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映画「メリダとおそろしの森」感想

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映画「メリダとおそろしの森」観に行ってきました。
数々の3Dアニメーション映画を手掛けてきた、ディズニー&ピクサーのタッグによる冒険ファンタジー。
この映画は3Dメガネが必要なバージョンも公開されていますが、私が観賞したのは2Dの日本語吹替版となります。
なお、今作は映画「おおかみこどもの雨と雪」との2本立てで同日観賞しています。

今作では、物語本編が始まる前に、ディズニー&ピクサー映画のキャラクターを使ったと思しき前座的な短編映画が2作品上映されます。
何の予告もなく突然始まったこともあって、本編と全く関係のない内容の短編映画が上映され始めた際には、「まさか、本来『メリダとおそろしの森』が上映されているスクリーンとは全く別の場所に間違って入ってしまったのか?」と、一瞬ながらもついつい考えてしまったものでした(^^;;)。
もちろんそんなことはなく、2作品が上映し終わった後に物語本編はきちんと開始されたのですが。

今作の舞台は10世紀頃のスコットランド。
そのスコットランドにある王国の第一王女にして今作の主人公のメリダは、幼少時に誕生日を迎えた際、父親にして国王でもあるファーガス王から弓をプレゼントしてもらいました。
得意気に弓を射る父親の真似をして、メリダは生まれて初めて弓を射ることになるのですが、初めて放った矢は的に当たるどころか、明後日の方向へと飛んでおそろしの森の奥深くに入り込んでしまいます。
メリダは森の奥の木に突き刺さっていた矢を見つけて戻ってくるのですが、その際に「モルデュ」と呼ばれる巨大な熊に目をつけられてしまいます。
メリダの後を追い、メリダを仕留めんとする巨大熊モルデュ。
そのメリダの前に、父王であるファーガスが武器を持って立ちはだかり、モルデュに単身挑みかかるのでした。

それから数年後。
父王ファーガスと王妃エリノアとの間には、長女メリダに加えて、さらにヒューバート・ヘイミッシュ・ハリス3つ子の兄弟が誕生していました。
ファーガスは数年前のモルデュ襲来と撃退、および際に失った左足を自らが誇る武勇伝として自慢の種にしていました。
そして、元来自由奔放かつお転婆な性格のメリダは、母親である王妃エリノアの伝統至上主義かつ花嫁修業的な教育方針に反発する日々を送っていたのでした。
元々親子としての仲は決して悪くなかった2人ではあったのですが、年を追うにつれてその擦れ違いはどんどん深まるばかり。
そんな中、エリノアは王国の有力貴族であるディングウォール・マクガフィン・マッキントッシュ3家の子息の中から、メリダの婚約相手を選抜すべく画策します。
当然メリダはこれに反発。
婚約相手を選ぶ儀式をメチャクチャにしてしまい、そのまま馬に乗って城から脱走し、冒頭にも登場したおそろしの森の奥深くへと入り込んでしまうのでした。
母親の束縛からなんとしても逃れたいと考えるメリダは、気が付くとストーンサークルが林立する場に出てきていました。
そこで、突如メリダの前に現れ、まるでメリダをどこかへ導こうとするかのようにひとつの道筋を作り出していく鬼火。
鬼火の光跡を辿っていったメリダは、その終着点でひとりの怪しげな老婆と出合うことになるのですが……。

映画「メリダとおそろしの森」は、出自が王家であることを除けば、世界中どこにでもありそうな母親と子供の関係が描かれています。
子供のことを考えるが故に自分の主張を子供にゴリ押しする母親と、それに反発する子供という図式です。
作中でも問題になっているこの図式は、実際に親子間で自己修復ないし解消できた事例は限りなく少ないものだったりします。
これはどちらかと言えば、子供以上に親の問題の方が大きいんですよね。
子供に対する躾と自分のエゴイズムとの区別が全くつかず、自分の考えを無条件に押しつけることが子供への躾であると勘違いする親は、はるか昔から後を絶つことがありません。
当の親自身も、それが間違っていることであるとは露にも思わず、それどころか「子供のためになる」と信じて疑っていないケースが一般的ですらあるのですし。
作中で何かと伝統云々を持ち出してメリダに礼儀作法やら何やらを強要しまくっていた王妃エレノアも、別にメリダに悪意を持って接していたわけではなく、むしろ逆に「それがメリダのためになる」と信じて疑っていなかったわけです。
こういう親って、最初から確信犯で子供を虐待している親と同じかそれ以上にタチが悪かったりするんですよね。
むしろ、なまじ親の善意が分かっているだけに、親を裏切るような後ろめたさや罪悪感を子供側が覚えずにはいられないという問題が発生する分、問題解決が却って厄介になったりするのですし。
また、子供を圧迫している親側は親側で「これは子供を育てるのに必要な愛のムチ」と心の底から信じ込んでいたりするため、話し合いで相互理解に到達する余地自体がほとんどなく、反省や自浄作用を求めることも限りなく不可能に近いときています。
それに加えて、人間が持つ母性本能には「子供をいつまでも自分の手元で保護したい」という欲求が組み込まれているため、その欲求に逆らおうとする子供の成長や自立心を、母親が自ら踏み潰そうとすることも決して珍しい話ではありません。
成長した子供が自分の元から離れていくことを嫌がり、「ひとりにすると不安だから」的な理屈をこねてとにかく自分の指図に従うよう強要する母親などは、まさにその典型ですし。
エレノアがメリダの自立心を拒絶し、あくまでも自分が敷いたレールの上を無理矢理歩かせようとしたのも、そういう本能的な欲求がどこかで働いていたからに他ならないのでしてね。
メリダとエレノアが物語のラストで結果的に和解できたのも、皮肉なことにエレノアが魔女の魔法にかかってしまい、2人が苦難を共にしたことが発端になっていたのであって、それがなかったら2人の仲は時間と共に悪化の一途を辿るだけだったでしょう。
その点では、作中では疑問の余地なく「悪い魔女」扱いされているであろうあの老婆も、結果的にはメリダの願いを最も理想的な形で叶えていた、と評価することもできるのではないかと。
まあ、当の老婆にそんなつもりは全くなかったのでしょうけど(^^;;)。

作中のストーリーはとにかくメリダとエレノアを中心に回っていて、その他の登場人物は軒並み脇役的な役柄に終始していますね。
父親であるファーガス王や3貴族達はひたすら「脳筋」としてのみ描かれていますし、メリダの弟の3つ子達は単なるマスコットキャラクターでしかありません。
特に、3つ子達がエレノアを熊に変えてしまったパンケーキ?をつまみ食いしてしまい、エレノア同様に熊に変化してしまった事象は、王家としては本来ならば王妃エレノアが熊に変わってしまったこと以上に問題となるべき事件であるはずです。
王妃エレノアには王位継承権がない可能性が濃厚なのに対し、3つ子達は王家の直系男子で王位継承権が間違いなく存在しているのであり、その3つ子が熊に変わってしまったということは、下手すれば王位継承の問題にも直結しかねない国の一大事となりえるのですから。
しかしその割には、作中における3つ子達の扱いは「王妃エレノアのついで」的なものでしかなく、メインの扱いには全然なっていないんですよね。
普通の流れで行けば、将来の王国の国王には3つ子達の誰かが即位することになるのですから、王妃エレノア以上に3つ子達の動向の方が本来重要事項であったはずなのですけどね。

ストーリー的には映画「おおかみこどもの雨と雪」と同じく「親子関係」をメインテーマに据えた作品ですが、中心となる視点が前半と後半で変化していった「おおかみこどもの雨と雪」に対し、今作は終始メリダの視点のみで描かれています。
その点では、こちらの方が子供向け作品であると言えるのではないかと。
なお、今作ではエンドロール後に特典映像が存在しますので、最後まで席を立たずに映画を観賞することをオススメしておきます。

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