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映画「デイブレイカー」感想(DVD観賞)

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映画「デイブレイカー」をレンタルDVDで観賞しました。
日本では2010年に公開されたオーストラリアとアメリカの合作映画で、人類が絶滅寸前となりヴァンパイアが世界を支配する近未来を舞台に繰り広げられるSFアクション・スリラー。
劇場公開当時は熊本での上映が全くなく、涙を呑んで観賞を見送った経緯がありました(T_T)。
作中では流血シーンが何度も登場したり、ヴァンパイアが生きながらに焼き尽くされる描写があったりするため、映画館ではR-15指定されていました。

物語の年代は2019年。
1匹のコウモリから爆発的に伝播したウィルスにより、人類の95%は不老不死となる代わりに、紫外線に弱く、人の血を飲まなければならないヴァンパイアと化していました。
一方で、ウィルスの伝播と、ヴァンパイアの食糧としてターゲットにされてしまった人類はその数を著しく減らし、今や世界全人口のわずか5%を占めるのみの少数派にまで落ち込んでいました。
ヴァンパイアの人口が圧倒的なのに、彼らの食糧となる人類が激減しているわけですから、ヴァンパイアの社会では当然のごとく食糧不足の問題が発生することになります。
ヴァンパイアは不老不死ではあるのですが、長期にわたって人間の血液を採取しない状態が続くと、脳の前頭葉が破壊されて理性が失われ、ただひたすら血を求めて凶暴化する「サブサイダー」と呼ばれるモンスターに変容してしまうのです。
渇きを癒すためにヴァンパイア同士で血を吸い合ったり、自分自身の血を吸ったりすれば、さらに「サブサイダー」までの行程が加速するというオマケつきで、「サブサイダー」も年々増加傾向にあり社会問題化しつつありました。
この問題に対処すべく、世界では血液を採取することを目的とした「人間の家畜化」が推進される一方で、人間の血に変わる代用血液の研究開発が行われていました。
しかし、絶対数が少ない人間を家畜化するだけでは採取する血液の量に限界があり、また開発中の代用血液はヴァンパイアの身体が拒絶反応を起こすなど問題が多く、実用化までには至っていないのが実情。
ヴァンパイアも人類も、それぞれ形の異なる滅亡に向かって突き進みつつある、先の展望がまるで見えない時代でした。

今作の主人公エドワード・ダルトンは、巨大製薬会社ブロムリー=マークス社で代用血液の研究に従事しているエリート研究者。
彼は元々、自分からヴァンパイアになりたかったわけではなく、人間の血を啜って生きながらえるヴァンパイアというあり方を嫌悪していました。
代用血液を研究開発していたのも、それができれば人間の血を飲まなくて済むから、という一心によるものでした。
しかし、代用血液の人体(?)実験では、血液を注射した被験体の体調が激変を来たした挙句に身体ごと爆散してしまうなど、ロクでもない成果しか上げられず、苛立つ日々が続いていました。
そんなある日の夜、エドワードは車で自宅へと帰る途中で、猛スピードで走ってきた対向車との事故に巻き込まれてしまいます。
エドワードは車の様子を見に行くのですが、車に乗っていたのは何と人間で、エドワードにクロスボウを突きつけてきます。
何故クロスボウなのかというと、クロスボウの矢が「心臓に杭を打ち込む」的な役割を果たすことでヴァンパイア殺傷の武器となるため。
しかしエドワードは、人間達を自分の車に避難させて隠し、事故を聞きつけ駆けつけた警察に嘘の情報を教えることで彼らを逃がしたのでした。
この行為に何か感じるものがあったのか、逃がしてもらった人間達のひとりであるオードリー・ベネットは、車の中にあった身分証から判明したエドワードの家を訪れ、「ひとりで来い」と言う条件付で、真昼間にとある草原へ来るようにとのメッセージを残します。
車の窓を全て遮蔽し、テレビで外の景色を確認しながら車を走行できる「日中運転モード」に切り替えて車を走らせ、メッセージの通りに草原へとやってきたエドワードは、そこでオードリーにひとりの男を紹介されます。
その男ライオネル・コーマックは、肌を紫外線に晒しても焼け爛れないことから確かに人間であるはずなのですが、首筋には紛れもないヴァンパイアの噛み跡が。
彼は、自分がかつてヴァンパイアであり、その上で人間に戻ったという過去を披露するのでした……。

映画「デイブレイカー」は、ヴァンパイアを扱った作品でありながら、既存のオーソドックスなヴァンパイア作品とは大きく一線を画する存在ではありますね。
ヴァンパイアと人間の立場が逆転していたり、それ故に食糧事情が切迫する様が描かれていたり、ファーストフード?の売店ではABO式血液型別に血が売られていたり。
日光(紫外線)に弱いヴァンパイアが日中に外で車を走らせても平気なように「日中運転モード」が搭載されている車などは、作中とは別の理由で現実にも登場しそうな実用性の高い車だったりしますし。
また、ヴァンパイアの成れの果てである「サブサイダー」を処刑する描写もなかなかユニークで、「サブサイダー」達を集団で鎖にかけ、装甲車で強制的に日向にまで引きこんで焼き殺すというもの。
日光でヴァンパイアを処刑する、という手法自体は、同じくヴァンパイアを扱っている映画「アンダーワールド ビギンズ」でも披露されていましたが、「デイブレイカー」のそれは現代ならではの光景ですね。
一方、ヴァンパイアの「永遠に生きる」という属性に希望や展望ではなく絶望を見出してヴァンパイアを忌避する人間がいたり自殺するヴァンパイアが出たりする光景は、どことなく映画「TIME/タイム」に通じるものがありました。
老いや病気を気にする必要がない(ヴァンパイアになることで癌が治った人間がいたりしますし)のに、それでもなお「永遠に生きる」ことに葛藤する、というのは一見すると理解に苦しむ話ではあるのですが、これはやはり文化的なものも絡んでいたりするのでしょうか?

作中では、ライオネル・コーマックによって、ヴァンパイアから人間に戻る方法が2つ提示されています。
ひとつは、日光を浴びて身体が燃え出した瞬間、ただちに火を消して焼死を回避すること。
二つ目は、ヴァンパイアから人間に戻った者の血液をヴァンパイアが採取すること。
原理は作中でも全く説明されていないのですが、身体が紫外線を受けて燃え上がることでヴァンパイアウィルスが死滅すると共に抗体も出来、抗体はそれを採取した者の中でヴァンパイアウィルスを安全確実に殺してしまう、といったところになるでしょうか。
この設定の面白いところは、ヴァンパイアから人間に戻った者が、血に飢えたヴァンパイア達の真っ只中に放り出された際に発生する光景にあります。
血に飢えたヴァンパイア達は、人間を見るや集団で襲いかかり、肉を食いちぎったり手足や首をもぎ取ったりしてその人間を殺して血を啜りまくります。
すると、その血を飲んだヴァンパイアは当然人間に戻ります。
ところが周囲はまだヴァンパイアで囲まれているため、今度は人間に戻った者達がさらに残存のヴァンパイア達に襲われ、最初のケースと同じやり方で殺され血を飲み干されます。
するとそのヴァンパイア達も人間に戻り、彼らもさらにその周囲のヴァンパイア達によって……という半ばネズミ講的なサイクルが、最終的にヴァンパイアがいなくなるまで延々と繰り返されるんですね。
これはヴァンパイアの一般的なイメージやあり方を逆手に取り、なおかつヴァンパイアの破滅的な欲望を表現するものとしては非常に秀逸な描写であると言えます。
描写自体はR-15指定されるほどに結構グロいのですが、ヴァンパイア好きな方にとってはこれだけでも一見の価値がある映像と言えますね。

「俺達の戦いはこれからだ!」的な終わり方をしていますが、続編あるのでしょうかね、これって。
設定自体は良く練られており、ストーリーもそれを上手く生かしているだけに、続編があったら是非観てみたいところです。

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