ラインハルトは比較的感情に流される傾向がありますし、ヤンとて論理性よりも自分の好悪を優先した結果が同盟の滅亡に繋がったのではないですか?

原作における帝国の門閥貴族や同盟の政治家達と比較する分には、「相対的に論理性を重んじる」とは言えるでしょう。
それどころか、ヤンファミリーやラインハルトの部下達でさえ、オーベルシュタインなどの一部例外を除けば、ラインハルトを盲目的に崇拝したり無批判に受け入れたりしている要素が多大にあったりするのですし。
そもそも、原作者たる田中芳樹自身、主人公をそのように描く傾向が多大にあり、それは銀英伝でも例外ではないのですから。

> 問題点はまさにここにあります。
> 彼等にとってヴァレンシュタインは、「自分にとって使える人間」ではなく「自分にとって使える知識を持つ人間」なのです。
> 自分を軽々と凌駕出来るだけの原作知識を、自分のものにしてしまえば用済みですし、その知識が他に漏れる事によってその優位性が消滅してしまう訳ですね。
> ラインハルトがそのような危険人物を放置するほど能天気だとは思えません。
> (オーベルシュタインがこの情報を知れば即時抹殺は間違いないでしょう)

香月夕呼と白銀武が繰り広げた駆け引き程度のことすらも、ヴァレンシュタインには不可能だとでもいうのですかね?
第一、原作のラインハルトは、実際に叛乱を起こしたロイエンタールをその寸前まで重用していたほどに「使える人材」に貪欲な人間なのですが。
当のヴァレンシュタイン自身、ラインハルトに仕えるために知識を磨いたり後方関連の経験を蓄えたりしていたのではないのですかね?
原作を見る限り、ラインハルトがヴァレンシュタインを遠ざけなければならない理由など、能力面でも性格面でもありはしませんよ。
オーベルシュタインにしても、ラインハルトに先んじて自分の部下として迎えるとか、最悪は表舞台に出てくる前に抹殺するとかして、その驚異を除去する方法がないわけではないでしょう。
原作知識があるからこそできるその手の防衛策を、ヴァレンシュタインは率先して実行すべきではありませんか。
それとも、こんなことすらできないほどにヴァレンシュタインは無能であるとでも?

> ヴァレンシュタインが亡命篇でカミングアウトしなかった事がそれ程おかしいとは思えません。
> (暗殺されかかったり、前線送りにされたりした後で、初対面の人間を全面的に信用できるでしょうか?)

そんなに信用できないはずの人間に対して、ヴァレンシュタインはあの「伝説の17話」のタイミングで原作知識を後付的に披露して論点をそらした挙句に罵り倒したわけですか。
あらゆる意味で究極のバカとしか言いようがないですね、ヴァレンシュタインは(爆)。
それに「初対面の人間を全面的に信用できるでしょうか?」って、何のために原作知識があると思っているのですかね?
原作知識を持つヴァレンシュタインは、本来誰よりもヤンやシトレのこと(特に人格や能力)を詳しく知りえる立場にいたはずなのに。
前線送りにされた件などは、どう見ても自業自得以外の何物でもなかったのですし、ヴァレンシュタインは被害妄想も甚だしいとしか評しようがないのですけどね。

> そもそも、Muv-Luv Alternativeで、何故彼女以外の仲間にカミングアウトしなかったんですかね。
> 彼女が超の付く天才科学者であったからという理由ならば、ヤンやラインハルトたちには適用不可ですし、人格的にも深い理解を持ち、信頼できる相手であるところの仲間達にまでその事実を伏せたのは何故ですか?
> 自分で自分の主張を否定してしまっている事に気がついていないのでは?

香月夕呼以外の人間で白銀武と親しい人間は、出自は良いにしても基本的に権力を持っていません。
白銀武のカミングアウトは、権力を持ちオルタネイティブ4の責任者でもあった香月夕呼に対するものだったからこそ有効だったのであって、それがない人間に対してカミングアウトなどしたところで、未来に絶望するか自暴自棄になるかのいずれかでしかないでしょう。
その香月夕呼相手にしても「賭け」の要素が全くなかったわけではなく、また当の白銀武自身も秘密を持て余して不必要に悲観的になる局面もあったのですから、相手を選ばなければならないのはむしろ当然のことです。
その手のカミングアウトは「自分や世界の命運を託せる人間」についてのみ「信頼の証」としてやれ、とは私も最初から一貫して述べていますし、「カミングアウト=無差別にやる」という図式の方が変なのでは?

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