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銀英伝2次創作「亡命編」におけるエーリッヒ・ヴァレンシュタイン考察11

エーリッヒ・ヴァレンシュタインは、「本編」の初期の頃から一貫して「弁護士になりたい」という夢を語っています。
何でも、尊敬する(今世の)父親の職業が弁護士だったので、一緒に仕事をしたいというのが元々の理由だったとのこと。
その父親が変死しても「弁護士になりたい」という志望そのものは全く変わらなかったようで、「亡命編」でも同盟で弁護士資格を得るための勉強を行い、弁護士として生計を立てる計画を構想していたりします。
じゃあ何故同盟軍に入ってしまったんだ、とは以前の考察でも述べたことですが、実のところ、そもそもヴァレンシュタインは弁護士としての適性そのものが全く垣間見られない惨状を呈していたりするんですよね。
あの対人コミュニケーション能力の致命的な欠如ぶりと「何が何でも自分は正しく他人が悪い」という自己中心的な思考法は、弁護士のみならず「人付き合い」を重視する全ての職種で諸々の軋轢を引き起こすに充分過ぎるものがあります。
法廷の場でも、自制心そっちのけで依頼主や訴訟相手を罵倒しまくって審議を止めてしまったり、素行不良から法廷侮辱罪に何度も問われたりで、民事・刑事を問わず、裁判自体をマトモにこなすことすら困難を極めるであろうことは最初から目に見えています。
そして何よりも、今回取り上げることとなる38話の軍法会議の様相を見てみると、弁護士のみならず司法に携る者として最も大事なものがヴァレンシュタインには完全に抜け落ちてしまっており、性格面のみならず能力的にもこの手の職種に向いていないことが一目瞭然なのです。
作中で少しも言及すらされていない罪状の数々を前に、三百代言の詭弁にさえなっていない支離滅裂な内容の答弁でもって裁判に勝てるなんて、私に言わせればまさに「神(作者)の奇跡」以外の何物でもないのですが。
それでは、いよいよ第6次イゼルローン要塞攻防戦の締めを飾ることになる、自由惑星同盟軍規定第214条絡みの軍法会議の実態についての検証考察を行っていきたいと思います。
なお、「亡命編」のストーリーおよび過去の考察については以下のリンク先を参照↓

亡命編 銀河英雄伝説~新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
http://ncode.syosetu.com/n5722ba/
銀英伝2次創作「亡命編」におけるエーリッヒ・ヴァレンシュタイン考察
その1  その2  その3  その4  その5  その6  その7  その8  その9  その10

第6次イゼルローン要塞攻防戦における214条の発動に伴い、ハイネセンに帰還後、その是非について審議を行うための軍法会議が開廷されることとなりました。
これまで検証してきたように、ヴァレンシュタインは214条発動の件以外でも軍法会議で裁かれるに値する軍規違反行為を引き起こしていますし、214条発動自体、法的な発動条件が整っていたとは到底言い難いものがあります。
ところが作中における軍法会議では、まるで最初からヴァレンシュタインの勝利が確定しているかのような楽勝ムードで話が進行していくんですよね↓

http://ncode.syosetu.com/n5722ba/38/
> 「偽りを述べると偽証罪として罰せられます、何事も偽りなく陳述するように」
> 判士長であるシトレ元帥が低く太い声で忠告し、ヴァレンシュタイン大佐が頷きました。私の時もありましたが身体が引き締まった覚えがあります。
>
> 宣誓が終わると早速検察官が質問を始めました。眼鏡をかけた痩身の少佐です。ちょっと神経質そうで好きになれない感じです。大佐を見る目も当然ですが好意的ではありません。何処か爬虫類のような目で大佐を見ています。
>
> 無理もないと思います。これまで開かれた六回の審理では原告側はまるで良い所が有りません。
いずれも皆、ロボス元帥の解任は至当という証言をしているのです。特に “ローゼンリッターなど磨り潰しても構わん! 再突入させよ!” その言葉には皆が厳しい批判をしました。検察官が口籠ることもしばしばです。

この審議過程を見ただけでも、今回の裁判における当事者達全員が「政治の問題」と「法規範の問題」を混同して論じているのが一目瞭然ですね。
この軍法会議で争点となるのは、最前線における214条発動およびロボスの解任強行が「法的に」かつ「緊急避難措置として」妥当なものだったのか、というものであるべきでしょう。
作中で説明されている法の内容に関する説明を見ても、それは明らかです↓

http://ncode.syosetu.com/n5722ba/29/
> 自由惑星同盟軍規定、第二百十四条……。細かな文言は忘れましたが戦闘中、或いはそれに準ずる非常事態(宇宙嵐、乱気流等の自然災害に巻き込まれた時を含む)において指揮官が精神的、肉体的な要因で指揮を執れない、或いは指揮を執るには不適格だと判断された場合(指揮官が指揮を執ることで味方に重大な損害を与えかねない場合だそうです)、その指揮下に有る部下が指揮官を解任する権利を有するといった内容の条文です。
(中略)
> 第二百十四条が適用された場合、後日その判断の是非を巡って軍法会議が開かれることになります。第二百十四条は緊急避難なのですからその判断の妥当性が軍法会議で問われるのです。軍の命令系統は上意下達、それを揺るがす様な事は避けなければなりません。そうでなければ第二百十四条は悪用されかねないのです。
(中略)
> この第二百十四条が適用されるのは主として陸戦隊が多いと聞いています。凄惨な白兵戦を展開している中で指揮官が錯乱し判断力を失う……。特に実戦経験の少ない新米指揮官に良く起こるそうです。

この立法趣旨から考えれば、あくまでも緊急避難の手段である214条は、その「緊急避難」の内容や是非こそが最も大事なのです。
ロボスがどれだけ無能だろうが失言をやらかそうが、その責任追及は戦闘終結後にいくらでも行える「先送りもやり直しも充分に可能なもの」でしかなく、それだけでは「緊急避難」の要件を満たすものではありえません。
上記引用にもあるように「司令官が発狂した」とか「司令官に明確な軍規違反行為があり、かつそれが味方を壊滅に追いやったり民間人に大被害が出たりする」とかいった事態でもなければ、「緊急避難」としての大義名分になどなりえないでしょう。
ロボスが無能で失言をやらかしたという「総司令官としての責任および政治的問題」と、最前線という場での解任強行についての是非という「法規範の問題」は、本来全く別に分けて論じるべき事案なのです。
また、数百万の艦隊を率いる総司令官という社会的地位と立場、および一会戦毎に最低でも数十万単位の人間が戦死する銀英伝世界の事情から考えると、数で言えば十万もいるかどうかというレベルの陸戦部隊がたとえ全滅したとしても、全体的なパーセンテージから見てそれが「【軍にとっての】重大な損害」であるとは言えません。
ただでさえ、軍における司令官という存在は、軍事的成果を上げるため、自軍の一部に犠牲を強いるような決断を余儀なくされることも珍しくない立場にあります。
それに対して「司令官として不適格」という烙印をいちいち押しまくっていたら、それこそ「一部の犠牲を忌避して全軍瓦解の事態を招く」という本末転倒な「【軍にとっての】重大な損害」を招くことにもなりかねないのです。

「【軍にとっての】重大な損害」というのであれば、むしろ214発動に伴う指揮系統の混乱の方がはるかにリスクが大きいのです。
最前線において指揮系統の混乱の隙を敵に突かれてしまえば、それこそ全軍瓦解の危機に直面することにもなりかねません。
そればかりか、214条発動で取って代わった臨時司令官を他の軍人達が承認せずに「非合法的な軍事クーデター」「反乱軍」と見做し、解任された上位者を担ぎ上げて再度叛旗が翻されるといった事態すらも構造的には起こりえるのです。
前回の考察でも引き合いに出していた映画「クリムゾン・タイド」でも、原子力潜水艦の艦長を解任した副長に不満と不安を抱いた艦長派の軍人達が、監禁状態にあった艦長を解放して担ぎ上げ、武器まで持ち出して副長のところに殴り込みをかけ、あわや一触即発の危機が現出した、という描写が展開されていました。
敵との戦闘が行われている最中、敵の眼前で味方同士が相撃つ事態なんて、それ自体が「【軍にとっての】重大な損害」、最悪は全軍壊滅という結末すらもたらしかねない超危機的状況なのですが。
ごく一部の部隊を救うために「軍事クーデター」紛いのことを引き起こして軍の秩序と指揮系統を混乱させ、全軍瓦解の危機を招くということが、果たして称賛されるべきことなのでしょうか?
すくなくとも、イゼルローン要塞に突入した陸戦部隊以外に所属する大多数の軍人達にとっては、それによって自分の生死が悪い方向へ作用することにもなりかねなかったわけで、むしろ214条発動に対する非難の声が沸き起こったとしてもおかしくないのではないかと思うのですけどね。
軍法会議の当事者達は、そういったリスクまで考えた上で214条発動の妥当性を論じているのでしょうか?
何よりも、214条発動の正しさを信じて疑わないヴァレンシュタインは、「陸戦部隊を救うために陸戦部隊以外の軍人全てを危機に陥れた」という構造的な問題を、果たして自覚できているのでしょうか?
「結果として犠牲が少なかったのだから……」などという言い訳は、こと裁判で有罪無罪の是非を論じる際には全く使えないどころか、むしろ「有罪の立証」にしかなりえないものでしかないのですけどねぇ。

さて、214条発動の妥当性を訴えるヴァレンシュタインの答弁ですが、これがまたありえないレベルで支離滅裂なタワゴトだったりするんですよね(苦笑)。
裁判の場におけるやり取りというよりは、トンチ小僧の一休さんと将軍様OR桔梗屋とのやり取りを髣髴とさせるシロモノでしかないですし↓

http://ncode.syosetu.com/n5722ba/38/
> 「ヴァレンシュタイン大佐、貴方とヤン大佐、ワイドボーン大佐、そしてミハマ大尉は総司令部の作戦参謀として当初仕事が無かった、そうですね?」
> 「そうです」
>
> 「詰まらなかった、不満には思いませんでしたか?」
> 「いいえ、思いませんでした」
> 大佐の言葉に検察官が眉を寄せました。
不満に思っているという答えを期待していたのでしょう、その気持ちが二百十四条の行使に繋がったと持っていきたいのだと思います。
>
> 「おかしいですね、ヴァレンシュタイン大佐は極めて有能な参謀です。それが全く無視されている。不満に思わなかったというのは不自然じゃありませんか?」
> ヴァレンシュタイン大佐が微かに苦笑を浮かべました。
>
>
「仕事をせずに給料を貰うのは気が引けますが、人殺しをせずに給料を貰えると思えば悪い気持ちはしません。仕事が無い? 大歓迎です。小官には不満など有りません」
> その言葉に傍聴席から笑い声が起きました。検察官が渋い表情で傍聴席を睨みます。
>
> 「静粛に」
> シトレ元帥が傍聴席に向かって静かにするようにと注意しました。検察官が幾分満足げに頷きながら傍聴席から視線を外しました。そして表情を改めヴァレンシュタイン大佐を見ました。
>
> 「少し発言には注意してください、場合によっては法廷侮辱罪が適用されることもあります」
>
「小官は宣誓に従って真実を話しているだけです。侮辱するような意志は有りません」
> ヴァレンシュタイン大佐の答えに検察官がまた渋い表情をしました。咳払いをして質問を続けます。

ヴァレンシュタインって弁護士志望なのに、法廷侮辱罪がどういうものであるのかすらも理解できていないのですかね?
法廷侮辱罪における「侮辱」とは、裁判所の規則・命令などの違反・サボタージュ行為や裁判および裁判所そのものの権威を害する行為と定義されており、その中には審議を妨害すると判断される不穏当・不適切な言動なども含まれます。
現実世界の諸外国では、ズボンを下げてはく「腰パン」で裁判所に出廷した男が法廷侮辱罪に問われたり、法廷の場でチューイングガムを膨らませて破裂させた男が同じく法廷侮辱罪で禁固30日を言い渡されたりする事例があったりします。
法廷侮辱罪は、法廷の場における非礼・無礼な発言どころか、裁判の内容とは何の関係のないルックスや癖のような行動だけでも、その是非は別にして処罰の対象には充分なりえるわけです。
件のヴァレンシュタインの言動は、法廷の場における非礼・無礼な発言であることはむろんのこと、軍に対するある種の罵倒・誹謗にも該当します。
軍の職務を「人殺しの仕事」と断じ、怠けることを正当化する発言なんて、現代日本ですら非難の対象になるのは、かつての民主党政権における仙谷「健忘」長官の「暴力装置」発言の報道などを見ても一目瞭然です。
ましてや、日本以外の国における軍というのは、国民から一定の尊敬と敬意を払われるのが常なのですからなおのこと、軍に対する誹謗の類は下手すれば人非人的な扱いすら受けても文句が言えるものではないでしょう。
というか、法廷どころか一般的な社会活動やビジネスの場においてさえ、場の秩序を破壊しかねない非礼な言動をやらかせば、その態度を咎められるのは至極当然のことでしかないのですが。
この軍法会議におけるヴァレンシュタインの発言は、ヴァレンシュタイン的に真実を話していようがいまいが、その内容だけで法廷侮辱罪に問われるには充分過ぎるものがあります。
「真実を話しているだけ」「侮辱するような意志は有りません」とさえ言えばどんな非礼な暴言をやらかしても許される、というのであれば、法廷や裁判の内容に不満を持つ者は皆それを免罪符にして法廷を侮辱する諸々の行為をおっぱじめてしまうことにもなりかねないではありませんか。
ヴァレンシュタインは弁護士や法律に関する勉強どころか、「一般的な社会的常識を一から学習し直す」というレベルから人生そのものをやり直した方が良いのではないのでしょうか?

勝利を確信して思い上がっているのか、実は桁外れに危機的な状況に今の自分が置かれている事実に全く気づけていないのか、ヴァレンシュタインの法廷それ自体を侮辱するかのごとき言動はとどまるところを知りません↓

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> 「不謹慎ではありませんか? 作戦参謀でありながら仕事をしないのが楽しいなどとは。その職務を果たしているとは思えませんが?」
> 少し粘つくような口調です。ようやく突破口を見つけた、そう思っているのかもしれません。
>
>
「小官が仕事をすると嫌がる人が居るのです。小官は他人に嫌がられるような事はしたくありません。特に相手が総司令官であればなおさらです。小官が仕事をしないことで総司令官が精神の安定を保てるというなら喜んで仕事をしません。それも職務でしょう」
> そう言うと大佐は僅かに肩をすくめるしぐさを見せました。その姿にまた傍聴席から笑い声が起きました。

これなんて、ヴァレンシュタインのロボスやフォークに対する罵倒や非難や諫言などの一切合財全てが「嫌がらせ」の一環として行われていた、と自分から告白しているも同然のシロモノでしかありませんね(爆)。
ロボスに対するヴァレンシュタインの上官侮辱罪が、軍の秩序や最善を尽くす目的から出たものではなく単なる個人的感情に基づいたものでしかないことを、ヴァレンシュタインは自ら積極的に裏付けてしまっているわけで、これはまた悲惨過ぎる自爆発言以外の何物でもないでしょう。
裁判を舐めきって次から次に墓穴を掘りまくっているはずのヴァレンシュタインに対して、しかし検察官は何故か一層悲痛な面持ちで質問を繰り返すありさまです↓

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> 「十月に行われた将官会議についてお聞きします。会議が始まる前にグリーンヒル大将から事前に相談が有りましたか?」
> 「いいえ、有りません」
> その言葉に検察官の目が僅かに細まりました。
>
> 「嘘はいけませんね、大佐。グリーンヒル大将が大佐に、忌憚ない意見を述べるように、そう言っているはずです」
> 「そうですが、それは相談などではありません。小官が普段ロボス元帥に遠慮して自分の意見を言わないのを心配しての注意です。いや、注意でもありませんね、意見を述べろなどごく当たり前の事ですから」
>
> 検察官がまた表情を顰めました。
検察官も気の毒です、聞くところによると彼はこの軍法会議で検察官になるのを嫌がったそうです。どうみても勝ち目がないと思ったのでしょう。ですが他になり手が無く、仕方なく引き受けたと聞いています。

もし私が件の検察官の立場にいたら「表情を顰め」るどころか、むしろ「勝利を確信した得意満面な笑み」すら浮かべるところですけどねぇ(苦笑)。
何しろこの時点でさえも、ヴァレンシュタインの法廷侮辱罪と上官侮辱罪は既に確定しているも同然であるばかりか、それらが情状酌量の余地すらも皆無なものであることを、当のヴァレンシュタイン自身が自ら積極的に裏付けていっているのですから(爆)。
そして、特に上官侮辱罪の有罪が確定すれば、214条発動の件もそれと関連付けることで、ヴァレンシュタインの正当性、および判事を中心とするヴァレンシュタインに対する心証の双方に大きなダメージを与えることも可能となります。
状況証拠的に見ても、個人的感情から上官侮辱罪をやらかして平然としているような人間が全く同じ動機から214条発動を行わないわけがない、と第三者から判断されても何ら不思議なことではないばかりか、むしろそれが当然の帰結ですらあるのですから。
検察側から見れば、「どうみても勝ち目がない」どころか「(検察側の)負ける要素が全く見出せない」というのが正しい評価なのですけどね、この軍法会議は。

全体的な流れから見れば枝葉末節な部分ばかり論じつつ、しかもそこでさえ、ひたすら墓穴を掘るばかりのヴァレンシュタイン。
既に取り返しのつかない失点を稼ぎまくっているヴァレンシュタインは、しかしその事実を少しも認識すらすることなく、今度は25話でフォークを卒倒させロボスを侮辱した件についての正当性を述べることとなります↓

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> 「大佐はどのように受け取りましたか?」
> 「その通りに受け取りました。将官会議は作戦会議なのです、疑義が有ればそれを正すのは当然の事です。そうでなければ不必要に犠牲が出ます」
> 検察官がヴァレンシュタイン大佐の言葉に一つ頷きました。
>
> 「ヴァレンシュタイン大佐、大佐は将官会議でフォーク中佐を故意に侮辱し、会議を終了させたと言われています。今の答えとは違うようですが」
> 低い声で検察官が問いかけます。勝負所と思ったのかもしれません。
>
> 傍聴席がざわめきました。この遠征で大佐が行った行動のうち唯一非難が出るのがこの将官会議での振る舞いです。私はその席に居ませんでしたが色々と話は聞いています。確かに少し酷いですし怖いと思いました。
>
> 大佐は傍聴席のざわめきに全く無関心でした。検察官が低い声を出したのにも気付いていないようです。穏やかな表情をしています。
>
「確かに小官はフォーク中佐を故意に侮辱しました。しかし将官会議を侮辱したわけではありません。フォーク中佐とロボス元帥は将官会議そのものを侮辱しました」
>
> 「発言には注意してください! 名誉棄損で訴えることになりますぞ!」
> 検察官がヴァレンシュタイン大佐を強い声で叱責しました。ですが大佐は先程までとは違い薄らと笑みを浮かべて検察官を見ています。思わず身震いしました、大佐がこの笑みを浮かべるときは危険です。
>
> 「将官会議では作戦の不備を指摘しそれを修正することで作戦成功の可能性を高めます。あの作戦案には不備が有りました、その事は既に七月に指摘してあります。にもかかわらずフォーク中佐は何の修正もしていなかった。小官がそれを指摘してもはぐらかすだけでまともな答えは返ってこなかった」
> 「……」
>
> 「フォーク中佐は作戦案をより完成度の高いものにすることを望んでいたのではありません。彼は作戦案をそのまま実施することを望んでいたのです。そしてロボス元帥はそれを認め擁護した……」
> 「……」
>
>
「彼らは将官会議を開いたという事実だけが欲しかったのです。そんな会議に何の意味が有ります? 彼らは将官会議を侮辱した、だから小官はフォーク中佐を挑発し侮辱することで会議を滅茶苦茶にした。こんな将官会議など何の意味もないと周囲に認めさせたのです。それが名誉棄損になるなら、どうぞとしか言いようが有りません。訴えていただいて結構です」
>
> 検察官が渋い表情で沈黙しています。名誉棄損という言葉にヴァレンシュタイン大佐が怯むのを期待したのかもしれません。甘いです、大佐はそんなやわな人じゃありません。外見で判断すると痛い目を見ます。外見は砂糖菓子でも内面は劇薬です。

一般的な裁判ではあるまいし、何故ここで出てくる罪名が「名誉毀損」なのでしょうか?
ここで本来出すべき罪名は上官侮辱罪でしょうに。
ロボスに214条を発動しても、ロボスが第6次イゼルローン要塞攻防戦におけるヴァレンシュタインの上官であるという事実は全く消えることなどないのですし、軍法会議で勝訴しても、それが適用されるのはあくまでも214発動についてのみであり、上官侮辱罪までもが免罪されるわけではないのですが。
民法で定められた名誉毀損や刑法における名誉毀損罪があくまでも「個人」に対するものであるのに対して、軍法における上官侮辱罪は「軍」に対して犯す犯罪行為であるとされており、その意味合いも刑罰も名誉毀損とは全く異なります。
軍に対する犯罪行為を犯した、という時点で、軍法会議におけるヴァレンシュタインの有罪は確定したも同然となってしまうのですけどねぇ(苦笑)。
この軍法会議の場でまたもやロボスに対する罵倒を蒸し返していることも、「上官侮辱罪の現行犯」として普通に不利に働くのですし。
しかも前述したように、上官侮辱罪が確定してしまったら、それが214条発動の件とも関連付けられるのは確実なのですから、なおのことヴァレンシュタインは進退窮まることになってしまうのですが。
そして、ロボスやフォークが将官会議を侮辱していたという事実が正しいとしても、その行為自体は何ら軍法に抵触するものではないのに対して、ヴァレンシュタインの上官侮辱罪は完全無欠な軍規違反行為です。
すくなくとも法的に見れば、裁かれるべきは上官侮辱罪を犯したヴァレンシュタインただひとりなのであり、ロボスやフォークの行為は何ら問題となるものではないのです。
ロボスやフォークの行為が「政治的・軍事的」に問題があるからといって、自身の「法的な」違反行為が免罪されるとでも思っているのでしょうか?
それこそ、法律を何よりも重視すべき弁護士が一番陥ってはならない陥穽でもあるはずなのですけどねぇ(笑)。

読者の視点的には自滅と奈落への道をひたすら爆走しているようにしか見えないのに、当のヴァレンシュタインは逆に勝利を確信すらしており、むしろここが勝負どころとばかりに、214条発動の正当性を訴え始めます。
しかし、その弁論内容がまた何とも笑えるシロモノでして↓

http://ncode.syosetu.com/n5722ba/38/
> 「フォーク中佐は健康を損ねて入院していますが……」
> 「フォーク中佐個人にとっては不幸かもしれませんが、軍にとってはプラスだと思います」
> 大佐の言葉に傍聴席がざわめきました。酷いことを言っているというより、正直すぎると感じているのだと思います。
>
> 「検察官はフォーク中佐の病名を知っていますか?」
> 「転換性ヒステリーによる神経性盲目です……」
> 「我儘一杯に育った幼児に時としてみられる症状なのだそうです。治療法は彼に逆らわないこと……。
彼が作戦を立案すると誰もその不備を指摘できない。作戦が失敗しても自分の非は認めない。そして作戦を成功させるために将兵を必要以上に死地に追いやるでしょう」
>
> 法廷が静まりました。隣にいるシェーンコップ大佐も表情を改めています。
>
「フォーク中佐に作戦参謀など無理です。彼に彼以外の人間の命を委ねるのは危険すぎます」
> 「……」
>
>
「そしてその事はロボス元帥にも言えるでしょう。自分の野心のために不適切な作戦を実施し、将兵を無駄に戦死させた。そしてその現実を認められずさらに犠牲を増やすところだった……」
> 「ヴァレンシュタイン大佐!」
> 検察官が大佐を止めようとしました、しかし大佐は右手を検察官の方にだし押さえました。
>
> 「もう少し話させてください、検察官」
> 「……」
>
「ロボス元帥に軍を率いる資格など有りません。それを認めればロボス元帥はこれからも自分の野心のために犠牲者を増やし続けるでしょう。第二百十四条を進言したことは間違っていなかったと思っています」
>
>
この発言が全てを決めたと思います。検察官はこれ以後も質問をしましたが明らかに精彩を欠いていました。おそらく敗北を覚悟したのでしょう。

……あの~、犯罪者の自己正当化よろしくヴァレンシュタインがしゃべり倒した一連の発言の一体どこに、「(軍法会議の帰趨を決するだけの)全てを決めたと思います」と評価できるものがあるというのでしょうか?
ヴァレンシュタインが長々と主張していたのは「ロボスやフォークの軍人としての無能低能&無責任」だけでしかなく、それだけで「214条発動を正当化しえるだけの緊急避難性を有する」とは到底判断しえるものではないのですが。
何度も言っていますが、ロボスやフォークが無能低能&無責任というだけであれば、戦闘が終わってハイネセンに帰還してから改めてその責を問うという方針でも、何ら問題が生じることはありえません。
ロボスが総司令官であることを鑑みれば、最前線の陸戦部隊が仮に壊滅したとしても、全軍の規模からすればその損害も微々たるものでしかない以上、緊急避難としての要素を満たすものとは到底なりえず、これまた戦後に責任を追及すればそれで足りることです。
そもそも、当のヴァレンシュタイン自身、第6次イゼルローン要塞攻防戦時におけるロボスが、遠征軍全てを壊滅状態に追い込むほどの状態にあるとまではさすがに断じえておらず、最悪でもせいぜい陸戦部隊の壊滅に止まるという想定が関の山だったはずでしょう↓

http://ncode.syosetu.com/n5722ba/26/
> 問題は撤退作戦だ。イゼルローン要塞から陸戦隊をどうやって撤収させるか……。いっそ無視するという手もある。犠牲を出させ、その責をロボスに問う……。イゼルローン要塞に陸戦隊を送り込んだことを功績とせず見殺しにしたことを責める……。
>
> 今日の会議でその危険性を俺が指摘した。にもかかわらずロボスはそれを軽視、いたずらに犠牲を大きくした……。
ローゼンリッターを見殺しにするか……、だがそうなればいずれ行われるはずの第七次イゼルローン要塞攻略戦は出来なくなるだろう。当然だがあの無謀な帝国領侵攻作戦もなくなる……。トータルで見れば人的損害は軽微といえる……。

ヴァレンシュタイン御用達の原作知識とやらから考えても、アムリッツァの時はともかく、第6次イゼルローン要塞攻防戦当時のロボスにそれ以上のことなどできるはずがないであろうことは、さすがのヴァレンシュタインといえども認めざるをえなかったわけでしょう。
そして、214条の立法趣旨から言えば、ロボスが総司令官の職にあることで遠征軍それ自体が壊滅レベルの危機に直面する、もしくはロボスに重度の精神錯乱ないしは重大な軍規違反行為が認められ総司令官としての任務遂行それ自体に多大な支障をもたらす、といった事態でもない限り、「214条発動を正当化しえるだけの緊急避難性を有する」とは雀の涙ほども断じられるものではありません。
ましてや、214条の発動それ自体が全軍に混乱をもたらしかねない極めて危険な要素があることを考えればなおのこと、その危機的状況をすらも上回る、それも「一刻を争う」「やり直しも先送りも全くできず、その場での決断を余儀なくされる」レベルの超緊急避難性を、ヴァレンシュタインが軍法会議で主張しなければならないのは自明の理というものです。
この「214条発動を正当化しえるだけの緊急避難性」について、軍法会議におけるヴァレンシュタインは実質的に何も主張していないも同然なのです。
自らの正当性について何も主張していないのに、それが何故「(軍法会議の帰趨を決するだけの)全てを決めたと思います」という話になってしまうのでしょうか?

というか、一連のやり取りを見ていると、ヴァレンシュタインはただ単に「ロボスやフォークに対する自分の印象や評価」を述べているだけでしかなかったりするんですよね。
原作知識があるとは言え、個人的な印象や評価が最悪だから軍法を悪用した緊急避難措置を行っても許される、と言わんばかりなわけです。
これって原作「銀英伝」における救国軍事会議クーデターや、戦前の日本で5・15事件や2・26事件を引き起こした青年将校達の論理と、根底の部分は全く同じであるとしか言いようがありませんね。
当のヴァレンシュタイン自身が常に抱いている「自分は絶対に正しく他人が悪い」という独善的な発想からして、「我々は理想や大儀があるから絶対に腐敗などしない!」などとほざいていた救国軍事会議クーデターの面々に通じるものがあるのですし(笑)。
そう考えると、他に担ぎ上げる人物がいなかったとは言え、グリーンヒル大将を押し立てて214条を発動させるというヴァレンシュタインのやり方それ自体が、形を変えた救国軍事会議クーデターそのものであるとも言えるわけで、何とも皮肉な限りではありますね(苦笑)。
ひょっとするとヴァレンシュタインは、原作における救国軍事会議クーデターが実は正しいものであると信じていて、彼らの主張に共感したりしていたのでしょうか?
まあ、文字通りの「自制心がなく常に暴走する青年将校」という点で共通項があるわけですから、好悪いずれにせよ感情的な反応を示さない方がむしろ不思議な話ではあるのかもしれませんが(爆)。
これでヴァレンシュタインが、原作における救国軍事会議クーデターの構成メンバーを罵倒しまくっていたりしていたら、なかなかに面白い同族嫌悪・近親憎悪な構図であると言わざるをえないところですね(笑)。

ここまで主張に穴がありまくり過ぎる上に、214条の正当性について何も述べていないに等しいヴァレンシュタインに対して、しかし何故軍法会議は無罪判決なんて下してしまうのでしょうかねぇ。
214条発動の件とは別に総司令官としての責任が問われる立場にあるロボスはともかく、ヴァレンシュタインが無罪というのはどう考えてもありえない話なのですが↓

http://ncode.syosetu.com/n5722ba/38/
> 軍法会議が全ての審理を終え判決が出たのはそれから十日後の事でした。グリーンヒル参謀長とヴァレンシュタイン大佐は無罪、そしてロボス元帥には厳しい判決が待っていました。
>
> 「指揮官はいかなる意味でも将兵を己個人の野心のために危険にさらす事は許されない。今回の件は指揮官の能力以前の問題である。そこには情状酌量の余地は無い」

「亡命編」38話時点において、ヴァレンシュタインが犯した軍規および法律に対する違反行為というのは、実にこれだけのものがあったりするんですよね↓

1.フェザーンにおける帝国軍人との極秘接触スパイ容疑、国家機密漏洩罪)
2.ヴァンフリート星域会戦後の自爆発言スパイ容疑、必要な情報を軍上層部に対し隠匿し報告しなかった罪、国家反逆罪
3.ロボスに対する罵倒上官侮辱罪
4.214条発動(敵前抗命罪、党与抗命罪)【審議中】
5.イゼルローン要塞における敵前交渉上層部への確認を行わない独断専行、スパイ容疑、国家機密漏洩罪、国家反逆罪)
6.軍法会議における一連の言動法廷侮辱罪、上官侮辱罪

赤文字部分は事実関係から見ても無罪とは言えない嫌疑、またはヴァレンシュタイン自身が認めている罪。

作中におけるヴァレンシュタインが実際にどんな行動を取っていたかはともかく、同盟側としては状況から考えてこれだけの行為から想定される罪を嫌疑し起訴することが、理論的には充分に可能なわけです。
そして「1」「2」「3」「6」、および「5」の独断専行については、当の本人が自ら積極的に事実関係を認めてしまっているのですから、それで無罪になるということはありえません。
これだけの「前科」があるのであれば、「4」の214条発動についても、その「前科」の存在だけでまず動機が関連付けられることになってしまいますし、特に「2」で同盟に対する裏切りの意思を表明しているのは致命傷とならざるをえないでしょう。
元々「2」単独でも、ヴァレンシュタインを処刑台に送り込むには充分過ぎる威力を誇っていますし(苦笑)。
しかも最高判事であるシトレは、このヴァレンシュタインが犯した1~6の罪状を全て知り尽くしているはずなのですから、「法の公正」という観点から見てもなおのこと、ヴァレンシュタインに対して手心を加えたりなどしてはならないはずなのですが。
これで無罪になるというのは、もはやこの軍法会議それ自体が、実は軍法に基づかない「魔女裁判」「人民裁判」的な違法かつ茶番&八百長なシロモノであるとすら評さざるをえないところなのですが。
そこまでしてヴァレンシュタインに加担などしなければならない理由が、同盟軍の一体どこに存在するというのでしょうか?

また、ここでヴァレンシュタインの214条発動行為を合法として認めてしまうと、それが「判例」として成立してしまい、以後、この軍法会議の審議と判決を錦の御旗にした214条の発動が乱発される事態をも引き起こしかねません。
何しろ、個人的な評価に基づいて「あいつは無能低能&無責任である」と断じさえすれば、それが214条発動の法的根拠たりえると言っているも同然なわけなのですからね(爆)。
今後の同盟で、上官との人間関係が最悪で常に自分の意見を却下されている部下が、私怨的な理由から上官に対する214条発動を行使することなどないと、一体誰が保証してくれるというのでしょうか?
裁判における「判例」というものは、判決が下った1案件だけでなく、今後発生しえるであろう同様のケースにも適用されるものとなりえるのですから。
何よりも、同盟軍においてこの「判例」が真っ先に適用されそうな人間は、他ならぬヴァレンシュタイン自身だったりするのですし(爆)。
極端なことを言えば、フォークのような部下がヴァレンシュタインのごとき上位者に対して「あいつは無能低能&無責任である」として214条を発動したとしても、それが他者から支持されるか否かは別として法的・判例的には妥当であると見做される、などという滑稽な事態すらも将来的には招きかねないのです。
ヴァレンシュタインも一応弁護士志望だったのであれば、そして何よりも「自分が生き残る」ということを最優先目標としているのであれば、他ならぬ自分自身が作り上げてしまった「判例」が自分に跳ね返ってくる危険性を、否が応にも見据えていなければならなかったはずなのですけどねぇ。

この軍法会議におけるヴァレンシュタインの最大の問題は、「結果さえ出せれば軍規違反は正当化される」という致命的な勘違いに基づいて弁論を繰り広げていることにあります。
結果さえ出せれば過程は問われない、というのは政治に対する考え方なのであって、裁判の場ではむしろ全く逆に「過程が全て」「法律が全て」という発想で臨まなければなりません。
裁判の場において「結果を出したのだから良いじゃないか」と主張する行為は、その時点で法律違反や有罪を自分から認めているも同然であり、「戦わずして敗北している」のと何も変わるところがないのです。
裁判の場における「政治的結果」というのは、自分の罪を認めた上での情状酌量を求めるためのものでしかありえないのですから。
最初から有罪・敗訴を前提として答弁を繰り広げるなんて、弁護士の法廷戦略としては最低最悪の手法以外の何物でもありません。
その最低最悪の手法について何の疑問も嫌悪も抱くことなく、むしろ得意気になって振り回したりしているからこそ、ヴァレンシュタインに弁護士としての適性は全くないと私は評さざるをえないわけです。
今回の軍法会議でも、ヴァレンシュタインは「法的な問題」について結局何も主張していないも同然の惨状を呈していたのですし。
弁護士としてのヴァレンシュタインは、現実世界で言えば、殺人容疑の被告に対し「ドラえもんが助けてくれると思った」などと主張する行為を許したトンデモ人権屋弁護士と同レベルな存在であると言えるのではないでしょうか?

あと、今回の軍法会議における描写は、ヴァレンシュタインの弁論術とロボスに対する圧倒的優勢ぶりを際立たせることを目的に、「神(作者)」がヴァレンシュタインにとって都合の悪い罪の数々を意図的に触れさせないようにしているのがありありと見受けられますね。
軍法的には、フォークへの侮辱よりもロボスへのそれの方がはるかに重大事項であるにもかかわらず、そちらの方はおざなりな言及しかされていませんし。
他にも、前回の考察で言及した敵前交渉の決定・実行における独断専行やスパイ容疑などの件についても、法的どころか政治的な観点から見てさえも多大な問題を抱えこんでいながら、そちらに至っては一言半句たりとも言及すらされていない始末です。
まあ下手にそれらの罪を検察官が指摘してしまおうものならば、その時点で軍法会議におけるヴァレンシュタインの有罪が確定してしまうのでやりたくてもやれなかった、というのが実情ではあるのでしょうが、おかげさまでストーリー展開としてはあまりにも不自然極まりないシロモノとなってしまっています。
検察官が創竜伝や薬師寺シリーズの三流悪役ばりに無能過ぎて、およそ現実的にはありえない存在に堕していますし、前述のように裁判自体も恐ろしく茶番&八百長的な印象が拭えないところです。
作者的には、この一連の描写でヴァレンシュタインの正当性と強さを読者に見せつけたかったところなのでしょうが、最大限好意的に見ても「釣り」の類にしかなっていないですね。
主人公の有能性と人格的魅力(爆)をこんな形でしか描けない、というのは、作品および作者としての限界を示すものでもあると言えるのではないでしょうか?

次回より、第6次イゼルローン要塞攻防戦終結以降の話の検証へ移ります。

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コメント

クアン

管理人さんに、少々申し上げたいことが。

考察と称して様々に書かれていますが、このヴァレンシュタイン伝の考察には、可也誹謗中傷・非難・侮辱的な言葉や表現が使われていると見受けます。
勿論、管理人さんがご自分のブログの中で、どのような文章を書かれようともそれは管理人さんのご自由です。
しかし、そのような文章を、相手の小説ページへトラックバックを飛ばす行為はちょっと如何なんでしょう。
気に入らない相手に対して悪意ある手紙を送り続けるようなもので、陰湿な嫌がらせに類するものだと思います。
管理人さんも、ご自分やご自分の文章を散々に貶された手紙やメールを送り続けられたら嫌な気分になりませんか?
相手方がトラックバックを削除しないから、やり続けて良いものではありません。褒められた行為ではないです。常識的に考えて下さい。
トラックバックは他のブログさんなどに作品を紹介して貰って、より多くの方に読んで貰う為のものです。
それをこのような形で行うのは、正直管理人さんの常識と品性を疑ってしまいます。
悪意のある言葉は、結局それを言った管理人さんに跳ね返ってくるものです。
善意でご忠告しますが、考察を書かれるのは兎も角、内容を鑑みればトラックバックを送信するのは止めた方が良いと思います。

  • 2012/05/28 16:51:00

初見読者より

 初めて拝見いたします。

 ヴァレンシュタイン伝の批評として、特にこのサイトの考察は、小生にとって面白いと思われないことを告白します。

 批判の内容や言葉づかい、罵倒か否かなども、文芸上の技法(あるいは「芸」)の一つであることは言うまでもありません。近代文学史は同時に論争史でもあったことを想起すれば充分でしょう。

 ここのサイトの考察に小生が面白みを感じないのはなぜか。

 まず、小説に対する批評とは何か。それは、対象作品の善悪巧拙を論じることを通じて、その議論の書き手の所信、小説観を明らかにする営みである、と小生は捉えます。どのような批判であれ、あるいは否定的意図を持たない(肯定的もしくは中立的な)評論などであれ、そこには書き手の小説に対する考え方が含まれているものです。別の角度から言えば、批評の根拠として、批評の書き手自身の小説観が示されなければならないということです。そして、小生の期待する批評とは、対象作品を論じつつも、そのような小説観が端的に示されている文章(もしくは口述)を指します。

 上記の小生の批評観を踏まえると、このサイトの考察には小説観を示す箇所が欠けていると思われます。もちろん、どのようにすべきであるか、どのようにしてほしいのかは諸処に断片的に(場合によっては否定的に)言及されているのですが、端的にどのような小説がよいのか、そしてどのような二次創作がよいのか、どのような二次創作を書き手が賞賛するのかが、書き手自身の言葉で示されていません。初期の田中芳樹作品がひとつの基準として機能していることはサイトの他の部分(田中芳樹作品の批評)から拝察できるのですが、二次創作にもそれを基準とするのかどうかがわかりません。さらにいえば、初期の田中芳樹作品的なる小説のあり方というのはどのようなものかが、作例ではなく言葉で述べられているものでもありません。批判の書き手としての管理人様は、どのような小説観、どのような二次創作観をお持ちなのでしょうか。

 今回、小生は、批評にはその根拠として書き手の小説観が必要であるという批評観を明らかにしました。そのうえで、このサイトのヴァレンシュタイン伝に対する考察には小説観の開示が欠けており、面白味に欠けると主張いたします。
 ここで小生は、このサイトの書き手が、どのような小説を肯定的に評価するのかを、作品名ではなく、書き手自身の議論として伺いたく存じます。もちろん、ここはコメント欄であり、全てのコメントに管理人様が(直接間接ともに)応じる必要はありません。ご不要と思われるならご笑殺くださいませ。

 いきなりの書きこみ、大変失礼いたしました。ごめんください。

  • 2012/05/28 22:10:00

ジョニー

 こんにちは。
 今回はかなり気合の入った喧嘩を売られちゃいましたね。管理人さんの切り返しを勝手に楽しみにしています。
 ライダーさんは作品自体の感想、にじファンに書いてあるやつはお読みになっているのでしょうか。本当に不思議なんですが批判がびっくりするほど無いんですよね。好きなところからツッコンでいいのよ?(笑)と言わんばかりに混沌としているというのに。
批判が全く無いというのは語弊があるかも知れません。なんて言うんでしょうか、例えるなら北朝鮮的かなぁ…。なんか核心に触れてるものがない気がするんですよね。私はあれをゾォッとするのを楽しむ類のものだと考えています。最近暑くなってきてるのでちょうどいいです。
 救国軍事会議の面々が今後どんな扱いになるのかというのは、私は楽しみにしています。azuraiiru神は彼らにお得意のヒールをカッコ良く描くという加護をおあたえになるや否や!(爆笑)

  • 2012/05/28 23:40:00

白黒

 気合いの入った考察、お疲れさまでした。
非常に論理的な内容で、管理人様は法曹関係の
知識の高い方なのかな、と思いました。
 しかし、かのヴァレンシュタイン氏は、
最古の法典の、最も有名な一節の本来の意味さえ
理解されていないと思うのです。
 あれは罪科に対する報復は、相応にとどめるべきであるという非常に理性的なものなのですが…………。
 私自身、「本編」の長大さに、まずこちらから読み始め、鳥肌が立ったのはこの話でした。(悪い意味で)
 あの創作で個人的に引っ掛かるのは、原作の台詞を
ヴァレンシュタインが本歌どりして話すシーンなのです。
 フォークを追い詰めたあのセリフ、原作では前線で
奮戦する、老練の宿将ビュコックの役どころでした。
叩き上げの老将が、安全な場所から笑止な言葉を
囀る青二才に対する叱責だから、作中人物も読者も
ごもっとも!とカタルシスが得られます。
 しかし、同じくらい安全な総旗艦の艦橋で、
自分より先輩で、生粋の同盟人の学年主席をドヤ顔で
嘲弄して、よくも周囲が受け入れるものだと。
 言動に対する周囲の反応なんて、人間が変われば
同じでなくなる、ということを作者はともかく
ヴァレンシュタインは絶対に分かっていないと
思います。
 二回の人生を足した人生経験は、あまり役に
立っていませんね。
 個人的には、転生人生経験の合算は、
剣道初段、柔道初段あわせて武芸百般!
というぐらい無理があると思っています。
 この主人公という共通の敵に、帝国と
同盟が手を結んで、排除、講和を結び、
それをヤンが退役後に著述するという
IFが私には浮かんでしまいます。
 そういう展開ならば、この人物造形には
脱帽せざるを得ません。

 

 

  • 2012/05/29 00:28:00

冒険風ライダー(管理人)

>クアンさん
「本編」や「亡命編」のヴァレンシュタインや小説のストーリー進行の中でも、原作のヤンやラインハルトを散々侮辱する内容の文章がしばしば展開されていたりするのですが、それは良いのですかね?
それらの罵倒に反発を感じたり眉を顰めたりしている原作ファンだっているでしょうに。
ああいう文書を公に配信する以上、それに対する反発も当然あって然るべきであると、すくなくとも作者側は自覚的であるべきでしょう。
第一、トラックバックを送信せずに考察を書いたら、今度はそれを良いことに「作者の見えないところで陰口を…」と言われるのが最初から目に見えているのですが。
実際、ヴァレンシュタイン考察どころかタナウツ本家の考察シリーズでも同じことを言われたことがありますし。
そもそも、あちらのサイトの感想欄でも小説に対する批判や指摘などがしばしば投稿されたりするのですが、アレも作者氏に対して失礼だから規制すべきという話になるのでしょうか?
トラックバックにしても一記事につき一回しか送信していないのですし、荒らし呼ばわりされる覚えは全くありませんけどね。

作者氏が私の書いた考察に不満や反発があるというのであれば、ここに来るなり自分のところなりで反論を書けば良いだけの話でしょう。
別に私も、作者氏が私に対して反論する権利を否定するつもりは全くありませんよ。
私があちらの感想欄ではなく、自分のブログで考察を展開するのも、あちらの感想欄を荒らすことなく作品についての議論をするというのが目的のひとつでもあるのですし、むしろ、そういうのは歓迎したいところですらありますので。

>初見読者よりさん
> 批判の書き手としての管理人様は、どのような小説観、どのような二次創作観をお持ちなのでしょうか。

小説観や二次創作観と言えるものなのかは分かりませんが、私が一連のヴァレンシュタイン考察やタナウツ本家の考察シリーズでキャラクター批判を論じる際には、「作品で【有能な存在】であると作者が設定したキャラクターが、その設定にふさわしい言動をきちんと披露できているのか?」ということを主軸に据えて論じるようにしています。
私がヴァレンシュタインの言動をいちいち取り上げて批判するのも、その自己中心的な思考と自分に跳ね返ってくるダブスタ言動が「原作のヤンやラインハルトと比較してさえも有能どころかマトモと呼べるシロモノですらない」と考えるからで。
創竜伝の竜堂兄弟や、薬師寺シリーズの薬師寺涼子&泉田準一郎などについても同じことが言えます。
エンターテイメント作品に限ったことではありませんが、有能と自称する人達は、常にそれ相応の有能性を自ら示し、自分の実力を周囲に認めさせる必要がありますし、そのための努力も常に行わなければならないでしょう。
それが出来ない人間は、周囲から嘲笑され潰されても文句は言えないのです。
私は小説批評どころか、現実の田中芳樹や「と学会」の面々に対してすら同じように接してきたのですから、これについての一貫性はそれなりにあるものと自負しています。

逆にこれまた小説に限らず、肯定的に評価できるのは「自分を特別視せず、ブーメランのように自分自身に返ってくることのない一貫性と説得力のある言動を常に心掛けている人物像」といったところになるでしょうか。
銀英伝の二次創作としてそれに該当するのは、やはりタナウツご推薦の「反銀英伝 大逆転!リップシュタット戦役」のエーリッヒ・フォン・タンネンベルクですね。
タンネンベルクにも若干判断が甘い部分はありますが、すくなくとも彼には全体を通じて筋の通った思想や一貫性がありますし、また「自分の失敗を認めることなく全て他人のせいにして罵倒しまくる」などということもありませんでしたので。
タンネンベルクとの比較から、ヴァレンシュタインに対する評価がより一層厳しくなっているという一面もありますしね(^^;;)。
これが私なりの答えになりますが、いかがでしょうか?

>ジョニーさん
>  ライダーさんは作品自体の感想、にじファンに書いてあるやつはお読みになっているのでしょうか。本当に不思議なんですが批判がびっくりするほど無いんですよね。好きなところからツッコンでいいのよ?(笑)と言わんばかりに混沌としているというのに。
> 批判が全く無いというのは語弊があるかも知れません。なんて言うんでしょうか、例えるなら北朝鮮的かなぁ…。なんか核心に触れてるものがない気がするんですよね。

あの感想欄でも小説に対する批判はそれなりにあると思うのですが、問題はその方向性ですね。
あそこの感想欄における「エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝」に対する批判的な感想というのは、「ヴァレンシュタインの目から見て損になる」ということに対するものがかなりのウェイトを占めていたりするんですよね。
ミハマ・サアヤに対する批判なんか特にその典型例で、彼女に対する批判は「ヴァレンシュタインに害を与えておきながら今更何をぬかす」的なものが少なくなかったですし。
第7次イゼルローン攻防戦終結後にヴァレンシュタインの副官に任ぜられるまでのミハマ・サアヤは「ヴァレンシュタインの監視」を主任務としていたのですから、彼女の仕事がヴァレンシュタインのためにならないのは当然のことではないか、と私などは考えていたくらいなのですけどね(苦笑)。
いつでもヴァレンシュタインを抹殺できるミハマ・サアヤの立ち位置は、ヴァレンシュタインにとって最大の脅威でしかないとも述べていますし。
むしろ、その仕事を放り出してヴァレンシュタインに対して過剰に肩入れすることの方が「公人としては」よほどに問題行為である、とすら思っていたくらいですからねぇ。
一方で、副官になって以降のミハマ・サアヤに一転して好印象的な感想が寄せられるようになったのも、これまたやはり「ヴァレンシュタインの利益になる」という要素が大きいわけで。
ヴァレンシュタインに対する感情移入ぶりが非常によく分かる反応だよなぁ、というのが、あの感想欄におけるミハマ・サアヤ問題についての私の雑感ですね(苦笑)。
同時に、そこまでヴァレンシュタインに感情移入しているのであれば、確かにヴァレンシュタインの痛い所を突く感想は少ないだろうなぁ、とも納得せざるをえなかったところですが。
まあ、ヴァンフリート星域会戦後の自爆発言が繰り出された「伝説の17話(笑)」では、さすがにあの感想欄でも非難轟々でしたけどね。

>白黒さん
>  言動に対する周囲の反応なんて、人間が変われば
> 同じでなくなる、ということを作者はともかく
> ヴァレンシュタインは絶対に分かっていないと
> 思います。

その辺りについては、「原作がこういう流れだったのだから、それと同じ発言をしさえすれば同じ流れを無条件に再現できる」と何の疑問もなく信じ込んでいるのでしょうね。
今回の裁判でヴァレンシュタインが主張している「人殺しをせずに給料を貰えると思えば…」云々の発言も、原作でヤンが書き記していた文章のパクリでしかありませんし(苦笑)。
「本編」で発生したキュンメル事件でも、原作のラインハルトと同じことをすれば自分も無条件で助かる、と安易に信じ込んでいたフシがありましたし。
原作知識に囚われ過ぎて、状況的な違いや必然性とか、全く予想外の要素の介入とか、そういったものが全く眼中に入らないのでしょうね、ヴァレンシュタインは。

>  この主人公という共通の敵に、帝国と
> 同盟が手を結んで、排除、講和を結び、
> それをヤンが退役後に著述するという
> IFが私には浮かんでしまいます。
>  そういう展開ならば、この人物造形には
> 脱帽せざるを得ません。

しかし、「本編」におけるラインハルト一派の末路や、「亡命編」におけるヴァレンシュタインに乱発される「神(作者)の奇跡」の数々を見ても、とてもそんな結末に至るようには見えないのが何とも…(-_-)。
それどころか、ヴァレンシュタイン自らヤンを殺して快哉を叫ぶ、という可能性の方がはるかに想定できてしまうありさまですし(苦笑)。

トモ

10年程前までタナウツの掲示板の愛読者で、ここ半年ほどでまた読ませて頂くようになりました。今回は、管理人さんのブログを中心に拝読させていただいております。私も映画好きなので、いつも映画評を中心に楽しみに読ませて頂いております。
 今回書き込ませて頂くのは、ヴァレンシュタインと214条発動を巡る軍法裁判について、管理人さんの所論に少し疑問を感じるところがあり、もしよろしければ管理人さんの御意見を仰ぎたく思ったからです。
 私が疑問に感じたのは以下から始まる部分です。

>この軍法会議で争点となるのは、最前線における214条発動およびロボスの解任強行が「法的に」かつ
>「緊急避難措置として」妥当なものだったのか、というものであるべきでしょう。

 この部分には完全に同意します。
 しかし、この争点を巡って争うのはヴァレンシュタインよりも実際に発動したグリーンヒル参謀長が中心になって争うべきなのではないでしょうか?
 実際にこんな軍事裁判が行われるとしても、被告グリーンヒル・参考人ヴァレンシュタインぐらいの扱いになるのではないかと思います。確か第二百十四条には進言した者にも罪が及ぶとありますけど、そもそも発動自体に問題がないなら進言した者は罪に問えないでしょうし。
 参謀は指揮官(しかし参謀長に指揮権とは・・・)に進言するのが大きな仕事でありますので、ヴァレンシュタインが合理的な判断の元、第二百十四条を進言したと認められたら、罪に問えないでしょう。
 軍法裁判の結果、第二百十四条を実際に発動したグリーンヒル参謀長が無罪。つまり第二百十四条発動について問題ないとされている以上、進言したにすぎないヴァレンシュタインが無罪になるのは至って理にかなっていると思います。

 個人的にはロボスがあっさり断罪されたのは、これを機にロボス一派を軍から一掃しようとしたシトレの深慮遠謀というか、同盟軍上層部の権力闘争があったのかもと邪推しております。
 ヴァレンシュタインの担当検事がいやいや担当したとの描写は、どうせロボスは政治的に抹殺されるのが目に見えているし、反対にグリーンヒルが無罪になるのを確信している(組織内の泳法に長けている人物ならこの予測はさして難しいものではないでしょう)から、ヴァレンシュタインの裁判が消化試合というか茶番のように感じられるのでしょう。
 ヴァレンシュタインが不規則発言(管理人さんは法廷侮辱罪っておっしゃいますけど、僕はせいぜい裁判長にたしなめられるぐらいのレベルに思えます)が軽くスルーされているのも、そもそもこの裁判自体が、重要度の低いものであるからではないでしょうか?

  • URL
  • 2012/05/29 08:58:00

冒険風ライダー(管理人)

>トモさん
はじめまして……でいいのでしょうか?(^^;;)
それにしても、私の映画感想って、今や当ブログのメインコンテンツにまでなっているのだなぁとしみじみ感じますね(^_^;)。

>  しかし、この争点を巡って争うのはヴァレンシュタインよりも実際に発動したグリーンヒル参謀長が中心になって争うべきなのではないでしょうか?
>  実際にこんな軍事裁判が行われるとしても、被告グリーンヒル・参考人ヴァレンシュタインぐらいの扱いになるのではないかと思います。確か第二百十四条には進言した者にも罪が及ぶとありますけど、そもそも発動自体に問題がないなら進言した者は罪に問えないでしょうし。

いえ、214条発動については、それを進言したヴァレンシュタインも立派な被告となります。
29話に以下のような文章がありますし↓

http://ncode.syosetu.com/n5722ba/29/
> グリーンヒル参謀長だけでは有りません。ヴァレンシュタイン大佐も第二百十四条の適用を勧めたとして罪に問われます。グリーンヒル参謀長が第二百十四条を行使しなくてもです。

また38話にもヴァレンシュタインは被告であるとはっきり書かれております↓

http://ncode.syosetu.com/n5722ba/38/
> 今回、原告はロボス元帥、被告はグリーンヒル大将、ヴァレンシュタイン大佐になります。容疑は抗命罪です。私はグリーンヒル大将もヴァレンシュタイン大佐も間違ったことをしたとは思っていません。しかしそれでも不安です。

軍法の観点から言えば、ヴァレンシュタインが214条発動を進言する行為は、ロボスの命令に明確に背いている他、「軍事クーデター」を唆すものであるとも解釈可能です。
だからこそ、38話の軍法会議では、ヴァレンシュタインとグリーンヒル大将は共に「抗命罪」で起訴されているわけですし。
214条発動に関しては、ヴァレンシュタインも立派な当事者なのであり、参考人的な立場に収まるものとは到底言えたものではないのです。

>  参謀は指揮官(しかし参謀長に指揮権とは・・・)に進言するのが大きな仕事でありますので、ヴァレンシュタインが合理的な判断の元、第二百十四条を進言したと認められたら、罪に問えないでしょう。
>  軍法裁判の結果、第二百十四条を実際に発動したグリーンヒル参謀長が無罪。つまり第二百十四条発動について問題ないとされている以上、進言したにすぎないヴァレンシュタインが無罪になるのは至って理にかなっていると思います。

グリーンヒル大将に214条発動を進言したのはヴァレンシュタインであり、その正当性についてはヴァレンシュタイン自らが主張しなければならない立場にあります。
最終的にその進言を容れて決断したのはグリーンヒル大将であるにしても、それはヴァレンシュタインの説明責任をいささかも減じるものではありません。
何しろこれが説明できなければ、ヴァレンシュタインが有罪になるのはむろんのこと、そんなヴァレンシュタインの言を許してしまったグリーンヒル大将の見識と責任までもが問われ一緒に有罪とされてしまうのですから、ヴァレンシュタインの弁明は極めて重大なものがあるのです。
にもかかわらず、ヴァレンシュタインは結局「214条発動を正当化しえるだけの緊急避難性」について何も説明できておらず、だからこそ「これで無罪になるなんてありえない」という話になってしまうわけで。

>  個人的にはロボスがあっさり断罪されたのは、これを機にロボス一派を軍から一掃しようとしたシトレの深慮遠謀というか、同盟軍上層部の権力闘争があったのかもと邪推しております。
>  ヴァレンシュタインの担当検事がいやいや担当したとの描写は、どうせロボスは政治的に抹殺されるのが目に見えているし、反対にグリーンヒルが無罪になるのを確信している(組織内の泳法に長けている人物ならこの予測はさして難しいものではないでしょう)から、ヴァレンシュタインの裁判が消化試合というか茶番のように感じられるのでしょう。

この後に展開されるストーリーでも、シトレやトリューニヒトがロボスを排除する意向であったことが判明していますから、そういう傾向は確かにあったでしょうね。
ただし、それがヴァレンシュタインを214条絡みで助けなければならない理由には全くなりえないのですが。
シトレやトリューニヒトにしてみれば、ロボスと一緒にヴァレンシュタインを葬ってしまっても、別に何の支障もなかったりするわけですよ。
ロボスは別に214条の件がなくても、総司令官として前線の兵を無為に死なせたという理由で責任を問い、普通に排除することが可能でした。
そしてヴァレンシュタインは元々亡命者な上、例の自爆発言で同盟を裏切る意思をはっきりと表明していたわけですし、214条以外でも上官侮辱罪や独断での敵前交渉などといった違法行為を堂々と行っていたのですから、むしろこの機会に排除した方が厄介者を片付けられるという側面もあったわけです。
特にシトレなんて、一連のヴァレンシュタインの凶行の類を全部把握していたはずなのですからなおのこと。
そんなヴァレンシュタインを、法を捻じ曲げ悪しき「判例」を作り出してまで、何故助けてやらなければならないのでしょうか?
そちらの方がよほど理解に苦しむ行為なのではないかと思うのですが。

紫猫

今晩は。

このヴァレンシュタイン伝のイゼルローン攻略における冒険風ライダー氏の考察には、「はあ?」と思いました。

氏が考察対象にしているのは、ヴァレンシュタイン伝の軍法第214条に関することですが。
それを私たちの現実に於ける法や常識で解釈している。ナンセンスです。

そもそも氏の「考察対象」はエーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝という、「1600年も先の遠未来」というステージを前提とした「フィクション」です。
それを「現代」の「現実」の私たちの法や常識で図ることは出来ません。元々型の違うものを、一方からの視点で見ても正しい姿など認識出来ません。
ああ、「現代の現実の私たち」と「1600年も先の遠未来を前提としたフィクション」の法や常識を対比するという考察なら解らなくも無いですよ。まあそんな考察をする人なんてあんまりいないでしょうけど・・・。

時代や場所が変われば常識も法も変化する。当然です。
ましてやフィクションに対してそれを当て嵌めるのは、無理としか言いようがありません。
実際、ヴァレンシュタイン伝の人々は軍法会議の結果をほぼ当然と受け止めています。彼らにとってはそれが常識的なことだからでしょうね。

まあ、それがご都合主義だと仰るなら、それはもう仕方ありません。ご都合主義無き物語などありませんし、その世界の常識などは物語の基盤の1つとして必要でしょうから、それを否定したら物語そのものが成り立たなくなるでしょう。
でも個人的に言えば、この物語のご都合は酷いとは思えませんけどね。例えば某少年漫画ジ●ンプとかには、ヴァレンシュタイン伝なんて比較にならない程のご都合主義が溢れ返ってますしね。

・・・それと、冒険風ライダー氏のヴァレンシュタイン伝に対する言動、ですか。確かに少々不味いと思います。
批判するにしても、度が過ぎていて悪意になってしまっている感じですね。上の感想のトラックバックも然りです。

それに諌言があってもそれを受け入れないところを見ると、氏が「氏が評するヴァレンシュタイン」に対して言うところの「自分が全て正しいと思っている」という評価をそのまま氏に対して当て嵌められそうですね。
まさしくブーメランとなって己に返って来るようですよ。

冒険風ライダー氏へ。
私たちは無料で小説を読ませて頂いている立場です。
作者様が小説を提供して下さらなければ、こうして考察したりも無かった、出来なかったでしょう。
無料で多くの方々に小説を提供して下さるのは、作者様の大きな善意です。それに対して敬意も礼儀もへったくれも無い、悪意の塊を投げ付けるかの行為は、この作品に対する好き嫌いを抜きにして見ても、嫌悪感を抱かざるを得ません。
作者様に対する礼儀は忘れないようにしましょう。それが読者としての心得だと思います。

長文失礼しました。

  • 2012/05/30 00:51:00

冒険風ライダー(管理人)

>紫猫ことクアン
まず、騙りをやるのを止めたらどうですか?
タナウツに設置しているアクセス解析の情報から、以下の投稿者が同一人物であることが確認できたのですが↓

> クアンのユニークユーザー情報
ホスト
 183.22.232.111.ap.yournet.ne.jp
 111.232.22.183 埼玉, 日本
OS/ブラウザ
 Windows 7
 MSIE/9.0
環境
 [ja-JP] 日本語-日本
 1,366x768 [24bit]
User-Agent
 Mozilla/5.0 (compatible; MSIE 9.0; Windows NT 6.1; WOW64; Trident/5.0; YTB730)

> 紫猫のユニークユーザー情報
ホスト
 71.171.243.49.ap.yournet.ne.jp
 49.243.171.71 Kawaguchi, 埼玉, 日本
OS/ブラウザ
 Windows 7
 MSIE/9.0
環境
 [ja-JP] 日本語-日本
 1,366x768 [24bit]
User-Agent
 Mozilla/5.0 (compatible; MSIE 9.0; Windows NT 6.1; WOW64; Trident/5.0; YTB730)

リモートホストの「ap.yournet.ne.jp」の部分およびアクセスポイント(埼玉)、OS/ブラウザ(Windows 7/MSIE/9.0)、モニタサイズ(1,366x768)、User-Agent(Mozilla/5.0 (compatible; MSIE 9.0; Windows NT 6.1; WOW64; Trident/5.0; YTB730) )と、これだけの情報が全部合致しているのですけど。
ちなみにリモートホストの照会だけならば、HTMLソースコードから誰でも閲覧可能なのですけどね。
あなたは人に意見を述べるのにすら、ダブハンや一人二役を駆使しないと何も言えない卑小な人間なのですか?
作品に対する悪意や非礼がどうのこうのって、「騙り」ごときに言われる筋合いはどこにもないのですが(笑)。

あと、銀英伝世界における法や常識って、1600年の年月で現代から著しく変化しているという設定でしたっけ?
むしろ、「いつの時代、科学技術がどれだけ発展しても、人の営みは何も変わることがない」というのがコンセプトだったと思うのですが。

aun

作品の好みは人それぞれだし、批判するのも読者の自由だと思う。ただそれも行き過ぎれば単なる誹謗中傷になる危険があると理解すべき。作者さんそれぞれに銀英伝に対する解釈の違いがあり、それが読者と食い違う事もある以上、誰の意見が正しい等という事はない。
それを認識した上で、クアンさん、紫猫さん、そして管理人さんももう少し角が立たない言い方を心がけてみませんか。

  • 2012/05/30 10:40:00

Jeri

>管理人様
こちらでは、はじめまして。
私も日本のマンションからアクセスするとリモートホストがap.yournet.ne.jpになります。
プロバイダーが、集合住宅等でよく使われるフリービット株式会社というところらしいのですが、クアンさんとも紫猫さんとも別人です。(まあ、アクセスポイントも閲覧環境も全然違いますからそれはお判りかとは思いますが)
ただ、リモートホストはともかくとして、他人様の個人情報にも近いアクセス元や環境をこのような形で晒しものにし、「卑小」だの「騙り」だのといった言葉で罵るのは、如何でしょうか。
確かに、同じ場所でハンドルを変えて別人を装って意見を述べるのは、ネット上のマナーとしても、道義的にも褒められた行為ではありません。
しかし、管理人さんの態度の中にも、相手にそうさせてしまうものがあるからこそ、起こったことなのではありませんか?
同じCGIスクリプトのブログを使用している者なので、私も経験があるのですが、うちでも偶に、今回のようなことがあります。常連で長いお付き合いになってしまった方では流石にいらっしゃいませんが、ある程度サイトの形が整った後に、新規でいらしたお客様の中には、時々同じケースが見受けられます。
それに対して、ホストを晒し、「あなたは先に書き込みをした○○さんと同じ人ですね」などと言って相手の意見を封じ込めたら、場が険悪になってしまいませんか?
きっと、私のブログ上での言動の中に、その方にとっては、コテハンでは言いにくい雰囲気があったのだろうと解釈しています。
そう考えると、相手ばかりのせいではなく、こちらの対人姿勢にも問題があったのではと思えてきます。

さて、ストーリーの理論的整合性と、娯楽性とのバランスの取り方は非常に難しいです。
よくわからないのは、一次創作である銀英伝に関して批評するのは、突っ込みも悪態も「ファン故」と理解できなくはないのですが(実際同じようなことを書いてる人間として)、自分の嗜好に合わない(と思われる)二次創作に関してまで、ここまで長文で批評したくなる気持ちが私には理解できません。
きっと、バレンシュタインなるキャラクターを、管理人さんは好きになれないのでしょうね。
一次創作も二次創作もオリキャラは既存のキャラをカスタマイズするよりもずっと作者の「地」が出てしまいますので、バレンシュタインは、この二次創作の作者さんの分身のような存在です。
そのキャラの人柄について、あのような言葉を使って批評することは、極論すればあの二次創作の作者さんへの人格批判にもなりかねません。
趣味に合わない二次創作に、膨大な字数を割いて批評するなど時間の無駄。嫌いなものは、無視&放置というスタンスはとれませか?
因みに、私はこの「エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝」なる二次創作をじっくり読む気になれませんでした。
話のだいたいの設定や所々ななめ読みしたところ、私が読みたい種類のものではなかったからです。
なので、この作品及びキャラクターについて、特に感想はありません。
管理人様ご推奨(?)のタンネンベルク氏の方の二次創作は、頑張って全部読みました。
率直な感想を述べさせていただきますと、読み物として全く面白くありませんでしたし、いかに理論的に整合性があろうが、タンネンベルクというキャラに何の魅力も感じませんでしたし、特に嫌いにも好きにもなれませんでした。
これは、あくまでも私の主観です。
でも、面白くないものは仕方がないし、魅力を感じないものは仕方ないのです。
何故面白くないのか?なぜ魅力を感じないのか?と問われて、それを理論的に説明することは難しいですが、「理論的に説明できないものを嫌うな」とは、まさかおっしゃいませんよね?(笑
私は、あの二次創作を否定するつもりはありません。あれを面白いと思って読み、主人公のタンネンベルクというキャラに好感や共感を持つ方もいらっしゃるでしょう。
でも、私は残念ながらそうではなかったので、あの作品について、批評や考察を展開する気になれませんでした。

場違いを承知でもう一つ。
「大奥」についての「考察」ですが、私には全てが的外れな批評に思えました。
確かに、「男女逆転」という有り得ないIFを前提に展開していますので、矛盾を探し出せばきりがありません。
ただ、娯楽作品として、もう少し素直な心で楽しめないものかと、管理人さんの「考察」を拝読する度にいつも感じていました。
私はあの作品の「男女逆転」を例えるならドラえもんの「もしもボックス」のようなものと捉えて読んでます。
そう思えば、多少の矛盾には思考停止して、男女が逆転した人間同士の愛憎劇として、凄く面白いです。
少なくとも、理論的で有能な主人公だけど、結局作品として何が言いたいのかが全然伝わって来なかった(私にとってですが)二次創作よりずっと楽しいです。

  • 2012/05/30 13:19:00

トモ

>はじめまして……でいいのでしょうか?(^^;;)
>それにしても、私の映画感想って、今や当ブログのメインコンテンツにまでなっているのだなぁとしみじみ感じますね(^_^;)。

 実は掲示板の方にも何度か書き込んだことがありまして・・・。
 本来なら初めましてと御挨拶するべきなのでしょうが、面映くて失礼ながら省かせていただきました。申し訳ありません。

>>  しかし、この争点を巡って争うのはヴァレンシュタインよりも実際に発動したグリーンヒル参謀長が中心になって争うべきなのではないでしょうか?
>>  実際にこんな軍事裁判が行われるとしても、被告グリーンヒル・参考人ヴァレンシュタインぐらいの扱いになるのではないかと思います。確か第二百十四条には進言した者にも罪が及ぶとありますけど、そもそも発動自体に問題がないなら進言した者は罪に問えないでしょうし。

>いえ、214条発動については、それを進言したヴァレンシュタインも立派な被告となります。
>29話に以下のような文章がありますし↓

>http://ncode.syosetu.com/n5722ba/29/
>> グリーンヒル参謀長だけでは有りません。ヴァレンシュタイン大佐も第二百十四条の適用を勧めたとして罪に問われます。グリーンヒル参謀長が第二百十四条を行使しなくてもです。

>また38話にもヴァレンシュタインは被告であるとはっきり書かれております↓

>http://ncode.syosetu.com/n5722ba/38/
>> 今回、原告はロボス元帥、被告はグリーンヒル大将、ヴァレンシュタイン大佐になります。容疑は抗命罪です。私はグリーンヒル大将もヴァレンシュタイン大佐も間違ったことをしたとは思っていません。しかしそれでも不安です。

>軍法の観点から言えば、ヴァレンシュタインが214条発動を進言する行為は、ロボスの命令に明確に背いている他、「軍事クーデター」を唆すものであるとも解釈可能です。
>だからこそ、38話の軍法会議では、ヴァレンシュタインとグリーンヒル大将は共に「抗命罪」で起訴されているわけですし。
>214条発動に関しては、ヴァレンシュタインも立派な当事者なのであり、参考人的な立場に収まるものとは到底言えたものではないのです。

  ヴァレンシュタインを参考人と書いてしまったのは私の間違いでした。グリーンヒル参謀長とヴァレンシュタインは同じレベルで運命を共有しているのでは無く、グリーンヒル参謀長が無罪になれば自動的にヴァレンシュタインも無罪になるので、214条発動を巡る裁判自体の中ではヴァレンシュタインへの裁判は重きをおかれないと考えていて、その事を表現する為に"参考人"と書いたのですが、実行犯と教唆犯とした方がまだ間違いの度合いが少なかったかなと猛省しております。

>>  参謀は指揮官(しかし参謀長に指揮権とは・・・)に進言するのが大きな仕事でありますので、ヴァレンシュタインが合理的な判断の元、第二百十四条を進言したと認められたら、罪に問えないでしょう。
>>  軍法裁判の結果、第二百十四条を実際に発動したグリーンヒル参謀長が無罪。つまり第二百十四条発動について問題ないとされている以上、進言したにすぎないヴァレンシュタインが無罪になるのは至って理にかなっていると思います。

>グリーンヒル大将に214条発動を進言したのはヴァレンシュタインであり、その正当性についてはヴァレンシュタイン自らが主張しなければならない立場にあります。
>最終的にその進言を容れて決断したのはグリーンヒル大将であるにしても、それはヴァレンシュタインの説明責任をいささかも減じるものではありません。
>何しろこれが説明できなければ、ヴァレンシュタインが有罪になるのはむろんのこと、そんなヴァレンシュタインの言を許してしまったグリーンヒル大将の見識と責任までもが問われ一緒に有罪とされてしまうのですから、ヴァレンシュタインの弁明は極めて重大なものがあるのです。
> にもかかわらず、ヴァレンシュタインは結局「214条発動を正当化しえるだけの緊急避難性」について何も説明できておらず、だからこそ「これで無罪になるなんてありえない」という話になってしまうわけで。

 ヴァレンシュタインが説明責任を果たさなくても、グリーンヒル参謀長は有罪とされないと思います。なぜなら、グリーンヒル参謀長はヒラ参謀のヴァレンシュタインとは異なり、より上位の役職に就いているわけですから、「ヴァレンシュタインから進言を受けたが、自分は当時の状況や多くのスタッフからの報告、その他の要素をヴァレンシュタインの進言とは独立して総合的に考慮した結果、214条の発動に至りました」と主張すれば、ヴァレンシュタインが説明責任を果たさなくてもグリーンヒル参謀長の審判自体には大きな影響を与えないと思うからです。

 ロボス元帥がヴァレンシュタインとグリーンヒル参謀長を被告人として「抗命罪」だと訴えたこの裁判ですが、この裁判の中心的な論点は「ヴァレンシュタインが214条を進言した」ではなく「グリーンヒル参謀長が214条を発動した」事の是非を問う裁判になろうかと思います。管理人さんのお言葉を拝借させて頂きますと「最終的にその進言を容れて決断した」以上、214条を発動した全責任はグリーンヒル参謀長にあり、ヴァレンシュタインが無罪になるかどうかは、上記の理由からグリーンヒル参謀長の有罪か無罪かを問う審判への影響が限定的であるのに対して、グリーンヒル参謀長が有罪か無罪になるかはヴァレンシュタインが有罪になるかどうかに決定的な影響を与えるという意味で、214条発動の「進言」の責任追及はこの裁判全体を俯瞰してみれば、付随的で限定的なものになると思います。
 
>>個人的にはロボスがあっさり断罪されたのは、これを機にロボス一派を軍から一掃しようとしたシトレの深慮遠謀というか、同盟軍上層部の権力闘争があったのかもと邪推しております。
>>ヴァレンシュタインの担当検事がいやいや担当したとの描写は、どうせロボスは政治的に抹殺されるのが目に見えているし、反対にグリーンヒルが無罪になるのを確信している(組織内の泳法に長けている人物ならこの予測はさして難しいものではないでしょう)から、ヴァレンシュタインの裁判が
>>消化試合というか茶番のように感じられるのでしょう。

>この後に展開されるストーリーでも、シトレやトリューニヒトがロボスを排除する意向であったことが判明していますから、そういう傾向は確かにあったでしょうね。
>ただし、それがヴァレンシュタインを214条絡みで助けなければならない理由には全くなりえないのですが。
>シトレやトリューニヒトにしてみれば、ロボスと一緒にヴァレンシュタインを葬ってしまっても、別に何の支障もなかったりするわけですよ。
>ロボスは別に214条の件がなくても、総司令官として前線の兵を無為に死なせたという理由で責任を問い、普通に排除することが可能でした。
>そしてヴァレンシュタインは元々亡命者な上、例の自爆発言で同盟を裏切る意思をはっきりと表明していたわけですし、214条以外でも上官侮辱罪や独断での敵前交渉などといった違法行為を堂々と行っていたのですから、むしろこの機会に排除した方が厄介者を片付けられるという側面もあったわけです。
>特にシトレなんて、一連のヴァレンシュタインの凶行の類を全部把握していたはずなのですからなおのこと。
>そんなヴァレンシュタインを、法を捻じ曲げ悪しき「判例」を作り出してまで、何故助けてやらなければならないのでしょうか?
>そちらの方がよほど理解に苦しむ行為なのではないかと思うのですが。

 まずは謝罪からさせて頂きます。本来なら本伝・亡命編全てを読破した上でこのような書き込みをすべきだというのは重々承知しております。しかしながら、前回と今回の管理人さんの考察を読んで、急遽この小説に興味を持ち、考察がされている該当箇所を読んだだけなのです。その結果、お恥ずかしい邪推を披露してしまい、大変失礼いたしました。
 
 ヴァレンシュタインを214条がらみで助けた理由についてですが、上記した通りグリーンヒル参謀長を助けると自動的にヴァレンシュタインも無罪となるので、助ける理由というものがあってもなくても、結果的にヴァレンシュタインは助かってしまった。という事ではないかと思います。 
 
 最後に2点、失礼ながら違う論点について、私見を述べさせて頂きます。

 まずは1点目、管理人さんは、214条発動に伴う「悪しき判例」の発生を危惧なさっておられます。私もこのような「悪しき判例」が出来てしまったら軍の指揮系統などに甚大な悪影響を与えると思います。しかし、同盟軍にとって本当に「悪しき判例」なら、思い切って214条自体を撤廃もしくは発動要件を厳しくしてしまえばいいだけだと思います。むしろ214条のような「指揮官が精神的、肉体的な要因で指揮を執れない」と発動用件が明記されているのにもかかわらず、軍医の同意を不要としているような欠陥法など、ロボス元帥の処理も済んだことですので、これを機に撤廃してしてしまうよう働きかけるのもこの世界のシトレらしくていいかな?などと思ってます。

 2点目、独断での敵前交渉は違法行為とのことですが、私は必ずしもそうではないと考えます。WW2では敵陣地前で戦死した味方の死体を回収したいから発砲しないでくれといった敵前交渉がままあったそうですし、海軍乙事件では福留参謀長達を拘束したゲリラ部隊の交渉に日本陸軍の大隊長の大西精一中佐は独断で応じ、福留参謀長達の引渡しに成功します。敢闘精神の塊のような皇軍でもこのような現場の裁量が許されていました。
 軍人は与えられた目的の達成のため、自身に許された手段を用い、最小限の被害で達成すればいいのであって、敵への出血の強要は目的ではないということは管理人さんにおかれましても同意して頂けるかと思います。
 ひるがえってヴァレンシュタインの敵前交渉はどうだったかについて私見を述べさせて頂きますと、確かに同盟軍にとっては敵国の軍人であるキスリングを個人的な理由でオフレッサー達に引き渡した行為は問題かと思います。しかしながら、この交渉には時間稼ぎという目的も持っており、交渉の結果、全滅の危機に瀕していた上陸部隊の撤退の黙認を獲得できたのですから、ヴァレンシュタインの行為は賞賛されてもいいかと思います。
 ヴァレンシュタインの外形だけを見れば、危険を冒して数人の捕虜と引き換えに上陸部隊の撤収までの貴重な時間を稼いだ。彼が同盟軍の将校として疑いをもたれるような言動が無かった事はバグダッシュ中佐、サアヤ大尉の両名が確認している(この2人ならこう報告するでしょう)のに加えて、その場にいた敵から銃撃を受け負傷した、ということになる以上、同盟側が問題視しないのは、むしろ自然なことかと思います。

 その他のヴァレンシュタインの罪状については私も同意いたします。同盟側がなぜヴァレンシュタインを助け続けなくてはならないのかというご質問につきましては、本伝などを読み終わらないとまた妙な珍説を披露してしまいそうなので、あまり積極的に申し上げたくはないのですが、同盟側はヴァレンシュタインにまだ利用価値(原作知識に基づいた言動)を見出しているからだと思います。もちろん利用価値がなくなってしまえば「狡兎死して走狗煮らる」ではありませんが、カストロプ公爵に似た末路を辿るかと思います。

  • 2012/05/30 22:57:00

冒険風ライダー(管理人)

>aunさん
> 作品の好みは人それぞれだし、批判するのも読者の自由だと思う。ただそれも行き過ぎれば単なる誹謗中傷になる危険があると理解すべき。作者さんそれぞれに銀英伝に対する解釈の違いがあり、それが読者と食い違う事もある以上、誰の意見が正しい等という事はない。
> それを認識した上で、クアンさん、紫猫さん、そして管理人さんももう少し角が立たない言い方を心がけてみませんか。

そう、まさにそれですよ。
そういう主張内容こそが、ロボスやフォークを罵り倒していたヴァレンシュタインに対して本来発生すべき周囲の反応なのです。
そして一方、あれが全面的に絶賛されるというのであれば、ヴァレンシュタインに対する私のやり方も当然肯定されて然るべきである、とそういう話です。

>Jeriさん
う~む、まさかこの件でJeriさんが投稿されるとは思ってもみませんでしたね(^^;;)。
Jeriさんの趣味的には合わないであろう話題ですし、それ以前に私事(小説執筆でしたっけ?)で多忙なのだろうと考えてもいましたので。
何はともあれ、お久しぶりです&こちらでははじめまして。

> 私も日本のマンションからアクセスするとリモートホストがap.yournet.ne.jpになります。
> プロバイダーが、集合住宅等でよく使われるフリービット株式会社というところらしいのですが、クアンさんとも紫猫さんとも別人です。(まあ、アクセスポイントも閲覧環境も全然違いますからそれはお判りかとは思いますが)

もちろん、アクセス解析からもJeriさんは例の騙りとは全くの別人であるとの結果が出ています。
タナウツではサイト内全ページにQLOOKアクセス解析を設置しており、今回の騙りもそれによって判明したものです。
QLOOKアクセス解析はクッキー情報を使って同一ユーザーであるか否かの判定を行うため、接続毎に情報が変わるIPアドレスやリモートホストよりもその辺りの精度は高いのです。
リモートホストの一部が同一という理由だけで騙り判定を行っているわけではありませんので、そこは警戒しなくても大丈夫ですよ。

> 同じCGIスクリプトのブログを使用している者なので、私も経験があるのですが、うちでも偶に、今回のようなことがあります。常連で長いお付き合いになってしまった方では流石にいらっしゃいませんが、ある程度サイトの形が整った後に、新規でいらしたお客様の中には、時々同じケースが見受けられます。
> それに対して、ホストを晒し、「あなたは先に書き込みをした○○さんと同じ人ですね」などと言って相手の意見を封じ込めたら、場が険悪になってしまいませんか?

うちの掲示板やブログでも、捨てハンで投稿する人なら普通にいますし、それだけならば私も特に目くじらを立てることはありません。
このヴァレンシュタイン考察でも、一度きりの捨てハン投稿で私の主張内容というより「作品批判をしていることそれ自体」に物申してきた人はいるのですし、それについては私も(辛辣な内容ではあったとしても)普通に対処してきたつもりです。
自分が他者に対して辛辣な表現を用いる以上、自分にそれが返されても(内容は別にして)そのこと自体は受け入れるべきであろうとも考えていますし。
今回の騙りで問題なのは、「他人に上から目線で礼儀を説いている当人が、相手に対する非礼を犯している」「一人二役を演じて論旨を強化しようとした」という2点に尽きるのです。
仮にも他者に対して礼儀を説くのであれば、まずは他ならぬ自分自身こそがその模範であるべく努めるべきでしょう。
にもかかわらず、騙りでもって相手を黙らせようとする「自分に甘く他人に当り散らす卑劣漢(女性かもしれませんが)」などという人物相手に、私は情けも容赦もかける必要を認めておりません。
コテハンにせよ捨てハンにせよ、他者に対して意見を述べるのであれば、それなりの責任と覚悟を背負って行うべきなのではありませんか?
ましてや、他人に礼儀を説くなどという行為に及ぶのであればなおのことです。

> よくわからないのは、一次創作である銀英伝に関して批評するのは、突っ込みも悪態も「ファン故」と理解できなくはないのですが(実際同じようなことを書いてる人間として)、自分の嗜好に合わない(と思われる)二次創作に関してまで、ここまで長文で批評したくなる気持ちが私には理解できません。
> きっと、バレンシュタインなるキャラクターを、管理人さんは好きになれないのでしょうね。

どちらかと言えば、「元々は好きだったものがアンチになった」といったところですね、私の「エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝」に対するスタンスは。
元々私は「本編」からあの二次創作を読んでいたのですが、最初は「反銀英伝 大逆転!リップシュタット戦役」に並ぶかそれ以上の「合理的な政治・戦略・謀略」をメインに据えた二次創作としての期待が大きかったんですよね。
まあ、ヴァレンシュタインのあまりにもありえない言動と破綻した性格には早々に違和感を覚えるようになり、100話も過ぎた頃には既に反感を持つようにもなっていましたが、それでも「本編」にはそれを補って余りある「原作考察」がまだありました。
もちろん、その「原作考察」にしても全てに賛同したわけではなく、中には「これは変だろう」という話もなくはありませんでしたが、それを含めて考えても「よく原作を読み込んで考え込まれている」とは充分に評価できるものでしたし、これがかろうじて「本編」におけるヴァレンシュタインの評価を肯定的なものにしていたわけです。
ところが「亡命編」になって以降、この「原作考察」が完全に消滅した上、ヴァレンシュタインの性格破綻がさらに深刻化するに至り、「本編」で維持されていた微妙なバランスが完全に崩壊してしまいました。
そして、そこに致命的な一撃を加えたのが、あちらの感想欄でも非難轟々だった「伝説の17話」におけるヴァレンシュタインの自爆発言です。
この「伝説の17話」から、私は「亡命編」におけるヴァレンシュタインの言動を徹底的に叩き潰すことを決意するに至り、それが今回の考察にまで繋がったわけです。

自分で書いていて何ですが、この流れは銀英伝のみならず田中作品全般を読むファンがアンチに転向していく過程と同じですね。
銀英伝やアルスラーン戦記で田中作品のファンになっていった人間が、創竜伝や薬師寺シリーズで幻滅していくという流れです。
かくいう私自身、まさにそういう流れでタナウツの2代目管理人にまでなったクチでしたし(^_^;;)。
コメント欄でも、「本編はまだしも亡命編は……」という意見は見受けられましたからねぇ。
「かつては好きだったから」というのは、「最初から嫌いだった」よりもはるかに強烈なアンチになってしまうものなのでしてね(-_-;;)。

> 一次創作も二次創作もオリキャラは既存のキャラをカスタマイズするよりもずっと作者の「地」が出てしまいますので、バレンシュタインは、この二次創作の作者さんの分身のような存在です。
> そのキャラの人柄について、あのような言葉を使って批評することは、極論すればあの二次創作の作者さんへの人格批判にもなりかねません。
> 趣味に合わない二次創作に、膨大な字数を割いて批評するなど時間の無駄。嫌いなものは、無視&放置というスタンスはとれませか?

う~む、あの作者氏がそこまで精神脆弱なものですかね?
あちらの感想欄でも、作品に対する批判もあれば、作品や作者を嘲笑するだけのイッチョカミな投稿もしばしばあったりします。
「伝説の17話」の際やミハマ・サアヤに対する批判などは、コメントのほとんどが非難で埋められていたこともありましたし。
特にあれほどの批判を受けてさえミハマ・サアヤをヨイショしていた描写の数々を見ると、作者氏はむしろ「炎上マーケティング」の一環として読者の反応自体を楽しみながら小説を書いているようなフシも多々あったりするんですよね。
私が書いている考察にしても、本当に忌避しているのであればトラックバックを拒否したり削除したりすれば良いだけの話なのですし。
また実際問題、自分の小説にこれだけの反響があるということは、それだけの影響力が自分の小説にあるということでもありますから、必ずしもネガティブに構える必要もないわけです。
それらのことから考えると、作者氏はすくなくともヘコんではいないのではないかなぁ、と思わなくもないのですが。

> 管理人様ご推奨(?)のタンネンベルク氏の方の二次創作は、頑張って全部読みました。
> 率直な感想を述べさせていただきますと、読み物として全く面白くありませんでしたし、いかに理論的に整合性があろうが、タンネンベルクというキャラに何の魅力も感じませんでしたし、特に嫌いにも好きにもなれませんでした。
> これは、あくまでも私の主観です。
> でも、面白くないものは仕方がないし、魅力を感じないものは仕方ないのです。
> 何故面白くないのか?なぜ魅力を感じないのか?と問われて、それを理論的に説明することは難しいですが、「理論的に説明できないものを嫌うな」とは、まさかおっしゃいませんよね?(笑

もちろん、ひとつの物語を見てどう感じるのかは人の数だけ色々あるのですから、私が気に入っている作品を他者が毛嫌いしていたとしても何ら不思議なことではありません。
その逆も当然あることなのですし。
ただ、ここは勘違いしないでもらいたいのですが、人の価値観が人の数だけあるからと言っても、それは人それぞれが自分の意見を声高に主張し、時には他者との価値観とぶつかり合い、その正当性を争うことを否定するものではないということです。
面白い面白くないは主観の問題ですから「人それぞれの好み」ということで問題はないでしょうが、私の考察では「主観の相違」を超えた「客観的な是非」を論じるよう努めています。
人の価値観が人の数だけあるからこそ、価値観のぶつかり合いも当然のごとく生じる、それで良いのではありませんか?

> 「大奥」についての「考察」ですが、私には全てが的外れな批評に思えました。
> 確かに、「男女逆転」という有り得ないIFを前提に展開していますので、矛盾を探し出せばきりがありません。
> ただ、娯楽作品として、もう少し素直な心で楽しめないものかと、管理人さんの「考察」を拝読する度にいつも感じていました。

いや、別に私も作品を素直に楽しんでいないわけではないのですが(^^;;)。
当ブログで展開している映画感想みたいな「普通に観賞して楽しみ、ツッコミも入れて楽しむ」というのが、私の常日頃なスタンスでもありまして。
私は批評や感想もエンターテイメントの一種であると考えていますので、その辺りは自分も他人も楽しめるよう、それなりに考えているつもりです。
ただもちろん、私の考察にもまた、人それぞれに色々な感想があるのは至極当然のことではありますが。

ykdr

本論から外れてしまうのですが、管理人さんはタンネンベルクの小説を推奨されているのですか<題名忘れました。
私もあの小説は読んだことがありますが、あまり面白いとは思いませんでした。
一応公開されている部分は読みましたが、その先を読もうという気になれなかったのです。
何故かというと、やはり主人公タンネンベルクに魅力を感じない、思い入れることが出来ないからだと思います。

物語を書いたことがある方ならば判るかと思いますが、一次でも二次でもキャラクターを、特に主人公を造形するのはとても難しいことです。
設定を作り、それを実際に物語の中で動かす。書きたいことがあってもキャラクターが動かない時って、ほんとーに筆が進みません。
反面キャラクター、特に主人公が上手く動く時って、話それ自体が活き活きします。それくらい主人公って重要なものです。

一次小説も二次小説も、人気がある作品は主人公に必ず光るものというか、グッとくるものがあります。論理的には説明しづらいですが、魅力? 強い個性? そういうもので、それが光る時、文章の拙さや話の合理性、論理性を超越して、読者を掴んで離さないものだと思います。
逆にいうと、そういうものが無いといくら整合性がある話であっても、物語としては味気ないものになってしまうのかなと思います。タンネンベルクの小説はそういうのだと思いました。

銀英伝の転生物は数多いですが、多くの方がココアさんことヴァレンシュタインに強い魅力を見ていると思います。だから人気も凄いですし。

私的にこの小説以外でにじファンのおすすめ作品は、ゼロ魔のグラモン伯爵家の五男の物語です<やっぱ題名忘れました(^^;)
総合評価が高い順で検索するとすぐに見つかりますので、是非読んでみて下さい。原作を知らなくても十分面白い作品です。

  • 2012/05/31 19:34:00

冒険風ライダー(管理人)

>トモさん
>  ヴァレンシュタインが説明責任を果たさなくても、グリーンヒル参謀長は有罪とされないと思います。なぜなら、グリーンヒル参謀長はヒラ参謀のヴァレンシュタインとは異なり、より上位の役職に就いているわけですから、「ヴァレンシュタインから進言を受けたが、自分は当時の状況や多くのスタッフからの報告、その他の要素をヴァレンシュタインの進言とは独立して総合的に考慮した結果、214条の発動に至りました」と主張すれば、ヴァレンシュタインが説明責任を果たさなくてもグリーンヒル参謀長の審判自体には大きな影響を与えないと思うからです。

ではその場合、グリーンヒル大将は一体どのような理由で214条発動を正当化するに至ったのでしょうか?
ヴァレンシュタインがその正当性を説明しない場合は、当然グリーンヒル大将にそれについての説明をすべき義務が発生するのですが、作中にそんな描写はないですし、そもそも38話の軍法会議におけるグリーンヒル大将は発言の描写すらなく名前しか出てきていない始末です。
さらに、作中のヴァレンシュタインの発言は「この発言が全てを決めたと思います」「おそらく敗北を覚悟したのでしょう」などという、軍法会議の帰趨を決するレベルのものとまで評されていたりします。
これらのことから考えると、グリーンヒル大将の正当化発言もまた、ヴァレンシュタインのそれをなぞったものでしかない可能性が濃厚(というより小説的な描写から考えればそれしかありえない)であり、ヴァレンシュタインの主張は当人のみならずグリーンヒル大将の有罪無罪をも左右するものであると言えます。
もしグリーンヒル大将が、ヴァレンシュタインとは全く違った「214条発動の緊急避難性」を主張していたのであれば、それに関する説明や描写が作中になければ変というものでしょう。
発言している人間がヴァレンシュタインだろうがグリーンヒル大将だろうが、ロボスの無能低能や陸戦部隊の危機程度のことが「214条発動の緊急避難性」など構成しえないという事実は全く変わりようがありませんし、無罪を勝ち取ること自体が茶番&八百長もいいところなのです。
私の主張は、発言者の【主体】ではなく、発言の【内容】が「214条発動の緊急避難性」を構成しえないというものなのですから、発言者が別人になってもそいつが無罪にならないことに変わりはないのですよ。

>  ヴァレンシュタインを214条がらみで助けた理由についてですが、上記した通りグリーンヒル参謀長を助けると自動的にヴァレンシュタインも無罪となるので、助ける理由というものがあってもなくても、結果的にヴァレンシュタインは助かってしまった。という事ではないかと思います。

上記の通り、グリーンヒル大将が無罪になった理由がヴァレンシュタインの発言とは別にあるというのであれば、その理由は本来作中で説明されて然るべきものです。
それがない中で作中の評価を鑑みれば、ヴァレンシュタインの発言が自分自身のみならずグリーンヒル大将の無罪をも勝ち取ったものであることは自明の理と言えるのではありませんか?

>  まずは1点目、管理人さんは、214条発動に伴う「悪しき判例」の発生を危惧なさっておられます。私もこのような「悪しき判例」が出来てしまったら軍の指揮系統などに甚大な悪影響を与えると思います。しかし、同盟軍にとって本当に「悪しき判例」なら、思い切って214条自体を撤廃もしくは発動要件を厳しくしてしまえばいいだけだと思います。むしろ214条のような「指揮官が精神的、肉体的な要因で指揮を執れない」と発動用件が明記されているのにもかかわらず、軍医の同意を不要としているような欠陥法など、ロボス元帥の処理も済んだことですので、これを機に撤廃してしてしまうよう働きかけるのもこの世界のシトレらしくていいかな?などと思ってます。

しかし214条って、38話の軍法会議が終わって以降は作中に名前すら出てこなくなりましたよ。
シトレも214条の問題を改革するそぶりすら全く見せていないですし。
それ自体が、作中における214条発動が「正当な理由として(シトレやヴァレンシュタインも含めて)誰もが認識していた」という証明になるのではないかと。

>  ひるがえってヴァレンシュタインの敵前交渉はどうだったかについて私見を述べさせて頂きますと、確かに同盟軍にとっては敵国の軍人であるキスリングを個人的な理由でオフレッサー達に引き渡した行為は問題かと思います。しかしながら、この交渉には時間稼ぎという目的も持っており、交渉の結果、全滅の危機に瀕していた上陸部隊の撤退の黙認を獲得できたのですから、ヴァレンシュタインの行為は賞賛されてもいいかと思います。
>  ヴァレンシュタインの外形だけを見れば、危険を冒して数人の捕虜と引き換えに上陸部隊の撤収までの貴重な時間を稼いだ。彼が同盟軍の将校として疑いをもたれるような言動が無かった事はバグダッシュ中佐、サアヤ大尉の両名が確認している(この2人ならこう報告するでしょう)のに加えて、その場にいた敵から銃撃を受け負傷した、ということになる以上、同盟側が問題視しないのは、むしろ自然なことかと思います。

これはどちらかと言えば、ヴァレンシュタインを「法的に」追い込むためにロボスや検察側が持ち出す事項にはなりえるという理由からあえて持ち出しています。
たとえ敵前交渉が時間稼ぎを目的としており、結果としてそれで多数の生命が救われたにしても、「法的に見れば」それが問題行為であることは疑いようもない事実です。
それに加えて、ヴァレンシュタインは亡命者であり、ローゼンリッターの過去の実例と照らし合わせることで、ヴァレンシュタインが帝国側と内通し裏切る意思を持っているのではないかという状況証拠や演出を行うことも構造的には充分可能です。
何よりも、キスリングを個人的感情から帝国に引き渡した事実は、法的のみならず政治的に見てさえも問題行為として取り上げられるべき事項です。
これらの構図を、ロボスや検察側がヴァレンシュタインに一矢報いるための法廷闘争戦略の一環として利用しないはずが【本来ならば】全くないはずでしょう。
特にロボスの場合は、自分の軍としての立場のみならず保身までもがかかっているのですから。
もちろん、ミハマ・サアヤやバグダッシュ、それにヴァレンシュタインに助けられたシェーンコップや陸戦部隊の面々は積極的にヴァレンシュタインを擁護してくれるでしょうが、法的な問題や亡命者に対する偏見、それにキスリングの件を鑑みれば、戦場における評価はともかく、軍法会議における法廷闘争戦略としては、かなり有利にヴァレンシュタインを追い込める武器として機能しえたのではないでしょうか。
そして、それを上官侮辱罪とも絡めてヴァレンシュタインの動機や正当性を崩す根拠としても活用すれば、本件である214条発動の問題でもヴァレンシュタインに有罪を下させることもできたかもしれないのです。
作中でも、検察官がヴァレンシュタインの動機面にケチをつけて勝訴への活路を求めようとしていましたよね。
上官侮辱罪もそうですが、それに利用できる道具が目の前に存在するのに、手をつけるどころかその存在に気づいてすらいないことの方がおかしいのです。
こういうことばかりやっているから、ヴァレンシュタインには原作知識などをはるかに超えた力を持つ「神(作者)の祝福」があるだの「神(作者)の奇跡」が乱発されているだのと評されてしまうのですけどね。

> 同盟側がなぜヴァレンシュタインを助け続けなくてはならないのかというご質問につきましては、本伝などを読み終わらないとまた妙な珍説を披露してしまいそうなので、あまり積極的に申し上げたくはないのですが、同盟側はヴァレンシュタインにまだ利用価値(原作知識に基づいた言動)を見出しているからだと思います。

同盟側がヴァレンシュタインに利用価値を見出すには、「伝説の17話」の自爆発言が最大最悪の障害となりますね。
アレって、同盟を明確に裏切る意思表示をヴァレンシュタイン自らが行っているも同然のシロモノなのですから。
同盟側にしてみれば、こんな人物、利用価値を見出すどころか完全無欠の敵そのものであり、放置しておく方が逆に危険なのです。
よくまああんな発言を行って殺されもせず罪に問われすらされずに済んだよなぁ、と私などは結構本気で考えるくらいなのですが。

>ykdrさん
> 一次小説も二次小説も、人気がある作品は主人公に必ず光るものというか、グッとくるものがあります。論理的には説明しづらいですが、魅力? 強い個性? そういうもので、それが光る時、文章の拙さや話の合理性、論理性を超越して、読者を掴んで離さないものだと思います。
> 逆にいうと、そういうものが無いといくら整合性がある話であっても、物語としては味気ないものになってしまうのかなと思います。タンネンベルクの小説はそういうのだと思いました。

私の場合、作品内で「聡明かつ有能なキャラクター」として設定されている登場人物は、それを常に実地で証明しなければならないと考えているんですよね。
政治思想を主張するキャラクターも、常にその正しさと一貫性を示さなければならないと考えていますし。
それが全く出来ていないから、創竜伝や薬師寺シリーズの主人公一派やヴァレンシュタインなどは徹底的に叩き潰され、逆に曲がりなりにもその道を歩んでいるタンネンベルクは肯定的な評価の対象となるわけで。
ただまあ、私のように考える人間はあまりいないのでしょうし、さらにそのことに執念を燃やす人間はさらに極少数派でしかないのだろうとは、他ならぬ私自身も自覚せざるをえないところではあるのですが(-_-;;)。
この辺りは、タナウツ本家に収録されている「創竜伝や薬師寺シリーズが何故読者受けするのか?」という議論にも通じるものがありそうですね。

yama

自分で納得のゆく作品を書いては見ないのですか?あなたの作品を読んでみたいと思います。

  • 2012/06/01 19:55:00

トモ

>管理人さん
考察を読み興味が出て、亡命編の途中から読み出して、思ったより面白かったので、この小説の整合性を何とか取れないものかと奮戦してまいりましたが、なかなか一筋縄ではいかないものですね(苦笑)。ですが、もう少しあがいてみようかと思いますので、よろしければお付き合い頂ければ幸いです。

>ではその場合、グリーンヒル大将は一体どのような理由で214条発動を正当化するに至ったのでしょうか?
>ヴァレンシュタインがその正当性を説明しない場合は、当然グリーンヒル大将にそれについての説明をすべき義務が発生するのですが、作中にそんな描写はないで
>すし、そもそも38話の軍法会議におけるグリーンヒル大将は発言の描写すらなく名前しか出てきていない始末です。
>さらに、作中のヴァレンシュタインの発言は「この発言が全てを決めたと思います」「おそらく敗北を覚悟したのでしょう」などという、軍法会議の帰趨を決する
>レベルのものとまで評されていたりします。
>これらのことから考えると、グリーンヒル大将の正当化発言もまた、ヴァレンシュタインのそれをなぞったものでしかない可能性が濃厚(というより小説的な描写
>から考えればそれしかありえない)であり、ヴァレンシュタインの主張は当人のみならずグリーンヒル大将の有罪無罪をも左右するものであると言えます。
>もしグリーンヒル大将が、ヴァレンシュタインとは全く違った「214条発動の緊急避難性」を主張していたのであれば、それに関する説明や描写が作中になけれ
>ば変というものでしょう。
>発言している人間がヴァレンシュタインだろうがグリーンヒル大将だろうが、ロボスの無能低能や陸戦部隊の危機程度のことが「214条発動の緊急避難性」など
>構成しえないという事実は全く変わりようがありませんし、無罪を勝ち取ること自体が茶番&八百長もいいところなのです。
>私の主張は、発言者の【主体】ではなく、発言の【内容】が「214条発動の緊急避難性」を構成しえないというものなのですから、発言者が別人になってもそい
>つが無罪にならないことに変わりはないのですよ。

 まずは、下記のサアヤ大尉のこの発言から検討させて頂きます。

>「この発言が全てを決めたと思います」
>「おそらく敗北を覚悟したのでしょう」などという、軍法会議の帰趨を決するレベルのものとまで評されていたりします。

 ヴァレンシュタインは7回目の審理に呼び出されております。ヴァレンシュタインの審理が終了してすぐに214条発動を巡る軍事裁判において最重要被告ともいうべきなグリーンヒル大将の無罪判決が出ていることからも、審理全体を見てもかなり後半、終盤に近い審理だと思われます。
 検察官はこの裁判では発動者たるグリーンヒル大将について、すでに過去6回の審理の内のいずれかに出廷し、無罪が内定していることから、せめて進言者たるヴァレンシュタインに進言した罪について有罪と認めさせることでグリーンヒル大将に心理的圧迫を加えようとしたが、ヴァレンシュタインに言を左右にされて翻弄されて、明白に有罪と認めさせることが出来ず、グリーンヒルに心理的圧迫をかけるという法廷戦術が実行できなくなったとも考えることも出来ます。

>「おそらく敗北を覚悟したのでしょう」

 というサアヤ大尉の所感は

> 「ロボス元帥に軍を率いる資格など有りません。それを認めればロボス元帥はこれからも自分の野心のために犠牲者を増やし続けるでしょう。第二百十四条を
>進言したことは間違っていなかったと思っています」

 とのヴァレンシュタインの発言を聞き、検察官は彼がどうあっても進言したことに対しての正当性を撤廃しないと確信し、彼のグリーンヒル大将に対する、最後の法廷戦術は費えてしまったので、「敗北を覚悟した」と感じたという見方もできます。
 さらに

>「この発言が全てを決めたと思います」

 という所感は、ヴァレンシュタインの発言により、検察官は想定していた法廷戦術が取れなくなり、おそらく終盤であったであろう214条の審理の行方は事実上、グリーンヒル大将の無罪とり、彼の無罪に付随してヴァレンシュタインの無罪と決定してしまった。
 その意味で、「この発言が全てを決めたと思います」というサアヤ大尉の感想が浮かび上がってきたのだと思います。

 また、私はこの一連のサアヤ大尉の所感はあくまでも、彼女の個人的な見解だと感じております。私はサアヤ大尉の所感と実際の裁判の進展はもう少し違ったのではないかと疑っております。なぜならサアヤ大尉は、ことヴァレンシュタインの事になると分別が疎かになるということは管理人さんの考察によっても明らかですので。

>ではその場合、グリーンヒル大将は一体どのような理由で214条発動を正当化するに至ったのでしょうか?
>ヴァレンシュタインがその正当性を説明しない場合は、当然グリーンヒル大将にそれについての説明をすべき義務が発生するのですが、作中にそんな描写はないで
>すし、そもそも38話の軍法会議におけるグリーンヒル大将は発言の描写すらなく名前しか出てきていない始末です。

 グリーンヒル大将がどのような主張をしたのかは、明示的に描写がない以上、私には正直に言って分かりません(ある程度予想は出来ますが)。しかし同じように明示的に描写がない以上、グリーンヒル大将がヴァレンシュタインと同じ様なことを主張したという解釈の他、いくつかの解釈が可能だと思います。
  
 私は視点を変えてグリーンヒル大将が214条発動を正当化した理由よりもまず、グリーンヒル大将が無罪になった理由を考えてみたいと思います。
 審理過程はその一切の描写は割愛されていますが、グリーンヒル大将は無罪となったと記述されていることを踏まえると、①「214条発動の緊急避難性」を構成すると判断するに足る証言をした、または②ロボス排除という高度な政治的意図(この事件を奇貨としたトリューニヒトによって仕組まれた)によって、本来なら214条発動の緊急避難性」を構成すると認められないような証言でも、シトレ判士長によって無罪判決がくだされたという二つが考えられます。
 
 管理人さんと同じように私も内心、グリーンヒル大将は基本的にはヴァレンシュタインと似たような主張をしたのではないか(もっともヴァレンシュタインの主張よりももっと正当性を前面に押し出したとは思いますが)と思います。しかし、進言者ならまだしも、実際の発動者であり、高度な軍事的判断を要求される参謀長という役職を鑑みても、それだけではまだ足りないと思います。にもかかわらずグリーンヒル大将が無罪になったのは、足りない部分を補って余りある高度な政治的意思が働いたのではないかと思います。

 そもそも、この214条を巡る裁判自体そのものがロボスを政治的に抹殺して、シトレ体制を同盟軍に確立するための一種の政治ショーでだったという意味で、私は茶番&八百長だと思います。ロボスとライバル関係にあるシトレが判士長になるという所からして、公正な軍事裁判が行われるとは最初から期待できないのですから。
 
 私の結論としては「214条発動の緊急避難性」を構成すると判断するには十分な証言とは言えないが、ロボス排除という高度な政治的意図が働いたため、グリーンヒル大将はその(欺瞞的な)正当性が認められて無罪となり、ついでにヴァレンシュタインも無罪となった、というものです。かなり危ういとは思いますが整合性は保てるのではないかと思います。

>私の主張は、発言者の【主体】ではなく、発言の【内容】が「214条発動の緊急避難性」を構成しえないというものなのですから、発言者が別人になってもそい
>つが無罪にならないことに変わりはないのですよ。

 グリーンヒル大将、ヴァレンシュタイン両名の発言の内容が積極的に「214条発動の緊急避難性」を構成しえないという所までは、私も同感です。
 その上で申し上げさせて頂くと、ヴァレンシュタインの発言内容が、彼が無罪になった理由にするのに不適当であれば、むしろ真の渦中の人であるべきグリーンヒル大将に焦点をおいてみれば、辛うじてヴァレンシュタインが無罪になった件についての合理的な理由が導き出せるのではないか?というのが私の立場であり、不十分ながらそういった理由を書かせて頂きました。

>上記の通り、グリーンヒル大将が無罪になった理由がヴァレンシュタインの発言とは別にあるというのであれば、その理由は本来作中で説明されて然るべきもの
>です。
>それがない中で作中の評価を鑑みれば、ヴァレンシュタインの発言が自分自身のみならずグリーンヒル大将の無罪をも勝ち取ったものであることは自明の理と言
>えるのではありませんか?

 「その理由は本来作中で説明されて然るべきもの」という御意見には私も同感です。ですが、現実として説明されていないということは、多様な解釈が読者によって許されるということでもあるのではないでしょうか。
 これまで書かせて頂いた私の文章では、作中での描写がないことを最大限利用して、かなり我田引水がすぎる推論を行ったとは思いますが、私が考えるグリーンヒル大将が無罪になった理由はこれまで書いてきた通りでありますので、ヴァレンシュタインの発言が自身とともに、グリーンヒル大将の無罪を勝ち取ったものであるとされる管理人さんのご主張とはまた違った可能性の提示が出来たのではないかと思います。

>これはどちらかと言えば、ヴァレンシュタインを「法的に」追い込むためにロボスや検察側が持ち出す事項にはなりえるという理由からあえて持ち出しています。
>たとえ敵前交渉が時間稼ぎを目的としており、結果としてそれで多数の生命が救われたにしても、「法的に見れば」それが問題行為であることは疑いようもない事実です。
>それに加えて、ヴァレンシュタインは亡命者であり、ローゼンリッターの過去の実例と照らし合わせることで、ヴァレンシュタインが帝国側と内通し裏切る意思を持っているのではない
>かという状況証拠や演出を行うことも構造的には充分可能です。
>何よりも、キスリングを個人的感情から帝国に引き渡した事実は、法的のみならず政治的に見てさえも問題行為として取り上げられるべき事項です。
>これらの構図を、ロボスや検察側がヴァレンシュタインに一矢報いるための法廷闘争戦略の一環として利用しないはずが【本来ならば】全くないはずでしょう。
>特にロボスの場合は、自分の軍としての立場のみならず保身までもがかかっているのですから。
>もちろん、ミハマ・サアヤやバグダッシュ、それにヴァレンシュタインに助けられたシェーンコップや陸戦部隊の面々は積極的にヴァレンシュタインを擁護してくれるで
>しょうが、法的な問題や亡命者に対する偏見、それにキスリングの件を鑑みれば、戦場における評価はともかく、軍法会議における法廷闘争戦略としては、かなり有利に
>ヴァレンシュタインを追い込める武器として機能しえたのではないでしょうか。
>そして、それを上官侮辱罪とも絡めてヴァレンシュタインの動機や正当性を崩す根拠としても活用すれば、本件である214条発動の問題でもヴァレンシュタインに有罪
>を下させることもできたかもしれないのです。
>作中でも、検察官がヴァレンシュタインの動機面にケチをつけて勝訴への活路を求めようとしていましたよね。
>上官侮辱罪もそうですが、それに利用できる道具が目の前に存在するのに、手をつけるどころかその存在に気づいてすらいないことの方がおかしいのです。
>こういうことばかりやっているから、ヴァレンシュタインには原作知識などをはるかに超えた力を持つ「神(作者)の祝福」があるだの「神(作者)の奇跡」が乱発さ
>れているだのと評されてしまうのですけどね。

 なるほど、承知いたしました。少々論点について誤解していたようです。申し訳ありません。
 ですが、ロボスや検察側が持ち出す事項になりえるのかどうか?という点についてはやや疑問を感じます。
 ロボスや検察側はキスリングがヴァレンシュタインの友人であることを突き止めるのは、そもそも極めて困難だと思うからです。
 ヴァレンシュタインを二重スパイのように仕立て上げるのは、確かに理論的には可能かと思います。しかし、当時の状況を思い出してみれば、建軍以来、同盟軍が初めて足を踏み入れたイゼルローン要塞内の出来事であり、しかも撤退戦という軍事行動の中でも最も困難な行動を実施中であり、恐らく極めて錯綜した状況の中で行われたヴァレンシュタインの言動の状況証拠を集め、しかもロボス達の都合のいいように改竄するとするのは、現実的な方法ではないと考えるからです。
 むしろ、裁判官がそのような状況証拠を集めることの困難な状況を理解していれば、ヴァレンシュタインを二重スパイの容疑で起訴するのということは、上陸部隊の撤収の為の貴重な時間を稼いだ功労者(しかも名誉の負傷を負っています)に対するロボス達の難癖だと思われ、かえって裁判長(判士長)の心象を悪くするだけかと思います。
 つまり、ロボス達はヴァレンシュタインの一連の言動を利用しなかったのでは無く、利用できなかったのだと私は考えます。
 この件に限定して申し上げれば、「神(作者)の祝福」は想定しなくても十分に説明が付く事柄かと思います。

>同盟側がヴァレンシュタインに利用価値を見出すには、「伝説の17話」の自爆発言が最大最悪の障害となりますね。
>アレって、同盟を明確に裏切る意思表示をヴァレンシュタイン自らが行っているも同然のシロモノなのですから。
>同盟側にしてみれば、こんな人物、利用価値を見出すどころか完全無欠の敵そのものであり、放置しておく方が逆に危険なのです。
>よくまああんな発言を行って殺されもせず罪に問われすらされずに済んだよなぁ、と私などは結構本気で考えるくらいなのですが。

私も本気で管理人さんと同じことを考えました(笑)
この小説って読んでいて感じたんですが、オリジナルキャラクターのカリカチュアされた言動などにライトノベルの影響を色濃く感じます。
 主人公ヴァレンシュタインの人物造形も、古くは『スレイヤーズ』のリナ・インバースや、『涼宮ハルヒの憂鬱』の涼宮ハルヒなどの性格に近しいものを感じますが、管理人さんはいかがでしょうか?

 あと少し愚痴というか小さな悩みを告白したいと思います。
 オリジナルキャラクターのサアヤ大尉なのですが、私はサアヤという名前を見ると、つい数年前に一般国民になられたやんごとない女性を思い出してしまって、少々
変な気持ちになります。具体的に言えば、サアヤ大尉の脳内イメージがやんごとない女性に固定されそうで困っております・・・

  • 2012/06/01 23:01:00

S.K

>自分で納得のゆく作品を書いては見ないのですか?
>あなたの作品を読んでみたいと思います。

なんだか「理想のフォーム思い描いて適切に選手に指導
できる二流アスリートのコーチや監督」というのは
いてはいけないみたいな印象の文面ですね、失礼ですが。

>サアヤ大尉の所感

あの女性士官、仮にヴァレンシュタインが同盟議会ビル
の屋上のフェンスに屹立して全裸で高笑いを始めても
「なんて男らしい」って言いそうな人じゃないですか。
司法裁判における「親族の証言」よりまだアテに
ならないと思いますよ。

>多様な解釈が読者によって許されるということでもあるのではないでしょうか。

ではグリーンヒル大将もロボス元帥に対する能力・人格
的攻撃や法廷への嘲弄によって無罪を勝ち取ったので
しょうか?
「酷く原作を莫迦にした展開だなあ」と思いますが
「そう解釈する余地はある」、そういう事ですよね?

>ロボスや検察側はキスリングがヴァレンシュタインの友人であることを突き止めるのは、そもそも極めて困難だと思うからです。

「ヴァレンシュタイン参謀はどのような基準で解放する
捕虜を選別しましたか?例えばギュンター・キスリング
少将などの現場指揮官を確保して帰還されれば同盟に
情報・交渉で大いに益する展開が望めたと思うのですが」
という疑問には果たしてどういう整合性ある回答がある
のでしょう?

>むしろ、裁判官がそのような状況証拠を集めることの
>困難な状況を理解していれば、
>ヴァレンシュタインを二重スパイの容疑で起訴するのということは、
>上陸部隊の撤収の為の貴重な時間を稼いだ功労者
>(しかも名誉の負傷を負っています)に対する
>ロボス達の難癖だと思われ、かえって裁判長
>(判士長)の心象を悪くするだけかと思います。
>つまり、ロボス達はヴァレンシュタインの一連の
>言動を利用しなかったのでは無く、
>利用できなかったのだと私は考えます。
>この件に限定して申し上げれば、「神(作者)の
>祝福」は想定しなくても十分に説明が付く事柄かと
>思います。

一応ロボスは「最小限の犠牲で混戦から脱出する」と
指令しています。
そこに214条で横槍を入れてロボスの軍部内および
社会的地位と信頼を剥奪した首謀者の
ヴァレンシュタインは「何もかも首尾よく都合良く事を
運び、その道理を説明」できて当たり前ではないですか。
なら僅かでもヴァレンシュタインに瑕瑾があればロボス
にはそれを言い立て公正に裁量してもらう権利と必要が
あるのではないですか?

>この小説って読んでいて感じたんですが、オリジナルキャラクターのカリカチュアされた言動などにライトノベルの影響を色濃く感じます。

個人的にはむしろ原作登場人物の無茶な改変や無能化が
悲しいです。

横槍失礼いたしました。

ご高説に感服いたしました

管理人様こんにちは。
TBより飛んできました。
管理人様の考察、ご高説には感服いたしました。
コメントでのやり取り、議論の深さには正直ついていけません。
ですので、素朴で簡単な感想をいわせてください。

亡命編への長期間の罵倒行為お疲れ様でございます。

『主人公がやっている(原作キャラへの罵倒、無能劣化呼ばわり行為など)から、管理人様自身がやってもいいだろう』
との主張を手を変え品を変え、難解な言い回しで繰り返す知識、文章力には脱帽です。

結局やっていることは、亡命編主人公への『近親憎悪』、『同族嫌悪』による罵倒でしょ。

現実世界の住人である管理人様が『二次創作の主人公』に対してここまで粘着する必要があるのか……
エーリッヒさんも厄介な人物に見初められましたね。

>主人公の有能性と人格的魅力(爆)をこんな形でしか描けない、というのは、作品および作者としての限界を示すものでもあると言えるのではないでしょうか?

主人公を『管理人とその考察』、作品および作者を『ブログと管理人』
に置き換えると『全くの正論であること』に脱帽してしまいます。

誤字脱字修正しました。

  • 2012/06/02 11:37:00

Jeri

「バレンシュタイン伝」をまともに読んでいないので、一般論として言わせて下さい。

管理人さんが、他所様の二次創作について「考察」することの是非については、これ以上何も言うつもりはないのですが、私もストーリーの枝葉末節に対する議論にはついていけないものを感じました。

>作品内で「聡明かつ有能なキャラクター」として設定されている登場人物は、それを常に実地で証明しなければならない

理論性や合理性は、「ある程度」は必要だと私も思います。
でも、それを第一に添えて、最優先事項として物語を書いた結果、少なからぬ割合の読者から、「面白くない」「主人公に魅力を感じない」と思われてしまったら、本末転倒ではないでしょうか?
元となる一次作品自体が、大人の観賞に耐える非常に完成度の高い作品であるなら、そこから派生する二次創作にも理論性や合理性を持たせることも可能だと思いますが、こう言っちゃなんですけど、銀英伝はラノベだし、あのラインハルトが名君で、あのロイエンタールが名将であるという設定になっている話ですよ?
そういう世界観の中で、「政治思想の一貫性」など追求する方が無理があるのではないでしょうか。
確かに、全く矛盾点を無視したご都合主義的な話も違和感を覚えますが、まず理論性、合理性ありきで書くと、銀英伝の場合、必ずどこかで行き詰まります。
銀英の二次創作の場合、理論性の追求は、ある程度のところまででストップして適当に誤魔化しておかないと、結局話が進まなくなったり、面白みや魅力に欠ける話になってしまうのではないでしょうか。
少なくとも私は、管理人さんのように理論性や合理性にこだわってしまうと、全くキャラが動かなくなってしまいます。
二次創作なんて、所詮書き手の自己満足だし、萌えどころの消化先だと思ってますんで。
管理人さんは、ラインハルトみたいな人が職場の上司だったら嬉しいですか?
私は嫌です。(笑
でも、銀英伝の中では「ラインハルトは名君であり、理想的な君主である」ということになっているのですから、その前提を崩した二次ではない限り、そういうこととして書くしかないです。
自分でも書いていて途中でおかしいと思っても、そこの部分はあえて思考停止しないと前に進みません。
整合性は確かに必要ですが、程々のところで止めておかないと、少なくとも銀英伝のような作品の二次は完結できません。

  • 2012/06/02 15:48:00

冒険風ライダー(管理人)

>トモさん
>  検察官はこの裁判では発動者たるグリーンヒル大将について、すでに過去6回の審理の内のいずれかに出廷し、無罪が内定していることから、せめて進言者たるヴァレンシュタインに進言した罪について有罪と認めさせることでグリーンヒル大将に心理的圧迫を加えようとしたが、ヴァレンシュタインに言を左右にされて翻弄されて、明白に有罪と認めさせることが出来ず、グリーンヒルに心理的圧迫をかけるという法廷戦術が実行できなくなったとも考えることも出来ます。

これは事実関係が異なりますね。
ヴァレンシュタインが臨んだ7回目の審理時点では、まだグリーンヒル大将もロボスも軍法会議における証言を一切行っておりません。
こんな記述もあるわけですし↓

http://ncode.syosetu.com/n5722ba/38/
> もうすぐ地下の大会議室で軍法会議が始まります。今日で七回目ですが今回はヴァレンシュタイン大佐が証言を求められています。第三回では私も証言を求められました。
>
> 残りはグリーンヒル大将とロボス元帥だけです。軍法会議も終わりが近づいています。私は今回、傍聴席で裁判の様子を見る事にしました。ヴァレンシュタイン大佐の宣誓が始まります。緊張している様子は有りません、表情はとても穏やかです。

これから考えると、軍法会議における証言の順番は

各種証人 → ヴァレンシュタイン(被告) → グリーンヒル(被告) → ロボス(原告) → シトレ(判士長・判決)

というのが実態だったでしょう。
よって、ヴァレンシュタインの証言の時点では、まだグリーンヒル大将の有罪無罪の動向なんて何も決まっていないどころか始まってすらもいないのですよ。
反論の前提条件自体が根本的に間違っているのではないかと。

また、検察官が「グリーンヒルに心理的圧迫をかけるという法廷戦術」を行うつもりだったのであれば、それこそヴァレンシュタインのロボス&フォーク評について「そんなものは214条発動の緊急避難性を構成しえない」として退け、執拗に法的根拠を求め続けるというスタンスを取れば良かったのではないですか?
何度も言っていますが、この軍法会議で問われているのはロボスの総司令官としての資質などではなく、あくまでも「214条発動の是非」でしかないのです。
第6次イゼルローン要塞攻防戦の推移を見ても、当時の同盟軍に全軍瓦解レベルの危機的状況があったわけでもなければ、ロボスに重度の精神異常や重大な軍規違反が認められたわけでもありません。
その点を突いて、ヴァレンシュタインが主張する「214条発動の正当性」を覆してしまえば、ヴァレンシュタインのみならずグリーンヒル大将にも充分すぎるほどの心理的圧迫が加えられたであろうことは確実です。
何なら、「そんな主張を214条発動の正当性として認めてしまったら、今後の軍の運用や指揮系統にも重大な支障をきたし、最悪は軍事クーデターを容認する法的根拠として使われることになりかねない」と主張しても良いでしょう。
一度確定した判例から十二分に想定されるべき事態でもあるのですし。
法的な観点から見た諸々の問題点を鑑みても、単純に「ロボスや検察側の勝訴を勝ち取るため」という目先の目的から言っても、むしろそういう「ひたすら法的な正当性に拘ったガチガチの法廷戦術」を検察側が取らない方が変だと思うのですけどね。

>  また、私はこの一連のサアヤ大尉の所感はあくまでも、彼女の個人的な見解だと感じております。私はサアヤ大尉の所感と実際の裁判の進展はもう少し違ったのではないかと疑っております。なぜならサアヤ大尉は、ことヴァレンシュタインの事になると分別が疎かになるということは管理人さんの考察によっても明らかですので。

ミハマ・サアヤの性格や傾向については全く仰る通りなのですが、ただこの発言の場面に限らず、「エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝」ではキャラクター個人の一人称的な視点に基づいて物語が綴られていくという性格上、特定人物の主張が作者の考えや作品全体の傾向などの代弁をしている、といった要素が少なからずあったりするんですよね。
件のミハマ・サアヤのモノローグでも、後で無罪判決が下る描写が展開されていたことを鑑みると、作者や作品的には、ミハマ・サアヤの考え方こそが軍法会議における一般的な評価でもあることを明示する意図に基づいて作られたものなのではないかと。
まあ、一人称形式の小説記述は、「アレは作品として設定したキャラクター個人の主義主張なのであって、作者の俺の本心を代弁したものではない」という【逃げ】がいつでも打てるという便利な特性があるので、ミハマ・サアヤのモノローグもその一環である可能性は決して少なくないでしょうけど。
我らが田中芳樹御大も、作家としての責任回避が目的なのか、最近は一人称形式を好んで使用するようになりましたからねぇ(苦笑)。

>  私の結論としては「214条発動の緊急避難性」を構成すると判断するには十分な証言とは言えないが、ロボス排除という高度な政治的意図が働いたため、グリーンヒル大将はその(欺瞞的な)正当性が認められて無罪となり、ついでにヴァレンシュタインも無罪となった、というものです。かなり危ういとは思いますが整合性は保てるのではないかと思います。

シトレやトリューニヒトがロボスを排除する意向だったというのであれば、その舞台をよりによって214条発動の軍法会議に据える必要は全くないのではありませんか?
別に214条発動の件がなくても、ロボスが陸戦部隊に対し悪戯に犠牲を強いて何らかの軍事的成果を挙げる見込みすら構築しえなかった、という事実は「ロボス更迭」の充分な大義名分となりえます。
214条発動の件とは別に軍法会議なり査問会なりを開廷し、それこそロボスの無能低能や総司令官としての資質を存分に問えば、それだけで目的は充分に達成できるのです。
この場合、ロボスは「原告」ではなく「被告」という、軍法会議の席上ではさらに不利な立場に立たされることになるのですし。
政治的のみならず法的な要件をも充分に満たすことができるその選択肢を投げ捨ててまで、何故214条発動の件にそこまで拘らなければならないのでしょうか?
そもそもヴァレンシュタイン自身、当初はその方向でロボスを排除する方針であったことを作中で披露してもいたのですが↓

http://ncode.syosetu.com/n5722ba/26/
> 問題は撤退作戦だ。イゼルローン要塞から陸戦隊をどうやって撤収させるか……。いっそ無視するという手もある。犠牲を出させ、その責をロボスに問う……。イゼルローン要塞に陸戦隊を送り込んだことを功績とせず見殺しにしたことを責める……。

こんな常道的な選択肢、シトレやトリューニヒトだって充分に考えることが可能でしょう。
むしろ、214条発動などというヴァレンシュタインの言動の方があらゆる面で異常だったわけで。
それどころか、ヴァレンシュタインの愚劣な言動と前科の数々をシトレは充分に承知だったはずなのですから、いっそ214条発動の件を利用してヴァレンシュタインを排除した方が「厄介者の始末」という観点から見てさえも最良の選択となりえるのですよ。
ロボスの排除もそれとは別に行えるわけなのですしね。
これから考えると、作中における軍法会議の判決に見られる茶番&八百長ぶりは、ロボス排除以上に「ヴァレンシュタインを助ける」ことそれ自体が最優先の目的だった、としか言いようがないわけです。
もう一方の当事者であるグリーンヒル大将を助けるなんて、作品的にもストーリー上でもまるで必然性がないのですから。
こんな意味不明すぎる流れで、しかもヴァレンシュタインの能力や原作知識とも全く無関係な推移を辿っている中での無罪判決というのは、まさに「神(作者)の奇跡」以外の何物でもないのではないかと。

>  ヴァレンシュタインを二重スパイのように仕立て上げるのは、確かに理論的には可能かと思います。しかし、当時の状況を思い出してみれば、建軍以来、同盟軍が初めて足を踏み入れたイゼルローン要塞内の出来事であり、しかも撤退戦という軍事行動の中でも最も困難な行動を実施中であり、恐らく極めて錯綜した状況の中で行われたヴァレンシュタインの言動の状況証拠を集め、しかもロボス達の都合のいいように改竄するとするのは、現実的な方法ではないと考えるからです。
>  むしろ、裁判官がそのような状況証拠を集めることの困難な状況を理解していれば、ヴァレンシュタインを二重スパイの容疑で起訴するのということは、上陸部隊の撤収の為の貴重な時間を稼いだ功労者(しかも名誉の負傷を負っています)に対するロボス達の難癖だと思われ、かえって裁判長(判士長)の心象を悪くするだけかと思います。
>  つまり、ロボス達はヴァレンシュタインの一連の言動を利用しなかったのでは無く、利用できなかったのだと私は考えます。

この場合、ロボスや検察側が取るべき法廷戦術としては「表層的な事象に基づいて法的な問題を問う」というスタンスこそが最良の手段です。
上層部に無断で敵との交渉を始めたのは問題ではないのか?
敵側に軍人、それもそこそこの地位にある士官クラスの人間を帝国に帰してしまったのはどういう了見なのか?
その際、同盟側の機密を渡したりするようなことはなかったのか?
そういった「表層的に分かる簡単な事実と邪推に基づいた問いかけ」を行い、まずは相手方の反応を伺うのが、この手の裁判における検察側が取るべきスタンダードな手法というものです。
これらの問いかけにある事実関係を相手に認めさせる、というだけでも、裁判における審議では検察側にかなり有利に作用します。
ここで被告側が事実関係を認める、ということは「それらの行動が(やむをえない事情があったとはいえ基本的には)違反行為である」ということを認めてしまうことにも繋がるのですから。
すくなくとも「情状酌量の余地はあるが有罪には値する」という状況に持っていくことは充分に可能です。
その上でヴァレンシュタイン側が「それによって陸戦部隊撤退の時間が稼げた」的なものを掲げたとしても、それは「情状酌量」の部分で勘案されるべき事項にしかなりえないのです。
考察本文でも述べている「裁判の場における『政治的結果』というのは、自分の罪を認めた上での情状酌量を求めるためのものでしかありえない」というのはそういうことなのですよ。
もちろん、「情状酌量」が認められることによって「有罪だけど功績を鑑みて罪には問わないOR処罰は免除する」という判決が下ることはありえますが、政治的結果を前面に押し立てた正当性の主張というのはその辺りまでが限界なのでしてね。
実際問題、違反行為が功績によって免罪され、さらには讃えられるべき功績のひとつとしてまで数えられるようになれば、逆に功績を挙げるために違反行為をやらかす人間を大量発生させかねないのですから。
法の問題を考える時は、現在争われている事案だけでなく、今後の影響についても考えていかなければならないのです。

> この小説って読んでいて感じたんですが、オリジナルキャラクターのカリカチュアされた言動などにライトノベルの影響を色濃く感じます。
>  主人公ヴァレンシュタインの人物造形も、古くは『スレイヤーズ』のリナ・インバースや、『涼宮ハルヒの憂鬱』の涼宮ハルヒなどの性格に近しいものを感じますが、管理人さんはいかがでしょうか?

その辺りの問題については、私も創竜伝の竜堂兄弟や薬師寺シリーズの薬師寺涼子辺りをモチーフにしてヴァレンシュタインというキャラクターを造形したのではないかと過去に述べていたりします。
作者氏のHNである「azuraiiru」という名前自体も、アルスラーン戦記に登場するキシュワードの鷹である「告死天使(アズライール)」から取ったものではないかと推察されるところがあり、銀英伝以外の田中作品を作者氏が読んでいても不思議ではないのではないかと思われますし。
薬師寺涼子の元ネタのひとりがリナ・インバースであり、涼宮ハルヒの性格が薬師寺涼子とよく似ていると巷では言われていることを考えると、私もトモさんも結構近いことを考えていることになるでしょうか。

ただ、その手の性格設定および爽快な発言の類は、元来「卓越した戦闘能力」や巨大な権力などといった「力のバックアップ」によって守られているのが常なのですが、ヴァレンシュタインの一体どこにそんなものがあるのかは正直かなり疑問ではありますね。
銀英伝に登場する門閥貴族達でさえ、ゴールデンバウム王朝および門閥貴族体制に基づいた権力・財力・暴力によって守られているからこそ、ああいう好き勝手も可能となるわけで。
ヴァレンシュタインは「本編」でさえ一平民でしかなく、「亡命編」に至っては「【スパイ容疑がかけられた】亡命者」などという、ビュコックやシェーンコップよりも条件的には悪いスタート地点から始まっているのに、あれだけのことをやらかして許されなければならない理由が一体どこにあったというのでしょうか?
この辺りの怪奇現象もまた「神(作者)の奇跡」の産物だよなぁ、とは思わざるをえないところで(苦笑)。

ご高説に感服いたしました

管理人様こんばんは。
たびたびの書き込み失礼いたします。

●管理人様のコメントより抜粋(順不同適当に要約しました)
>「作品で【有能な存在】であると作者が設定したキャラクターが、その設定にふさわしい言動をきちんと披露できているのか?」ということを主軸に据えて論じるようにしています。
>エンターテイメント作品に限ったことではありませんが、有能と自称する人達は、常にそれ相応の有能性を自ら示し、自分の実力を周囲に認めさせる必要がありますし、そのための努力も常に行わなければならないでしょう。
>それが出来ない人間は、周囲から嘲笑され潰されても文句は言えないのです。
>私は小説批評どころか、現実の田中芳樹や「と学会」の面々に対してすら同じように接してきたのですから、これについての一貫性はそれなりにあるものと自負しています。

管理人様の批評姿勢などの是非については管理人様のご自由でありますが、

現実の田中芳樹や「と学会」はプロであり、職業人であるところの言動・作品に対しての批評と、
アマチュアである『にじふぁんのファンフィクションである亡命編』に対しての批評(という名の罵倒行為)は、
一貫性があると自負している。

管理人様の自負なんかは、まさしくどうでもよいのですが、
要するに、間違いなく『無償のファンフィクション』に対するいじめですよね。

6月3日追記
重大な読み落としがありましたので追記します。

●管理人様のコメントに対する返事より
>私は「亡命編」におけるヴァレンシュタインの言動を徹底的に叩き潰すことを決意するに至り、それが今回の考察にまで繋がったわけです。

『ファンフィクション』に対するいじめでもなく、
亡命編への批評でもなく、この考察も何もかもすべてが

『二次創作のキャラクター』であるエーリッヒ・ヴァレンシュタインへの
陰湿な『ストーカー』だったのですね。

本当に長期間にわたる粘着ストーカー行為には脱帽します。
何もかも前提がストーカー行為のためであれば、管理人様の蛇のような情念に合点がゆきます。
しかし、二次創作にストーカーする管理人様とは、本当に驚きました。

  • 2012/06/02 17:23:00

トモ

>S.Kさん
はじめまして
宛先をお書きになっていらっしゃらないのですが、以下の文からはトモに宛てたものと思われますので少々弁明させて頂きます

>>サアヤ大尉の所感
>あの女性士官、仮にヴァレンシュタインが同盟議会ビル
>の屋上のフェンスに屹立して全裸で高笑いを始めても
>「なんて男らしい」って言いそうな人じゃないですか。
>司法裁判における「親族の証言」よりまだアテに
>ならないと思いますよ。
そうですね。私も同感です。

>>多様な解釈が読者によって許されるということでもあるのではないでしょうか。
>ではグリーンヒル大将もロボス元帥に対する能力・人格的攻撃や法廷への嘲弄によって無罪を勝ち取ったのでしょうか?
>酷く原作を莫迦にした展開だなあ」と思いますが「そう解釈する余地はある」、そういう事ですよね?
そういう事です。
ただ私はグリーンヒルの人物造形は、私の受け取り方ですと善良な中間管理職という印象がございますので、他の方はともかくとして私は他の解釈を取らせて頂きます(整合性を取るのが難しそうですので)。

>>ロボスや検察側はキスリングがヴァレンシュタインの友人であることを突き止めるのは、そもそも極めて困難だと思うからです。
>「ヴァレンシュタイン参謀はどのような基準で解放する捕虜を選別しましたか?例えばギュンター・キスリング
>少将などの現場指揮官を確保して帰還されれば同盟に情報・交渉で大いに益する展開が望めたと思うのですが」
>という疑問には果たしてどういう整合性ある回答があるのでしょう?
  例えばこのような回答はいかがでしょうか?

 「小官が上陸部隊撤収の支援にイゼルローン要塞に赴きましたところ、ローゼンリッターの奮戦により局地的優勢を確立しておりましたが、オフレッサー率いる逆襲部隊に蹂躙されるのは時間の問題でした。上陸部隊壊滅を回避するために捕虜の返還を名目に時間稼ぎを行おうとしましたが、そもそもオフレッサーにとっては捕虜全員の奪還は生死を問わなければ十分可能でありました。そのことを認識している人間を相手にする以上、キスリングだけを返還しなければ相手の不興を買い交渉決裂は必至であり、従って捕虜を返還するなら全員でなければならないと判断しました。
 キスリングという高価値な情報を所有している可能性を持つ捕虜を手放したことは、小官にとって大変不本意ではありましたが、1万人近い戦友を死地に追いやるか、俘虜の憂き目に会わせる事(当然この場合、同盟軍の高級士官が敵の手に渡ることを意味します)と比較考量した結果、捕虜全員の返還しかないと判断致しました。従って個々の捕虜に対する選別基準というものはありません」

あと、当時のキスリングは少佐だったと思います。

>>むしろ、裁判官がそのような状況証拠を集めることの困難な状況を理解していれば、ヴァレンシュタインを二重スパイの容疑で起訴するのということは、
>>上陸部隊の撤収の為の貴重な時間を稼いだ功労者(しかも名誉の負傷を負っています)に対するロボス達の難癖だと思われ、かえって裁判長(判士長)
>>の心象を悪くするだけかと思います。つまり、ロボス達はヴァレンシュタインの一連の言動を利用しなかったのでは無く、利用できなかったのだと私は考
>>えます。この件に限定して申し上げれば、「神(作者)の祝福」は想定しなくても十分に説明が付く事柄かと思います。

>一応ロボスは「最小限の犠牲で混戦から脱出する」と指令しています。
>そこに214条で横槍を入れてロボスの軍部内および社会的地位と信頼を剥奪した首謀者のヴァレンシュタインは「何もかも首尾よく都合良く事を運び、その
>道理を説明」できて当たり前ではないですか。
>なら僅かでもヴァレンシュタインに瑕瑾があればロボスにはそれを言い立て公正に裁量してもらう権利と必要があるのではないですか?
 私の主張はイゼルローン要塞での一連のヴァレンシュタインの言動についての瑕瑾はそもそも違法とまでは言えないという事と、公正に裁量してもらうためにロボス・検察官側が持ち出してくるであろう状況証拠が果たして集められるものか疑問である、というものです。
 確かにロボスには裁判に置いて公正に裁量してもらう権利と必要があることは同意しますが、イゼルローン要塞でのヴァレンシュタインの一連の言動に限定する
ならロボス側が主張しても、それが受け入れられるか疑問に思っております(なぜそう思うかは、お手数ですが私の過去の書き込みをお読み下さい)。
 
 214条裁判の論点については投了させて頂きたいのですが、こちらの論点はあくまでもイゼルローン要塞でのヴァレンシュタインの言動は違法かどうかについての論点であり、かつそれが法廷戦術として有効な武器になるかどうかについての論点を、他の論点とは独立して論じているつもりでしたので、214条をこちらの論点に絡めてはどちらの論点についても、有効な議論を成立させるのに少々支障を来たすのではないかと思います。

  • 2012/06/02 23:09:00

トモ

>管理人さん

 気が急いてしまい、前提条件を読み飛ばしてしまっていたようです。大変申し訳ありません。
 せっかくお時間を割いて、お付き合いして頂いたのですが、このような致命的な読み違えをしておきながら、この論点についてさらに言を重ねるのは恥の上塗りかと思いますので、恐れ入りますが、214条を巡る裁判の件については私の投了とさせて頂けませんでしょうか?

申し訳ありませんが、恥を忍んで、こちらはもう少し続けさせて頂きます。
>この場合、ロボスや検察側が取るべき法廷戦術としては「表層的な事象に基づいて法的な問題を問う」というスタンスこそが最良の手段です。
>上層部に無断で敵との交渉を始めたのは問題ではないのか?
>敵側に軍人、それもそこそこの地位にある士官クラスの人間を帝国に帰してしまったのはどういう了見なのか?
>その際、同盟側の機密を渡したりするようなことはなかったのか?
>そういった「表層的に分かる簡単な事実と邪推に基づいた問いかけ」を行い、まずは相手方の反応を伺うのが、この手の裁判における検察側が取るべきスタンダードな手法というものです。
>これらの問いかけにある事実関係を相手に認めさせる、というだけでも、裁判における審議では検察側にかなり有利に作用します。
>ここで被告側が事実関係を認める、ということは「それらの行動が(やむをえない事情があったとはいえ基本的には)違反行為である」ということを認めてしまうことにも繋がるのですから。
>すくなくとも「情状酌量の余地はあるが有罪には値する」という状況に持っていくことは充分に可能です。
>その上でヴァレンシュタイン側が「それによって陸戦部隊撤退の時間が稼げた」的なものを掲げたとしても、それは「情状酌量」の部分で勘案されるべき事項にしかなりえないのです。
>考察本文でも述べている「裁判の場における『政治的結果』というのは、自分の罪を認めた上での情状酌量を求めるためのものでしかありえない」というのはそういうことなのですよ。
>もちろん、「情状酌量」が認められることによって「有罪だけど功績を鑑みて罪には問わないOR処罰は免除する」という判決が下ることはありえますが、政治的結果を前面に押し立てた正当性の主張というのはその辺りまでが限界なのでしてね。
>実際問題、違反行為が功績によって免罪され、さらには讃えられるべき功績のひとつとしてまで数えられるようになれば、逆に功績を挙げるために違反行為をやらかす人間を大量発生させかねないのですから。
>法の問題を考える時は、現在争われている事案だけでなく、今後の影響についても考えていかなければならないのです。

そもそもこの論点についての私の主張はもっと素朴でシンプルな疑問です。
それは

その捕虜がキスリング憲兵少佐であり、かつヴァレンシュタインと旧知の仲であった、という事をロボス・検察側はどのように察知することが出来たのか?

 というものです。イゼルローンというある意味で密室(かなり大きいですが)で行われた言動であり、捕虜キスリングと出会い、オフレッサーと捕虜返還を行うまでの間、ヴァレンシュタインの周辺には彼に好意的な人物(あるいはロボス側に不快感を持つ人物)ばかりであり、わざわざロボス側の有利になるような証言、言い換えればヴァレンシュタインの不利になるような証言をするかどうか?ということからも状況証拠を集めるのは極めて困難ではないかと思います。
 もちろん私は前にも書かせて頂いた通り、ヴァレンシュタインの捕虜返還を手段とした上陸部隊撤収の時間稼ぎには殆ど問題はない(少々の問題はあっても違法とまでは言えない)と思っています。
 描写されていないだけで何らかの手段を用いて、この事実を突き止めたと仮定することはできます。その上で、この事実を法廷戦術に利用するのは可能だとは思いますが、こちらについても前にも書かせて頂いた理由(そもそも違法では無い)で、効果は薄い(または逆効果)のではないかと思います。
  
>この場合、ロボスや検察側が取るべき法廷戦術としては「表層的な事象に基づいて法的な問題を問う」というスタンスこそが最良の手段です。
>上層部に無断で敵との交渉を始めたのは問題ではないのか?
>敵側に軍人、それもそこそこの地位にある士官クラスの人間を帝国に帰してしまったのはどういう了見なのか?
>その際、同盟側の機密を渡したりするようなことはなかったのか?
>そういった「表層的に分かる簡単な事実と邪推に基づいた問いかけ」を行い、まずは相手方の反応を伺うのが、この手の裁判における検察側が取るべきスタンダードな手法というものです。
>これらの問いかけにある事実関係を相手に認めさせる、というだけでも、裁判における審議では検察側にかなり有利に作用します。
(すいません。こちらの部分を再度引用させて頂きました。)

と管理人さんはお書きになられましたが、イゼルローンでの一連のヴァレンシュタインの外形的な行動を記述すれば

上陸部隊の撤収支援の為、最前線に赴いた。そして危険を冒して数人の捕虜と引き換えに上陸部隊の撤収までの貴重な時間を稼いだ。
彼が同盟軍の将校として疑いをもたれるような言動が無かった事はバグダッシュ中佐、サアヤ大尉の両名が確認している。
加えて、その場にいた敵から銃撃を受け戦傷を負う。

という事になるかと思います。この輝かしい戦功を前にして、「ヴァレンシュタイン二重スパイ説」を法廷戦術として持ち出すのは戦術として稚拙であり、もっと他の罪状を持ち出す方が(例えば管理人さんが挙げられる上官侮辱罪等)、邪推に基づかなくてもロボス・検察官側に有効な質問ができるのではないでしょうか?

>涼宮ハルヒの性格が薬師寺涼子とよく似ていると巷では言われていることを考えると、私もトモさんも結構近いことを考えていることになるでしょうか。
これには気付きませんでした。確かに似ていますね(苦笑)

 最後に前提条件を読み落とした件について、もう一度謝罪をさせて頂きます。私の確認ミスからくる過失でした。本当に申し訳ありません。

  • 2012/06/02 23:25:00

S.K

>トモさん
横レスへのお返事いたみいります、という事でお礼がてら。

>>ではグリーンヒル大将もロボス元帥に対する能力・人格的攻撃や法廷への嘲弄によって無罪を勝ち取ったのでしょうか?
>>酷く原作を莫迦にした展開だなあ」と思いますが「そう解釈する余地はある」、そういう事ですよね?
>そういう事です。
>ただ私はグリーンヒルの人物造形は、私の受け取り方ですと善良な中間管理職という印象がございますので、他の方は
>ともかくとして私は他の解釈を取らせて頂きます(整合性を取るのが難しそうですので)。

その「他の解釈」をご教示願わないと話にならないのですが。
「目から洗脳光線を発射して裁判官に『グリ~ンヒル大将バンザ~イ、ゲヘへ」と言わせた可能性も否定しない、
と言われるとこちらも少し困った上で返答する必要がありますので。

それとこの二次創作で原作の人格観はアテにならないと思いますよ。
「蛮族の勇者、理性なき生きる暴力」オフレッサーが
「知勇に優れた大器量の将官」になっているんですから。

>>「ヴァレンシュタイン参謀はどのような基準で解放する捕虜を選別しましたか?例えばギュンター・キスリング
>>少将などの現場指揮官を確保して帰還されれば同盟に情報・交渉で大いに益する展開が望めたと思うのですが」
>>という疑問には果たしてどういう整合性ある回答があるのでしょう?
>キスリングだけを返還しなければ相手の不興を買い交渉決裂は必至であり、従って捕虜を返還するなら全員でなければならないと判断しました。

まず仰るとおりキスリング『少佐』ですね、失礼しました。

「不運にもキスリング少佐に『戦死』してもらって連行する、という選択肢はなかったのかね?
貴官に貸与されたブラスターには『麻痺(パラライズ)モード』が付いていたと認識するし
数名で隔離して救急キットの麻酔薬の投与も不可能とは
いえなかった筈だがね。
加えて『説得が出来る』というのは貴官ら亡命者の
評価にとって悪い事ではなかった筈だが?
そもそも貴官はその『亡命者』の犠牲を厭って
ロボス元帥に『叛逆』したのではないのかね?」
、と詰める事も非ヴァレンシュタイン派の検察官には
可能ですよ。

>>なら僅かでもヴァレンシュタインに瑕瑾があればロボスにはそれを言い立て公正に裁量してもらう権利と必要があるのではないですか?
>私の主張はイゼルローン要塞での一連のヴァレンシュタインの言動についての瑕瑾はそもそも違法とまでは言えないという事と、公正に裁量してもらうためにロボス・検察官側が持ち出してくるであろう状況証拠が果たして集められるものか疑問である、というものです。

「判断錯誤を起こしていない司令官への叛逆と誹謗」、率直に言って『瑕瑾』というのは『手加減』です。
そして状況証拠も何も、それは逆に『ロボス案』と
『ヴァレンシュタイン案』のそれぞれの損益率と成功確率をヴァレンシュタイン側が法廷に「確固たる確率的事実」として提出する義務を負うのであり、
一方的に「数と事実上の暴力」で黙らされたロボス元帥側の義務ではありません。
そしてヴァレンシュタインの義務の不履行はそのままロボスの「正当性およびヴァレンシュタイン・グリーンヒルへの断罪権)に直結します。

>214条裁判の論点については投了させて頂きたいのですが

それは了解いたしました、有難う御座います。
ただ自由惑星同盟が建前上でも「法治国家」であるのなら

>こちらの論点はあくまでもイゼルローン要塞でのヴァレンシュタインの言動は違法かどうかについての論点であり

これは不可分と言えるでしょうね、ロボスがまだいるシンパに救出されて司令室のグリーンヒルと帰還したヴァレンシュタインを
即座に「上官侮辱罪」で処刑する事が許されるわけではないのであれば。

初見読者より(承前)

 コメント欄で皆様が考察をなさっておりますので、前回の書き込みと同一人物であることを強調し、(承前)を加えさせていただきました。ご了承ください。

 さて、小生のぶしつけな書き込みにもかかわらず快くご対応くださいまして、誠にありがとうございます。まずは御礼申し上げます。

 ところで、前回の書き込みで、管理人様の小説観そのものをうかがいたいと小生は申し上げました。それに対する管理人様のご返信においては、下記の部分がもっとも端的な表現とお見受けいたします。

>逆にこれまた小説に限らず、肯定的に評価できるのは「自分を特別視せず、ブーメランのように自分自身に返ってくることのない一貫性と説得力のある言動を常に心掛けている人物像」といったところになるでしょうか。

 しかしながら、上記は小説の構成要素の一部である登場人物の性格的特徴を明らかにしたものに過ぎません。

 小生がうかがいたいのは、登場人物のような一要素の成否ではありません。登場人物の性格的特徴を小説の第一の要素と管理人様がお考えならば、それはそれでよいでしょう。問題は、小説全体の評価をいかにするかであり、それは単に登場人物の言行の一致不一致にとどまるものではありますまい。二次創作をひとつ例示されましたが、その小説のどのようなところが、どのように面白いのか、どのように肯定的に評価されるべきなのかを、管理人様ご自身の言葉で批評してくださらなければ、残念ながら小生には管理人様の小説観を理解することは難しいのです。批評とは自身の小説観を論じるものであって、作例を並べて、あとは読者が読みとるべきであり批評者が語るものではない、ということではありません。リンク集は批評ではない。小生はそのように考えます。
 別の言い方をしましょう。いま俎上に上がっている二つの二次創作とも、小生には同じようなものに見えます。小生は二次創作、一次創作問わず、架空の人物の言行不一致に何らの問題を感じません。それは小説のプロットや個別のシーンのもたらす面白さを疎外するものではないからです。小生にとって、小説の面白さという意味で重要であるのは人物ではなく、小説内の出来事や小説における言説が何らかの価値を持つことです。子の場合の価値とは、正しさとは限りません。新しさもその一つでしょうし、古くは正義と不正義などの二項対立、(メロドラマ的な)恋愛、神と人間の対立と葛藤などが想起されます。その意味で、ご紹介の「反銀英伝 大逆転!リップシュタット戦役」も、一連の「銀河英雄伝説~新たなる潮流」も、原作『銀英伝』に対する小生の蒙を啓く(新たな読みの可能性を教示してくれる)二次創作として、同様に楽しむことができました。

 縷々述べて参りました小生の感想でおわかりの通り、小生としては、管理人様はいまだ、小説観を明らかにしていらっしゃらないと考えております。単なる構成要素の一つに過ぎない登場人物にとどまるのではなく、小説全体に対する管理人様の評価軸を明らかにするよう、お願い申し上げます。

 もちろん、上記の小生の要望はコメント欄への返答で済む分量にとどまることはないでしょう。大衆文学の歴史やそれに対する批評の流れなど、当然ながら言及されるべきことがらも多くあります。パルプフィクションから生じたスペースオペラというジャンルをどう捉えるかという問題もあります。これらの問題に触れずに、『銀英伝』やその二次創作を総合的に評価することは難しいでしょう。したがって、小生は管理人様から小生に対する直接のお答えをいただきたいのではありません。稿を改めて論じてくだされば幸いに存じます。

 毎日のご更新にコメントへのご返信と八面六臂のご活躍に頭が下がる思いです。御身お大事になさいますよう、お祈り申し上げます。

  • 2012/06/03 15:58:00

トモ

>S.Kさん

>その「他の解釈」をご教示願わないと話にならないのですが。
>目から洗脳光線を発射して裁判官に『グリ~ンヒル大将バンザ~イ、ゲヘへ」と言わせた可能性も否定しない、
>と言われるとこちらも少し困った上で返答する必要がありますので。
>それとこの二次創作で原作の人格観はアテにならないと思いますよ。
>「蛮族の勇者、理性なき生きる暴力」オフレッサーが
>知勇に優れた大器量の将官」になっているんですから。

 この二次創作において、ヤンは申し上げるまでもありませんがシトレなどにつきましても大幅な原作改変が行われていることは承知しております。
前に書き込んだ私のグリーンヒル評は、この二次創作を読んだ範囲で私が受け取ったグリーンヒルの人物像であり、この人物像は私の持っている原作のグリーン
ヒルの人物像とさほど違ったものではないと感じられましたので、原作・二次創作のどちらのグリーンヒルに対しても「善良な中間管理職」という印象を持って
いるという意味で書かせて頂きました。

 また、「他の解釈」について私の見解を述べて欲しいとのことですが、この件は私の不見識により投了を願い出ている214条を巡る裁判の論点につながるかと
思いますので、この件に関しては残念ながらS.Kさんの御希望には添えません。
 「多様な解釈が許される」と申し上げた私の真意は、明確な描写がない部分に関して整合性が取れる範囲でなら読者は多様な解釈ができ、またそうすることに
よって、読者は作品に対して多様な受け取り方ができるのではないかという一般的なことを申し上げようとしただけです。
 
>「不運にもキスリング少佐に『戦死』してもらって連行する、という選択肢はなかったのかね?
> 貴官に貸与されたブラスターには『麻痺(パラライズ)モード』が付いていたと認識するし 数名で隔離して救急キットの麻酔薬の投与も不可能とは
>いえなかった筈だがね。加えて『説得が出来る』というのは貴官ら亡命者の評価にとって悪い事ではなかった筈だが?そもそも貴官はその『亡命者』の犠牲を
>厭ってロボス元帥に『叛逆』したのではないのかね?」、と詰める事も非ヴァレンシュタイン派の検察官には可能ですよ。

「当時のキスリング少佐は負傷によりすでに意識不明の状態でありました。そして重ねて申し上げますが、オフレッサーにとって捕虜の奪還はその生死を問わ
なければ十分に可能でありました。一人でも捕虜を返還すると、その捕虜により他の捕虜の情報(官姓名・人数・状態)などが伝えられ、たとえ「戦死」した
と伝えても死体を返還せよと伝えられるはずです。またオフレッサー側においてもある程度、捕虜になった帝国軍人の情報がもたらされた可能性(この可能性
にはキスリングが捕虜になった情報が伝えられた可能性も含まれます)が排除できない状況でしたので、小官も連行の可能性は考慮しましたが、捕虜の返還と
いう手段を取る以上、捕虜全員の返還は不可避であったと考えます」
と逃げることも可能かと思います。

 ところで、反問するようで恐縮ですが、「ロボスや検察側はキスリングがイゼルローンにいて、かつ彼がヴァレンシュタインの友人であることを突き止めるの
は、そもそも極めて困難なのでは?」
という私の疑問に対して、S.Kさんはどのようにお考えになられますか?

>「判断錯誤を起こしていない司令官への叛逆と誹謗」、率直に言って『瑕瑾』というのは『手加減』です。
>そして状況証拠も何も、それは逆に『ロボス案』と『ヴァレンシュタイン案』のそれぞれの損益率と成功確率をヴァレンシュタイン側が法廷に「確固たる確率的
>事実」として提出する義務を負うのであり、一方的に「数と事実上の暴力」で黙らされたロボス元帥側の義務ではありません。
>そしてヴァレンシュタインの義務の不履行はそのままロボスの「正当性およびヴァレンシュタイン・グリーンヒルへの断罪権)に直結します。
>>214条裁判の論点については投了させて頂きたいのですが
>それは了解いたしました、有難う御座います。
>ただ自由惑星同盟が建前上でも「法治国家」であるのなら
>>こちらの論点はあくまでもイゼルローン要塞でのヴァレンシュタインの言動は違法かどうかについての論点であり
>これは不可分と言えるでしょうね、ロボスがまだいるシンパに救出されて司令室のグリーンヒルと帰還したヴァレンシュタインを 即座に「上官侮辱罪」で処刑す
>る事が許されるわけではないのであれば。

論点が錯綜してると感じますので、恐れ入りますが私の主張を整理して述べることで弁明に代えさせて頂きたいと思います。

まずこのイゼルローン要塞でのヴァレンシュタインの一連の言動について私が持ち出した理由は、ロボス側が提起した裁判(以下、214条裁判と書かせて頂きま
す)において、イゼルローン要塞における敵前交渉も一つの罪状として取り上げられるのでないか?
という管理人さんが「考察」の11でお示しになられた論点につき、疑問を感じたからです。

 具体的に該当部分を引用すると

>「亡命編」38話時点において、ヴァレンシュタインが犯した軍規および法律に対する違反行為というのは、実にこれだけのものがあったりするんですよね↓

>1.フェザーンにおける帝国軍人との極秘接触(スパイ容疑、国家機密漏洩罪)
>2.ヴァンフリート星域会戦後の自爆発言(スパイ容疑、必要な情報を軍上層部に対し隠匿し報告しなかった罪、国家反逆罪)
>3.ロボスに対する罵倒(上官侮辱罪)
>4.214条発動(敵前抗命罪、党与抗命罪)【審議中】
>5.イゼルローン要塞における敵前交渉(上層部への確認を行わない独断専行、スパイ容疑、国家機密漏洩罪、国家反逆罪)
>6.軍法会議における一連の言動(法廷侮辱罪、上官侮辱罪)
>※赤文字部分は事実関係から見ても無罪とは言えない嫌疑、またはヴァレンシュタイン自身が認めている罪。

>作中におけるヴァレンシュタインが実際にどんな行動を取っていたかはともかく、同盟側としては状況から考えてこれだけの行為から想定される罪を嫌疑し起
>訴することが、理論的には充分に可能なわけです。
>そして「1」「2」「3」「6」、および「5」の独断専行については、当の本人が自ら積極的に事実関係を認めてしまっているのですから、それで無罪にな
>るということはありえません。
というご指摘の5番目のご指摘、つまりイゼルローン要塞における敵前交渉に対する軍規および法律に対する違反行為である

①上層部への確認を行わない独断専行
②スパイ容疑
③国家機密漏洩罪
④国家反逆罪

 に対してロボス側、あるいはシトレ側が裁判に持ち出さないのは(あるいは断罪しないのは)不自然ではないかという指摘に対する私見を述べたものです。
 
 過去にも書かせて頂きましたので繰り返し申し上げるのは恐縮なのですが、私はそもそも法廷戦術としてこれらの罪状を持ち出すことは可能であるか?または法
廷戦術として有効なものであるか?という2つの論点に限定した上で、管理人さんと質疑応答を希望させて頂いたものでした。
 このようなアプローチで論点に据えた以上、214条裁判とは独立してこの論点を論じられると私は考えておりますし(なにしろ214条裁判の前段階の論点
ですから)、管理人さんにおかれましても私の意図を理解して頂いた上で、私からすれば大変有難いことではありますが、これまでの質疑応答に応じてくださった
ものと思います。
 仮に、「5.イゼルローン要塞における敵前交渉」問題と214条裁判を絡めて議論する気ならば、最初から私はそのような前提で書き込みます。もちろん
S.Kさんが「5.イゼルローン要塞における敵前交渉」問題と214条裁判を絡めて論じられるのであれば拝読させて頂きますが、私が「5.イゼルローン要塞に
おける敵前交渉」を論点に持ち出したのは、S.Kさんの提出された論点とはまた違った次元での論議をしたく思ったからでございますので、おそらくS.Kさんと論点
が噛み合う事はないかと存じます。

  • 2012/06/04 12:15:00

冒険風ライダー(管理人)

映画関係の記事のアップを優先していたこともあり少々遅くなりましたが、まとめてレス致します。

>Jeriさん
> 理論性や合理性は、「ある程度」は必要だと私も思います。
> でも、それを第一に添えて、最優先事項として物語を書いた結果、少なからぬ割合の読者から、「面白くない」「主人公に魅力を感じない」と思われてしまったら、本末転倒ではないでしょうか?

この辺りは「作品の読み方の違い」というのもかなり関わってくると思うのですが、私も別に全ての作品について考察シリーズのごときスタンスで検証などをしているわけではないですよ。
私がこの手の考察を行う際には、まず「その作品がどんなことをメインテーマに据えているか?」「作者はどんな意図で作品を書いているのか?」をチェックします。
その上で、そのメインテーマをあらゆる方向から検証し、メインテーマ自体が成り立たないことを立証していく、という形で考察シリーズは書いていくわけです。
今回のヴァレンシュタイン考察も、「エーリッヒ・ヴァレンシュタインというオリジナルキャラクターが聡明かつ有能で、原作キャラクター達を相手に互角以上に渡り合っていく」というコンセプトとメインテーマがあるからこそ、それを潰すための考察を展開しているわけです。

じゃあ「大奥」の考察は何なんだ、と言われるかもしれませんが、私が「大奥」のメインテーマであろうと考えるのは「男女逆転の世界を舞台に繰り広げられる人間ドラマ」ではなく「男女逆転」そのものです。
あの作品って、わざわざ「正常な男女社会」から「男女逆転社会」へと変貌していく「過程」を延々と描いていますよね。
「赤面疱瘡」だの「男子相続禁止令」だのといった、史実の江戸時代には間違いなく存在しなかったはずのオリジナル設定を持ち出してまで。
単純に「男女逆転社会」を描きたかっただけなのであれば、ああまで「過程」を長々と書くことなく「最初から無条件でそういう世界だった」「理由なんかないけどそういう前提の話なのです」という設定にしても良かったはずでしょう。
「大奥」公式ガイドブックでも、その手のオリジナル設定の正当性を他ならぬ作者自身が主張している箇所などがありましたし、「じゃあ『男女逆転』こそが『大奥』のメインテーマ(のすくなくとも一部)ということで良いのだろう」ということになったわけなのですが。

もちろん、何をもって「作者の意図や作品のメインテーマ」とするのかについては、またそれなりの議論もあれば人それぞれの価値観や見解の相違もあるでしょう。
私が「メインテーマ」と据えていることを、Jeriさんが「枝葉末節な議論」と認識するように。
そういう話なのではないかと思うのですけどね。

> でも、銀英伝の中では「ラインハルトは名君であり、理想的な君主である」ということになっているのですから、その前提を崩した二次ではない限り、そういうこととして書くしかないです。
> 自分でも書いていて途中でおかしいと思っても、そこの部分はあえて思考停止しないと前に進みません。
> 整合性は確かに必要ですが、程々のところで止めておかないと、少なくとも銀英伝のような作品の二次は完結できません。

いや、むしろ二次創作【だからこそ】、原作の不備なども勘案して「より」理論性や整合性を強化した作品を作ることだって充分に可能なのではありませんか?
「反銀英伝 大逆転!リップシュタット戦役」にしても「エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝」にしても、そういうコンセプトで作られている一面は確実にありますよ。
しかも両作品共に、原作キャラクターの言動や問題点を批判している箇所まであったりしますし。
当の作者自身、物語を作る際にその手の理論性や整合性が本当に正しいのか否かくらいの検討は当然行っているはずでしょう。
ならば、その正当性や問題点についてまた別の第三者が指摘をしても、内容は別にしてそのこと自体は何ら悪いことではないはずですが。
原作への批判を意図した二次創作に対し、「二次創作だから」と問題点を放置する行為は、結果的には作品および作者のためにもならないのではないでしょうか。

>トモさん
>  せっかくお時間を割いて、お付き合いして頂いたのですが、このような致命的な読み違えをしておきながら、この論点についてさらに言を重ねるのは恥の上塗りかと思いますので、恐れ入りますが、214条を巡る裁判の件については私の投了とさせて頂けませんでしょうか?

了解致しました。
ではもうひとつの論点について。

> その捕虜がキスリング憲兵少佐であり、かつヴァレンシュタインと旧知の仲であった、という事をロボス・検察側はどのように察知することが出来たのか?
>
>  というものです。イゼルローンというある意味で密室(かなり大きいですが)で行われた言動であり、捕虜キスリングと出会い、オフレッサーと捕虜返還を行うまでの間、ヴァレンシュタインの周辺には彼に好意的な人物(あるいはロボス側に不快感を持つ人物)ばかりであり、わざわざロボス側の有利になるような証言、言い換えればヴァレンシュタインの不利になるような証言をするかどうか?ということからも状況証拠を集めるのは極めて困難ではないかと思います。

まず、キスリングとヴァレンシュタインの関係については、38話時点では既に同盟軍上層部の知るところとなっています。
10話でバグダッシュがこんな報告を行っているのですし↓

http://ncode.syosetu.com/n5722ba/10/
> 「いえ、接触したのはミハマ中尉です。彼女にナイトハルト・ミュラー中尉という帝国軍人が接触してきました。彼はヴァレンシュタイン少佐とは士官学校の同期生で親友だと説明し、ミハマ中尉にこう言ったそうです」
> 「……」
>
> 「“私は彼を守れなかった。だからあいつは亡命した、私に迷惑はかけられないといって”……そしてこうも言ったそうです。“アントンとギュンターが例の件を調べている。必ずお前を帝国に戻してやる”」
(中略)
> 「我々はミュラー中尉を調べ、彼の言葉に有ったアントンとギュンターという人物に注目しました」
> 「分かったのか、彼らが何者か」
> 俺の問いかけにバグダッシュ少佐が頷いた。
>
> 「ミュラー中尉はヴァレンシュタイン少佐と士官学校で同期生です。となるとアントンとギュンターの二人も同期生の可能性が強い。浮かび上がったのは、アントン・フェルナー、ギュンター・キスリングの二人です」

10話時点におけるヴァレンシュタインは(それなりに注目はされていたにしても)未だ重要人物というところまでは出世していませんでしたし、この手の情報は当然同盟軍のデータベース辺りに保管・共有されて然るべきものです。
同盟でヴァレンシュタインに纏わる情報が最高機密扱いになった、という話はありませんし、そもそも同盟側にはヴァレンシュタイン絡みの情報を隠匿しなければならない理由自体がありません。
帝国の方ではヴァンフリート星域会戦後に最高機密扱いになっていましたが。
ましてや、元々ヴァレンシュタインは亡命の経緯自体も特殊だったのですし、ロボスはヴァレンシュタインの上司でもあったのですから、なおのことヴァレンシュタインに関する情報は概要程度でも事前に掌握しておかないとマズいでしょう。
本来高級士官であれば誰でも共有されるべきヴァレンシュタインの情報を、仮にも軍のナンバー2の地位にあったロボスが閲覧すらできないということはありえますまい。
よって、ロボスはキスリングとヴァレンシュタインの関係を充分に知ることができる立場にあったと断定しえます。

次に、仮にも最前線という場で、それも独断で敵前交渉などという行為をやらかしたというのであれば、敵味方を問わず、捕虜に関する名簿は必要不可欠でしょう。
敵だって自身の身元を提示・保証するための階級章なり認識票なりを持っているでしょうし(「亡命編」で死んだキルヒアイスは認識票を持っていました)、捕虜返還を行うというのにその手の調査をしないはずがありません。
そしてそれは、軍法会議の場はもちろんのこと、通常の軍務としても事後報告という形でも上層部に提出しなければならないものでもあります。
そうしなければ、ヴァレンシュタイン達はそのこと自体で「大事な情報を隠匿し報告を怠った」として罪に問われることになってしまいますし、最悪は「何か後ろ暗いところがあるから隠したのだろう?」と痛くもない腹を探られ、さらなる重罪で起訴されることにもなりかねないのです。
もちろん、偽装やウソの証言などをしてもそれは同じことです。
ヴァレンシュタインが敵前交渉の正当性を訴えるのであれば、交渉の全経緯と捕虜名簿は絶対に提示しなければなりませんし、そこから第三者がヴァレンシュタインとキスリングとの関係を知ることも普通に可能なのです。

> この輝かしい戦功を前にして、「ヴァレンシュタイン二重スパイ説」を法廷戦術として持ち出すのは戦術として稚拙であり、もっと他の罪状を持ち出す方が(例えば管理人さんが挙げられる上官侮辱罪等)、邪推に基づかなくてもロボス・検察官側に有効な質問ができるのではないでしょうか?

何度も述べていますが、ヴァレンシュタインの敵前交渉には「純粋に法的な観点から見ても」独断専行や情報漏洩などの問題や懸念があります。
ヴァレンシュタインに「輝かしい戦功」があっても、いやむしろそういうものがあるからこそ、その「輝かしい戦功」なるものの法的手続きに問題はなかったのか、情報漏洩の懸念はないのかについては念入りに調査する必要があるのです。
「輝かしい戦功」があるから法的な問題を無視しても良い、というのでは、それこそ5・15事件で国民からの減刑嘆願に屈して軍人達を軽い処罰で済ませたために2・26事件を誘発させた戦前の日本と全く同じになってしまうではありませんか。
ヴァレンシュタインの「輝かしい戦功」が称賛されるのは、まず法的な問題や懸念材料を吟味し、それらが全くのシロであると判定された後でも遅くはないのですし、またそうでなければならないのです。
そして逆に、そういう問題や懸念が払拭されないのであれば、どんなに「輝かしい戦功」とやらがあろうが、ヴァレンシュタインは一転して非難の対象となるし、【本来ならば】ロボスや検察側がそのことを法廷戦術として利用しないはずがない、とそういう話です。

あと、ロボスや検察側の法廷戦術という観点から言えば、有罪無罪の結果を問わず、訴訟案件を増やすことそれ自体も有効な戦法たりえるでしょう。
確かに「伝説の17話」級の自爆発言ならばともかく、件の敵前交渉では誰が見ても明白な独断専行を問うことはできても、「状況的に見て訴追は可能」という程度の容疑でしかないスパイ容疑や国家機密漏洩罪・国家反逆罪まで問えるかどうかは、正直裁判の動向やヴァレンシュタインの対応次第という面もあります。
考察本文の罪状の色分けで「5」が独断専行しか赤色になっていないのは、そういう意味も含んでいるのです。
しかし、それでも訴追を行った時点で「ヴァレンシュタインにはこれだけの罪業がある」とアピールすることはできますし、訴訟案件が増えるだけでヴァレンシュタイン側の負担は214条単独の場合より格段に増大します。
それで結果的には無罪になるにしても、ヴァレンシュタインに対するイメージダウン戦略を展開すると共に、ヴァレンシュタインを複数の訴訟への対処に奔走させ疲れさせることは十分に可能であり、だからこそ「かませ」的なネタ程度には使えるというわけです。
勝訴することではなく「訴追」それ自体で得られる利益が目的の訴訟、というのも、法廷戦術の一手法としては立派に成立しえるのです。

>初見読者よりさん
>  小生がうかがいたいのは、登場人物のような一要素の成否ではありません。登場人物の性格的特徴を小説の第一の要素と管理人様がお考えならば、それはそれでよいでしょう。問題は、小説全体の評価をいかにするかであり、それは単に登場人物の言行の一致不一致にとどまるものではありますまい。二次創作をひとつ例示されましたが、その小説のどのようなところが、どのように面白いのか、どのように肯定的に評価されるべきなのかを、管理人様ご自身の言葉で批評してくださらなければ、残念ながら小生には管理人様の小説観を理解することは難しいのです。

「物語の主人公」というのは、人体で言えば背骨や心臓部などといった中枢部分に該当するはずですよね。
特に私が例に挙げた「反銀英伝 大逆転!リップシュタット戦役」と「エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝」は、その要素が非常に強い作品です。
前者はそれでもまだ原作主人公のラインハルトが主人公の対等の敵手となりえていますが、後者は「本編」におけるラインハルト一派の末路を見ても完全に主人公の独壇場であり、その他のキャラクターが「主人公の引き立て役」にしかなっていない感が多々あります。
そういった作品に対しては、主人公の性格・思想傾向や正当性などといったものを論じ、その穴を指摘していけば、それがそのまま作品の質や作者の責任などについても言及するものとなりえるわけです。
これは創竜伝や薬師寺シリーズについても同じことが言えます。
主人公に対する依存度が強い物語は、同時に主人公の正当性が潰えると物語の核と言える部分全てが瓦解し機能不全に陥ってしまう、という「脆さ」も併せ持っているからこそ、私は主人公の言動や正当性にこだわるわけなのですが。

S.K

>また、「他の解釈」について私の見解を述べて欲しいとのことですが、
>この件は私の不見識により投了を願い出ている214条を巡る
>裁判の論点につながるかと思いますので、この件に関しては残念ながらS.Kさんの御希望には添えません。

そういう事でしたらその件はこれで。

>「当時のキスリング少佐は負傷によりすでに意識不明の状態でありました。
>そして重ねて申し上げますが、オフレッサーにとって捕虜の奪還はその生死を問わ
>なければ十分に可能でありました。一人でも捕虜を返還すると、
>その捕虜により他の捕虜の情報(官姓名・人数・状態)などが伝えられ、たとえ
>「戦死」したと伝えても死体を返還せよと伝えられるはずです。

「折角亡命してくれたヴァレンシュタイン大佐を幻滅
させるなら恐縮だが、本人がいればドッグタグと培養
した一人分の『肉片塊』くらいは培養して返却できた
のだ。“薔薇の騎士”連隊相手に孤軍奮闘すればその
程度の『結果』は『自然』とも言えた点、異論はある
かね?」

>またオフレッサー側においてもある程度、捕虜になった帝国軍人の
>情報がもたらされた可能性(この可能性にはキスリングが捕虜になった情報が
>伝えられた可能性も含まれます)が排除できない状況でしたので、
>小官も連行の可能性は考慮しましたが、捕虜の返還と
いう手段を取る以上、
>捕虜全員の返還は不可避であったと考えます」
>と逃げることも可能かと思います。

「さて?亡命者が亡命元へ亡命者達を救いに行って、
『中枢に到達できていた』なら『何故そこで死戦
しなかった』のか、『所詮戸羽口で留まっていた』の
なら鏖殺を回避する代償に同盟の何を売り渡したのか、
問われるのはやむを得まい?前者であればこの会戦を
君達が逆転勝利させる事が可能であった状況を放棄
した事になり、後者であれば帝国はいっそその区画
ごと君達を掃討できた筈だからな。第五次攻略戦では
味方艦隊を要塞砲で撃ってまで勝利した帝国軍だ、
『人質を盾にした交渉』が通じるとは思えんね」
と返されるのではないでしょうか。

>ところで、反問するようで恐縮ですが、「ロボスや検察側はキスリングが
>イゼルローンにいて、かつ彼がヴァレンシュタインの友人であることを突き止めるのは、
>そもそも極めて困難なのでは?」という私の疑問に対して、S.Kさんは
>どのようにお考えになられますか?

無理筋で「フェザーンに聞く」、自然な流れで「結果論
にすぎないが、捕縛できる帝国側指揮官といえば
キスリング以外におらず、ヴァレンシュタインが走狗と
しての立場を全うすればその結果で、手ぶらで帰れば
上記にあるよう『帝国に便宜を図った』事になるので
もはやキスリングの素性に関係なくヴァレンシュタイン
は「同盟軍の統率の撹乱の為に送り込まれたスパイ」
扱いになるかと考えます。

>このようなアプローチで論点に据えた以上、214条裁判とは独立して
>この論点を論じられると私は考えておりますし(なにしろ214条裁判の
>前段階の論点ですから)、管理人さんにおかれましても私の意図を理解して
>頂いた上で、私からすれば大変有難いことではありますが、
>これまでの質疑応答に応じてくださったものと思います。

これについても「関連はするだろうがここだけ論じる
事も十分可能だろう」という事で賛同の代わりに
上記述べさせていただきました。

ご高説に感服いたしました

管理人様こんばんは。

4か月も粘着ストーカーしても
azuraiiru様には相手にしてもらえなかったんだからすっぱりと諦めて、
田中と「と学会」のストーカー行為に専念したらどうですか?

本編更新来てたけど、本編には来ないでくださいね。

お願いします。

  • 2012/06/05 01:51:00

トモ

>管理人さん
前回の書き込みは動揺が収まりきれない状態で書き込ませて頂いたもので、読み返してみるとかなり雑な文章になっていることに気付きました。管理人さんにおかれましては御気分を害されたところが多々あったかと思います。申し訳ありません。

>まず、キスリングとヴァレンシュタインの関係については、38話時点では既に同盟軍上層部の知るところとなっています。
なるほど、10話までは目を通していなかったのですが、このような出来事があったのならキスリングとヴァレンシュタインの関係を同盟軍上層部が知っていることも納得できます。

>次に、仮にも最前線という場で、それも独断で敵前交渉などという行為をやらかしたというのであれば、敵味方を問わず、捕虜に関する名簿は必要不可欠でしょう。
>敵だって自身の身元を提示・保証するための階級章なり認識票なりを持っているでしょうし(「亡命編」で死んだキルヒアイスは認識票を持っていました)、捕虜返還を行うというのにその手の調査をしないはずがありません。
>そしてそれは、軍法会議の場はもちろんのこと、通常の軍務としても事後報告という形でも上層部に提出しなければならないものでもあります。
>そうしなければ、ヴァレンシュタイン達はそのこと自体で「大事な情報を隠匿し報告を怠った」として罪に問われることになってしまいますし、最悪は「何か後ろ暗いところがあるから隠したのだろう?」と痛くもない腹を探られ、さらなる重罪で起訴されることにもなりかねないのです。
>もちろん、偽装やウソの証言などをしてもそれは同じことです。
>ヴァレンシュタインが敵前交渉の正当性を訴えるのであれば、交渉の全経緯と捕虜名簿は絶対に提示しなければなりませんし、そこから第三者がヴァレンシュタインとキスリングとの関係を知ることも普通に可能なのです。
 こちらについては少し疑義があります。私は最前線という場だからこそ捕虜に関する名簿は不必要(あるいは作成する余裕が無い)と考えます。
 前にも少し書きましたが、おおよそ軍事行動において撤退戦というものは非常に錯綜した様相をみせるものです。イゼルローン要塞からの撤収においても、まず待ち伏せにあい、上陸軍全軍が壊乱寸前でなんとかシェーンコップが事態を掌握して踏み止まりました。その直後、1万人近い将兵を三段階にわけた撤収作戦を実施された、ということからも彼らの戦場は極度の混乱状態だったと推測されます。
 白兵戦が中心の戦闘中に、捕虜とはいいつつも一時的に拘束したに過ぎない(それでも驚異的なことです)数名の敵兵について、彼らを尋問して正確な記録(身分を偽るのは結構よくあります。つまりちゃんと尋問しないと捕虜がどんな人間かわからないものなのです)を残す余裕があったのかどうか疑問ですし、逆に記録が残っている方が私には不思議に思います。
 そもそも捕虜名簿なるものは、部隊に余裕がある時や捕虜収容所に入所する際などに、多くは情報部が主導し、憲兵がそれに協力して作成されるものであって、最前線しかも撤退戦を実施している部隊では頭数ぐらいは把握してると思いますが、誰も彼もがまず自分達が生き残ることで精一杯の状態ですので、優先順位の低い捕虜の処遇のことまでは気に留めないと思います。確か作中に置いても、ある一室にとりあえず軟禁しているという描写があったと思いますが、調べる余裕もない捕虜の扱いについては、この程度が普通なのではないかと思います。
 
 前もって企画され両者ともに了承の下で行われる捕虜返還であれば、確かに交渉の全経緯及び捕虜名簿は絶対必要かもしれません。しかしながら、今回のような錯綜し、極度に切迫した状況で、緊急避難的に急遽行われた捕虜返還では捕虜名簿はそもそも必須ではなく、要求もされないと思います。オフレッサーの攻撃が目前に迫っている中、可及的速やかに捕虜返還を通じた時間稼ぎを行わなくてはならない状況だったことは、後方の人間であっても理解できることでしょうし、記録を取るような余裕はないことも十分理解できるかと思います。
 もっとも、私にはローゼンリッターには信仰にも似た信用を持っておりますので、奇跡的に捕虜名簿が作成されていたと考えることも可能(彼らならやってくれるかも・・・)ですし、イゼルローンにキスリングがいて、かつヴァレンシュタインと友人関係だった事(後者は確定済みですが)の二つの事実を同盟上層部が把握できたと考えるのも確かに可能かも知れません(私の見立てでは恐ろしく低い可能性ですが)。
 しかし、捕虜名簿を馬鹿正直に提出したローゼンリッターの隊員はシェーンコップに半殺しにされそうですね。

>何度も述べていますが、ヴァレンシュタインの敵前交渉には「純粋に法的な観点から見ても」独断専行や情報漏洩などの問題や懸念があります。
>ヴァレンシュタインに「輝かしい戦功」があっても、いやむしろそういうものがあるからこそ、その「輝かしい戦功」なるものの法的手続きに問題はなかったのか、情報漏洩の懸念はないのかについては念入りに調査する必要があるのです。
>「輝かしい戦功」があるから法的な問題を無視しても良い、というのでは、それこそ5・15事件で国民からの減刑嘆願に屈して軍人達を軽い処罰で済ませたために2・26事件を誘発させた戦前の日本と全く同じになってしまうではありませんか。
>ヴァレンシュタインの「輝かしい戦功」が称賛されるのは、まず法的な問題や懸念材料を吟味し、それらが全くのシロであると判定された後でも遅くはないのですし、またそうでなければならないのです。
>そして逆に、そういう問題や懸念が払拭されないのであれば、どんなに「輝かしい戦功」とやらがあろうが、ヴァレンシュタインは一転して非難の対象となるし、【本来ならば】ロボスや検察側がそのことを法廷戦術として利用しないはずがない、とそういう話です。
 まず「輝かしい戦功」と書いたのは私がヴァレンシュタインの法的な問題や懸念材料を吟味し、それが全くのシロと言って良いと考えたので「輝かしい戦功」としました。決して、「「輝かしい戦功」があるから法的な問題を無視しても良い」と考えたわけではありません。ヴァレンシュタインの敵前交渉はあくまでも同盟軍の目的(味方の撤収)に完全に沿った行動であり、その手段においても適正であります。そのヴァレンシュタインの行動を5.15や2.14事件の首謀者達のような、そもそも軍の存在理由すらを完全に逸脱し、仕えるべき国家を転覆しようとするような行動とを同列に対比して論ずるのは誤りであると考えます。
 以上のとおり、私は「輝かしい戦功」の法的手続きについて問題無しという立場なので、この辺りの論点の中で、「上層部への確認を行わない独断専行」について再度私見を述べさせて頂きます。

上層部への確認を行わない独断専行についての私見

 WW2では敵陣地前で戦死した味方の死体を回収したいから発砲しないでくれといった敵前交渉がままあったそうですし、海軍乙事件では福留参謀長達を拘束したゲリラ部隊の交渉に日本陸軍の大隊長の大西精一中佐は独断で応じ、福留参謀長達の引渡しに成功します。敢闘精神の塊のような皇軍でもこのような現場の裁量が許されていました。数人の捕虜(一時的に拘束した敵戦闘員)を使って時間稼ぎに使うことはヴァレンシュタインの大佐という階級や、戦史をみてもこの程度はヴァレンシュタインの階級(大佐)の裁量権の範囲内であり、21世紀初頭の現在のおおよその国の軍隊では違法どころか、そもそも問題にすらならず、独断専行とは言えないと思います(もちろん独断専行でありますが、許容されうる独断専行だという意味です)。
 
 さらに撤収作戦のためにイゼルローン要塞に向かう際ヴァレンシュタインは、(異論をお持ちなのは承知しております)臨時の最高司令官グリーンヒル大将から撤収作戦の指揮を執ることの承認(というか命令)を得ており、また極めて幅広い領域に「助言」や「指導」が可能な一般参謀でもありますので、その時点でイゼルローン撤収作戦について、彼の大佐という階級にふさわしい幅広い裁量権が発生していたのは明白かと思われます。捕虜返還という手段を取ることについて言えば、そもそも裁量権の範囲内でありイゼルローン撤収作戦に大いに資することからも、上層部(広く同盟としてもいいかも知れません)との意図とも合致しておりますので、なんら問題が発生する余地はないかと思います。
 
 また、この独断専行という問題は裁量権につながる問題でもありますので、軍における階級(ヴァレンシュタインで言えば大佐)とはどのようなものか?についても少し書かせて頂きます。
 軍の階級というものはどのようなものであるのか?という事については、18世紀初頭のプロシア建国功労者のフレデリック・ウィリアムと任務に失敗したある少佐のエピソードが分かりやすいと思いますので、少し引用させて頂きます。

プロシアのフレデリック・ウィリアム皇太子と一人の少佐の話

皇帝「なぜ、お前は作戦に失敗したか?」
少佐「私は皇太子からの直命の通り作戦しました、間違ってはいません!」
皇帝「階級はなんのためにあたえてあるのか? 命令違反するときを判断できる者に与えられているのだ。規則どおり、命令どおりするだけなら、貴様は将校ではなく,兵士でよい」

これ以来、軍隊の階級の意義は、この考え方が世界の常識となっている。

 松村劭著『戦術と指揮』(PHP文庫,2006.3)より  (注)手元に本書がなかったので孫引きです。引用ミスがあれば私の責任です。

 もちろん結果が正しければ手段が正当化されるということを申し上げたいわけではありません。ヴァレンシュタインの大佐という階級にはこれほどまでも自律的に行動することが要求され、また奨励されるということを申し上げたいのです。
 上意下達は確かに組織の基本であることは私も同意致します。しかしながら、上官からの正式な命令が無い限り事前に定められた所掌から一歩も踏み外してはならないとすると、おそらく極めて硬直化した軍隊になるかとは明らかかと思います。このことは一般的な社会活動やビジネスの場でも、かなりの地位に就いていても指示がなければ動けないような社会人が、どのように上司や部下から評価されるのかを想像して頂ければ、よくお分かりになられるかと思います。
 
 スパイ容疑、国家機密漏洩罪、国家反逆罪についてはすぐに後述しますように、管理人さんのお考えに限定的ながら同意しますので省略します。

>あと、ロボスや検察側の法廷戦術という観点から言えば、有罪無罪の結果を問わず、訴訟案件を増やすことそれ自体も有効な戦法たりえるでしょう。
>確かに「伝説の17話」級の自爆発言ならばともかく、件の敵前交渉では誰が見ても明白な独断専行を問うことはできても、「状況的に見て訴追は可能」という程度の容疑でしかないスパイ容疑や国家機密漏洩罪・国家反逆罪まで問えるかどうかは、正直裁判の動向やヴァレンシュタインの対応次第という面もあります。
 そうですか、了解しました。私も今回書かせて頂いたとおり、裁判の動向やヴァレンシュタインの対応次第で「状況的に見て訴追は可能になる」状態がありうることに限定的ながら同意します。
 ただ、敵前交渉の独断専行について「事実関係から見ても無罪とは言えない嫌疑、またはヴァレンシュタイン自身が認めている罪」とされているのはまだ同意できません。

>しかし、それでも訴追を行った時点で「ヴァレンシュタインにはこれだけの罪業がある」とアピールすることはできますし、訴訟案件が増えるだけでヴァレンシュタイン側の負担は214条単独の場合より格段に増大します。
>それで結果的には無罪になるにしても、ヴァレンシュタインに対するイメージダウン戦略を展開すると共に、ヴァレンシュタインを複数の訴訟への対処に奔走させ疲れさせることは十分に可能であり、だからこそ「かませ」的なネタ程度には使えるというわけです。
>勝訴することではなく「訴追」それ自体で得られる利益が目的の訴訟、というのも、法廷戦術の一手法としては立派に成立しえるのです。
 法廷戦術についての管理人さんのお考えに概ね同意します(前回の法廷戦術についての管理人さんのお考えにも概ね同意していたのですが、動揺していて書き忘れていたようです。申し訳ありません。)が、明らかに敗訴の可能性が高い案件を追加するのはロボス側にとってもイメージダウンになったり、裁判官の心証を害するなど不利にはならないでしょうか?
 大量に弁護士を雇い入れられる民事裁判ならともかく、実際の審理を読んでいると検察官が審理を担当する刑事事件に近い訴訟体系のようですし、そうなると検察官側は訴訟経済のことも考えて、勝訴の可能性の高い案件に集中するのではないかと思ったりもするのですが。
 映画『逆転裁判』の感想の中で管理人さんは以下のように述べられておられます
>裁判とは、検察側が掲げる様々な証拠や証人の数々について上記のように審議する場なのであり、検察が被告の有罪を立証するためには、自分達の主張が100%全て正しいものであることを証明しなければならないのです。
>裁判では「疑わしきは被告人の利益に」という言葉もあり、すくなくとも理念上では「被告が無罪になる余地は全くない」という状況にならないと被告は有罪になりません。
>たとえ、検察側の主張が99.999…%と「限りなく100%に近い確率で正しい」ものであったとしても、それは「100%そのもの」ではないので、検察の主張には0.000…1%の穴があるということになり、それでは「検察は被告が100%有罪であることを立証できない」ことになってしまうのです。
 私も管理人さんの刑事訴訟に関するこのお考えに全面的に賛成です。その上で話を続けさせて頂くと、検察側はいくらロボスが独断専行の件について起訴するように訴えたとしても、1%どころではない穴がある訴訟案件に無駄な労力を投じるようには思えないのです。
 確かに法廷戦術として訴訟案件を増やすという戦術があるのは理解していますが、墓穴を掘ってしまうような訴訟案件まで持ち出すのは裁判官の心証を害してしまい逆効果になることは本当にないでしょうか?
 
 しかしながら、こういった疑問を持つ一方で、正直この辺りの裁判戦術については人によって感じ方が違うのではないかと感じ始めております。
 私はここ数日、旧日本陸軍で軍法会議法務官を勤めていた方の戦記をパラパラ読み返しているのですが、軍法裁判は実際には相当恣意的に運用されていたそうですし(もっとも旧軍ということで割り引く必要はありますが)、お国柄といいましょうか国が違えば軍法会議も違ってきます。
 宇宙暦を使う巨大な恒星間国家の軍隊では、ヴァレンシュタインの敵前交渉についても、管理人さんの仰るとおり裁判の流れがヴァレンシュタインに大幅に不利な状況になった場合、ひょっとしたら原作でヤンが査問会議に召喚されたように、訴追が可能になるのではないかと感じるようになりました。
 そうなると管理人さんと私の考えの違いもさほど違わなくなるのかなと思います(それでもやはり「上層部への確認を行わない独断専行」についてのお考えには同意できませんが)。
 
追伸:
 『外事警察』と『ファイナル・ジャッジメント』の映画評、楽しく読ませて頂きました。どちらも気になっていた映画ですので参考になります。ありがとうございます。
 それと、返信が遅れまして申し訳ありません。文章をまとめるのに時間がかかりました。

  • 2012/06/06 22:43:00

冒険風ライダー(管理人)

>トモさん
>  そもそも捕虜名簿なるものは、部隊に余裕がある時や捕虜収容所に入所する際などに、多くは情報部が主導し、憲兵がそれに協力して作成されるものであって、最前線しかも撤退戦を実施している部隊では頭数ぐらいは把握してると思いますが、誰も彼もがまず自分達が生き残ることで精一杯の状態ですので、優先順位の低い捕虜の処遇のことまでは気に留めないと思います。確か作中に置いても、ある一室にとりあえず軟禁しているという描写があったと思いますが、調べる余裕もない捕虜の扱いについては、この程度が普通なのではないかと思います。

交渉で返還予定の捕虜自体、キスリングも含めて4人しかいなかったわけですし、死んだキルヒアイスも所持していた軍の認識票的なもので名前と階級を確認する、というだけでも情報としては役に立つのでは?
名前があれば、特に仕官クラスの人間の場合なら後で同盟軍のデータベースと照合し、素性を明らかにすることも可能でしょう。
捕虜返還の流れになった時点で、その程度のことも出来なかったとは考えにくいのですが。
また、どうしても素性どころか名前すらも分からなかった人間がいるにしても、その場合はきちんと事情を説明する必要が当然ありますし、分かる範疇の捕虜の名前は当然公開しなければならないでしょう。
素性を知りえる立場にあったのにそれを隠匿していたとしたら、たとえ後ろ暗いところがなかったとしても、その隠匿行為自体によって罪に問われかねません。
生き残った最前線の軍人達にとっても、せっかく助かった生命をそんなことのために粗末にするなんてバカらしいにも程がありますし。
そんなことをするよりは、キスリングの存在を明らかにした上で無罪を主張する、という手法の方がはるかに健全だと思うのですけどね。

> ヴァレンシュタインの敵前交渉はあくまでも同盟軍の目的(味方の撤収)に完全に沿った行動であり、その手段においても適正であります。そのヴァレンシュタインの行動を5.15や2.14事件の首謀者達のような、そもそも軍の存在理由すらを完全に逸脱し、仕えるべき国家を転覆しようとするような行動とを同列に対比して論ずるのは誤りであると考えます。

ヴァレンシュタインが敵前交渉を介して帝国側に機密の類を渡したりしたかもしれない、という疑惑についてはどうするのです?
これって実はキスリングがいた場合はもちろんのこと、いない場合でもある程度は猜疑が可能だったりするのですが。
捕虜の管理や移動などからして、事実上彼らだけで行われていたわけですから「そこではどんな不正だって行える」と外部の人間が考えられる余地は充分にあるわけですし。
しかも、当時最前線に残っていたヴァレンシュタインもローゼンリッター達も揃いも揃って亡命者な上、特にローゼンリッターには連隊長の半分が帝国に寝返ったという黒歴史を抱え込んでいます。
この「亡命者に対する偏見」というのは、このような軍法会議の場では意外に無視できない要素でもありますよ。
独断専行の件も、これがあるから法的な観点以上に問題視されるという一面もあるのです。
すくなくとも、ロボスや検察側が彼らの素性を問題視して「奴らが密かに我々を裏切っている危険性はないのか!」とがなりたてる可能性は決して少なくないと思うのですが。
勝算は別にしても、「万人に受け入れられやすいイメージダウン戦略」としては必ずしも悪いものではないのでは?

>  法廷戦術についての管理人さんのお考えに概ね同意します(前回の法廷戦術についての管理人さんのお考えにも概ね同意していたのですが、動揺していて書き忘れていたようです。申し訳ありません。)が、明らかに敗訴の可能性が高い案件を追加するのはロボス側にとってもイメージダウンになったり、裁判官の心証を害するなど不利にはならないでしょうか?
>  大量に弁護士を雇い入れられる民事裁判ならともかく、実際の審理を読んでいると検察官が審理を担当する刑事事件に近い訴訟体系のようですし、そうなると検察官側は訴訟経済のことも考えて、勝訴の可能性の高い案件に集中するのではないかと思ったりもするのですが。

軍法会議の場合、「司法(裁判官)が行政(検察官)を裁く」というのが基本形態となる通常の刑事裁判と異なり、「司法」に該当するはずの裁判官も行政の一員だったりします。
214条絡みのの軍法会議でも、軍という行政機構のナンバー1であるシトレが、判決を下す判士長を担っています。
この時点で、裁判に司法が介在せず、行政へのチェックシステムが働かないことから、「裁判で裁かれるのは検察官の主張」という刑事裁判の基本原則が必ずしも機能しないのです。
また、軍法会議が最上の目的とするのは「被告の権利を守ること」ではなく「軍の権威と秩序を守ること」にあります。
軍規や罰則などが、刑法などと比較しても相当なまでに厳しく重く設定されているのも、個人の権利をある程度抑圧してでも「軍の権威と秩序を守ること」を優先すべきであるとされているからです。
その軍法会議の観点から言えば、作戦内容に指揮系統の不備や敵との内通などといった重大な疑義があるとなれば、個人の権利を抑圧してでも真偽を厳重に審査し問題がないことを確認しなければならない、ということになるのです。
これから考えれば、ヴァレンシュタインの敵前交渉に対する懸念の問題は、すくなくともヴァレンシュタイン側から敵前交渉の全容を引き出させるための道具として利用することは充分に可能です。
そして、敵前交渉について問われたヴァレンシュタイン側は、嘘偽りを並べることなくその全容を全て開示していかなければならず、そうしなければ「情報を隠匿した」ということで確実に罪に問われるのです。
「神(作者)の奇跡」でもない限りは法理上の有罪判決は確実に勝ち取れる、上官侮辱罪や214条問題に比べれば確かに勝算は低いと言えるのですが、それでも勝負は5分5分+イメージダウン効果の獲得程度は得られる上、敗訴しても「軍としての懸念が払拭されたのは良いことです」的なことでも述べておけば、軍法会議の性質上致命傷とまではなりえないでしょう。
これが最後の切り札というわけでもありませんし、「訴訟戦術の一手」としてはそれなりに使える駒とは言えるのではないかと。

トモ

>管理人さんへ
法事と資格試験の追い込みが重なりまして返信が遅れました。申し訳ありません。

>そんなことをするよりは、キスリングの存在を明らかにした上で無罪を主張する、という手法の方がはるかに健全だと思うのですけどね。
なるほど、同意します。

>> ヴァレンシュタインの敵前交渉はあくまでも同盟軍の目的(味方の撤収)に完全に沿った行動であり、その手段においても適正であります。そのヴァレンシュタインの行動を5.15や2.14事件の首謀者達のような、そもそも軍の存在理由すらを完全に逸脱し、仕えるべき国家を転覆しようとするような行動とを同列に対比して論ずるのは誤りであると考えます。
>ヴァレンシュタインが敵前交渉を介して帝国側に機密の類を渡したりしたかもしれない、という疑惑についてはどうするのです?
>これって実はキスリングがいた場合はもちろんのこと、いない場合でもある程度は猜疑が可能だったりするのですが。
>捕虜の管理や移動などからして、事実上彼らだけで行われていたわけですから「そこではどんな不正だって行える」と外部の人間が考えられる余地は充分にあるわけですし。
 「ヴァレンシュタインが敵前交渉を介して帝国側に機密の類を渡したりしたかもしれない、という疑惑についてはどうするのです?」との管理人さんの御質問の趣旨をどう受け取っていいのか分からず、正直どのようにお答えしようか戸惑っています。「「純粋に法的な観点から見ても」ヴァレンシュタインの敵前交渉は適正だったと考えるが、ロボスがこのような疑惑を持ち出してきたらどうするのか?」というご趣旨なのか、それとも「そもそもヴァレンシュタインの敵前交渉は「純粋に法的な観点から見ても」適正だとは考えていない。その上でロボスがこのような疑惑を持ち出してきたらどうするのか?」という趣旨のご質問なのか、大変お恥ずかしながらどちらか分からなかったからです。
 一応、どちらにも共通する「ロボスがこのような疑惑を持ち出してきたらどうするのか?」という部分に限定した上で書かせて頂きます。
 国家機密漏洩罪については一応、監視役だったバグダッシュとサアヤがいますし、この2人はヴァレンシュタイン側の証人として使えるかと思いますし、普通に考えれば機密の類を渡すだけなら、猜疑を持たれる可能性が高いこの場面でするのは不自然である、とヴァレンシュタイン側は主張できるのではないでしょうか?
 この辺りも、いわゆる「悪魔の証明」というものになるかと思いますが、ロボスがなりふり構わず喚き散らす一つの材料として使えるとのお考えなら、私も賛同します

>しかも、当時最前線に残っていたヴァレンシュタインもローゼンリッター達も揃いも揃って亡命者な上、特にローゼンリッターには連隊長の半分が帝国に寝返ったという黒歴史を抱え込んでいます。
>この「亡命者に対する偏見」というのは、このような軍法会議の場では意外に無視できない要素でもありますよ。
>独断専行の件も、これがあるから法的な観点以上に問題視されるという一面もあるのです。
 この小説を最初に読んだときから私は、今回の第6次イゼルローン要塞攻防戦でのローゼンリッターの立ち位置は、WWⅡで活躍した米国陸軍の日系人部隊である第442連隊戦闘団と良く似ていると感じておりました。管理人さんもご存知かもしれませんが、第442連隊戦闘団とはヨーロッパ戦線で大活躍した日系人二世の部隊です。
 日米開戦直後、ドイツ系、イタリア系はほとんど何もされなかったのに、日系人は財産は没収されて強制収容所に収容されるという壮絶な偏見・差別が米国にあったことを管理人さんにおかれましても良く御存知かと思います。そのような環境の中で政治的な理由で創設された第442連隊戦闘団ですが、やはり当初は「ジャップ」ということもあり、アメリカ国民や戦友であるはずの白人将兵からも不信の目を向けられていたそうです。
 そんな第442連隊戦闘団ですが、紆余曲折の末イタリア戦線に投入されました。モンテ・カッシーノを巡る激戦では作戦こそ失敗しましたが、外電に「もし日系人の忠誠心を疑うものがあれば、その男と議論するまい。ただ、その顔を蹴飛ばしてやろう」と伝えられるほどに偏見を払拭することに成功します。
 原作を最後に読み返したのはもう十数年も前になりますが、原作のローゼンリッターもヤンのイゼルローン要塞攻略の活躍で彼らの「亡命者に対する偏見」は改善されたと記憶しております。
 もちろんこの小説のローゼンリッターと第442連隊戦闘団が全く同じ展開をするとは言えませんが、原作でのローゼンリッターの評価の変化、史実の第442連隊戦闘でのケースを踏まえて、この小説のローゼンリッターの活躍を見ると、まず連隊長のヴァーンシャッフェ准将はイゼルローン上陸部隊の先陣を切って突入後戦死、そして彼から指揮を継承したシェーンコップは上陸部隊全軍の瓦解を食い止めています。
 管理人さんの仰るとおり、ドレフュス事件などをみましても、特定集団に対する偏見が軍法会議の場においては確かに意外と無視できない要素であるかもしれませんが、これらのローゼンリッターの活躍を鑑みると、この時点ではそこまで「亡命者に対する偏見」を強調することはできないかと思います。もちろん以上の事はヴァレンシュタインについても同様と考えております。

 それと「法的な観点以上に問題視されるという一面もあるのです。」とのお考えですが、これは通常の一般的な同盟軍将校なら問題視されないが、亡命者たるヴァレンシュタインはその偏見によって問題になる、という意味でしょうか?
 もしそうであるなら、そもそもヴァレンシュタインに”大佐”という階級を与えたり、撤収作戦の指揮を執るように任命したりするという段階のところからの問題になろうかと思います。前回申し上げました通り、上層部への確認を取らないだけで、独断専行問題なるものが発生するとは考えられないのですから。

>すくなくとも、ロボスや検察側が彼らの素性を問題視して「奴らが密かに我々を裏切っている危険性はないのか!」とがなりたてる可能性は決して少なくないと思うのですが。
>勝算は別にしても、「万人に受け入れられやすいイメージダウン戦略」としては必ずしも悪いものではないのでは?
ロボスにしてみれば駄目で元々と考えて、こういった展開するというのは同意します。

  • 2012/06/11 18:55:00

冒険風ライダー(管理人)

>トモさん
>「「純粋に法的な観点から見ても」ヴァレンシュタインの敵前交渉は適正だったと考えるが、ロボスがこのような疑惑を持ち出してきたらどうするのか?」というご趣旨なのか、それとも「そもそもヴァレンシュタインの敵前交渉は「純粋に法的な観点から見ても」適正だとは考えていない。その上でロボスがこのような疑惑を持ち出してきたらどうするのか?」という趣旨のご質問なのか、大変お恥ずかしながらどちらか分からなかったからです。

どちらかと言えば後者ですね。
何度も言っていますが、捕虜にひそかに情報を渡して堂々と逃がす、という行為は充分にありえる話ですし、疑惑が事実無根であったとしても、すくなくとも全経緯を明らかにして疑惑を払拭しなければならない事象にはなりえるでしょう。
また後述しますが、この件に関してヴァレンシュタインは明確な前科が存在しますから、なおのこと問題にならざるをえません。

>  国家機密漏洩罪については一応、監視役だったバグダッシュとサアヤがいますし、この2人はヴァレンシュタイン側の証人として使えるかと思いますし、普通に考えれば機密の類を渡すだけなら、猜疑を持たれる可能性が高いこの場面でするのは不自然である、とヴァレンシュタイン側は主張できるのではないでしょうか?

その監視役であるはずのバグダッシュとミハマ・サアヤこそが、ヴァレンシュタインのスパイ活動(と目される行為)の(逆の意味での)最大の証人となってくれますよ。
ヴァレンシュタインは7話で、フェザーンの帝国側弁務官事務所という公然の場に堂々と乗り込んだ挙句、ミハマ・サアヤの手も借りて、親友であったミュラーとこれまた堂々と接触し情報のやり取りを行っています。
そして、この事件がきっかけとなってバグダッシュは、帝国内におけるヴァレンシュタインの交友関係を知ることになったのです。
「猜疑を持たれる可能性が高いこの場面でするのは不自然である」のであれば、フェザーンの前科は一体どのように説明するのでしょうか?
誰が見ても明らかに「猜疑を持たれる可能性が高いこの場面でするのは不自然である」行為そのものなのですが。
しかもこの件はきちんと上層部にも報告され、ヴァレンシュタインの行動は普通に問題視されていたのです(その後の上層部の対応は「神(作者)の奇跡」レベルの温情もいいところでしたが)。
そのような前科を持つヴァレンシュタインと今回の件を重ね合わせれば、ヴァレンシュタインが今回もまた同じことをやっているかもしれないという目で見られるのはむしろ当然というものでしょう。
フェザーンの前科についてはヴァレンシュタインも「伝説の17話」の自爆発言で自ら認めるところなのですから、下手に中途半端な返答を返そうものならば、過去の前科まで穿り返されて改めて処罰される事態にもなりかねないですね。
しかも、そういう前科の存在を、本来ロボスは「上官として事前に知っておかなければならない」立場にあったのですし。
この前科の件と亡命者としての偏見を組み合わせれば、この件でヴァレンシュタインの「罪」を告発することは別に難しくもないですし、弁明に追われるのはむしろヴァレンシュタインの方にならざるをえないでしょう。
後先考えないヴァレンシュタインの得手勝手な言動が、ここで大きく仇となってくるわけです。

>  原作を最後に読み返したのはもう十数年も前になりますが、原作のローゼンリッターもヤンのイゼルローン要塞攻略の活躍で彼らの「亡命者に対する偏見」は改善されたと記憶しております。
>  もちろんこの小説のローゼンリッターと第442連隊戦闘団が全く同じ展開をするとは言えませんが、原作でのローゼンリッターの評価の変化、史実の第442連隊戦闘でのケースを踏まえて、この小説のローゼンリッターの活躍を見ると、まず連隊長のヴァーンシャッフェ准将はイゼルローン上陸部隊の先陣を切って突入後戦死、そして彼から指揮を継承したシェーンコップは上陸部隊全軍の瓦解を食い止めています。
>  管理人さんの仰るとおり、ドレフュス事件などをみましても、特定集団に対する偏見が軍法会議の場においては確かに意外と無視できない要素であるかもしれませんが、これらのローゼンリッターの活躍を鑑みると、この時点ではそこまで「亡命者に対する偏見」を強調することはできないかと思います。もちろん以上の事はヴァレンシュタインについても同様と考えております。

原作のローゼンリッターに向けられる「亡命者に対する偏見」は、同盟滅亡時まで少しも改善されてなどいませんよ。
銀英伝6巻では、帝国と和解したことから自分達が犠牲の羊に供されるかもしれないと当のローゼンリッターの隊員達自身が懸念している様が描かれていますし、当時軍の要職にいたロックウェルなどは、ローゼンリッターに対する「亡命者への偏見」をこんな発言で露にしていました↓

銀英伝6巻 P178上段
<「売国奴め! 非国民め! だから奴のような帝国からの亡命者などを信用してはいけなかったのだ。メルカッツにしても然り、シェーンコップにしても然り……」>

ローゼンリッターがしぶしぶながらも他者から認められていたのは、あくまでもその「強さ」のみなのであって、同盟に対する忠誠心という点では、過去の歴史および連隊長シェーンコップとその一派の気質もあって元々信用など最初からなく、ヤンの下に属するようになってからは、「いつヤン共々同盟を裏切ってもおかしくない」とむしろますます猜疑の目で見られるようになったのが実情だったのですが。
実際、ローゼンリッターがそこまで信用のある組織として見られていたのであれば、銀英伝6巻におけるあの騒動はそもそもありえなかったでしょう。
あの時のローゼンリッターは最初から同盟を裏切りヤンを助ける気満々でしたし、同盟側も裏切りを警戒して監視をつけたりしているのですから。
ローゼンリッターですらこうなのであれば、ましてや「伝説の17話」で同盟を裏切る意思表示まで行った前科すら持つヴァレンシュタインなど、偏見どころか(帝国ではなく同盟に対する)現実の脅威としてすら見られても不思議ではありませんよ。
ヴァレンシュタインに比べれば1億倍ほどは温厚だったメルカッツすらも、あれだけ控えめに振舞っていながらそれでも猜疑の目で見られていたことを考えると、同盟における「亡命者に対する偏見」というのは相当なものがあると見て然るべきなのではないかと。

>  それと「法的な観点以上に問題視されるという一面もあるのです。」とのお考えですが、これは通常の一般的な同盟軍将校なら問題視されないが、亡命者たるヴァレンシュタインはその偏見によって問題になる、という意味でしょうか?
>  もしそうであるなら、そもそもヴァレンシュタインに”大佐”という階級を与えたり、撤収作戦の指揮を執るように任命したりするという段階のところからの問題になろうかと思います。前回申し上げました通り、上層部への確認を取らないだけで、独断専行問題なるものが発生するとは考えられないのですから。

実際、かなり問題であろうと考えてはいますよ、私は。
そもそも原作から考えても、ヴァレンシュタインには亡命者に対する周囲からの偏見の目がなさ過ぎる、とも私は過去に主張していますし。
1兆歩譲って、ヴァレンシュタインに対するシトレ一派の評価と好感情が「神(作者)の奇跡」レベルで良好だったとしても、ロボスをはじめとする他者までもがその意識を共有しなければならない理由は全くありません。
特にロボスは、ヴァレンシュタインの罪を声高に主張することで、そのヴァレンシュタインを重用しているシトレの非をも間接的であっても鳴らすことができるのですから、なおのこと「亡命者に対する偏見」や「独断専行」の件を利用してはいけない理由がないですね。
むしろ、ヴァレンシュタインを悪戯に(爆)重用しているシトレを糾弾する、という点から言っても、ロボスが取るべき選択肢としてはある程度有効に機能しえるのではないですかね、今回の件は。

初見読者(承前)

亀レスになってもうしわけありません。ご回答は、いささかならず小生の理解を超えております。いくつか感想を書き込みますが、お気になさらずご自分の道を歩まれるのがよいと存じます。

1,物語について
 物語という術語をどのような意味で使用されているのか、頂いた回答から読みとることができませんでした。小説は近代の発明ですが、それ以前の物語を含めるとなると、必ずしも主人公の思想的正当性が重要ではないと存じます。また、カフカの諸作品に見られるように、20世紀であっても、すでに不合理を中心とする小説も書かれています。まずは、物語をどのようなものとして捉えるかを明らかにしていただかなければ、その後の議論は理解できません。
なお、これについて小生の用いる小説を定義します。小生は小説を、近代に発明され、近代人の認識枠組のもとに(つまり神意などの余地なく)展開される散文の形式と見ます。ただし、同時にそれは、近代人の認識枠組を乗り越える超自然的な現象を超自然として描くことを除外するものではありません。後者の超自然を扱う小説ジャンルとしては、ファンタジーやホラー小説(のうち、超自然的な説明原理によるもの)が該当するでしょう。さらに、近代人の認識枠組そのものを問題化するような小説類型も存在します。前述のカフカのような不合理小説はそのひとつです。
ただし、小生は小説にあって登場人物の思想的正当性は極めて些末な要素と考えます。なぜならば、正当性があることが、小説に必ず価値を与えるものではないからです(小説の価値については、前回の書き込みをご参照ください)。主人公の性格、思想傾向、正当性は、小説を論じるうえで実に些末な要素に過ぎません。この意味で、管理人様の見解には同意しかねます。

2,小説観について
 上記で示したように、管理人様にとっての小説的価値(どのような小説が優れているのか)について、管理人様自身の言葉で考察したものが示されない限り、議論は些末な事柄の列挙に終始します。管理人様の批評が小生にとってつまらないという意味のことを最初に申し述べましたが、それは些末な議論に終始し、小説を読むことに対し新しい価値を生み出しているように思えないからです。前回もお伝えしましたが、小生にご返答なさるには及びません。管理人様は他者の小説の細部を取り上げて批判するのではなく、まず、何より先に、管理人様自身の言説をもって小説とは何かを語り、そのうえで作例として他者の作品を取り上げるべきでしょう。そうでなければ、何らの説得性もない議論が続くことになります。小生はそのような議論に価値を見いだせません。

3,挙げられた作例について
 なお、挙げられた作例ふたつについては、両方とも楽しく読みました。小生は、どちらも主人公の意図通りに出来事が推移する二次創作類型として楽しみました。言動、行動、思想の正当性のいかんにかかわらず、主人公の意図通りに出来事が推移するならば、それは全て同じ類型として小生は受け取ります。これらの類型が巷間に言われる「メアリー・スー」あるいは「主人公最強物」などに該当するかどうかは、小生は関知しません。それらの術語は小生にとって些末であり、議論の価値があると思えないからです。

以上、縷々と述べて参りましたが、最初に申し述べました通り、お気になさらずご自分の道を歩まれるのがよいと存じます。残念ながら管理人様との議論は小生にとって新しい価値を生むものではありませんでしたので、小生としては以後、拝読を控えさせていただきます。おつきあいくださいまして、ありがとうございました。管理人様のこれからのご健康とご活躍を祈念いたします。

  • 2012/06/16 12:01:00

冒険風ライダー(管理人)

>初見読者さん
こう言っては何なのですが、あなたはこの一連の考察の主旨をそもそも勘違いしているのではありませんかね?
ヴァレンシュタイン考察の正式名称は、記事のタイトルにもあるように、
【銀英伝2次創作「亡命編」におけるエーリッヒ・ヴァレンシュタイン考察】
ですよ。
「亡命編」という銀英伝2次創作に登場するエーリッヒ・ヴァレンシュタインという人物、およびその言動・小説に対する影響・その他様々なヴァレンシュタイン絡みの関連事項についての考察を行っている、と最初から誤解の余地なく誰の目にも分かるように明示されているはずなのですが。
そして、ヴァレンシュタインがいなければ「エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝」という2次創作そのものが成立しない(原作「銀英伝」に戻ってしまう)わけなのですから、ヴァレンシュタインが物語の全てを背負っている構図があるという結論に到達するのは至極当然というものでしょう。
ヴァレンシュタインの代替品など、「エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝」には全く存在しないのですから。
というか、ヴァレンシュタインという人物要素および彼がもたらした諸々の影響を抜きにして「エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝」をどうやって語れるというのか、そんな方法があるのであれば是非とも教えて欲しいくらいなのですが。

> 小生は、どちらも主人公の意図通りに出来事が推移する二次創作類型として楽しみました。言動、行動、思想の正当性のいかんにかかわらず、主人公の意図通りに出来事が推移するならば、それは全て同じ類型として小生は受け取ります。

これなんて、「主人公の意図通りに出来事が推移する二次創作類型」と作中におけるヴァレンシュタインの重要性を明確な形で認めてしまっているも同然ではありませんか。
そして、「主人公の意図通りに出来事が推移する【過程】」に問題があるのであれば、それは作品の質をも左右しかねない極めて重要な事案となりえます。
一連のヴァレンシュタイン考察は、まさにその「過程」に問題があると、様々な形で指摘し続けているわけです。
この作品の構図の中で、「主人公の性格、思想傾向、正当性は、小説を論じるうえで実に些末な要素に過ぎません」とはとても言えたものではないと思うのですけどね。

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