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格安航空会社(LCC)の戦略に見る「合理化」の弊害

格安航空会社(LCC)の航空機が本格的に日本の空を飛ぶようになりましたが、安い価格を売りにしているが故のトラブルが頻発していますね。
1回事故を起こすだけで連鎖反応的に遅れが生じたり何便も欠航になったりと、サービス開始早々、あまり幸先の良くないスタートを切っている始末です↓

http://megalodon.jp/2012-0807-2058-18/www.j-cast.com/2012/08/07142010.html?p=all
>  国内を拠点とする格安航空会社(LCC)3社が出そろい、本格的な日本の空の価格破壊が始まった。だが、最後発のエアアジア・ジャパンでは、「初便満席」という「ご祝儀相場」もなく、就航初日には搭乗率50%台の便も続出した。
>
>  最終便は予定よりも1時間以上遅れるなど、
「一度遅れると影響が長引く」というLCC特有の弱さも改めて明らかになった。
>
> 一度遅れが出ると後の折り返し便まで影響残る
>
>  エアアジア就航初日の最終便は1時間以上遅延した。「主に各便の搭乗時における人数確認に時間を要したため」だと説明している
>
>  
LCCが抱える問題のひとつが、「折り返し問題」。LCCでは1日に飛べる回数を増やすために、目的地に着いてから折り返すまでの時間は30分程度で、従来の航空会社よりも15分ほど短い。CAは短期間で機内清掃や乗客の搭乗案内をこなす必要があるが、一度遅れが出ると後の折り返し便まで芋づる式に影響が残ってしまう。
>
>  例えば、2012年8月1日に就航したエアアジアの路線では、同日初便の成田発新千歳行きは定刻の7時に出発できたものの、最終便の新千歳発成田行きが成田に到着したのは、定刻よりも1時間8分遅い21時18分。エアアジアでは、遅れの理由を、
>
> 「主に各便の搭乗時における人数確認に時間を要したため」
>
> と説明している。
>
>  この問題は、エアアジアと競合するジェットスター・ジャパンでも起こっている。同社就航初日の7月3日に、最終便の新千歳発成田行きが欠航を余儀なくされ。福岡や成田の折り返し作業で遅れが積み重なり、この飛行機が新千歳に着いたのが定刻より1時間22分遅れの21時32分。成田の運用が終わる23時までに着陸することが絶望的になり、欠航となった。
>
>  乗客の多くは、ジェットスターが手配したホテルに宿泊し、翌朝の臨時便で新千歳から成田に向かっている。この便は、7月12日にも同様の理由で欠航しており、構造的な問題だと言える。これを受け、ジェットスターでは7月23日から一部ダイヤを20分前倒す対策をしたが、それでも問題は解決せず、8月6日には成田と福岡を往復する計2便が同様の理由で欠航している。
>
> 1回のトラブルで何便も欠航が出る
>
>  もうひとつの問題が、機材手配の問題だ。大手航空会社であれば、仮に1機にトラブルが発生したとしても、別の飛行機を現場に向かわせて影響を少なくできる。ところが、
LCCでは少ない飛行機を使い回してコストを下げているため、1回のトラブルで大きな影響が出る。
>
>  例えばピーチでは3月28日、CAが長崎空港でドアの操作を誤り、脱出用の滑り台を作動させてしまった。LCCでは修理用備品の在庫を最小限に絞っているため、新品の滑り台を取り寄せるのに時間がかかり、3日間で計13便の欠航を余儀なくされた。
>
>  ジェットスターは、7月28日にはバードストライクが原因で1便が大幅に遅れ、2便が欠航している。
>
>  これらの問題について、エアアジア・ジャパンの岩片和行社長は、
>
> 「今持っている(2機の)機材を出来る限り有効に活用しながら、1日のうちの飛行時間を最大化してコストを下げるというのが基本的なLCCの考え方だ」
>
> として、予備機を導入する考えを否定。その上で、
>
> 「10機ぐらいに増えてくる間に余裕が出てくると思う。しばらくは申し訳ないが、限られた機材の中で運航していきたい」
>
> と理解を求めた。

LCCのような安値を売りにする商売では、元々から安全性や信頼性をある程度犠牲にすることで成り立っている面が多々あります。
しかし元来、世界的に見ても神経質過ぎるほどにスケジュール管理や納期にうるさく、しかも「水と安全はタダ」「そこにあるのが当然のもの」と大多数の国民が当然のように考えている感すらある日本で、果たして「スケジュールと安全性を犠牲にした、何の保証もない安値」というものを素直に認められる土壌があるものなのか、大いに疑問であると言わざるをえないところです。
牛丼屋のごとく、デフレスパイラルの象徴のごとく安値戦争を繰り広げているような市場ですら、客に対するサービスが当然のごとく求められ、クレームが飛ぶことも珍しくない日本で、安値と引き換えにサービスが削られることに寛容でいられる人はかなりの少数派であると言わざるをえないでしょう。
「たとえどんなに安くても、安全性や信頼性は付属して当たり前」
それが一般的な日本人の「世界的な非常識な常識」なのですから。
そんな風土を持つ日本の航空市場で、早くも問題を露呈しているLCCが、如何にその安値をアピールしたところで、果たして積極的に乗りたいと考える人がどれだけいるのだろうかと。
すくなくとも、ビジネス関係ではまるで使い物にならないでしょうし、大型連休の旅行などでも積極的に使いたいと考える人なんて果たしているのかどうか……。

LCCに限らず、昨今の日本の企業はどこもかしこも、効率と利益追求の観点から経営の合理化や価格破壊に奔走しています。
いや、企業どころか政府ですら、ここ10年ほどは「事業仕分け」だの「構造改革」だのといった美名の下、無駄を削除することに狂奔していますし、マスコミなどもそのような傾向に喝采を浴びせるような御時世ですらあります。
しかし、そのような「無駄を許さない」スタンスは、結果的にいざという時の臨機応変かつ柔軟な対応能力を犠牲にすることで成り立っているものなのではないでしょうか?
安価な航空運賃と引き換えに、点検やメンテナンスの時間と費用を犠牲にし、結果的に安全性や利便性に多大な問題が生じてしまっているLCCなどはまさにその典型ですが、同じような事例は他にも山ほどあります。
人件費節減の観点から深夜営業の際に店員をひとりしか配置しなかったことで、結果的に強盗の被害が多発した上、社会的非難を浴びて方針を転換せざるをえなくなった、大手牛丼屋チェーン店のすき屋。
「経営の合理化を図る」と称して、人件費の安い国に基盤を移したり、地方の工場を閉鎖したり、大量の人員のリストラに明け暮れたりする多数の企業群。
人を新規に雇用しない一方で、既存の社員にはサービス残業を強いるブラック企業。
そして、「無駄を無くす」という大義名分の下、将来貢献しえるであろう技術の研究開発費をごっそり削り取る「事業仕分け」その他諸々。
これらが、一方ではどれほどまでの犠牲を払い、中長期的な損失となって日本社会に跳ね返っているのかについては、誰もが知っているようで実は意外に知られていないのではないでしょうか?
頭では知っていても実感がわかない&他人事と考えている人なんて、かなりの数いそうではありますしねぇ。
実際、この手の経営合理化だの構造改革だのを賞賛する人々というのは、それによって自分が被害を被ることが全くない人間であることがほとんどだったりするのですから。
大手マスコミですらその例外でないことは、かつての自民党政権下で新聞の再販制度の撤廃や広告税の導入が行われようとした際、ヒステリックに反対した挙句に「何が何でも自民を潰す」と言わんばかりのネガティブキャンペーンが繰り広げられた過去の事例を見ても明らかなのですし。
所詮は他人事に過ぎないからこそ、当事者としての感情を排して「客観的に」改革を称揚できる一面もあるわけで。
自分が害を被ることがないのであれば、そりゃ経営合理化や構造改革ほどに面白くかつ利益になるエンターテイメントショーもまたとないのでしょうけどねぇ(苦笑)。

それにしても、昨今の日本で繰り広げられている経営合理化や構造改革などの実態を見て見ると、どうにも戦前の「贅沢は敵だ!」「欲しがりません勝つまでは」を連想せずにはいられないですね。
今後状況が良くなる見込みなどどこにもないのに、とにかく切り詰められるところは徹底的に切り詰めて社員(国民)に我慢を強い、さらに状況の悪化を招く、という悪循環に陥っている点が全く同じですし。
経営合理化や構造改革それ自体が悪いわけでは必ずしもなく、時と場合によってはむしろ必要不可欠とされることもあるでしょう。
しかし、不況な現状での経営合理化や構造改革は、「貧すれば鈍ずる」「貧乏が貧乏を招く」という悪循環に陥っているだけなのではないでしょうか?
身も蓋もない言い方をすれば、回復の見込みもなく余命幾許もない末期患者を、多額の費用と手間をかけて必死になって延命処置を行っているに等しい行為であるようにすら見えますし。
まあ延命処置に走っている組織的には、どんな犠牲を払おうとも延命措置を施さないわけにはいかないのでしょうけど。
合理化によって需要が減り、経営が悪化することで更なる合理化を迫られる、という悪循環な構図は、決して誰も幸福になどしないのではないのかと。
こんな悪循環を断つためには、個々人や企業ではなく、国単位の経済政策が求められるのではないかと思うのですが、今の民主党政権では論外もいいところですしねぇ(T_T)。

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