映画「踊る大捜査線 THE FINAL 新たなる希望」感想
映画「踊る大捜査線 THE FINAL 新たなる希望」観に行ってきました。
「踊る大捜査線」の映画版4作目にしてシリーズ完結編。
テレビドラマ版「踊る大捜査線 THE LAST TV サラリーマン刑事と最後の難事件」で展開されていた伏線の一部が今作で反映されています。
なお、今作で私の2012年映画観賞本数は、記録的な大豊作となった去年1年間の映画観賞総本数である65本のラインに到達しました。
今月中に70本を突破するのは確実な情勢ですし、今年は最終的に80~90本くらいは映画を観賞することになりますかねぇ。
映画の冒頭では、シリーズお馴染みの湾岸署の面々が、何故か東京の下町?で唐揚げ屋を営んでいる様子が描かれています。
主人公である青島俊作が唐揚げ屋の店主、恩田すみれが相方の奥さん?兼店員で、和久伸次郎が下っ端店員として、和気藹々で明るい店を営んでいるようでした。
すぐに判明するのですが、彼らは唐揚げ屋の近くに住んでいるらしい老人の息子?で指名手配されている人物を捕まえるべく、1ヶ月近くにわたって張り込みを続けていたのでした。
その張り込みの甲斐あってか、該当の被疑者は見事に現場に現れ、犯人ひとりに物量に物を言わせた大捕り物の末、湾岸署の面々は無事目的を達成することに成功するのでした。
結果、1ヶ月にわたって運営してきた唐揚げ屋は店仕舞いとなり、閉店セールと共に残りの唐揚げがほとんどタダ同然で下町の住民達に手渡されていくのでした。
ちなみに後で唐揚げ屋の経費を青島らが請求した際に判明するのですが、この唐揚げ屋の売り上げは黒字を達成していたのだとか(苦笑)。
被疑者を確保し、意気揚々と湾岸署へ久々に戻ってきた青島らの眼前に繰り広げられていたのは、湾岸署管内にある東京ビッグサイトで開催されていた国際環境エネルギーサミットの影響で多くの警官が駆り出され、いつもより人が少なくなっている湾岸所内の一風景でした。
青島らも湾岸署に到着早々、署長の真下正義に交通課など他部署へ手伝いに行くよう言い渡され、しぶしぶながらも手伝いへと向かうのでした。
ところがそんな中、国際環境エネルギーサミットの会場内で男性の誘拐事件が発生し、青島らは事件の聞き込み捜査を行うことに。
事件は人がごった返している広場で公然と起こっており、現場では多くの人達が事件を目撃していましたが、犯人が具体的にどこへ行ったのかまでは結局掴むことができませんでした。
そして数時間後、事件の際に誘拐された男性と同じ黄色いシャツを着た男が、拳銃で撃たれた痕跡を残した死体となって発見されてしまいます。
事件を受け、本店(警視庁)では、誘拐事件で被害者の殺害に使われた拳銃が、かつて警察が押収したものと合致するとの情報をいち早く掌握していました。
しかし、警察が押収した拳銃が犯行で使用されたということは、事件が警察内部の人間によっておこなわれたものであることをも意味することになります。
それが「警察の不祥事」としてマスコミに叩かれ、自分達の出処進退が問われる事態になることを恐れた警察の上層部達は、事件の捜査を指揮する立場となる鳥飼誠一に対し、犯行の隠蔽を行うよう命令を下すのですが……。
映画「踊る大捜査線 THE FINAL 新たなる希望」は、相変わらずコメディ要素満載な展開が繰り広げられていますね。
テレビドラマ版「踊る大捜査線 THE LAST TV サラリーマン刑事と最後の難事件」でも披露された、署長の真下正義をリーダーとする3人組と、元署長を筆頭とするスリーアミーゴスの「猿山のボス猿争い」のごとき低次元な対立は今回も健在でしたし、それ以外にも作中の随所に笑いのネタが目白押しでした。
テレビドラマ版ではスリーアミーゴスの面々に事件の対策本部の玄関口に貼る戒名?を書こうとしたところを妨害された真下でしたが、今作ではその雪辱叶って、見事に自分で戒名を書くことに成功していました。
ただ、「これならスリーアミーゴスの面々の方がまだマシだったんじゃ……」と言いたくなるほどヘタクソな上に字の大きさまで不統一な戒名の仕上がりは、そこらの女性警官達にまで酷評される始末ではありましたが(笑)。
また、青島の部下である王明才がお茶&ミネラルウォーターと間違って注文(「みず」の発言がなまって「ビール」になっていた)してしまった大量のビールの件を巡る責任回避の構図も笑うところですね。
ビールを間違って購入した責任を問われて左遷されることを恐れた青島は、湾岸署内に設置された総計500缶ものビールの山をカモフラージュしてその場凌ぎで何度もごまかしまくった挙句、ついにその存在が露見してしまった際には真下を口先三寸で丸め込んで責任を擦り付けてしまいます。
物語後半の事件発生の際には、いくら緊急時とは言え「真下の息子が久瀬って男に誘拐された!」と青島から堂々と呼び捨てされているありさまでしたし、真下って本当に「人の上に立つ人間」には向いていない上に、部下からも上司として見られていないのだなぁ、とつくづく感じずにはいられなかったですね(^_^;;)。
一応はキャリア出身で出世も順風満帆、私生活面でも妻の柏木雪乃と二児の子供の父親で恵まれた環境にあるはずなのに、スリーアミーゴスと比較してさえも小悪党&小物過ぎる感が否めないところですし。
ただまあ、物語後半ではその手のお笑いネタも鳴りを潜め、陰惨な事件の当事者として悲壮感を露わにしてはいましたが。
ところで作中では、恩田すみれが実は身体の不調から辞職をしようとしていることが明らかになっています。
これはテレビドラマ版でも伏線として出てきていましたが、彼女は2作目映画「踊る大捜査線 THE MOVIE 2 レインボーブリッジを封鎖せよ!」で撃たれた傷が原因で身体に痛みが走るようになっており、近年は警察としての職務にも耐えられないほどになってきているとのこと。
警察を辞めるという恩田すみれの決意は固く、彼女は青島ら湾岸署の親しい同僚達には何も告げず、九州行の夜行バスで故郷の大分へ帰るつもりだったようです。
恩田すみれは結局、青島に擦り付けられた冤罪の報道から青島の危機を知り、ラストで夜行バスを乗っ取り倉庫へ突っ込むという大立ち回りを演じてのけるのですが、ただ、恩田すみれがあの後どうなったのかについては作中でも全く描かれていないんですよね。
バスの横転後に青島に介抱されたシーンを最後に、作中から存在すら消えてしまった感すらありましたし。
普通に考えれば、あの夜行バスをハイジャックした上に横転大破させてしまった恩田すみれが罪に問われないはずもないので、作中のラスト時点では警察から長期の事情聴取を受け青島らから隔絶された状態にあると考えるのが妥当なところではあるのでしょうが……。
ただ、今作は一応シリーズの完結編・最終作と銘打っているのですから、後日談的なエピソードなり画像なりをエンドロールで流すという形で披露しても良かったのではないかとは思わなくもなかったですね。
また公約を破って性懲りもなく続編を作るというのでなければ、今作を最後に「踊る大捜査線シリーズ」のエピソードは一切語られなくなってしまうのですし。
青島と結ばれて結婚、というシナリオだけはどうにも考えられない話ではありますけど。
今作の事件は、全体像から見れば「警察への私怨と上層部の一掃の双方を達成することを目的とした、鳥飼誠一の謀略劇」という要素が非常に強いですね。
6年前の幼児誘拐事件で無念を味わった警官達を動かし、警察の信用に関わる事件を起こす。
その事件を上層部に隠蔽させると共に無関係な人間に罪をかぶせるなどして上層部に罪を負わせる。
その事件の一部始終および真相を自分の名で公開し、上層部を軒並み引責辞任させ首を挿げ替えると共に、自分は一切傷つくどころか名声すら獲得する。
青島や室井慎次が成し遂げようとしていた警察の改革を、彼は謀略でもって短期間で可能な状態にしてしまったわけです。
自分の私怨すらも利用して邪魔者を片付ける鳥飼の謀略手腕は、政治的には相当なものがあると言わざるをえないですね。
青島も室井も、鳥飼の手法にはある程度気づいている感がありましたが、踊らされていることを自覚しつつ、それでも彼らの立場的には踊り続けるしかないのでしょうね。
ある意味、一連の事件の真の黒幕である鳥飼こそが、今作における最終的な勝者となるのでしょうが、しかし彼の今後は一体どうなるのやら。
こちらも、今作がシリーズ完結編・最終作として語られている以上、普通に考えればまず語られることはないであろうと思われるのですが、彼の罪が何らかの裁かれるがないというのも、政治的にはともかく、物語的には何か不完全燃焼な感が否めないところですね。
シリーズ完結編・最終作というだけのことはあり、「踊る大捜査線」シリーズのファンであれば必見な映画と言えるのではないかと。