映画「ライアーゲーム -再生(REBORN)-」感想
映画「ライアーゲーム -再生(REBORN)-」観に行ってきました。
甲斐谷忍の同名人気漫画「ライアーゲーム」を原作とするシリーズの続編。
時系列的にはテレビドラマ版「ライアーゲーム」を経た前作映画「ライアーゲーム ザ・ファイナルステージ」より後の話となります。
今作は一連の「ライアーゲーム」シリーズの続編ではありますが、登場人物の大半が一新されている上、前作までのエピソードもほとんど絡んでこないため、これまでのシリーズ作品を全く知らない人でも問題なく楽しむことができます。
かくいう私自身、「ライアーゲーム」シリーズは原作漫画もテレビドラマ版も前作映画も全て未観賞で、今作が初の観賞作品だったりしますし(^_^;;)。
物語の冒頭では、前作で壊滅状態となったライアーゲーム事務局が謎の復活を遂げ、とある一室で2人の人物が何かのゲームをしている様子が描かれます。
ゲームの当事者のひとりである福永ユウジは、もうひとりの当事者であるヨコヤノリヒコに対し、ゲームで優勢にでも立ったのか、勇ましく勝ち誇った台詞を吐き散らしまくっていました。
ところが、審判によるゲームの判定はヨコヤノリヒコに軍配を上げ、福永ユウジは愕然となり結果が認められない発言を連発します。
結果としてあまりにも無様な敗北者となってしまった福永ユウジは、ライアーゲーム事務局の言いなりになるしかなくなってしまったのでした。
ここで舞台は切り替わり、帝都大学における卒業式のシーンが映し出されます。
今作の主人公のひとりである篠宮優は、帝都大学卒業生代表として答辞を語っていました。
問題なく卒業式も終わり、友人と語らい篠宮優が自宅に帰ってくると、そこには1通の招待状とアタッシュケースが置かれていました。
不審に思ってアタッシュケースを開けてみると、そこには何と現金1億円もの大金が。
さらに招待状にあったDVD映像?には、
「あなたをライアーゲームに招待します。なお、一度招待状を開封した後に拒否した場合は、1億円を返済の上さらに1億円を支払って頂きます」
とのメッセージが。
不気味に思った篠宮優がおそらくは警察に行くために外へ出ようとすると、途端に子供の声で「どこへ行くのですか?」と話しかけられます。
篠宮優の部屋には篠宮優以外誰もいないはずなのに。
驚愕して振り返ると、そこにはすくなくとも外見上は小さな女の子の姿が。
ライアーゲーム事務局に所属しているらしいその子供(公式サイトによると「アリス」という名前らしい)は、淡々とした口調で映像と同じ注意事項を繰り返すとその場を去って行きます。
あまりでオカルティックな事態が連発した上、相手は1億円もの現金を手軽に用意できる組織。
半ば恐慌状態に陥った篠宮優は、そこで帝都大学で心理学を教えていた教授の存在に思い当たり、彼の元を尋ねに卒業した帝都大学へと向かうのでした。
そしてほどなく篠宮優は、帝都大学で生徒達に講義を行っていたその教授に出会うことができたのでした。
その教授の名は秋山深一。
テレビドラマ版および前作映画で活躍し、ライアーゲーム事務局を壊滅に追いやった張本人であり、また今作におけるもうひとりの主人公なのでした。
篠宮優は秋山深一にライアーゲームでの協力を依頼しますが、秋山深一はにべもなく拒絶し、結局彼女はひとりで帝都大学を出ることに。
ひとりで歩いている篠宮優は、やがて目の前に突如現れたトラックに拉致されてしまい、そのままライアーゲームの会場まで連行されてしまうのでした。
一方、篠宮優を拒絶した秋山深一の元にも、冒頭のゲームで事務局の手先となった福永ユウジによって、ライアーゲームの招待状が届けられていました。
篠宮優のことをどこで知ったのか、福永ユウジは彼女をネタに「お前がゲームに参加しないと彼女は負けるぞ」と言い募ります。
秋山深一は全く関心なさ気にその場を去りますが、アリスに成果を問われた福永ユウジは、彼は絶対ゲームに参加するであろうと自信に満ちて返答をするのでした。
果たして秋山深一は、福永ユウジの言う通りにライアーゲームの会場に姿を現すこととなるのでした。
かくして、篠宮優と秋山深一を含めた総計20人による、新たなライアーゲームが始められることとなるのですが……。
今作で行われるライアーゲームの主題は「イス取りゲーム」。
そのルールは、以下のような内容で構成されています↓
・ 参加者20名に対し、イスの数は15。
・ 参加者はまず、ゲーム会場となっている15のイスを探し出す。
・ 制限時間以内にイスを見つけられなかった参加者、およびイスに座っていなかった参加者は失格となる。
・ 回を追う毎にイスの数を減らしていき、最後に残ったイスに座っていた1人が勝者となる。
・ 各イスにはそれぞれ1~15までの番号が割り振られており、どのイスを減らすかは、その回毎に投票で選ばれた親が決めることができる。
・ 回毎の親を決める投票は失格となったプレイヤーも参加することができる。
・ 投票でトップが同点で2人以上いた場合、親決め投票は無効となり、イスを減らすことなく次の回へと進む。
・ 同じイスに2回連続で座ることはできない。ただし、2回連続でなければ同じイスに何度座っても構わない。
・ ゲームの最中に暴力行為を働いた参加者はその場で失格となる。
・ 既に失格した者が暴力行為を働いた場合はマイナス1億円のペナルティーが科せられる。
そして、ゲーム全体の流れとしては以下のようになります↓
1.まずは30分の作戦タイム。この間はイス探しの他、暴力行為以外は自由に何をしても良い。
↓
2.作戦タイム終了後、イスに座った参加者は10分以内に親を決めるための投票を行う場に戻る。
↓
3.10分以内に戻らなかった場合は投票権没収(失格にはならない)。
↓
4.投票所へ集合後、5分間の投票タイムで親を決める投票を行い、参加者の中から親を決定する。
↓
5.投票で選ばれた親がイスの番号を指定し、その番号のイスを減らす。
↓
6.以上の流れを最後の一人になるまで繰り返す。
さらに賞金については以下の通り↓
・ 賞金は総額で20億円。
・ 各参加者には、それぞれの名前が刻んであるメダルが予め20枚配られている。
・ ゲーム終了後、勝ち残った参加者の名前が刻んであるメダル1枚につき1億円で換金される。
・ 優勝者でなくても、優勝者のメダルを持っていれば、それを換金し賞金を受け取ることが可能。
作中でも明示されていますが、このゲームはルール上、ひとりで勝つことはまず不可能です。
同じイスに2回連続で座ることはできないのですし、またイス減らしを決める投票では参加者の数がものを言います。
仮に1人で複数のイスを取得していたとしても、投票で決定した親によってそのイスが消されてしまったら元も子もありません。
そのためこのゲームでは、参加者同士が徒党を組み、互いのイスを交換し合ったり、組織票で親の権利を取得したりするなど、相互連携して行動する必要が出てくるのです。
また親決め投票では失格者も参加することができることから、失格者を自分達の陣営に取り込むことも求められることになります。
失格者を取り込む際にはメダルがものを言います。
つまり、失格者にメダルをあげ、優勝すれば賞金を分け合うという形で失格者を買収することが可能なわけです。
ただ、ここで注意しなければならないのは、優勝者はあくまでもひとりだけであり、その人間の名前が刻まれたメダル以外は全く価値がないので、失格になるであろう人間のメダルをいくら持っていても意味がないということ。
よって、買収される失格者は失格者で、誰が優勝するのか、また誰のメダルが真の価値を持つことになるのかについて見極めなければならないのです。
かくのごとく複雑極まりないルールと環境の下、メダルを使った買収を巡る駆け引きや騙し合いを展開し親決め投票を制することで、参加者は初めて勝利を獲得することができるのです。
作中では、このイス取りゲームの本質に気づいた3人の人物により、それぞれ3つの「国」が作られることになります。
カルト教団の教祖・張本タカシをリーダーとする「張本国」(初期は5人で構成)。
前回のライアーゲームの優勝者である秋山深一を一方的にライバル視している桐生ノブテル率いる「桐生国」(初期は3人で構成)。
そして秋山深一を中心に集まった「秋山国」(初期は4人で構成)。
これに失格となった参加者達も加わり、かくして自陣営のイスを死守する一方、他の2国のイスを減らさんとする3国による3つ巴の知略戦が熾烈を極めることになるわけです。
映画「ライアーゲーム -再生(REBORN)-」は、これまで私が観賞した作品で言うと、映画「デスノート」2部作および映画「カイジ2~人生奪回ゲーム~」などに近いものがありますね。
基本的には人間同士の騙し合いや心理戦が延々と続くことになるわけですし。
上記作品と異なるのは、「2勢力が互いにシノギを削って争っている中で1勢力が様子見をしている」的な3つ巴の構図ならではの展開があることですね。
この間観賞した映画「アンダーワールド 覚醒」では、映画の宣伝から期待していた3つ巴の戦いがほとんど出てこなくてガッカリした経緯があっただけに、今作で展開された3つ巴の戦いは個人的にも嬉しいものがありました(^^)。
主人公格の秋山深一だけでなく、他の2国を率いていた張本タカシと桐生ノブテルによるそれぞれの知略戦も見応えがありましたし。
逆に、最初は全く頼りにならないどころか「邪魔」な様相すら呈していたのは、秋山深一と同格以上の主人公であるはずの篠宮優ですね。
素直に戦いを主導している秋山深一に任せておけば良いのに、自分で自分を勝手に追い込んだ挙句、張本タカシの姦計にハマって「無能な働き者」のごときピエロな愚行をやらかし、結果として自分も含めた「秋山国」の面々を窮地に追い込んでいたのですから。
まあ彼女も後半では秋山深一と共に見事な逆転劇を演じていましたし、その愚行と挫折は同時に彼女を成長させるための原動力にもなったのでしょうけど。
ラストは若干御都合主義的かなと思わなくもありませんでしたが、各参加者毎の人間模様や知略戦は、確かに人気作品になるだけの面白さがありましたね。
ただ、ひとつ疑問だったのは、今回開催されたライアーゲームって、前作でライアーゲーム事務局を壊滅に追い込んだ秋山深一に対する復讐が目的だったらしいんですよね。
作中でも、秋山深一に招待状を渡していた福永ユウジがそんなことを述べていましたし、公式サイトのストーリー紹介でも同様のことが書かれています。
しかし、秋山深一をライアーゲームに参加させると、一体どのようなメカニズムでもって「復讐が達成される」ということになるのか、それがそもそも全く見えてこないんですよね。
一応ライアーゲーム事務局側としては、秋山深一をライアーゲームで敗北させれば復讐は達成されると考えていたようなのですが、ただ「秋山深一を敗北させる」ことを実現するだけであれば、ライアーゲーム事務局にとって方法なんていくらでもあります。
たとえば、イス取りゲームのルールの中に「各参加者は秋山深一とだけは絶対に手を組んではならない。手を組んだ者はその場で失格」みたいな条項を追加するだけでも、秋山深一に挽回不可能なレベルの多大なハンディキャップを背負わせることが可能となります。
また、イス取りゲームのルールが適用されるのはゲームの参加者だけなのですから、ライアーゲーム事務局が外部の人間を使って秋山深一を拘束したりする、といった行為をやっても何の問題もないことになります。
あくまでもライアーゲームのルールを全く変えず、また外部の人間も使わないというのであれば、いっそ秋山深一以外の参加者全員を自分達の息がかかった手駒だけで固めてしまったり金銭を渡したりするなどして、組織的な連携プレイで問答無用に秋山深一ひとりを叩き潰す、みたいな方法を取ることだって可能です。
ゲームの参加者を選定する権利は、あくまでもライアーゲーム事務局にあるのですから簡単なことでしかありません。
もちろん、こんなことを本当にやろうものならゲーム自体が全く成り立たなくなってしまうわけですが、しかしライアーゲームの中におけるライアーゲーム事務局はある種の「神」のごとき絶対的な存在なわけですし、本当に「秋山深一への復讐」が最優先目標なのであれば、こういう選択肢を取らない方がむしろおかしいと言わざるをえないのです。
秋山深一を文字通り殺してしまえば復讐は成就される、というわけでもなさそうですし、自分達が独自に動いてなりふり構わず敗北させる手段に打って出るわけでもない。
作中のようなやり方では、ライアーゲーム事務局の復讐が達成できるか否かはかなり「運任せ」な要素が強いものとならざるをえませんし、確実に勝てる方法を捨ててわざわざ「分の悪い賭け」をしなければならない理由がライアーゲーム事務局にあったのでしょうか?
「個人への復讐」などという利害無視の行為を正当化すらしかねない要素など前面に出さないで、普通に金儲け目的のライアーゲーム開催、という形にした方がまだ良かったのではないかと思うのですけどね。
知略戦や3つ巴の戦いを観たいという方には文句なしにオススメできる作品です。
KLY
結局秋山への復讐というのは言い換えれば秋山をライアーゲームの敗者にすることなんですが、これが案外事務局もイイヤツで、“正々堂々戦った上で”なんですよね(笑)仰るとおり出場者は事務局が選べるので、今回は桐生と張本が事務局的には刺客ということになるのでしょうけど。
ただ残念ながらどう観ても色物な張本に秋山をピンチに陥らせる役目を与えたのはどうかなぁ。明らかに桐生の方が切れてる男だし、実際あっという間に張本は潰されましたし。
鼎戦の面白いところではありますが、このゲームの負けはあくまでLOOSERになった時点のことで、秋山に止めを刺さないうちに張本と桐生が争い始めてしまったのが彼らの敗因ですね。