映画「ダークナイト ライジング」感想
映画「ダークナイト ライジング」観に行ってきました。
映画「インセプション」のクリストファー・ノーラン監督が製作を手掛ける「バットマン」シリーズ3作目にして完結編のアクション大作。
今作のストーリーは、これまでのシリーズの集大成ということもあり、前2作「バットマン ビギンズ」「ダークナイト」の設定を踏まえた上で展開されています。
前2作を知らないと分からない設定やエピソードも多数含まれていますので、前2作を知らない方は、今作を観賞する前に予め前2作を先に観賞することをオススメしておきます。
前作「ダークナイト」から8年が経過したゴッサム・シティ。
前作で恋人を殺され、復讐者トゥーフェイスとして犯罪を犯し死んだハービー・デントを記念して制定されたデント法により、ゴッサム・シティの犯罪は個人・組織を問わずことごとく封殺されていました。
そのハービー・デントが犯した罪を一身に背負い、街からその姿を消したバットマンの存在と汚名を代償にして。
しかし、ハービー・デントの死の真相を隠蔽することは、バットマンに扮するブルース・ウェインと、隠蔽の共謀者であるゴッサム・シティ警察の市警本部長ジェームズ・ゴードンに大きな傷を残していました。
その良心の呵責に耐えかねたのか、ジェームズ・ゴードンはデント法の祝典パーティーの場でその事実を公表しようとしますが、市民の衝撃や糾弾から、一度はスピーチ用に書き上げた真相告白のための原稿を引っ込めてしまいます。
同じ頃、ブルース・ウェインは、自宅に侵入し、真珠のネックレスを身に付けたキャットウーマンと対面していました。
キャットウーマンは、足が不自由になっているブルース・ウェインに一撃を浴びせると、窓から飛び降り姿を消します。
ウェイン邸に侵入した彼女の目的は真珠のネックレスではなく、金庫に貼り付いていたブルース・ウェインの指紋であることが判明します。
キャットウーマンはブルース・ウェインが会長を務めるウェイン財閥の乗っ取りを企むジョン・ダゲットという人物から、ブルース・ウェインの指紋を取るよう依頼されていたのでした。
この騒動がきっかけとなって、ブルース・ウェインことバットマンはキャットウーマンと知己を得ることになるのですが……。
一方、ゴッサム・シティ市警は、凶悪テロリストとして恐れられているベインの行方を追っていました。
熱血捜査官のジョン・ブレイクの聞き込みからもたらされた情報で、ベインはゴッサム・シティの地下に拠点を作っていることが判明。
自ら指揮を取ったジェームズ・ゴードンは、ゴッサム・シティのマンホールからアジトに潜入するものの、護衛を全部倒された挙句、逆にベインの手の者達に囚われの身となってしまいます。
何とか隙を突き、脱出することには成功するものの、ジェームズ・ゴードンは瀕死の重傷を負い入院を余儀なくされてしまいます。
ジェームズ・ゴードンは、巡査だったジョン・ブレイクを刑事に昇格させ、自分の右腕として事件を捜査させ自分に直接報告を行うよう指示します。
ジョン・ブレイクはブルース・ウェインの邸宅を訪れ、8年前の事件以来すっかり引き籠りな生活を送っているブルース・ウェインに対し、8年前の事件に関する捜査令状を発動すると脅して半ば強引に対面を強要。
明らかに彼の正体を知っていると言わんばかりの言辞を繰り出し、バットマンの再来を希望するのでした。
折りしも、市内にある証券取引所に対して、ベイン率いる集団が強襲をかけるという事件が発生。
ブルース・ウェインは、ウェイン家に長年仕えるアルフレッド・ペニーワースの制止も聞かず、バットマンとして復帰し事件に対処することを決意するのですが……。
映画「ダークナイト ライジング」では、総計164分の長い上映時間の中で、重厚な人間ドラマが敵味方を問わず繰り広げられています。
アクションシーンなどもそれなりにはあるのですが、どちらかと言えば人間ドラマがメインで描かれている感がありますね。
その中でも特に重点的に描かれているのは、前作で幼馴染の恋人を亡くし、生きる希望を失ってしまったバットマンことブルース・ウェインの懊悩と、彼が立ち直っていく過程でしょうか。
実はその前作で死んだ当の恋人は、死の直前にブルース・ウェインに対して決別の意思を示した手紙を出しており、その手紙は執事アルフレッド・ペニーワースの手によって隠匿されていたのですが、そうとは知らずに恋人のことを想い続けるブルース・ウェインの姿は、なかなかに滑稽なものがあります。
今作では、この隠蔽劇についての一定の決着を見ることになります。
ただ、バットマンの道へ戻ることに反対するアルフレッド・ペニーワースから、恋人の手紙の真相を知らされたはずのブルース・ウェインは、しかしその割にはあまり衝撃を受けたようには見えなかったですね。
恋人が死んでから8年も経過していて記憶も想いも薄れている、という事情もあったのでしょうが、ブルース・ウェイン的にも、前作の恋人の態度に何か予感を抱かせるものでもあったのではないかなぁ、とは思わずにいられなかったところです。
また、アルフレッド・ペニーワースにしてみれば、事の真相を暴露することでブルース・ウェインのやる気を喪失させるという狙いも多分にあったのではないかと思われるのですが、結局ブルース・ウェインを止めることは叶わなかったわけで「当てが外れた」的な部分はあったでしょうね。
何やかや言っても、彼は誰よりもブルース・ウェインのことを考えて行動していましたし。
今作のメインとなる敵陣営のボスキャラ(ただしラスボスではない)となるであろうベインは、物理的な力においてバットマンと互角以上に渡り合えた稀有な存在ですね。
序盤はバットマン側のコンディションが思わしくなかったとは言え、完全に力で圧倒し牢獄にぶち込むところまでいっていましたし。
彼の失敗は、「死にたがっているお前を殺しても罰にならない」などという、ある意味潔癖症じみたことを主張して、あそこでバットマンをさっさと殺しておかなかったことだったでしょう。
物語終盤近くで自身が復活したバットマンに逆に追い詰められた時、彼は間違いなく自身のその言動を後悔したことでしょう。
だからこそ、ラスボスがバットマンにナイフを突き立ててその場を立ち去った後、彼はそれまでの生温い対応を投げ捨てて、躊躇なくその場でバットマンを殺す選択に打って出ざるをえなかったのでしょう。
その余裕のなさっぷりは、圧倒的な存在感を示していた序盤とは著しく対象的と言えるものでした。
その直後に、キャットウーマンが乗車していたバイクの砲撃で吹っ飛ばされてあっさり絶命してしまった結末は少々意外ではありましたが。
ベインはバットマンとのタイマン勝負で死ぬのだろうと、予告編を見ていた頃からずっと考えていたくらいでしたし。
この辺り、ベインの「悪役としての凋落ぶり」を感じさせるものではありましたね。
バットマン・キャットウーマンとくれば、あとはバットマンの相棒であるロビンも出てくるものなのですが、彼は作中の最後にその存在が明らかとなります。
ジェームズ・ゴードンの部下として、またバットマンの協力者として作中でも活躍するジョン・ブレイクが、警察と法の理不尽なあり方に憤って警察を辞職した後、「ロビン」という偽名を名乗ると共に、無人となったバットマンの秘密基地へと侵入するシーンがあるんですよね。
クリストファー・ノーラン監督より以前の映画「バットマン」シリーズでは、バットマンと共に敵と戦っていたロビンでしたが、あの世界における「ロビン」は、バットマンの存在なしでひとりで戦っていくことにでもなるのでしょうか?
最後の最後で「ロビン」を出してくる辺りは、ファンサービスが上手いなぁと思わずにいられなかったところでしたが(^_^;;)。
アクション物というよりは人間ドラマ重視の作品であり、どちらの視点で見てもそれなりの出来と面白さを兼ね備えた映画とは言えますね。
iina
秘密基地へと侵入して「ロビン」と名乗るシーンは、何を暗示しているのでしょう哉?
そして、敵はいったい何を狙っていたのでしょう哉?
ゴッサム・シティの撲滅にしては手が込んだ抹殺ゲームでした。しかも、富再分配は善いとして、その市民を巻き添えにするのはいただけません。
しかし、その分を割り引いても見応え充分で楽しめました。
蛇足ですが、此方tanautsu.blogでも、トラックバック(54)に対してコメント(0)とは、寂しい限りでした。
そのように思うも思わぬも運営者の勝手ではありますね。失礼しました。