映画「アナザー/Another」感想
映画「アナザー/Another」観に行ってきました。
ベストセラー作家・綾辻行人の同名小説を実写映画化した学園ホラー作品。
映画「麒麟の翼 ~劇場版・新参者~」で真犯人役を演じた山崎賢人と、映画「HOME 愛しの座敷わらし」「スープ ~生まれ変わりの物語~」にも出演した橋本愛の2人が、今作の主演を担っています。
なお今作は、人間の首がワイヤーロープで切断される映像や、スプーンが眼球に突き刺さり頭を貫通するシーンなどといった「残虐な死」の描写が作中で展開されるため、PG-12指定されています。
ちなみに、私が映画館でホラー映画を観賞するのは、実は今作が初めてだったりします(^^;;)。
今週はこれといった映画観賞候補作が、今作以外何もなかったものでしてねぇ(-_-;;)。
物語の舞台は1998年。
父親の一時的な海外出張という期間限定で、地方都市である夜見山市の夜見山北中学校へ転校してきた今作の主人公・榊原恒一(さかきばらこういち)。
しかし4月26日、彼はクラスへの編入直前になって、自然気胸という病を患ってしまい、地元の病院への入院を余儀なくされてしまうのでした。
意識が朦朧とする中、彼は全く見覚えのない「左目に眼帯をつけている美少女」に導かれ、幼い頃に死んだ母親と出会う夢を見ることになります。
やがて夢から覚め、病院で1週間以上にわたる病院生活を送ることになった榊原恒一でしたが、病院の中を散歩している中、夢の中に出てきた「左目に眼帯をつけている美少女」を見かけることになります。
夢のこともあり、彼女を追った榊原恒一は、霊安室へと入っていく姿を目撃することになるのでした。
5月6日。
病院から退院し、元々転校予定だった夜見山北中学校3年3組のクラスへ編入することになった榊原恒一は、そこでまたしても「左目に眼帯をつけている美少女」と再会することになります。
しかし3年3組のクラスメイト達は、確実に存在するはずの彼女を、あたかも最初から存在しないものとして扱うという不可解な対応に終始していました。
それでも「左目に眼帯をつけている美少女」のことが気になる榊原恒一は、何とか彼女に接触しようと行動するのですが、何故かそれを止めにかかるクラスメイト達。
それでも何とか見崎鳴(みさきめい)という名前を突き止めることに成功した榊原恒一は、なおも接触を図ろうとするのですが、その光景を発見したひとりの女子生徒が悲鳴を上げます。
そしてその直後、彼女は偶発的な事故に巻き込まれ、首に致命傷を受けて死んでしまうのでした。
しゃがれた声で「あなたのせい」というメッセージを残して。
その現場に集まったクラスメイト達は、「ルールを破ったからだ」などという謎めいた言葉を呟き、死者となった女子生徒と同じように榊原恒一と見崎鳴を責め、さらには榊原恒一同様に「最初からいなかった」かのごとく扱われるようになるのでした。
榊原恒一は見崎鳴を問い質し、3年3組に纏わる謎の「現象」を知ることになるのですが……。
映画「アナザー/Another」では、次々と人が死んでいく「現象」が何故発生したのか、具体的な真相とその抜本的な解決策については全く何も語られていません。
作中で語られているのは、26年前の1972年に夜見山岬(よみやまみさき)というひとりの女子生徒の死後、当時の3年3組のクラスメイト達が彼女の死を受け入れず「生きている人」であるかのごとく振る舞った翌年から「現象」が始まった、という解説なのですが、本当にそれが原因なのかは全く不明です。
実際には全く別の理由があるにもかかわらず、当時者達が夜見山岬の件を「現象の原因」であると思い込んでいる可能性も否定できないところですし。
また作中では、榊原恒一と見崎鳴の旧校舎探索で、1983年当時の3年3組卒業生によるテープが発見されるのですが、それには「3年3組には死者がひとり紛れ込んでいる」「その死者を殺せばその死体は消滅し、それ以降は『現象』は収まる」という内容のメッセージが録音されていました。
これが、映画のキャッチフレーズにもなっている「死者は誰?」の本当の意味でもあるわけですね。
しかし「現象」が発動している最中は、当時者達の記憶どころか、過去の死者の記録なども全て改竄されてしまうため、新聞記事などの過去の記録を元に死者を探すことは全く不可能。
しかもその死者自身、「自分が死んでいる」という自覚は全くなく、見た目も記憶も普通の人間と何も違わないため、その特定どころか、実際に殺してみるまでは真偽を判定することすらもできないのです。
それどころか、下手にこのことが露見しようものならば、クラス全体が「死者探し」に狂奔した挙句、クラス内における凄惨な殺し合いが勃発する危険性すらあります。
実際、物語終盤では、部分的ながらもクラスメイト達が互いに猜疑し合い、殺し合いに狂奔する場面も見られたわけですし。
これでは真相が分かっても、普通であれば「バトルロワイヤル」のごとき虐殺が始まってしまい、却って事態を悪化させるだけでしかないですね。
ただ今回の場合、「人の死の色が見える」という特殊能力を左目に秘めている見崎鳴の活躍で、死者の存在が判明することになるわけですが。
ただこの「現象」、実は記憶&記録操作に抵触することのない形で意外と簡単に解消できてしまえるのではないか、とは思わなくもなかったですね。
非常に簡単な方法で、夜見山北中学校3年3組を名目だけの存在にしてしまい、誰もそのクラスに所属しないようにしてしまえば良いのです。
作中で発生している「現象」は、あくまでも夜見山北中学校3年3組に所属する(&していた?)生徒・教師およびその血縁者に対してのみ発動するものなのですから、その3年3組に所属する人間が誰もいなくなってしまえば、当然「現象」を止めることも簡単に行えるわけです。
作中の描写を見る限りでは、いくら人間の記憶や過去の記録を改竄するといっても「現象」の存在そのものまではさすがに隠蔽できていないようですから、学校関係者が「現象」の元を断つことは充分に可能でしょう。
何なら、3年3組として使われている教室そのものをも完全に閉鎖し、立ち入り自体を禁止してしまっても良いでしょうし。
第一、毎年毎年3年3組という特定のクラスで大量の死者が出るというのであれば、いくら表面的には偶発的なものに見えるにせよ、保護者も学校側も当然不安を覚えるようになるでしょうし、特に生徒の管理指導の責任が問われるであろう学校側がその手の対策を検討しても何ら不思議なことではないと思うのですが。
3年3組に死者が紛れ込むといっても、肝心の3年3組に誰もいなければ、その時点で死者の正体は簡単に露見するわけですし、当然「現象」も発動の停止を余儀なくされてしまうでしょう。
まあひょっとすると、「現象」が纏わる記憶&記録改竄の中には、この手の「3年3組そのものを根絶する」という発想をも封じ込める機能も備わっているのかもしれないのですが、「『現象』の存在を誰もが知っている時点で対策も打たれてしまうのではないか?」とは正直思えてならないのですけどね。
この手の「災いの元を根元から根絶する」的な対策を打たれないようにするためには、「現象」の存在そのものが3年3組の当事者達以外誰も知らない&他者に知らせることもできない、しかも卒業すると同時に全ての人間の記憶と記録媒体から「現象」および死者&死亡事故等の存在そのものが完全に抹消されてしまう、というところまでいかないと無理なわけですが、作中ではそこまで徹底されていませんでしたし。
「バトルロワイヤル」のごとき凄惨な殺し合いや、見崎鳴の特殊能力に依存するよりも、3年3組の存在そのものを有名無実化する方が非常に簡単な解決方法に見えてならない、と思うのは私だけなのでしょうか?
この辺り、原作ではきちんとした説明があるのでしょうかね?
映画自体は、学園ホラー要素以外にも、犯人探しのミステリーやサスペンス要素もあり、意外に見応えのあるものにはなっていると思います。
七氏
3年3組を閉鎖すれば良いのでは…という対策は、原作によると過去に幾度も行われているとのことです。
3組を欠番にして飛ばしたり、数字ではなくA組B組C組といった形にしたりと様々な形で試みられたそうですが、結局は『3年次の3番目に該当するクラス』が現象の発生ポイントとなってしまいどれも効果がなかったそうです。
そこのところが映画ではきちんとフォローされていなかったようですね。