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第84回アカデミー賞&第32回ラジー賞についての雑感

2011年にアメリカで公開された映画の中で最高の作品と俳優を決定する、第84回アカデミー賞の授賞式が、日本時間2月27日に行われました。
そのうち、作品賞の受賞とノミネート作品については以下の通り↓

作品賞授賞
 「アーティスト」(日本では2012年4月7日公開予定)
ノミネート作品一覧
 「ファミリー・ツリー」(日本では2012年5月18日公開予定)
 「ものすごくうるさくて、ありえないほど近い」
 「ヘルプ ~心がつなぐストーリー~」(日本では2012年3月31日公開予定)
 「ヒューゴの不思議な発明」(日本では2012年3月1日公開予定)
 「ミッドナイト・イン・パリ」(日本では2012年5月26日公開予定)
 「マネーボール」
 「ツリー・オブ・ライフ」
 「戦火の馬」(日本では2012年3月2日公開予定)

しかし、受賞作品および賞にノミネートされた作品リストを見ると、この手の賞というのは映画の「面白さ」ではなく「芸術性」を評価する作品なのだなぁ、とつくづく痛感せずにはいられないですね。
受賞作品である「アーティスト」なんて、その全編がサイレント&モノクロ映像で成り立っているという、まさに文字通りの「芸術作品」ですし、爽快感や迫力ある映像などといった「面白さ」を求めている観客層には、そのコンセプトだけで既に論外としか言いようのない映画です。
また、ストーリーの本筋と如何なる関係があるのかすらも不明な映像を長々と垂れ流し、映画の途中なのに席を立ってスクリーンから去っていく人が続出するなど、史上稀に見る駄作要素が満載の「ツリー・オブ・ライフ」なんて、「面白さ」で評価するならアカデミー賞どころか、むしろ正反対のゴールデンラズベリー賞(ラジー賞)にこそノミネートされるべき作品でしょう(苦笑)。
今回に限らず、アカデミー賞の選考評価基準というのは、一般的な大衆映画評とは大きく乖離しているのではないでしょうか?
日本では興行的に成功してなかったり知名度が低かったりする作品、さらに酷い場合は「ツリー・オブ・ライフ」のごとく駄作認定すらされている映画も少なくないのですから。
しかし、世間一般で映画が宣伝される際には、アカデミー賞やカンヌなどでノミネート&受賞されたという事実が、集客のネタとして大々的に喧伝されることが多かったりするんですよね(-_-;;)。
「芸術性を評価している」映画の賞は、必ずしも「映画の品質や面白さ」を保証するものではないのに、「賞を取った&ノミネートされた=面白い良い映画」という図式で映画の宣伝・集客が行われるのは、「面白さ」を求めている観客にとっては悪質なミスリード以外の何物でもないのですが。

また、アカデミー賞授与式に先立ち、2011年の駄作映画を決定するラジー賞こと第32回ゴールデンラズベリー賞のノミネート作品も発表されています(授賞式は2012年4月1日予定)。
その中の最低作品賞におけるノミネート作品は以下の通り↓

ノミネート作品一覧
 「Bucky Larson: Born to Be a Star」(日本公開未定)
 「ジャックとジル」
 「ニューイヤーズ・イブ」
 「トランスフォーマー/ダークサイド・ムーン」
 「トワイライト・サーガ/ブレイキング・ドーン Part1」

で、ラジー賞はラジー賞で、やはりアカデミー賞と同様に一般的な映画評価からの著しく大きな乖離を感じずにいられないんですよね。
しかも、アカデミー賞の場合は選考評価基準がまだある程度明確なのに対し、ラジー賞は一体何をベースに作品を評価しているのかすらも意味不明です。
ラインナップされている作品群を見ても、「とりあえず大衆娯楽作品を適当に集めてバッシングしてみました」的な雰囲気が漂いまくっていますし、そのくせ正真正銘の駄作である「ツリー・オブ・ライフ」はノミネートすらもされていませんし。
特にラジー賞が信用ならない最たる理由は、映画に出演している有名俳優を基準に駄作認定を行っている部分も多々あることです。
「ラジー賞の常連」などと言われているシルヴェスター・スタローンなんてまさにその典型で、作品の内容がどうこうではなく「スタローンが関与している」というだけでラジー賞にノミネートされることすら珍しくないのですからねぇ(-_-;;)。
この恣意的としか評しようのない作品評価基準が、私がラジー賞を「アメリカ版『と学会』」などと酷評する最大の理由でもあったりします。
ラジー賞というのは元々ユーモアやジョークを意図しているものでもあるらしく、ラジー賞で駄作認定された作品が必ずしも本当の駄作というわけではない、とは賞の主催者側も承知の上ではあるようなのですが、ただ一般的には「ラジー賞授与=駄作認定」という評価が確立していることもまた事実ではありますからねぇ。
まあ、ラジー賞の受賞者自らがわざわざ授与式に登場し、ラジー賞のトロフィーを受け取った上にスピーチまで披露したという事例もありますし、その辺りの「懐の深さ」については、トンデモ認定した論者を罵倒しまくり一方的に遠ざけ、そのくせ身内には大甘な「と学会」とは比べるべくもないのですけどね(苦笑)。

映画についての評価や感想は人の数だけ千差万別で存在するでしょうし、それを承知の上で良作&駄作映画を選考する賞というのも必要ではあるでしょう。
アカデミー賞が「映画の面白さではなく芸術性を評価する賞」であっても、その「芸術性」もまた映画の良し悪しを評価するひとつの基準になりうることはまず間違いないわけですし。
ただ、それが一般的な映画評価から大きく乖離し、かつ映画の宣伝などで「面白さをアピールし集客するための道具」として多用されている現状は、映画ファンとしては正直歯痒く思うところではあります。
アカデミー賞やラジー賞に限らず、映画の賞というのは一般的にも少なからぬ知名度を誇っているにもかかわらず、大多数の一般人とは全く無縁な映画をただ紹介するだけの賞と化してしまっている一面が多々あったりしますからねぇ。
ただ「客寄せをするための道具」としてではなく、また一部の映画マニアだけが楽しむものでもなく、本当に作品の品質や面白さを評価し、大多数の一般人が納得も共感もできるような映画の賞ができれば、映画業界自体の活性化にも繋がるのではないかと思えてならないのですけどね。

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